今日(6/3)は暑かった、といっても根室の最高気温は23度、夜の気温は14度で冷たい風が吹いている。道内はたいへん暑かったようで、帯広市の隣の音更町の最高気温が37.8度を記録したとテレビが報じていた。全国最高気温トップ・テンを北海道が独占した。猛暑日を記録したのは道内160の内17の観測地点、まだ六月が始まったばかりだよ、いったいどうなっているの?

【2017年統合後の定員数は40減】
 3日の道新夕刊1面に大きな字で「根室と根室西 統合」の見出しが載っていた。
 現在根室高校の定員は、普通科120人、商業科40人、事務情報科40人の合計200人、根室西高校は普通科80人で両校あわせて280人であるが、2017年度から普通科4学級、商業科2学級、合計240人になるのだそうだ。

【五科目300点満点で90点以下は足切りすべき】
  子どもたちを甘やかしすぎてはいけない、30%の得点すらとれないで高校の標準課程の授業を理解できるはずがない。中学校の課程の復習のような授業を1年間やることになるからムダである。中卒程度の基礎学力をつけることは日本国民としての義務である。フィンランドがそうしているように1年間勉強して中学卒業に見合った学力をつけてから高校を受験しなおせばいい。そして頑張りを見せた生徒も褒めてやる社会であってほしい。
 毎年他地域への高校進学で20人ほど根室から出て行くから、定員割れが常態になることが予測される。定員割れならさらなる学力低下は必至だ。
 全員入学できるような規模の定員を維持するのなら、入試の得点90点以下は道立高校入学を認めないというようなルールをつくるべきだ。勉強をやる気のない生徒にまで定員枠を確保する必要はないという考えがあってもよい。
 根拠は何か?百点満点換算で、平均点が30点に満たない者のほとんどが標準レベルの高校授業内容を理解できないからである。本当のことは教育関係者も教育行政もなかなか言わないから、あえて言っておく。
 小学校の先生たちは小学校卒業程度の基礎学力を生徒に保障すべきだし、中学校の先生は中学校卒業程度の基礎学力保障をすべきだ。そういう義務を負っていることを自覚したら、杜撰な授業進捗管理は消えてなくなる。放課後補習も保護者からも生徒からもニーズが出てくるから、やらざるをえなくなるだろう。ブカツも自ずと本来あるべき姿の「文武両道」へ切り換えられていく。

(実データで説明した方が説得力があるだろう。B中学校の2013年11月実施の学力テスト総合Cのデータをみると、300点満点で90点以下が35人/75人(46.7%)いる。2012年のA中学校学力テスト総合Bでは300点満点で90点以下は29人/88人(33.0%)である。学力低下の原因はいくつもあるだろうが、定員割れで競争がないことも大きく影響している。90点で足切りをすれば、もっと勉強に真剣に向き合うようになるだろう。高校入試問題の難易度が過去2年間急激に低下したので、それを前提にすると110~120点での足切が妥当だろう。)

【基礎学力に問題あり】
―普通科の標準レベルの授業についていけるのは四人に一人―
 前から何度も書いているのだが、普通科の標準的な授業についていけるのは、根室市内の高校生1学年230~250人の内のおおよそ約60人のみ。
 4クラスにしたときに起きる問題は国語(現代国語と古文)、数学、英語、理科系科目の教科書である。
 たとえば、中3で小4年程度の語彙力の生徒が30~50人いる。これが普通科と商業科にばらけて存在することになる。先生が授業で話す日本語を頭の中で適切な漢字に置き換えられないから、意味をつかめない。
 統合後で標準的なレベルの教科書を使用するとしたら、ついていける生徒は普通科4クラス・定員160人のうち約60人のみ。数学も小数や分数の四則計算の怪しい生徒が同じ割合でいる。習熟度別に分けても教えきれない。使う教科書を変えなければならないほど学力に開きがある
 これらは高校だけでも学校や教育関係者だけでも解決できない問題である。小学校の先生たち、中学校の先生たち、そして高校の先生たちが集まって対策を協議すべきだ。各段階の授業や補習のやり方に問題がある。もちろん地域にいるわたしのような教育専門家をオブザーバに呼べばいい。

【閉鎖的な議論ですむ問題ではない】
 高校問題検討会のメンバーがどういう方なのか知らないが、こうした学力差が引き起こす深刻な問題が議論された形跡がないようにみえる。小学校や中学校の校長先生もメンバーに入っていたはずだが、根室高校の教科書と根室西高校の主要科目の教科書にすら眼を通さなかったのだろうか?「教育村」で議論する限りこうしたお粗末な仕事がいつまでも繰り返されるから、オープンな場で議論すべきだ。

【ピント外れの道教委のコメント】
 新聞には道教委のコメントとして「幅広い科目を開設できる単位制とすることで生徒の多様な進路に対応したい」と書いてある。そんなことで対応できるわけがない、これは現場の学力差を知らない者の戯言だ。
 統合によって学力差の大きい生徒が「普通科」にまとめられてしまうのは根室だけではないだろう。

【ニーズの高い普通科は成績で2グループに分けて、教科書を別にすべき】
 普通科のニーズが高いのは事実である。大学入試を考えるときに商業科では、国語や英語や数学の時間数や授業内容に大きな差があり、圧倒的に不利になるからだ。だから、普通科に入学する生徒は五科目300点満点で20点~260点までの生徒が混在することになるのである、同じ教科書で教えられるわけがない。
 高校へ入学してからではほとんど打つ手がないから、小学校や中学校での基礎学力向上が鍵だ。全国学力テストの結果を見る限りでは、中学校(偏差値44)よりも小学校(偏差値37)の先生たちの授業力や補習体制により大きな問題がありそうだ。適切な対処をすれば三年間で成果は出てくる。

 2017年度から根室高校は一体どういう教科書を採用し、どのようなレベルの授業を提供するのだろう?何の準備もないようにみえる。
 市立病院建て替えで、実務設計をしないで建築仕様を決め、3億円のシステム投資が無駄になったのと同じ愚を冒そうとしている。お金の問題ではないよ、根室の子どもたちの学力と根室の町の未来にかかわる問題だ。さらなる衰退を招くようなことを、根室の教育関係者たちがやってしまった。関係者にそうした自覚はないのだろう。

【道教委は根室高校1減を提案していた】
 10年間ほど時間を稼ぐチャンスはあったのだよ。
 2010年2月26日の北海道新聞には、「根室高の1減可能」という見出しが載っている。道教委が根室高校職業科の1減でもいいと言っている、二校並立でもいいと言っているのに、なぜか1校に統合ということになった。検討をした委員会からも市教委からも教育長からも、理由の説明が一切ない。高校の体制は地域経済にも大きな影響があるのだから、根室の教育行政は日曜日に「市民との対話集会」を開き、市民にきちんと説明して対話すべきだった。

【優秀な生徒たちがつぶれる:ジレンマ】
 標準的な教科書を使えばテスト問題は基本問題のみ、大学進学希望者はたいへん困ることになる。追試には同じ問題を使い、遮二無二「形式卒業」させる。だからといって、低学力層に照準を合わせてやさしい教科書を使うと、大学入試にまったく対応できない低レベルの授業になることは想像に難くない。これも大学進学希望者には困ったことになる。準備のないまま統合をすれば結果がどうなるかは明らかではないのか?

【対策】
 学力の実態からいうと、入試成績で普通科Aと普通科Bの二つに分けて、使う教科書を別々にするのがいいのではないだろうか。そんなことを道教委が認めるかどうかわからないが、交渉してみたらいい。
 何も対策がないまま移行したら、授業レベルの低下が起きて偏差値50以上の大学への進学者が激減するだろう。学力は人生を渡っていくための強力な武器の一つであるが、根室の子どもたちはそういう武器を身につける機会をいままでよりいっそう阻害されてしまう。


―余談―
 根室市内の私塾で高校生を教えているのはいま3つ、そのうちの一つは来年3月での閉塾を宣言している。
 市内の中学生徒数合計は12年前に比べると60%、約700人になっている。C中学校のアンケート調査では通塾率は30/157人(19.1%)。
 中学生を対象に含む私塾の数はI、W、C、T、Sとニムオロ塾の6つ、公文が4教室、英語塾がK、K、T、WB、これらが市街化地域にある塾だ。他に歯舞地区に一つあると聞いている。わたしの知る限りで全部で15。市街化地域と郡部の人数比は概ね3:1、C中学校の通塾率から推計すると塾へ通う中学生は100~120人くらいだろう。
 120人÷15=8人
 掛け持ちで二つの塾に通っている生徒もいるから、多く見積もっても平均10人?これでは若い人が新規参入できない。

 大手進学塾が進出してくるのは市場が小さすぎて無理だから、私塾の数が減るとともに学力の地域格差はますます大きくなるだろう。インターネットで配信される塾を利用するか、地元高校を見捨てて、他地域の進学校を目指す生徒が増えるのだろうか?これも無理がある。学力が高くないとインターネット配信の教材を理解できないし、進学校でつぶれてしまう生徒も少なくないように聞いている。
 才能や家庭環境や経済面で恵まれた一握りの生徒だけが偏差値50以上の大学進学を果たすような状況が生まれつつある。根室に残る生徒たちの半数は中学校の学力テストで90点未満(五科目300点満点)というのが5年後の現実になりかねない。

*#749 フィールズ賞受賞数学者小平邦彦と藤原正彦の教育論  Oct. 4, 2009 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-10-04



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