根室市PTA連合会主催で教育関係者を対象にした研修会「子どもの生活と学力を共に考える夕べ」が開かれた。18日付の北海道新聞根室地域版に関連記事が載っていたが、講演会を聴いた人の話とずいぶん論旨が異なっているようなので弊ブログでとりあげる。

 新聞記事では北海道や根室管内の子ども達の低学力の原因は家庭で培われる生活習慣にあると書いているが、実際の論旨は違っていたようだ。文脈から切り離して、一部をとりあげると講演者の意図とはまるで違った内容になる場合があるからご用心。

 この記事には担当記者の教育問題への意見が反映されてしまったのか、それとも担当記者の書いた記事に北海道新聞の「色」がつけられたのか、私にはさっぱりわからない。
 根室の家庭の三分の二が北海道新聞を読んでいるから、その報道は責任が重い。4日後のニュースというのも、いつもと違う。いつもはもっと速いタイミングで報じているから、何か特別な理由があってのことだろう、しかし世論をミスリードしてはいけない。

 聴いた人の話では講演者の武藤課長は「低学力の最大の責任は道教委にある」と発言した。これはきわめて重大なことで、異例なことでもあるから、「歯舞の浜」シリーズを書いている腕のよい記者がこんなに重大な発言を聞き逃したはずがない。

 低学力の原因を教育行政が自分にはなく、自分以外のところにあると言明してしまったら、自己改革はなくなる。講演者は教育行政に至らぬ点があることを率直に認め、それがなんであるのか現象(データ)を通してその原因に迫り、関係者に改善を求めた。
 学校で何が起きているのかを語り、学校側でやるべきことは学校でやる、家庭での生活習慣に起因するものは家庭でやるが、そういう方向へ仕向ける努力を学校もすべきだと明確に語ったとebisuは聞いている。
 私が出席者から知りえた情報、講演者の武藤学校義務教育課長の論旨を箇条書きにしておくので、新聞記事と見比べてほしい。

 ①低学力の最大の責任は道教委にある
 ②過度なブカツは低学力と関連が強いので是正すべきだ
 ③学校が荒れていると低学力の原因になる(具体例を挙げて説明があった)
 ④学校で学習規律や生活規律が崩壊している例を写真で説明した
 ⑤校内の清掃が行き届いておらず、汚い学校が多いこと、そういうことと低学力には関連があること
 ⑥姿勢の悪い生徒が多い、下駄箱がぐちゃぐちゃの学校、廊下の掲示物がはがれて垂れ下がっている学校、などなど具体例を紹介
 ⑦ノート指導をきちんとしていない学校が多いこと
 ⑧適切な内容の宿題を出し、基礎学力定着や指導改善に生かしている例が少ないこと
 ⑨家庭に生活習慣や生活リズムの改善を求める際には、併行して学校側の改善をやるべきこと
 ⑩根室管内は低学力層が厚いこと(高学力層が薄い)

 誤解があるといけないから①について解説しておく。道教委に属する組織の責任者が自らの責任を認めることは潔い。しかし、低学力の原因のすべてが道教委にあるわけではない。当事者として責任を痛感しているだけであって、学校現場にも家庭にもそれぞれ、原因が潜んでいる。各自が自らの責任を認め、協調して努力すべきだと語っている。率先垂範、そういう決意だろう。

 こうして並べてみると、根室管内の低学力の原因が家庭での生活習慣にあることだけを強調したのではないことが明らかだ。それは学校内のさまざまな改善を背景にして、それと併行してなされるべきものであり、学校は自分のことは自分で改善するので、家庭も健全な学習習慣や生活習慣を保つように協力してほしいということだった。

 北海道新聞根室支局は過去にC中学校で火災警報器が生徒にいたずらで日に何度も発報する状態を取材して記事にしている。学校が荒れる現象と低学力に関連があることを取材記事で示したくれた。ebisuはコメント欄でこの学校で学力テスト400点以上がゼロの学年が初めて現れたことを書き込んでいる。その後、400点以下ゼロの出現頻度が少しずつ大きくなりつつある。
 北海道新聞根室支局は、教育シリーズを何度もとりあげ、事実を伝え、鋭い分析を加えて根室市民啓蒙してくれた。その努力には頭が下がる、感謝しつつ毎回記事を読んでいた。

 しかし今回だけはいただけない。よいものはよいと褒め、ダメなことはダメだと書くのがebisuの流儀。 

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低学力 地域活力も下げる
 P連が研修 「家庭で食事、学習を」
【根室】児童・生徒の低学力が問題となっている中、教育関係者らを対象にした研修会「子どもの生活と学力をともに考える夕べ」が15日、根室高で開かれた。市PTA連合会(山田俊彦会長)の主催で、文部科学省から出向中の武藤久慶・道教委義務教育課長(37)が道内の学力の実態や改善策について語った。(栗田直樹)

 武藤氏は2000年に文科省入省。初等中等教育局、海外での研究員などを経て、昨年4月から現職。北海道教育大客員教授として、教職大学院でも講義を担当している。
 全国学力テストの道内状況について、武藤氏は「小学6年の国語では『医者』『往復』といった日常生活に密着する感じの正答率が全国より低い」と指摘。中学3年でも正答率の階層が厚い傾向にあるという。
 また、テレビゲームで3時間以上遊んだり、朝ごはんを食べない子どもの割合も多い調査結果を示し、「知・徳・体のいずれも全国平均に比べて劣っている」と強調した。こうした人材が輩出され続けば、地域経済の活力低下をもたらし、特に、根室管内では高卒者の約3割が地元に就職するため「深刻の度合いは大きい」と訴えた。
 改善策の一つとして、スポーツ少年団などの活動の終了時刻を見直し、家庭で食事や学習を充分にできる時間を確保するよう提案。
 秋田や福井など学力上意見の例も挙げながら、家庭で培われる生活習慣と健全は心の育成が、学力向上と密接に結びついていることを紹介し「子どもが自立するために何が必要か、それぞれが真剣に取り組むことが大事」と話した。 

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 この記事には学校の努力項目がすっぽり抜け落ちている。
 子ども達の「低学力と地域経済の活力低下」に密接な関係があることは弊ブログでも何度もとりあげている。30年前の子ども達の低学力の結果が現在の姿でもあるからだ。そしてこの数年急激に中学生の学力が下がったことを併せ考えると、30年後に根室がさらに疲弊していることが容易に想像できるだろう。ことは急を要するのである。
 スポーツ少年団の話しは小学校の事例として挙げたのだろうが、中学校の「過度なブカツ」への言及もしている。それが家庭学習習慣の育成の妨げになっていることは、6時半に終わるブカツの生徒の生活時間分析をすればだれでもすぐにわかることだ。(講師の武藤氏もブカツ終了時間を会場の聴衆に尋ねた)おまけに、土日の練習をしているブカツが多い。文科省は土日のブカツはやるべきでないと指針を出している。知らない校長や教員が多いのだろう。**


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*#1307 教育再考 根室の未来 第2部 低学力④:荒れる中学校 Dec.19, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19-1

 #1935 フリー授業参観に行こう:啓雲中学校  May 14, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-05-14

  コメント欄に花咲小学校が運動会明けから30分間の放課後補習に取り組むことが書き込まれています。たったの30分でもいいのです。継続してやることが大事です。

**#2182 おお、すばらしい! 運動部活動指導の手引書抜粋 Jan. 20, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-01-21

 このURLを開いてください。平成10年1月20日付で都道府県知事と都道府県教育委員会教育長宛に出された「文体体第 297 号 中学校及び高等学校における運動部活動について」には次のようなブカツについての注意書きがあります。

http://www.pref.nagano.lg.jp/kyouiku/taiiku/bukatutebiki.pdf

「2 スポーツ傷害の予防や生徒のバランスのとれた生活を確保する観点から、学週5 日制の趣旨も踏まえて休養日を適切に設定するとともに、練習時間を適なものとするよう留意すること。また、学校が必要に応じてスポーツ医・科等に関する情報を活用することができるよう、情報提供等に努めること。」

 根室の中学校ではスポーツ障害を起こす生徒が特定のブカツで続出しています。学校管理者がこの通知に従っていないということです。根室市教委はブカツの調査をして、適切な指導をすべきでしょう。
 中学校での連日のブカツ(土日も含む)でスポーツ障害を起こし高校で好きなスポーツをあきらめた高校生がみつかりますよ。こんなブカツを強要する親も先生も、それを見過ごしている学校管理職も同罪です。

 次は14年市町村教育委員会教育長宛に出された長野県教育委員会の公式な「通知」です。文部省通知よりもさらに突っ込んだ具体的な記述があります。その中にブカツに関する指針が載っています。土日はやるなとはっきり書いてあります。

「2 学校生活のゆとりを確保し、また、生徒の健康を保持するため、日曜日、土日及び職員の勤務時間及び休暇等に関する条例(昭和27 年長野県条例第9)第6 条に規定する休日(以下「週休日等」という。)においては、原則とて部活動を行なわないこと。やむを得ず実施する場合は、保護者に対して十な説明を行い、理解を得るよう努めるとともに、連続する週休日等のうちいれか1 日のみで行なうこと。
また、月曜日から金曜日の間において、学校全体で部活動を行なわない日をけるよう努めること。」

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