C.1 遠くで鈴が鳴っている(1)

 風の音にまざってかすかに聞こえる鈴の音。意識を集中していないと聞き逃してしまう、そういう感じである。
 あいつは1月中旬の芭蕉同窓会の頃から、どこかおかしい、なにかが起こり始めたと感じていたという。

 でてくる料理を少し口にして、ビールをコップで3杯も飲んだら、なんだかもう腹がきつい。歳のせいだろうか、飲めなくなった、そう思いつつ、コップに口をつけるだけで、この30分ほどほとんど飲んでいない。友人たちは騒いでいる。量を飲まずにすむ日本酒へ切り替えた。
 グランドホテルの宴会場で3時半から8時まで、同級生10人ばかりと一つテーブルを囲み、談笑しつつ飲んだ。そのあと仲間のやっている店へ繰り出してで二次会をした。ほとんど飲めない。それでもママの漬けたイズシには箸がつけられた。じつに美味かった。3時間かけてビールを中ジョッキで3杯ほど飲んでお開きにした。

 胃腸の働きがよくないようなので、タクシーに乗る友人を見送り、ゆっくり歩いて帰る。
 タクシーで帰ってそのまま寝ると胃がもたれて気持ちが悪いから、飲んだ後は歩いて帰ることが多かった。酔いも幾分さめるし、歩くと気分がよかった。雪と氷の夜道を30分ほどのんびり歩いて家に着き、お風呂に入り温まる。極楽極楽・・・

 気にもとまらない最初の微妙な予兆だった。

 2009年2月12日 ebisu-blog#542
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