ソネットブログの1ページの用量を超えてしまったようなので、三つに分割しました。7000文字を超えるとオーバーフローを起こすようです。アップしたとたんに、データが半分くらい消えてしまっていました。昔は警告が表示されましたが、いまは警告なしに自動的にカットされてしまいます。長いブログは書くなということか。(笑)
 それで前回からの続き、3つ目、最終回です。

<下位
30%の低学力層にかかわる問題>
 高学力の生徒よりはそうではない生徒の方が多いのはあたりまえです。低学力の生徒がどういう問題を抱え、教える側や保護者はどのようにしたらいいのか、参考になれば幸いです。


  市内のA中学校の得点分布データを先に示しておきます。1年生は9/8日の学力テスト、3年生は9/15日の学力テスト総合Aです。どちらも満点は100点です。


 1年生20点以下 33/92人(35.9%) 10点以下13人(14.1%)
  2年生20点以下⇒ 20人/94人(21.3%)10点以下12人(12.8%)

 3年生20点以下 36/99人(36.4%) 10点以下16人(16.2%)
 
 20点以下の生徒は、独力で勉強できません。誰かがそばについていて、つきっきりで教えてやらないと勉強できないのです。そういう学力レベルが20点以下なのです。10点以下はもうお話にならない。全員逆九九がすらすら言えないでしょう。中1でこういう状態の生徒は中2になっても中3になっても50点なんて獲れません。自力では無理なのです。びっちりついて教えてやれば3人に一人ぐらいは50点以上取れるようにはなりますが、大変な手間がかかるんです。成績上位の生徒を同時に10人個別指導するぐらい手間がかかります。小学校6年間かけて、深く考えない、本を読まない、家で勉強しないということが習慣どころか、性格にまでなっているので、1年間で何とかなるのは10人に一人くらいですよ。数学のテストが十数点だった生徒が、1年後に女子で2番をキープするようになった例が一人だけいました。毎日塾へ来て、数学の教科書を開き、予習、独力でわかるわけもないので、質問攻めでした。かかりっきりになるわけにいかないですから。生徒数の少ない時にしかやれません。
 何がどのように手間がかかるのか説明します。

 前置きはそれくらいにして、成績下位層の生徒の話をします。家庭での学習習慣なし、読書習慣なし。語彙力が貧弱。九九はできると本人の弁。しかし、逆九九を言わせたら、何度もつかえ、しばしば出て来なかったり間違えます。74の段が入れ替わります。
しちしちしじゅうく、しちろくしじゅうに、しちごさんじゅうご、ししちにじゅはち、しさんじゅうに、しにがはち...
「しち」と「し」は言いづらいから、ここのように途中でひっくり返る生徒が中1年生で1割以上いますよ。皆さん「九九はできます」と言いますが、学力の低い生徒で逆九九が口からすらすら出てきたのを見たことはありません。逆九九がすらすら出てこない生徒は割り算に標準的な生徒の3倍以上かかります。そもそも逆九九を教えない小学校の先生が半数くらいはいそうです。中2にも中3にも逆九九がすらすら言えない生徒が同じ比率で存在しています。低学力層のためにセイフティネットがないからそのまま3年生になり、定員割れしている根室高校へ入学していきます。根室高校普通科の1/3ほどがそういう低学力層です。1/3もいますから、こういう生徒はめずらしくないのです。根室高校の先生たちは学力差があまりにも大きいのと、低学力層が1/3もいるので困っているでしょう。
 この生徒は九九からやり直しですが、他の生徒のいる前ではやりません。自尊心がありますからね。口のトレーニングですから、やればすぐによくなります。
 こういう低学力の生徒は家庭での学習習慣がないから、記憶エリアが未発達で、暗記がとっても苦手です。低学年ではお母さんの役割がだいじです。一緒に本を読んであげたり、九九の練習を一緒にしてあげるだけでも効果が大きいのですよ。低学年でそういうかかわりがなかった生徒は、脳の短期記憶エリアが未発達のままになっています。脳の記憶エリアが小学校低学年のままなのです。だから短期記憶エリアの拡張トレーニングが必要です。音読や時間を測ってやる計算問題トレーニングが必要です。斉藤孝著『読書力』を交替で音読する。でてきた文章を5回読んで、諳(そら)んじる。たとえば「エネルギーをめぐる世界の潮流は急激な変化の中にある」を5回音読したら、目を閉じて諳んじる、というように。英語の文章も「There are three parks near here.」を10回音読して、3回諳んじ、ついで3回書かせる、という風に。個別指導にならざるを得ないので、部活を停止して学校が終わったら、4時に来てもらって、毎日3か月間ほどトレーニングするのがいいのです。でも、部活を休める生徒は少ない。だから、実際にはなかなか救えないのです。
 保護者と先生たちは勉強とブカツとどっちが大切なのかしっかり考えてもらいたい。たかが地区大会での成績です、低学力のままでいるのと引き換えなんて、そんな重要性はありませんよ。
 短期間の記憶エリアが未発達かどうかは簡単にチェックできます。返却されたテストの点数を聞いてもこういう生徒は思い出せません。記憶エリアが未発達のまま6年間を消費してしまっています。だから、昨日返却されたテストの点数も思い出せない。短期記憶エリアが未発達というのは、脳の記憶機能が認知症の老人と同じだということです。記憶機能障害だと考えるべきです。
 どういう症状が起きているのかついでですから書きます。短期記憶エリアが未発達だと、計算規則を教えても何度も同じミスを繰り返します。10分前に間違えたので説明した箇所を、問題が変わればまた同じミスを繰り返していますから、教える方には根気が必要です。10倍以上の手間がかかります、そして勉強時間は増えているのに成果が出ません。1週間たつと忘れています。だから、同じ問題を何度も何度も繰り返してトレーニングしなければなりません。標準の生徒の10倍の手間がかかって、効果は小さい。でも誰かが手をかけてやらないと、そのまま高校生になり卒業。正規雇用の職にはほとんどが就けないでしょうね、非正規雇用で低所得(年収200万円以下)にあえぐことになります
 こういう生徒もなんとかしてやりたい。学校では放置です。2-3割、そういう生徒がいて、テストの結果を見て先生たちは気づいているはずですが、部活指導には熱心でもこういう手間のかかる生徒に救いの手は伸びてきません。保護者は学校の先生に何とかしてほしいと言っていいのですよ生徒も勉強嫌い、保護者もクレームを言わぬ、先生たちも手間がかかるので逃げる。校長もわかってはいるが、やるのはたいへんなので見て見ぬふりをする。放課後補習の教員確保と低学力の生徒を集めて補習へ出席させるために部活の半分停止くらいの措置が必要になりますからね。だから手を触れません。問題に目を瞑り部活をやらせていたほうがずっと楽です。教員になったときにはもっと夢があったはずですが、あの情熱はどこへ置いてきちゃったのでしょう?
 学校の先生は手間のかかることが嫌いなようです。「朝読書」にそれが象徴的に現れています。音読させてみたらすぐに読めていないことがわかります。でもそれはとっても手間がかかるのでやりません。1クラス25人に音読指導するには一斉音読しかありません。試しに20分間一斉音読をしてみたらいい。わたしは15年間ほどニムオロ塾で新書を2冊(斉藤孝『読書力』、藤原正彦『国家の品格』)を使って音読指導をしたことがあります。一斉音読ではなくて輪読主体でした。一人一人がどれくらい読めているのか確認しなければならないのでそうしていました。正しいトレーニングをすれば、生徒の語彙力は飛躍的に伸びるし、読書力も大きく成長します。

 低学力の生徒を救済するのは学校長のマネジメントの問題ですよ。ふだんの学力テストの結果を見ない根室市教委も同罪です。18年間見てきましたが、こういうところへは具体策がありません。ああ、計算問題集「カルク」を作成して配布したことがありました。現場を知らぬ政策、大失策でした。問題集を配って学力がアップするならこんなに便利なことがありません。学校の先生たちが手間暇かけてやらなきゃ、低学力層の生徒たちは救いだせないのです。
 何人も教育長が変わり、任期が終了する都度、根室から去っていきました。もう、道の教育局からはいらないのでは?釧路市(岡部義孝教育長)も別海町も自前で教育長にふさわしい人を任命しています別海町の前教育長は眞籠さんでした。別海中央中学校の青坂校長と二人三脚、学力アップに貢献しています。いまでは根室の市街化地域の中学校よりも別海町の方がずっと学力が高い。
 わたしの知っているだけでも、根室には教育長にしたい元校長が数名いらっしゃいます。人材はいるのです。青坂さんは厚床の校長をしばらくしてました。根室は地元で有能な人が出ると煙たがります。そして外部から、口先だけの能力のない者を連れてくる。わが古里ながら阿呆です。

(釧路教育長の岡部さんの議会答弁が面白いので、青字の部分をクリックしてください。釧路新聞の記事を取り上げています。この教育長は釧路の子どもたちの基礎学力を本気でアップするつもりですよ。生粋の釧路っ子、元市役所職員です。『釧路の教育を考える会』の角田会長も元釧路市役所職員経済部長教育長でした。釧路江南高校北大の生粋の釧路っ子です。)



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