ひね香について

 昨日のブログにコメントを戴きました。「酒がひねるってどういうこと?」

 酒がひねたというのは、たぶんですが、「ひねくれる」から来ているのではないでしょうか。この部分は私の勝手な憶測です。古くなって素直な味でなくなるから「老香(ひねか)」と書きます。
 まもなく還暦を迎える身としては、「老香」という当字は気に入りませんね。あはは・・・たしかにだいぶんひねてますが。

 火入れして発酵を止めた酒で精米歩合のしっかりしたものは、適温で熟成すると熟成香がつきます。その場合はだいたい味もマイルドになります。ひねると香りも「素直」ではなくなり、雑味がします。呑めばはっきりわかります、マズイ。

 保管温度が高ければ、たいていヒネ香がつきます。よく「古酒」と称して高い酒が売っていますが、色はウィスキーのように薄い茶褐色で、味は紹興酒に似てきます。日本酒本来の味ではなくなっているので私はあまり好きではありません。
 720mℓの陶器のボトル入り、10000円の古酒を飲んだことがありますが、美味しくありませんでした。値段がいいから美味しいだろうと想像力を膨らませて栓を抜きましたが、期待はずれ。1升6000円くらいの大吟醸酒を買って呑めばよかった。

 銀座4丁目のすずらん通りだったかな、ある有名酒造メーカの直売所兼日本酒のスタンドバーがあります。そこに古酒が並んでいました。色はもちろん薄い褐色。おそらく30度以上のところで保管するとああなるのでしょう。

 根室は地下で保管すれば5度~15度の範囲で保管できるので、色がつくことはない。8年寝かせても大丈夫でした。色がつくのは保管温度と関係があるようです。醸造酒ですから温度が上がることで酒の成分が化学反応を起こすのかもしれません。たぶん含まれている酵素の作用でしょうが、その辺りはよくわかりませんので、専門家に意見を聞きたいものです。
 同じ醸造酒仲間ですから、ワインも保管温度が上がると味が変わってしまうようです。『刑事コロンボ』にそういうのがありました。なにかでワイン保管庫が30度以上になり、味が変わってしまったのが事件を解く鍵になったというお話です。

 2009年1月6日 ebisu-blog#476
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