9月6日の北海道新聞根室地域版に両候補の公約が載っている。

 医療問題では市立病院への赤字補填の一般会計繰入金は17億円、そして赤字額はおそらく20億円に達したのに、長谷川氏はこの重大問題に触れていない。前市長時代は年間8億円前後の赤字だった。赤字額は2年半ごとに新しい病院が一つ建てられるほどの規模に膨らんでしまった。8年間経営改善はまったくできず、赤字額は年々膨らんでいる。
 鴨志田氏は「民間の手法による経営の推進」と書いてあるが、それが市役所職員にできるならとっくにやっているだろう。経営改善を民間業者に委託して何年か経つが、どういうわけか年間赤字額は膨らむ一方だ。文学部卒である程度の規模の組織で責任ある地位で仕事をした経験のないことが弱点なのだから、それを補う工夫がほしい。「私立大学病院との連携」については道内の私立大学病院はないから、母校の慶応大学病院との連携をいっているのだろうか?選挙戦にはいったら具体的な説明がほしい。たんなる思いつきでなければいいのだが・・・。この問題はそんなに簡単なものではない。

 経済政策も両者共に基本に関するものが欠落している。進学で根室を離れた地元の若者達が戻って来たくなるような(社員とその家族を大切にする)企業群を育てなければならないのだが、両候補ともそうした基本問題に言及していない。地域経済の停滞や人口減少に対する分析の裏付けのない地域経済政策はたんなるお題目である。数十年間、地元企業経営の基礎・基本の問題に手をつけることがなかったから、根室の経済的な衰退はいまも止まらぬ。2040年には根室の人口は現在より1万人減少して1万8千人となり、オープン経営へ自己改革できぬ根室の地元企業の半数は消えてなくなっているだろう。地元企業の改革を迫る政策提言がほしい。

 北方領土問題は相変わらずの独りよがりな「根室振興ビジョン」、この手のものを何度根室市はつくったのだろう。根室市にできること、そして管内四町との協調を考えるときに来ている。
 鴨志田氏の「国際産業特区」はそれで何を誘致しようというのか具体的なイメージが見えぬ。
 両候補とも北方領土返還を実現するために、根室市では何ができるのかということへの言及がない。根室市や市議会、北方領土返還諸団体や地元経済団体がやれることはある。

 根室市の未来に一番大事な教育問題は両者ともに具体策がないことは#2793「争点整理③教育問題」にあるように道新が取材してくれている。道新の記事には教育問題に対するお二人の意見が載っていなかった。具体案がなかったからだろう。

 その他の公約で鴨志田氏が述べている開発費40億円の「明治公園再開発再考」だけは買える、これだけは具体的だ。明治公園の再開発は必要がない。前に弊ブログでこの問題を取り上げた。再考したけどそのままなどということのないように願いたい。はっきり、中止と公約すればいいと思うのはebisuだけだろうか。子供の数が12年前に比べて6割になっている。総人口の減少率よりも子供の減少率の方が大きい。公園の自然環境を壊す施設は不要だと反対している市民は少なくない。野外アスレチック施設は使われなくなり錆びついて数年前に撤去したばかりだ。

 残念だが地域医療・経済政策・教育政策・領土問題に関しては、具体的な政策というよりは両陣営共にスローガン・レベルの項目が羅列されているだけにebisuには見えた。こんなことで市政運営というシビアな実務ができるのだろうか?過去8年は基本的な問題を先送りして、ただ惨憺たる結果が累々と積み重ねられたようにみえる。

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 医療、経済、領土・・・論戦へ

 【根室】任期満了に伴う根室市長選が7日、告示される。3選を目指す現職の長谷川俊輔氏(69)と、新人で元東京都目黒区議の鴨志田リエ氏(55)が立候補を予定し、両氏の一騎打ちとなる見通しだ。両氏はいずれも医療や経済政策、北方領土問題を重点政策に掲げている。両氏の公約を比較してみた。


 あす告示 2氏一騎打ちに

■医療
 市立根室病院が2006年9月、分娩の受け入れを休止して以降、市内での出産は難しいまま。長谷川氏は分娩の早期再開をはじめ、出産のために市外医療機関に入院する費用の助成を充実するとしている。
 鴨志田氏は同病院の医師不足を解消するため、私立大学病院との連携や、民間の手法による経営の推進を強調している。

■経済政策
 長谷川氏は、漁場再生による漁業者の所得向上、沿岸漁業の振興、農林水産業の後継者問題など、根室の食糧基地としての役割を強調。また、ベトナムをはじめとするアジア圏との経済交流やブランド化の推進なども訴える。
 鴨志田氏は沿岸漁業振興策として、燃料湯援助や後継者対策を実施する考え。また、とれたての物産を首都圏などに運ぶ物流改革や、根室ブランドの確立に力を入れ、民間企業で働いた経験などを活かし、全国にセールスするとしている。

■領土問題
 長谷川氏は、北方領土の返還を視野に入れた「根室振興ビジョン」の策定、その推進のために組織機能の強化を掲げる。また、領土問題を起因とする経済負担を軽減するため、財源対策を充実するという。
 鴨志田氏は、「国際産業特区」構想を通し、特色ある根室にすることをアッピール。北方領土問題を全国に訴え、外国人就労ビザや技能実習生の在留資格の取得緩和、、国際交流研究所を創設するなどとしている。

―その他の公約―
<長谷川氏>
●子育て・移住定住促進のための団地造成と分譲推進
●子供たちの習熟度を高めるための小中学校支援教員の配置継続
●交流拠点公園・歴史博物館・体育館などの整備による敢行、教育文化の振興
●高齢者の社会的孤立の防止と地域コミュニティの維持

<鴨志田氏>
●産業新興住宅の新設、または空き家を活用した移住・定住策
●教職員や子供たちを支援する「学習サポートセンター」の創設と教育アドバイザーによる巡回訪問の実施
●明治公園再開発計画の再考、または廃校になった学校施設と隣接地を親子が遊べる公園に造りかえ
●若手の企画・運営による地域や職種を越えた交流イベント
 

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<どっとどどう、どどうどどう>
 根室の経済停滞や低学力は根室の閉鎖性や排他性と大いに関連があるとebisuは考えている。小さな集団で閉鎖性や排他性の強い例はいろんなところに見られる。
 たとえば、前回#2798でとりあげた市職員の採用、過去三年間の根室高校作成の進路データとつき合わせてみてその排他性に唖然とした。データが語るところに拠れば。一般公募とは名ばかり、一般事務職と消防はほとんどが根室高校新卒で占められているようなのだ。根室高校卒を含めて優秀な大卒が何人も応募しているはずなのに、どうしてなのだろう。噂はほんとうのようにみえる。
 病院建て替えでは「建て替え整備市民委員会」があったが、市民委員会とは名ばかりの市長の諮問機関で一般市民の参加を排除していた。建て替えを落札した市と取引関係の強い業者は2番札だったが、冬に除雪協力協力しているからという理由で市の幹部会が審査し落札となった。明治公園再開発に関する市民委員会も姿勢の利害関係者である金融機関元理事長が委員長で一般市民を排除し、40億円もの再開発計画を異例のスピードで決定してしまった。借金はその金融機関からなされるのだろう。マチの再興に関する市民委員会も同様に市長の諮問委員会方式で、市の取引業者が委員長をやっている、これも一般市民の参加を拒否する(=市政翼賛)装置として機能している。
 閉鎖的な方が都合がいいと思う住民もいるだろう。そういう小さなグループが市政を牛耳ってきた、結果がよければそれもよい。しかし、結果は40年以上に渡って根室の町は衰退し続けている。
 根室で生まれ育った若者が戻って来たい魅力的な企業が少ないから、人口減少は止まらない。
 こんなことをいつまでも続けていて、根室の町が発展するのだろうか?

 両候補とも言わないが、わたしは日曜日ごとに市の文化会館で必要な作業部会を立ち上げて、市民自由参加でオープンな議論を重ねたらよいと思う。どちらかの候補者がそういうことを実現してくれると約束するならその人に一票を投じたい。

 地域医療・地域経済・教育と低学力問題・北方領土の各問題ごとに根室の旧弊をぶっこわすような具体的な政策を並べたら、浮動票がどっと流れて簡単に勝負がついただろう。
 多くの市民がオープンな市政運営を望んでいる
。しかし、公約として公表されている政策が両候補で大同小異、具体的な政策実現手段が明らかにされないようでは、投票箱のフタがあくまで勝負の行方がわからなくなった。

 明日告示で、選挙戦は本番へ突入する。ブログやフェイスブック、そして宣伝カーから具体的な政策が聞けることを期待したい。
 オール根室なんて看板を掲げ、その実、市政と密な関係を保ち自分達小集団の利害を優先して行動する者たちに一般市民はうんざりしているのではないだろうか。政策次第で動く1万人の浮動層はどちらに投票したらよいのか迷っている、覚悟を決めてさっさと旗色をハッキリしろ。


*#2790 誤報あり:「争点整理 根室市長選①医療」 2014 Aug. 27, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-27

 #2792 根室市長選争点整理② 水産 Aug. 28, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-28-1

 #2793 争点整理③ 教育問題 Aug. 30, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-30

 #2794 争点整理④: 北方領土問題 Aug. 31, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-31





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