安倍首相は外国訪問をする都度日本の原発の技術水準の高さを説明し、原子力発電プラントを売り込んできた。ついこの間もクウェートで原発事故があったときは技術協力することを約束した。
ところが福島第一原発の放射能汚染は収束するところかずっとダダ洩れしていたことが判明してしまった、東京電力も原子力規制委員会も政府もなす術がない。
貯蔵タンクからの超高濃度汚染水300tの太平洋への流出が判明したと思ったら、その直後にそれどころの話ではない事実が明らかになる。
メルトダウンした核燃料棒と接触した冷却水があちこちにヒビが入っている建物基礎コンクリートから地下へ浸透したか、メルトダウンした核燃料が基礎のコンクリートを破って直接地下水を汚染しているのかは分からぬが、とにかく地下水を汚染し2011年5月からいままでに毎日300tも太平洋へと流出し続けていることを東京電力と政府が認めた。
参議院選挙が終わった翌日の7月22日から毎日10㌧ずつ貯水タンクから8000万・ベクレル/㍑の超高濃度汚染水が洩れたと、失笑物の説明を東電がしている。こんな重大事にふざけた説明もほどがある。
40mも地下に冷却パイプを埋めて、1~4号機までの原子炉建屋とタービン建屋を取り囲み凍結して流出をとめるという案が検討されている。
そんなもので300年間とめられるはずがないし、何かの事故で冷却電力が止まったら、やはり汚染地下水が一気に流出することになる。
周りを凍らせても、メルトダウンしている核燃料の3箇所のいずれかが地下水と直接接触していたら、そこまで凍らせることができるだろうか?60mの地下から海へ流出はしないのだろうか?原子炉の地下は放射線量が高くて状況すら確認できないし、ましてや工事は不可能。そして地下水は圧力に応じて上にも下にも右にも左にも変幻自在に移動して最後には海へ到達する。
かくして実際には放射能汚染水の海への流出を止める術がない。政府が動き出したが、政府とて確実な策があるわけではない、お手上げなのである。そしてついにロシアと米国に助力を依頼することになった。
しかし、ロシアや米国に放射能汚染をとめる技術が本当にあるのだろうか?またぞろ国民は政府にだまされることになる。
米国の実情は弊ブログですでにとり上げています。ずたずた、福島よりももっともっと悪い、地上ではなく地下に埋設貯蔵してしまったのです。70年もたってタンクは腐ってきており、手の打ちようがない、ほとんどのタンクが調査すらされていない、つまり何にもできていないのです。
米国では、もうじき福島とは比べものにならない規模の汚染地下水が川に到達します、その先はすぐに太平洋。福島第一原発事故どころの騒ぎではありません。
その米国に技術導入あるいは技術協力を仰ぐというのだから、私には悪い冗談にしか聞こえません。
ロシアと米国の原子力関連企業が兆円単位の売上のチャンスとばかりに乗り込んできます。一度食い込んだら毎年膨大な受注が可能になります。
汚染拡大を防ぐなんて技術は世界のどこにもない、幾分か遅らせるとかすすこし軽減できる技術はあるがそれは莫大なコストがかかる。実際にはできはしないのです。膨大なお金をかけながらやっている振りだけは続けるが、汚染は確実に広がっていきます。
原発事故は一度起こしてしまったらアウトというのが実相です。だから、原発も再処理施設もつくってはいけない。原発がなければ使用済み燃料の再処理施設もいらない。再処理施設は原爆材料の製造工場です。こんなものを日本がもつ必要がありますか、いりませんよ。すでにフランスで再処理した純度の高いプルトニウムが青森県六ヶ所村の再処理工場に50㌧近くも保管されています。これだけあれば人類を地上から消し去るのに十分な材料となります。これ以上増やしてどうするのでしょう。
9月1日付けジャパンタイムズの短い社説をお読みいただきたい。
http://www.japantimes.co.jp/opinion/2013/08/31/editorials/tepco-finally-accepts-overseas-help/
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Editorials
Tepco finally accepts overseas help
(1) As the crisis worsens at the Fukushima No. 1 nuclear power plant, Tokyo Electric Power Co. (Tepco) has at last started to be open to assistance from foreign countries. Discussions on bilateral cooperation with Russia’s nuclear industry turned positive, it was reported last week. Tepco was also reportedly engaged in talks with retired U.S. government officials who handled the accident at Three Mile Island in 1979.
(2) These are all positive signs that help may be on the way that will enable the nuclear crisis in Fukushima to be managed more effectively. That may offer some relief, since Tepco officials have so far exhibited little inclination to cooperate with foreign specialists in the effort to halt the leakage of radioactive water that is now plaguing the crippled plant. With the severity of the crisis upgraded from level one to level three on the International Nuclear and Radiological Event Scale of eight, Tepco should accept all the help it can get.
(3) With one “fix” after the next failing, Tepco — and by extension Japan — is finally being forced to turn to technology from overseas. That may put a crimp in the government’s plan to promote sales of nuclear power plant technology to other countries, but many of the technologies developed by Russia after the Chernobyl explosion in 1986, to take one example, will be needed to solve the current problems.
(4) Nuclear cleanup specialists from places such as the Hanford Site in Washington State — many of whom have offered help since the initial meltdown — have a long history in coping with problems such as groundwater contamination. The Hanford Site, after all, was where plutonium for most of the U.S. nuclear arsenal was made and stored. Their history of dealing with radioactive contamination extends back almost 70 years. That knowledge and technical skill would surely be of benefit in Fukushima.
(5) Tepco clearly is not managing the crisis properly. At the same time, the hesitancy of the Nuclear Regulation Authority and the national government to take a greater hands-on role is making matters worse. At the very least, the NRA and the government should work to facilitate greater international cooperation in the effort to get the nuclear crisis under control. Scientists and companies from around the world have offered to help over the 29 months since the crisis began. The government and Tepco should embrace this assistance.
(6) Tepco’s refusal to accept help from abroad may stem from national pride, or simply be another aspect of bad managerial skills, but nuclear accidents are not private domestic issues. They are international disasters in scope and effect. The costs of the Fukushima nuclear crisis are becoming enormous and the continuing leakage of radioactive water into the Pacific Ocean is eroding international trust in Japan. Both the government and Tepco should accept all the help they can get from overseas.
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(1) 福島第一原発事故はますます事態が悪化している。東京電力はいまごろになってようやく外国の支援受入れに踏み切る。一つはロシアの原子力産業からの援助協力であり、二国間協議を始めている。もう一つは米国で、伝えられるところによればスリーマイル事故で対応に当たった元政府高官と事前協議をしている。
(2) 放射能汚染拡大をなんとかするために両方の関係者とやる方向での事前協議が進んでいる。東京電力は海外の専門家からの協力提案にはいままで否定的だったが、今回の超高濃度汚染水漏れが判明したのだから、協力提案を受け入れるべきである。
実際にはとっくにお手上げだったのだ。東京電力には原発事故への対応能力などなかったということ。2年半経ち、事態はますます悪化し、後手後手に回っている。
(3) 一つ問題が持ち上がり、次の問題が明らかになった後で、一つ前の問題の対応がようやくなされるというお粗末さ。東京電力と原子力規制委員会および政府はお手上げ状態で、海外へ技術協力要請せざるをえなくなった。そういう事態がもちあがることで諸外国へ日本の原子力プラントを売り込むという政府の計画は頓挫することになる。しかし、一つ具体例を挙げたらわかるだろうが、ロシアは1986年のチェルノブイリ原発の爆発によって培ったたくさんの技術を保有しており、その技術が福島第一原発事故を収束させるためにはどうしても必要なのである。
原発事故の収束は民主党野田政権が言明したし、同じ事を自公の安倍政権もいい続けた。それだけでは足りずに、日本の原発プラント技術の品質の高さを宣伝し、海外訪問のたびに売り込みを行ったのが安倍首相である。挙句の果てに、自分の国では汚染地下水の太平洋への大量流出を2年半たってから気がつくというお粗末さで、あろうことかそれを収束させるたしかな対応案や技術すら持ち合わせていないことが判明してしまったのである。
安倍首相は、海外訪問をするたびに、あの「裸の王様」の王様役を演じていたのである。これがどれほど日本の国の信用を失墜させるものであるかを考えたらいい。明治以来培ってきた日本人の国際的な信用を著しく傷つけてしまった。
(4) メルトダウンしたときから助力を申し出ているワシントン州ハンフォード・サイトで仕事をしたことのあるスペシャリストたちは地下水汚染を食い止めることに関しては長期間にわたる経験がある。ハンフォードはプルトニウム生産と貯蔵に関して米国最大の基地であるから、放射能汚染については70年もの技術的な蓄積がある。放射能汚染除去や防護に関するその専門知識と技術は福島第一原発事故収束にかならずや貢献する。
ハンフォード基地については弊ブログで取り上げたことがある。川をさかのぼるタンカーに青い色の原子炉が2基括りつけられてハンフォード基地へと運ばれる写真が載っていた。ハンフォードの地下水汚染はまもなく川に到達し、その下流域の数十万人の生命と健康に重大な脅威となりつつある。プルトニウムの半減期は2万4000年である。米国もまた放射能汚染に有効な対策をもっていない。川へ到達した放射能汚染はすぐに太平洋へと拡大する。ハンフォードに保管されている高濃度放射性物質の量は福島原発の比ではない。太平洋の東と西から深刻な汚染が起きることになる。
厄介なことにハンフォードは高濃度放射能廃棄物を地下に埋設してしまった。いまだにどれほどの量が漏れ出しているのか点検すら行われていない。
だまされてはいけない、米国でもお手上げなのである。しかし、福島原発事故現場はフランスとロシアと米国の原子力関連産業にとって、荒稼ぎするチャンスなのである。一端原発事故が起きたら、汚染をとめる技術など世界中のどこにもないのである。
稼動し始めて機能不全ですぐに停止してしまったALPSは基本的にはフランスの技術であり、その年間維持費は1兆円とも言われている。そのほとんどはフランス原子力産業、たしかアレバ社と言ったかな、その会社の打ち上げを増やすことになるのである。
ここまで書いて、これ以上解説するのがバカバカしくなった。あとは、英文記事をお読みいただきたい。
ハンフォードでの高濃度廃棄物貯蔵施設の実態と、その放射能が地下水を汚染して川へ流失しそうな状況を解説してあるので以下のURLをクリックして米国からの記事を読んでもらいたい。念を押すが、米国も地下水汚染をとめられないし、福島とは比較にならぬ量の放射能をまもなく太平洋へ垂れ流すことになるのである。人類に地下水の流れを止める技術などないのである。いったん地下水を汚染してしまったらアウトである。
*#2340 米国の現実:核廃棄物は管理不能 Jun. 25, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-25
ロシアが「再び」協力提案してきているという記事が8月27日のジャパンタイムズ1面トップに載っているので、これは解説抜きで紹介。原発事故に関心のある受験生や大学生は是非読んだらいい。夢中でたくさん読むうちに、スキルはあがる。
http://www.bloomberg.com/news/2013-08-25/russia-offers-to-help-clean-up-fukushima-as-tepco-calls-for-help.html
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