<最終更新情報>
10/4午前8時35分
10/10 午前8時半 B中の五年前の学力テストデータ追記 五科目合計平均144.7点、195点で学年10位。


  学力テスト総合A4の結果が出ているので数字を並べておきます。根室市議会議員の皆さんはこのデータを基にして学力問題を議論してください。念のために書きますが、根室市教委は学力テストデータを見ていません。普段の学力テストデータを見ないで、効果的な教育政策立案ができますか?たとえて言うと、治療を要する病人がいて検査をしたが、検査結果データを見ずに診断・治療をするようなもの。よほどの名医なら検査は不要だろうが、普通の医者は検査結果をよく見て診断を下し、適切な治療をします。
  どういう理由かわかりませんが、根室市教委は根室市内の子どもたちの学力低下に関心がまるでない。小中学生に行政として基礎学力を保障するのは根室市教委の仕事の本筋です。仕事と責任と報酬はセットですよ、学力向上へ向けて努力を期待します。

  前置きはこれくらいにして、データをご覧ください。

          B中学校           C中学校
  国語  33.2  (32.5)    32.0  (31.5)
  社会  20.8  (18.1)    22.9  (20.0)
  数学  17.2  (18.3)    14.9  (16.0)
  理科  15.0  (17.8)    18.1  (21.5)
  英語  23.5  (22.1)    22.2  (21.7)
  合計109.7(108.8)  111.7 (112.6)

  *(  )内は4月の学力テストです。

  4月の学力テストに比べると回を重ねるごとに点数が上がる傾向が2年前まではありました。1月実施の「模試」まで15点ほど五科目合計点の平均が上がるのが当たり前でした。これから行われる学力テストの五科目平均点の推移に注目です。ほとんど横ばいで、120点を超えることはおそらくない。
  中標津K中学校の五科目合計平均点は123.2点だそうです、数学は17.8点。同じ根室管内の中標津町の中学校に比べても水をあけられています。
  釧路の14中学校と比べても、BC両校ともに最下位ランクです。B校は10年ほど前に一度だけ160点を超えたことがありましたが、130-145点くらいが多かった。5年前の4月のB校学力テストのデータがありました。五科目平均点は144.7点です。五科目合計点195点で学年10位(学年人数76人)でした。C中学校で4月の学力テストがこの点数だと学年(52人中)5位です。わずか10年ほどですさまじい学力低下が起きました。理由は何度か弊ブログで書いています。11年前頃のことです、兆しがはっきりした形で現れました。1年生の学級崩壊が起きました。授業中に先生の声が時々聞こえなくなる、3人ほどの生徒が頻繁に私語をして制止できない、たったそれだけのことで学力テストの五科目合計平均点が40点ほど下がったのです。2年生になってクラス替えが行われると、その3人は3クラスに分かれましたが、それぞれのクラスで仲間をつくって「増殖」しました。2年生全クラスの学力テストの平均点が下がってしまいました。3年生の300点満点のテストでは20点も低下した。このように授業崩壊は数人の生徒が制止を聞かなくなるだけで簡単に起きますが、それを立て直すのは至難の業です。強い先生が制止できても、弱い先生の授業の時に余計に騒ぐようになります。ようするに、授業が理解できない低学力の生徒をそのまま放置してはいけないということです学力最底辺を底上げすることが、授業崩壊を防ぐ有力な対策です。やりかたは色々考えられるでしょう。先生たちの工夫と力量とあきらめない努力、そして学校管理職のマネジメント能力が試されています
  C校は七年前の荒れていた時代の学力レベルに退行しています。立て直しは半端でない手間がかかります。ほんとうにたいへんだろうと思います。

<20年後に根室を支える人材が現在の中学生>
  学力上位層は大学進学してほとんどが戻って来ないのが実情です。根室の地元企業は上位層が抜けたところから採用せざるを得ません。優秀な人材採用ができなくなれば、企業競争力が落ち、徐々に体力も失われます。教育問題をこれ以上放っておいたら、根室の地元企業の未来は暗い。社会福祉・人口問題研究所の地域別人口推計では現在2.6万人の根室の人口が1.8万人になるとされていますが、昨年の減少は600人ですから、推計値を超える勢いで人口減が加速しています。2040年には1.5万人くらいになりそうです。そのときに地元企業を30歳代で支えているのがいまの中学生です。地元企業の半数が消滅しているでしょう。失業して転職を余儀なくされる者が増える中で、学力テストで1/3以下の得点しかできなかった者たちが根室の働き手の主力になります。倒産した地元企業で正社員として転職できる者はわずかでしょう。
  水産資源が激減する中で、新商品を開発したり、製造工程を工夫したり、新規事業を起こせる人材がますます必要です。浜中農協の石橋組合長は組合員の牧場で飼っている牛の乳質の改善のために、周りの反対を押し切って技術センターを設立し、乳質を改善し続け、厳しい品質管理基準を実施しているハーゲンダッツへ原料供給の指定農場へと導いた功労者ですが、「これからの農業には、大企業よりも優秀な人材が必要だ」と語っています。2年前の11月に釧路で行われた、教育シンポジウムの記事(弊ブログ・カテゴリー「教育シンポジウム」)をご覧ください。

*#3186 教育シンポジウム(11): パネルディスカッション Nov. 22, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-11-22
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 石橋さんはJA浜中農協の組合長としてさまざまな改革に取り組んできた人です。1981年に酪農技術センターを設立して、一つ一つの牧場の土壌分析をして必要な肥料をデザインし、牛乳の品質改善を徹底してきました。農協としては規模の小さいJA浜中農協が先進的な酪農技術センターを34年も前に設立して技術指導の拠点にしてきたことは驚異です、その先見性に驚かざるをえません。
……
 これからの農業こそ、科学的データに基づく改革を進めなければならないから、大企業よりも優秀な人材が必要ですという意見を聞いて、隣にいたパネラーの武藤(北海道教育局次長)さん、「すごい人がいるな」とびっくりした顔をしていました。
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  武藤さんはその後文科省へお戻りになって、1年後にブラジル大使館一等書記官として赴任しています。オリンピックがらみで白羽の矢が立ったのでしょう。優秀な人ですから。根室高校で小中の保護者と教育関係者対象に2014年2月15日に講演会(弊ブログ#2214参照)をしていますから、記憶にある保護者の方が200名くらいはいらっしゃるのでは?
*#2214 北海道庁教育局義務教育課長「講演会」でどよめきあり Feb.16, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-02-17

  根室の経済諸団体は学力低下に意見表明をしませんね。ふるさとと自分たちの企業の未来がかかっているのに自覚なし、まるで関心がない。とても不思議なことです。「オール根室」と市政とのもたれあいはこういうところで大きな弊害の素(もと)になっていませんか?
  それぞれのポジションにある大人一人一人が、言うべきことを言い、やるべきことをやる。


<高校統廃合の弊害>
  根室西高校が募集停止、根室高校へ実質的に全入になったので、中学生の学力下位層が勉強しなくなりました。勉強しなくても根室高校普通科へ入学できることを今年の入試で知ってしまいました。今回の学力テスト総合Aの結果では五科目合計点でBC2校で100点以下が48.6%(53人/109人=48.6%)存在していますから、高校の標準的なレベルの授業についていけない低学力層の生徒が普通科定員の3-4割を占めることになります。300点満点で100点以下というのは中学校の教科内容を1/3しか理解できていないということ。聞いてもわからない生徒たちは退屈で授業中に私語を始めます。こっちを注意するとこんどはあちら、始終私語が飛び交い先生の説明の声がときどき聞こえなくなりますから、説明の文脈を判断して欠落部分を補うなんて高度な技で対応できるのはクラスに数人のみ、根室高校生の学力低下が進むでしょうね。どうしたって授業を聞いていない生徒、騒ぐ生徒が増えます。授業崩壊現象が高校へ持ち越されます。だから数学だけを学力に応じたクラス編成をしても焼け石に水、他の科目だって学力差は数学同様にありますから。
  こういう議論は教育行政ではタブーなのでしょうが、高校の授業内容を前提にすると、入試の得点が100点以下(300点満点)は不合格にしてよいと思います。勉強の努力を放棄したものにまで門戸を広げる必要はありません。勉強したい生徒たちの学習権を保障するためにもそうすべきです。
 教育関係者たちが問題を直視して、具体的な高校入学基準を示すことでも事態を改善できます。やれるところからやりませんか?

<学力向上はマネジメントの問題>
  学力を上げる工夫をしている先生が少なくないことは承知しています。ですが、学校によっては問題のある科目があります。
  科目別平均点は担当している先生の「勤務評定」ですよ。3年間担当して学力を上げられないといのはどこかに問題があります。数学・算数を例にとると小学校の先生の指導力にも問題がありますが、中学3年間でそれをすこしでもリカバーするのが中学校で教科担当をしている先生の役割。どうしたら自分の担当している生徒たちの学力があげられるのか考えましょうよ。教頭や校長と具体的な方法をよく話し合ってください。数字を見れば生徒たちの理解のほどは歴然としていますから、学校管理職(校長と教頭)はマネジメントの腕を振るうチャンスです。こんなに学力が上がりましたって、胸を張って学校通信に書いてください。
  スポーツでいい成績を上げた生徒は褒めますが、学力テストでいい点数を上げた生徒、飛躍的な伸びを示した生徒をほめません、ほめてあげましょうよ。学力テストの平均点を科目別に見ていくと、たまに他校よりも百点満点で20点も高い学校があります。そういう先生は教え方を工夫してますよ。お母さんたちも年に数度ある面談の時はそういう先生を褒めましょう。
  ところで各学年1-3位(科目別と五科目合計点)までの生徒の個人名を学校通信に掲載したらいかがですか?市教委も生徒の学力往生の努力し、成果を上げている学校管理職を表彰したらどうですか?根室管内を見渡すと根室市が一番駄目のようです。別海は中標津よりも学力が高い。
(管内の標津町と羅臼町の中学校のデータはないのでわかりません)
(団塊世代のころの光洋中学校では、1学年550人の成績上位百番まで職員室前の廊下に得点と名前のリストを貼り出していました。10クラスありましたから、どのクラスの平均点が最高かも競っていましたね。担任のY先生の喜ぶ顔が見たくて点数を上げました。)

  中学校は文化祭準備期間に入りました。「8日間×3時間=24時間」 が文化祭準備作業に割り当てられて授業がつぶれます。
  こんなに学力が低下してしまっているのに、いいのですかね。授業進捗状況も問題が出ています。学力テストの試験範囲に合わせたら、1月中に終わりません。特に数学は後半の章がずっと難易度が高い。同じペースでは消化できるはずがありません。すっ飛ばしをすれば生徒が理解できない、それも生徒を学力低下へと誘うことになります。 

<余談:弊ブログ: 先見の明>#3186より
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 ハーゲンダッツが日本に工場をつくるに当たって、原料牛乳確保のために全国各地の牛乳の品質検査をしました。各地の牛乳が品質に問題ありとされる中で、浜中の牛乳に一発でOKが出たのは、酪農技術センターの科学的分析に基づく肥料設計や、牧草分析によって配合飼料の調整をしてきたからです。牛の個体も科学的な調査分析の対象です。とことん科学的な調査分析を重ねています。このようにして浜中の牛乳は品質に科学的データのトレーサービリティが担保されていました。全国でもっとも先進的な酪農を支える仕組みが浜中町に育っていたのです。
 必要なものは必要になってから準備するのでは遅いのです。何もないときにこそ先を読み、具体的な手を打っておかなければ、それが必要になるタイミングに間に合いません、仕事とはそういうものですビジョンそれを実現する戦略、そしてなにがなんでもやり遂げてみせるという実行力の三つが揃わなければ仕事は成らないのです。
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*#3620 読んで理解する能力:学力テストデータから Sep. 26, 2017
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2017-09-23


<余談2: 2007年は200点以上が学年10名前後だった>
  学力テスト総合Aで200点超はB校が2人、C校が4人、2校で6人ですが、弊ブログ#1367に2007年のデータがあります、両校で20人です。学力上位層が1/3に減少しています。

*#1367 看護専門学校はむずかしいな Feb. 3, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-02-03


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*日本だけが「AI仕事革命」に乗り遅れる、致命的な欠点が見えた
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52902