このところジャパンタイムズではSpainがとりあげられていた。EUから1000億€の金融支援が決まったが、金融機関救済のための資金で、スペイン経済がどうなるものでもない。四人に一人が失業している状況下にある。
 PIGSと呼ばれ、EUから金融支援を受けるのはこれで4カ国、ポルトガル、アイルランド、ギリシア、スペインである。スペインはEUで4番目の経済大国である。イタリアもスペインの後を追いそうだから、経済崩壊はスペインでとめなければEUそのものが大きく地盤沈下しかねない。
 これらの国に共通しているのは経常収支がマイナスということ。日本も単月でみると2011会計年度からそういう月が生じ始めている。年度でみても経常黒字額は7.9兆円で前々年度の半分になっている。急激に悪化しているといえる。ギリシアは私たちの一歩先を歩いている?

 もともとEUは台頭する日本経済に対抗して作られた。英国もドイツもフランスも一国だけではもはや日本に対抗できないということ、そういう危機感の下にヨーロッパ諸国が共通経済圏を組織しようと集まった、あの当時はEC(欧州共同体)と言っていた。
 ところが強いのはドイツのみ、あとは財政的に見ても経済的に見ても「弱者」といえる国々ばかり。ラテン系の国家は財政も経済も脆弱であり、弱いものがいくら集まっても結局は弱い。

 ギリシアとイタリアはともに古代史では栄耀栄華を誇った国で、市民社会の国である。労働は奴隷のするもので「特権市民」は労働から解放されていたから、労働蔑視がこれらの国の国民意識の深層にある。
 ドイツはマイスターの国で、国民は職人に敬意を払っている。いい仕事をするのは人間としての誇りでもある。仕事に対する考え方がギリシアやイタリア、スペインとまったく違う。フランスもラテン系の国だからギリシアやスペインやイタリアと同類だろう。

 ドイツ国民が職人(マイスター)に敬意を払うのは、日本と同じだ。日本でも一流の職人は国民の敬意を受ける。仕事に手抜きはしないし、その技術を日々磨き、最高の仕事をなしとげる。
 正直に誠実に仕事をするのが職人だ。賃労働の工場労働者とは違う。日本では工場労働者ですら日々業務の改善に励む職人が多い。指示されなくても自ら自分の仕事を改善し、最良の仕事をしようとする。職人仕事は数百年あるいは千数百年ににわたって培ってきた伝統文化でもある。

 ギリシア選挙が昨日行われ、緊縮策を提唱する新民主主義党が勝利し、急進左派連合が敗北した。EUに約束した緊縮策を実行するという。だが、これも棘の道である。ギリシアには選択肢がない。棘の道を歩むか破滅するかの二者択一である。働くことを軽蔑する国の国民はキリギリスとアリの寓話のキリギリスのようなもの。二千年以上もの歴史をもつ労働の蔑視、治らないだろうな。急激な破綻が避けられただけで、混迷は深まるばかり、根が深いから緊縮派が勝利しても危機は去っていないと判断すべき。

 一流の職人に敬意を払い正直に誠実に仕事をする国は栄え、労働を蔑視する賃労働の国は衰退する

(日本の政治はウソだらけになった。マニフェストで約束したことと反対のことを「命を懸けて」やる総理大臣が出現した。これほどひどい総理大臣は歴史上いなかった、バケモノを見るような気がする。)


*「ギリシャ議会再選挙、緊縮派政党が僅差で勝利 連立協議へ」AFP
 http://topics.jp.msn.com/world/general/article.aspx?articleid=1128232

2012年6月18日 07:08 (AFPBB News)

【6月18日 AFP=時事】17日に投開票が行われたギリシャ議会の再選挙で、財政緊縮策の継続を訴える旧与党の新民主主義党(ND)が第1党となる見通しとなった。同じ緊縮派の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)と合わせた獲得議席は過半数に達する見込み。…」


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