羽田に着いて、高速バスに乗り、数年前に開通した山手トンネル経由で新宿へ出る。中央高速への接続が悪いので、渋滞しているときは高井戸インターまで一般道を走ることになる。バスはそこから中央高速で国立(くにたち)・府中インターまで甲州街道沿いに走る。
 高速を降りるともう感覚が13年前に東京にいたときに戻ってしまっている。聖蹟桜ヶ丘駅前で高速バスを降りて買い物をして、高幡不動駅行きのバスに乗ったころは、ずっと東京にいたような気分になっている。根室で13年が過ぎたことがなんだか夢幻に思えてくるから感覚というのは曖昧でいい加減なもののようだ。いまいる場所が現実で、そこを中心に物事を感じ始めているのである。
 根室へ戻ってくると、東京で暮らしていたことや2週間そこにいて毎日家から半径4kmの範囲を散歩したことが夢のように思える。

 東京では、朝起きて軽いストレッチをしてから、高幡不動駅のキオスクまでジャパンタイムズ紙を買いに行く。中央大学生や帝京大学生、明星大学生がモノレールに乗り換えるので、京王線のホームからモノレールの駅までたくさん歩いてくる。
 家から高幡不動駅までは2500歩ほどの距離だから片道2km弱の散歩コースである。途中の竹林にはさまざまな小鳥がさえずっている。東京はあんがい野鳥の種類や数が多いことに気がつく。根室の自宅の庭に来る鳥の種類のほうがずっとすくない。

 高幡不動尊の境内は桜が8分咲きだった。境内にはアジサイがそこここに植えられているから、これが一斉に咲くときは見事なものである。護摩行をやっているので覗いてみたらいい。よく火が燃え移らないと思う、それぐらい激しい炎が上がる。目の前の祭壇で木をくべるのだから、行者は汗だくでたいへんだ。

 明日からまた生徒たちの顔を見て、ふるさと根室に感覚が戻る。先ほどNHKのニュースで、釧路と根室の天気予報が流れて、「おや、(東京でも)釧路だけでなく根室の天気予報もはいるのか」と思ったとたんに、ここは根室だと気がついた次第。
 ボケはこうして始まるのかもしれない、あぶないあぶない。(笑)


      70%       20%