<更新情報>
7/23 朝8時25分 <余談-1:地域医療とebisuの人材育成>へ追記
7/24 朝8時35分 <余談-2:「読み・書き・そろばん」>へ追記
7/26 朝8時30分 <余談-1>へ「日本的情緒がこころのセンター」を追記
7/27 朝8時10分 <余談-2>へ追記 「構造化数値シミュ
レーション」

  北海道新聞7月22日の根室地域版にお隣の中標津町の町立病院赤字問題が載っていた。
  中標津支局の古谷記者さん、地域医療の現実問題とそれに真正面から取り組む中標津町民を取材したいい記事だね。よい比較材料だから、根室支局の記者さんも市立根室病院の経営問題をとりあげてもらいたい。継続して両方の支局でとりあげ、シリーズ記事になれば中標津町民にも根室市民にも、そして両方の公立病院経営改善にも役に立ちそうだ。
  地域医療がどうなるかは町の未来にとって大きな問題である、関心を失ってはならない。

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  町立病院 利用実態把握へ
    中標津 町民アンケートを実施
      町議会特別委 運営委員と懇談

【中標津】町立中標津病院の財務改善や医療スタッフの安定的確保に向けた調査を行う、「病院の近未来を検討する特別委員会」(鈴木克弘委員長、7人)は21日、町役場で第4回の会合を開き、町の諮問に基づき病院経営に提言する町民らでつくる運営委員会のメンバーと懇談した。
 同病院の経営は厳しく、2016年度には町の一般会計から15億2856万円を繰り入れている。鈴木委員長は6月に西村譲町長や丁子清院長と懇談し、常勤医の不足や病床利用率の低迷など同病院が現在抱える課題を確認したと報告。運営委員会の実施状況などの聞き取りを行った。
 運営委員からは「チェック機関である議会が経営改善に向け、厳しい目を向けることが必要」「病院の悪口をいうだけでなく、問題意識を共有することが大切」との意見が出た。鈴木委員長は「解決には時間がかかる」運営委員会を後押ししながら、町民間に病院を応援するという機運を高めていきたい」と述べた。
 特別委員会では、同病院の利用実態や要望を把握するため、町民向けにアンケートを実施する。アンケート用紙は町内会や商工会、農協などを通じ、随時配布される。8月中に集約し、実態把握や改善策の検討に役立てる。(古谷育世)
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  市立根室病院は建て替え後、年間17億円前後の赤字が出続けているから、毎年一般会計から赤字相当額を繰り入れて補填している。9月に市議選が行われるが、18名の現市議の一人(共産党)が引退、新人一人が立候補の予定だという。このままだと全員無投票当選になる。根室の停滞を打ち破る意志と気力のある若い人が3名ほど立候補してくれたらありがたい。
  求職活動中の若者も市議立候補を考えてみたらいかが?


<余談-1:地域医療とebisuの人材育成>
  病院問題をとりあげることがめっきり減ったので、コメント欄で読者の一人から数か月前にお叱りをいただいた。もっともだと思うが、すこし弁解をしておきたい。
  ebisuはふるさとのためにいまできることをやろうと思っている。年間5億円程度の赤字縮小なら、必要な権限があれば可能だったかもしれない。10年で50億円だから長期的に考えれば少なくない。4種類の業種5社の経営改善を経験しているが、その都度やり方が違っていた。現場に入って見れば何をどうすれば経営改善ができるのか自然に具体策が見えくる。仕組みややり方を変えることで赤字会社を高収益会社にできたケースがほとんど。赤字会社は赤字になるような仕組みややり方で仕事をしている。ようするに経営のやり方がまずいのである。ダメな会社に共通するのは具体的なビジョンのないこと。そしてビジョンを実現できる複数の分野に専門知識をもつ仕事人がいないこと。結果を出すのに三年以上かかったことはないから、機会があれば協力しようかと思ったこともあったが、こういう仕事はもう体力的に無理、時間切れである。だから、病院経営問題への興味が薄れそして発言が減った。問題を指摘するときは、その解決の具体策も同時に考えることにしている。故郷に戻って15年目、齢を重ねることで守備範囲が狭くなった、みったくないから無理はしない。
  現在の仕事は塾稼業、地域医療に関しては看護専門学校や薬学部、医学部進学希望の生徒を育てることで故郷における自分の役割を果たすことができたら幸せと考えるようになった。
  安定した収入が得られるから看護専門学校志望の生徒は途切れることがない。看護専門学校へ奨学金制度(根室市条例)の充実(月額10万円×36か月)のお陰で、看護学校への進学を薦めやすくなった。根室高校から看護専門学校へ進学する生徒は毎年15名ほどに増え、そのうちの1-3割は戻ってくるだろうから、市立根室病院は正看護師の不足に悩むことがなくなった。
  運のよいことに、医学部進学希望の生徒を三年半前(2014年1月4日)から指導している。中3の現在も学力は順調に伸びており、最近の定期テストでは五科目合計点493点をとった。初体験だった四月の300点満点の学力テストは270点に少し足りなかったがこんなもので十分だ。難易度の低い北海道の学力テストでこれ以上点数を上げる必要を感じない。学年一番にこだわるなと言い続けてきたが、本人はどうしても気になる様子で、中学校の定期テストと学力テストはずっと学年1位を続けている。田舎の中学校で学年トップをとることにさしたる意味はなく、最難関大学医学部受験に焦点を絞って勉強させたいのだが、頑固な生徒でebisu先生は手こずっている。(笑)  わたしは首都圏での自分の経験と最適と思う教育戦略にもとづいて指導するが、指導を受ける側の生徒にも自分の考えや意地がある。そういうわけでぶつかるのは仕方がない。摩擦を起こしながらその都度折り合いをつけている。
  国立難関大医学部への進学には小4から勉強をスタートするのが標準的教育戦略である。そういうスケジュールから見るとこの生徒はスタートが2年遅れた。しかし、頑張って遅れを取り戻しつつある。
  現在、数学はセンターレベルの数1問題集をやっており、首都圏の中高一貫進学校とほぼ同じ進捗状況だろう。高校2年生で数Ⅲを終了するスケジュールだ。まだずいぶん先のことだが、高校最後の1年間は難関大学受験用の問題集や視野を広げるためにそれをすこし超える大学教養レベルのテクストで好奇心のままに学習したらいい。
  英語は高校受験用の問題集を夏休み中に終了する予定で、そのあと高校教科書3年分を9-12か月で消化する。並行して中級レベルの英文法問題集「Grammar In Use」をやらせるつもり。そのあとは、ジャパンタイムズの面白そうな記事を選んで一緒に読むことになる。量をこなさなければ読めるようにならない。
 日本語音読トレーニングは13冊目で、レベルを上げて福沢諭吉『福翁自伝』を使用している。それが終われば和辻哲郎『古寺巡礼』『風土』、哲学書である西田幾多郎『善の研究』を読むことになる。中学生全員が対象だったが、自分が中高生ならこういう授業をしてほしいというところに焦点を合わせてやる補習授業に2年前に切り替えた。ところで、この生徒の弱点は、文学作品や短歌や俳句を読んでも、言葉から情景が浮かんでこないことである。こころのセンターには情緒があるが、この生徒の心のセンターには日本的情緒が希薄に見える。どういうことかというと、「古池や カワズ飛び込む 水の音」「枯れ枝に 烏の止まりたるや 秋の暮」という句を読んでも、「それがどうしたの?」となる。こころのセンターに日本的情緒が希薄になっている生徒が増えているように感じる。こういうタイプは、文学作品や短歌、俳句を読んでもこころの琴線に触れるものがないので感動も好奇心も生じない、したがってこういう作品を読んで楽しむということがない。古典講読が弱点になるので、ほうっておいたらセンター試験の国語で90%超の得点は無理、なんらかの対策が必要となる。いまのところ打つ手が見つからぬ。読ませてもつまらないし、問題集を解かせても苦痛になるだけ。「子曰く、これを知る者はこれを好むものに如かず、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」(『論語』 子曰、知之者不如好之者、好之者不如樂之者)。国数英、三科目すべからくこのようにありたいものだ、さて、どうしたものか?
(日本人のこころのセンターに日本的情緒があることは藤原正彦『国家の品格』の「第四章 情緒と形の国、日本」「第六章 なぜ情緒と形が大切なのか」や大数学者である岡潔先生の著作を参照。数学研究の鍵も日本的情緒にあり、同感。)
  読書速度を2倍、読解力を2倍に引き上げることができれば、標準的な受験生の1/4の時間で半分くらいの科目が学習可能になる。だから音読トレーニングで学力全般が上がらないはずがない、当たり前のことをやっている。
 来年高1になって7月の進研模試で国・数・英の三科目でそれぞれ80%超が当面の目標だ。それをクリアできれば、3年次にはセンターレベルの難易度なら三科目とも90%を超えるだろう。
  最難関の大学医学部へ60%程度の合格率までもっていけたら、どこを受験するかは当人次第。根室の医療の三十年後は、優秀な生徒たちをいまどのように教育するかで大きな部分が決まるのではないか。
  20年後にどのような構想で地域医療の充実に挑むかも、授業の合間にwhat if question で伝授できたら面白い。この生徒が根室やその周辺の地域医療を変える大きな構想を温めていたら実現できるチャンスがいつの日か訪れる。地域医療の未来にいままでにはなかった選択肢を20年後に一つ残すためには…わたしが故郷でこの数年のうちにやっておくべきことが見えてきた。

  自分が納得のできる仕事をすること、誇りのもてる仕事をすること、生き甲斐をもって仕事に取り組むこと、仕事の手を抜かぬこと、それがプロではないか。そこへ日々近づけたら嬉しいが、理想と現実に大きな距離を感じながらの精進。最近は体力の衰えから脳のスタミナが短時間で切れ、限界を感じている。齢をかさねるとどこかで体力の範囲内で勝負せざるをえなくなる。

<余談-2: 「読み・書き・そろばん」>
  最近2か月間に学習意欲の高い中学生が3人入塾した、どれほど化けるか楽しみだ。6月に入塾した二人は期末テストで苦手だった数学で実績を上げ、数学に自信がついたようす。よかったね。
 先週入塾した生徒はスタミナがありそうだ。12月に入塾した珠算3段の中2の生徒と『語彙力こそが教養である』をテクストに隔週の音読トレーニング授業を受けている。これは1時間半ノンストップだからかなりきつい、気持的には気が抜けないから「格闘技」である。並行して毎週20分ほど『福翁自伝』の音読トレーニングにも参加している。
 基礎学力を上げるにはこのように迂回したほうがいい。「読み・書き・そろばん」の「読み」のスキルを上げるには音読トレーニングの効果が高い。音読スキルがアップすると国語と社会科の点数がはっきり上がる。読書スキルとこれらの間に何か因果関係があるのだろう。
  計算スキルは「読み・書き・そろばん」だから、文字通りそろばんが一番効果が高い。根室高校から東大現役合格を初めて果たしたY田さんは高校時代に商工会議所珠算能力検定1級に合格している。Y田さんのお父さんは根室支庁長から根室市長となった人である。
  ebisuも高校時代に日商珠算能力検定1級に合格しているから、計算は抜群に速いし、数字のセンスもよいほうだ。高校2年の時には半分の時間で合格点をとれた。小学生にはそろばんを習わせたらよい。日商珠算能力検定1級の問題を半分の時間でやれたらおそらく全珠連3段相当だろう。ebisuよりも5歳年下の女の子たちは数人全珠連5段がでている。根室の珠算は曙町の高橋珠算塾塾長が全道トップレベルに育て上げた。わたしはその塾で2番目の日商1級合格者であった。社会人になってから経営管理で暗算スキルがたいへん役に立った。What-if Questionで3ケタの概数で経営シミュレーションを暇ができると頭のなかで頻繁に繰り返していた。数字が関連をもって頭のなかに配置され、どこかの数字が動けば関連する数字を書き換えていく、暗算だからいつでもどこでもできる。あるていどまとまると、紙やホワイトボードに書きだしてKJ法方式で相互の関連を確認した。頭のなかをホワイトボードに書きだし、対象化することであらためて気がつくこともある。ここまでやっておけば、具体的な実行プランを PERT chart に展開できる。システム化に伴う実務設計もそれによって浮く人員の使い方も、新規事業に必要な投資や人員の手配もこうして日常的に頭のなかで繰り返される構造化数値シミュレーションに支えられていた。
こうした数値の構造化は事業部単位や部門単位の予算編成管理を20代のころから責任者として経験させてもらったことやKJ法や PERT chart に習熟したために起きた干渉現象だったのかもしれない。ある程度の規模の会社の予算編成は「全社⇒事業部門⇒部門⇒課・営業所」などの組織構造を反映して構造化されているので、予算編成、予算管理、月次経営分析、四半期経営分析、半期経営分析、年次経営分析、5年間年次経営分析、長期計画などの実務を担当することで、自然にそうした思考パターンができあがっていったように思える。産業用・軍事用エレクトロニクス輸入商社のセキテクノトロンでさまざまな管理手法を開発した。25ゲージ、5つのディメンションで構成された経営分析レーダ・チャートは1979年にHP97とHP67を利用して開発した。25項目の経営分析指標をベースに総合偏差値を計算して経営評価のできるシステムである。この経営分析システムはSRLでは1991年に子会社経営管理に役に立った。79年に開発したシステムをEXCELに乗せ換えたのである。これでレーダ・チャートを手描きする必要がなくなった。各社の経営総合評価が総合偏差値で可能であり、それを5つのディメンションと25項目に分解できるから、目標管理にも使えた。SRLは1984年に中途入社早々から上場準備の統合システム開発と全社予算編成・管理を任せてくれた。仕事があってこそスキルや能力が伸びる。異質な仕事を同時にやるのが能力開発に効果的だったように思える。
  こうした仕事のスタートは根室高校の部活予算編成と部長や副部長を呼んでやった予算折衝だった。当時の生徒会会計は予算編成と帳簿の記帳、決算実務を一人で担当していた。2年生の秋に次年度の予算編成作業がはじまる。交渉相手は1年先輩の各部の部長と副部長、よいトレーニングになった。その延長上に数十億円規模や数百億円規模の企業の予算編成・管理実務があった。規模が違ってもわたしには同じに見えたから、仕事を任されるたびに古巣へ戻ってきた気がした。産業用エレクトロニクス輸入商社統合システム開発と並行して予算編成管理・経営分析をしていた期間が5年、SRLでは最初の2年間やはり上場準備の統合システム開発と並行して任された仕事である。20代、30代はいくらでも仕事ができる。やり方を変えればルーチンワークの仕事量は業務によっては1/100、全体で見ても1/3以下にできるものというのがわたしの実感である。だから、仕事で「忙しい」と言ったことはたぶんない。のめりこむので楽しい。のめりこめずにブツブツ不満をつぶやいたり言い訳に終始する人が気の毒だった。
  年商1000億円の会社なら億円単位でのコントロールでしっかりした経営管理ができる。事業部別や部門別予算管理も3ケタの精度で必要にして十分である。年商100億円なら1千万円単位でOK、年商10億円なら百万単位のシミュレーションで経営管理ができる。上場会社の経営管理はおおむねそれくらいの精度でなされている。


     70%       20%      
 



<最近音読トレーニングで読んだ本3冊>




国家の品格 (新潮新書)



  • 作者: 藤原 正彦

  • 出版社/メーカー: 新潮社

  • 発売日: 2005/11/20

  • メディア: 新書








日本人は何を考えてきたのか――日本の思想1300年を読みなおす



  • 作者: 齋藤 孝

  • 出版社/メーカー: 祥伝社

  • 発売日: 2016/03/01

  • メディア: 単行本








語彙力こそが教養である (角川新書)



  • 作者: 齋藤 孝

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店

  • 発売日: 2015/12/10

  • メディア: 新書





  音読授業ではとりあげなかったが、『国家の品格』を読み終わった後に、『世にも美しい数学入門』をあげた。好奇心をくすぐる良書であるから、数学が好きな生徒諸君にぜひ読んでもらいたい。




世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書)



  • 作者: 藤原 正彦

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房

  • 発売日: 2005/04/06

  • メディア: 新書





  大数学者岡潔先生の『春宵十話』は中学生にはちとむつかしいが、数学好きな生徒におススメします。




春宵十話 (角川ソフィア文庫)



  • 作者: 岡 潔

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版

  • 発売日: 2014/05/24

  • メディア: 文庫








<これから音読トレーニングで読む予定の本>
  気が変わるかもしれません。
  最初の本だけ、音読トレーニング現在進行中。





新訂 福翁自伝 (岩波文庫)



  • 作者: 福沢 諭吉

  • 出版社/メーカー: 岩波書店

  • 発売日: 1978/10

  • メディア: 文庫








古寺巡礼 (岩波文庫)



  • 作者: 和辻 哲郎

  • 出版社/メーカー: 岩波書店

  • 発売日: 1979/03/16

  • メディア: 文庫





この辺り(『風土』)から、たぶん普通のレベルの理系大学生の手に負えなくなります。ハイレベルな読解能力を必要とします。





風土―人間学的考察 (岩波文庫)



  • 作者: 和辻 哲郎

  • 出版社/メーカー: 岩波書店

  • 発売日: 1979/05/16

  • メディア: 文庫





  これは哲学書ですから、西洋哲学の周辺知識が必要です。思考力や読解力を研ぎ澄ますトレーニング材料と思えばいい。





善の研究 (1979年) (岩波文庫)



  • 作者: 西田 幾多郎

  • 出版社/メーカー: 岩波書店

  • 発売日: 1979/10

  • メディア: 文庫