都道府県立高校でこれほど難易度レベルの低い入試問題は他にないだろう。
 昨年から急に道立高校入試問題(数学と英語)の難易度が下がった、一年だけかと思ったら、3月5日に行われたH26年度道立高校入試問題も似たようなレベルなので、北海道教育委員会学校教育局高校教育課は道立高校入試の難易度を全国最低にすることに方針を決めたのか?

 数学の問題をみると、複合問題は「大問4-問3」の1題のみ、こんな入試問題中学入試でもみたことがない。作図も基本技の2番目、「線分の垂直二等分線」を描くだけでいい。通常は二つの技を組み合わせてやるようになっている。図形の問題も、円柱の表面積(大問2-問3)と二等辺三角形と三角形の外角の定理を組み合わせるだけ(大問-問1と問2)という単純なものだ。1次方程式と2次方程式の単純な計算問題がそれぞれ1題出題されている。こんな出題の仕方は以前にはなかった。

 H19年度の入試問題をみると、複合問題は「大問1-問5と問7」(問5は一次関数と面積、問7は図形と三平方の定理)、「大問2ー問2」(二次方程式と三重円の外側の輪の面積)、「大問3-問3」(二次関数と図形の角度)、「大問-5の問1と問2と問3」(問1は作図と等積変形、問2は図形(直角二等辺三角形)と三平方の定理、問3は空間図形の体積問題)、最後の空間図形は計算力が要求される。合計8個の複合問題があった。

 7年前の問題では複合問題が8題あったが、今年度は1題のみ

 つぎに、英語を見よう。長文問題が1題しかない。H19年度の問題をみると、長文問題は3題出題されているから、英文を読むスピードが要求されていた。それでも東京都立高校の問題に比べると「長文」の長さは三分の二くらいだった。
 長文問題を3題から1題へ削ったことで何が起きたのか?昨年度の例だが、学力テスト総合ABCで一度も40点を越えたことのない生徒が入試本番で60点満点をたたき出した。英語が苦手で大きらいで普通科受験を逃げた生徒が47点をたたき出した。生徒が入試直前の2ヶ月間で学力を飛躍的に上げたのは事実だがそれだけでは説明がつかない、問題が簡単すぎたからである。どちらもA中学校の生徒だった。生徒の潜在可能性が顕現する様もすごい。わたしの前に陣取って英作文中心に学習して英文の構造をつかんでしまい、わずか2ヵ月で60点満点のテストで英語を三十数点あげた生徒は初めてだった。数学はもっとすごい例がある、2ヵ月で88点上げた生徒がいる。2ヵ月で70点以上なら11年間で何人もいる。可能性を信じる、ひたすら信じる、必ずよくなると祈りつつ教えるだけ。どこかで共鳴現象が起きることがある、そういう時は手応えをはっきり感じるものだ。

 ブログ「情熱空間」のZAPPERさんも難易度低下をとりあげているからそちらも読んでほしい。
*「いくらなんでもレベルを下げすぎだ!」
http://blog.livedoor.jp/jounetsu_kuukan/archives/7132141.html

 道立高校入試難易度の低下は文協学力テストの難易度低下となってあわられるだろう。学校の授業も入試問題に焦点を当ててなされる。授業の進捗管理が悪いうえに、これでは、1月末までに教科書全部を終了して、複合問題をやる学校などなくなるだろう。
 A中学校は主要五科目の教科書全部を終了し、2月には総復習と複合問題をはじめてやっていたが、こんなに入試がレベルダウンするなら、入試対策で複合問題をとりあげる意味がなくなる。学校管理職と主要五科目の先生たちがチャレンジした授業進捗管理の徹底というせっかくの努力に水をさすことになりかねない。標準授業スケジュールで授業をすると、低学力層の生徒たちは落ちこぼれるが、それを防止するには低学力層の生徒たちを集めて放課後補習しかない。授業の進捗管理がスムーズに行ったということは、もう片方で低学力層の生徒たちに放課後補習を徹底したということだ。この取組は生徒たちの学力向上になって現れるだろう。こうした現場の努力に水をさしてはならないのである。市街化地域の他の2校も見習ってもらいたい。その上で家庭学習の躾について保護者を交えて話しができれば、根室の子どもたちの学力は今よりもずっと高くなる。

 頭は使わないとよくならない。単分野のみの単純な問題ばかりやらせたら、深刻な学力低下が全道の公立中学校を覆うことになる。
 根室高校高校普通科へ入学した生徒たちは6月に全国規模の「進研模試」を受験するが、この模試の問題の四分の3は複合問題であるから、こんな簡単な入試問題に慣らされたら対応できるわけがない。
 大学入試は全国区だから、「道内の公立中学出身&道立高校出身」の生徒は痛い目を見ることになる。同じ能力の学生を比べたら、違った環境で勉強している首都圏の学生よりもランクを二つほど下げざるをえないだろう。

 北海道がダメな原因の一つに東大や一橋大学への進学者が少ないことがある。キャリア官僚のコースを歩むものが他の都府県に比べて極端に少ないが、そのことは政治的にも経済的にも長期にわたって影響力が大きい。中央官庁のポストは明治維新以来西南雄藩が固めており、代々そのポストをそれぞれの県出身の優秀な者へ継承しているケースがままみられるから、低学力化が進めばますますこうした傾向を助長することになる。北海道は道人という意識が薄いが、西に行くにしたがって県人意識は強くなる。
 ebisuは1970年代に愛媛県出身者の例を見聞きして道産子との意識の違いの大きさにたまげたことがある。よくは覚えていないが、お金にかかわりのある官庁の局長クラスのポストの話だった。

 こんな超低難易度の入試を続けたら、北大だって「道内公立中学⇒道立高校」出身者の入学割合が激減するだろう。このままでは「北海道大学」の名前の意味すらなくなる。単に北海道にあるだけで、北海道出身の生徒たちには関係のない大学になりかねない。道内の官庁ポストですら、他県の者が占めることになる。北海道知事は高橋はるみは道産子ではない。富山県出身で、
   一橋大学⇒経済産業省⇒北海道知事
 おまけがついている、祖父が富山県知事である。その時代は全国の知事は任命制だった。

 北海道教育委員会学校教育局高校教育課は自ら愚民政策を実施するのか?
 学校教育局義務教育課は全国学力テストの平均点を超えようと、全道の市町村教委と小中学校へ号令をかけている。
 これでは政策がチグハグではないか?縦割り行政で相手への影響など考えないようなことはやめにして、政策の擦り合わせをやり、来年度の入試から都立高校並みに難易度を上げてもらいたい。
 そうすれば学校現場は難易度の高い複合問題を授業でとりあげざるをえなくなる。そういう環境の下でA中学校のような管理職と教科担当教員のチャレンジが著しい成果を上げていくことになる。


*#2608 A中学校授業進捗管理が格段に進化した:<教頭先生の仕事>  Mar. 1, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-01-1


にほんブログ村