暇だったので、昭和57年に出版された安井稔『英文法総覧』に30年ぶりに眼を通した。もともと英語の先生用にかかれたものだから学校文法の範囲を出るところが散見されるが、難しくはない。変形性生成文法に基づいた解説はすこしあるが、学習上の参考程度にとどめてある。江川泰一郎の『英文法解説』と読み比べたらそのよさがよくわかって楽しい。英文解釈や英作文の観点から眺めたら、なかなかすばらしい英文法書であるから、高校生や大学生に読んでもらいたい。ナマの英文の精読に生成変形英文法は有力な武器となりうるから、英字新聞やさまざまな専門書を読む必要のある人に向いている。
生成変形英文法そのものを演習形式でトレーニングしたい人は、別途専門書があるからそちらでやるといい。少し古いが1冊だけ挙げておく。
大学院入試には精読のスキルが必要になるので、生成変形文法を知っておいたほうがよい。amazonで「変形生成英文法」をキーにして検索すると何冊も出てくるから、自分の好みに合うものを選べばよい。
4月3日に羽田から根室へ戻った。羽田空港で機内へは持ち込まない小荷物はカウンターでレントゲン検査をして手渡しになっていたが、これがずらりと十数台も自動小荷物受付機が並んでいて人がいない。
あの人たちはどこに行ったのだろう。配置転換や退職勧奨が行われたのだろうか?小荷物受付カウンター業務が自動受付機導入によってなくなったのである。
このようにシステムが機械と結びつくことで、人間がしていたさまざまな仕事がなくなっていく。ディープラーニング(深層学習)でつくられた人工知能が、囲碁の世界で人間をしのいでしまった。さまざまな領域で集積されつつあるビッグデータや図書館(書籍)データを利用してディープラーニングさせると、人間が持つさまざまな悪徳も人工知能が学習し身に付けてしまう。実験中の人工知能がナチスの人種差別発言同様のネット上に書き込みをしたことで、実験が中止になった。リスクは実験段階で現実になっている。
暇だからもう一冊、『ロボットの脅威 人の仕事がなくなる日』という本を半分ほど読んだ。過去30年間は2年ごとにコンピュータの性能が2倍(ムーアの法則)になっているが、この指数関数的な性能向上は、近未来に人類に重大な脅威となることが書かれている。
3年ごとに2倍になっても90年後には現在のパソコンの10億倍の性能を持つコンピュータ(人工知能)が出現する。旧式の「知能」である人類は存在理由を失うだろう。
羽田空港の小荷物自動受付カウンターを見てドキッとしたのはおそらくわたしだけではない。二次元バーコードの印刷された紙「eチケットお客様控え」を機械にかざし、小荷物を所定の台の上におくと、印刷された小荷物タグが出てくる。それを自分の小荷物にまきつけると、受付機のカバーが閉じられ1/4回転して運ばれていく。控えのタグが機械からプリントアウトされ、それを受け取って終了である。
人工知能はプログラミングすら不要になってきている。ディープラーニングで勝手に学習するのである。これにビッグデータが結びつき、全世界の図書館の書籍がインターネットで結びつけば、人工知能は人間から高度な知的な仕事を奪うだけではない、人間のコントロールを離れた存在になって、独自に思考し、判断し、何事かを実行する存在となる。唯一絶対神のような存在になるのである。
人類は便利さもさまざまな欲望も棄てられないから、百年しないうちに仕事を失って縮小再生産に追い込まれる。先進国で人口が減少しつつあるのはそういう未来への予感が作用しているのかも知れぬ。
昨年1月に「資本論と21世紀の経済学」で人工知能の脅威に言及したが、同じ趣旨の本が、昨年から今年にかけて、何冊も出版されている。
いくつか手にして、自分の行く末と子どもたちや孫たちの未来を想像し、いま何をすべきかお考え戴きたい。人類は滅亡の瀬戸際にいるのである。
*3年ごとにコンピュータの性能が2倍になると仮定すると、百年後には「2^33=85億8999万」倍の人工知能が出現することになります。指数関数は高校数学Ⅱの学習事項ですがその意味するところを現実の世界に移して理解するのはなかなかむずかしい。
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#2784 百年後のコンピュータの性能と人類への脅威 Aug. 22, 2014 ">
#3215 ライフワークに手をつけた2015年を振り返る:『資本論』を超えて Dec. 31, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-12-31
#3097 資本論と21世紀の経済学(改訂第2版) <目次> Aug. 2, 2015
3097-1 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-02-2
Ⅰ. 学の体系としての経済学 …6
1. <デカルト/科学の方法四つの規則とユークリッド『原論』> …6
2.<体系構成法の視点から見たユークリッド『原論』> …8
3.<マルクスが『資本論』で何をやりつつあったかを読み解く> …10
4.<資本論体系構成の特異性とプルードン「系列の弁証法」> …11
5. <労働観と仕事観:過去⇒現在⇒未来> …13
3097-7 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-04-1
24. <文部科学大臣下村博文「教育再生案」について> …67
25.<人工知能の開発が人類滅亡をもたらす:ホーキング博士> …69
赤い文字の章をお読みください、データを挙げて人工知能の未来に言及しています。
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わたしが読んだのはこちらの旧版のほうですが、改訂版が出ているので、そちらも紹介します。
- 作者: 安井 稔
- 出版社/メーカー: 開拓社
- 発売日: 1996/11
Transformational Syntax (Cambridge Textbooks in Linguistics)
- 作者: Andrew Radford
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 1981/11/12
- メディア: ペーパーバック
メディア: 単行本
- 作者: マーティン・フォード
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2015/10/22
- メディア: 単行本