朝起きると雪が5センチほど降り積もっていた。さらさらしているので羽毛のように軽く除雪に力が要らない。
 数日間姿を消していた流氷が突然現れ、一面の雪原と化した海原を国後島まで歩いていけそうである。夜の気温はマイナス1~4度と寒さがゆるんでいる。
 春だな。道立高校入試が昨日(筆記試験)と今日(面接試験)行われた。昨日は、ほとんどの生徒が自宅でテレビを録画して自己採点作業をしていた。一人だけ問題をもってきて、答え合わせをして帰った生徒がいた。

  大阪芸術大学へ進学する生徒がジャパンタイムズを取りに来た、退屈なのだろう。
「先生、この間英検2級の筆記試験合格したと言ったけど面接もパスした、合格したよ」
と嬉しそうな顔だ。将来、留学も考えたいという。小樽商科大へ合格した生徒も英検2級だ。北海道医療大学と1年前まで英語が大の苦手だった苫小牧の王子総合病院附属看護学校へ合格した生徒は英検準2級だ。男子二人は英検を受験していない。一人は普通科で英検2級は十分合格できる能力があるだろうが、興味がない。大学卒業後の留学を考えているようだ。もう一人は事務情報科で根高初の全商検定5科目ホルダーであるが、英語は苦手のようだ。小学生時代に英語を習っていた者は一人もいない。
 ひたすら日本語の本をたくさん読んだ生徒は言語のセンスがいいから、英語をやりだせばいくらでも伸びる。小中学生は日本語のテキストをたくさん読むべき季節だろう。言語に関する確かなセンスを磨けばいい。

 さて、昨日の話題の続きを書こうと思う。根室高校商業科と事務情報科80名中、全商検定試験3科目1級ホルダーが24人出たというのは快挙である。勢いというのはあるもので、45年ほど前に小学生がひとり全珠連の珠算検定4段に合格したら3人続いたことがあった。その後、10人ほど続いてついに十段位の合格者までだした。母体の高橋珠算塾があったからだ。あのころ珠算で根室が全道トップクラスに躍り出た。「珠算塾は男子一生の仕事」といい続けて根室の珠算のレベルを全道トップレベルにしたT先生は信念と高い志をもった人である。根室の教育界でこの50年間で最大の功労者であろうと思う。学校教育のみならず私塾の役割が大きいとこの例をみて思う。根室高校と私塾と力が合わさったときに全道トップレベルという大きなうねりが生じた。

 良きにつけ悪しきにつけ伝統の力は大きいものがある。全商検定1級3科目ホルダーが生徒数の30%も出たというのは全道の他の学校に例がないのではないだろうか。5科目ホルダーのK君は今年受験した情報処理ブログラマー1級に合格して6科目(5科目6種類?)の記録を樹立して卒業した。卒業式で表彰されたそうだ。
 高校入学時の学力からみて、来年以降は激減が予測される。維持できたら、根室高校の先生たちの力量は相当なものだろう。

 次のステージを考えるといくつか課題がある。全商検定1級は類似検定の中では一番やさしいと評価されているので、全商検定のレベルを超えた各種検定試験へのチャレンジがネクスト・ステージだろう。
 簿記に関して言えば、日商簿記検定試験である。いまだ根室高校生で合格した例がない。理由は簡単だ。日商簿記1級は簿記・会計・工業簿記・原価計算の4科目である。そして論述式問題が半分出題される。全商検定試験には論述式問題はない。つまり、全商検定とはまったく違う能力を要求されるのである。戦後行われている日商簿記検定1級に誰も合格者がいないというのは基礎学力が不足しているからだ。

 きちんと論の通った文章を書くためにはある程度の読書量が要求される。文学と専門書と両方の分野の相当な量の入力=読書がなければとうてい答案を書き切ることができない。おおよそ高校入学試験レベルで250点を要求していると見てよい。全商簿記1級はある程度の計算能力で合格できるが、日商簿記1級にいたって受験生はまったく質の異なる学習を要求される。論述式問題は基礎学力の大きさがモノをいう。計算能力の高さだけでは越えられない壁が立ちはだかる
 実社会に出てからは、この基礎学力こそ最重要なのだ。必要なあらゆる分野の専門書を独力で読み、理解できるレベルの基礎学力こそが社会人となったときの武器となる。経理や財務だけしか分からないような人材は企業にとっては困るのである。経理や財務を担当していても、会社の商品や品質管理についてかなり専門的な知識が必要となる。その辺りは過去ログを見てもらえば何度か具体的に書いている。

 さて、日商簿記1級を指導できる先生が全道の高校にいるだろうか?大学で日商簿記1級に合格した者は上場企業の経理・財務部門に就職できるし、転職も楽だ。大学時代に日商簿記1級合格した者のほとんどは公認会計士や税理士試験を受験するだろう。つまり、教職につく者たちの中には日商簿記1級合格者がいないということだ。全商1級すら珍しいのが実態である。全商1級をもっていなくても全商簿記1級の受験生指導はできるが、日商1級は高校の先生には無理かもしれない。都立の商業高校では昔、大学から講師を招聘して日商簿記1級受験指導をしていたことがある。良き伝統があり体制が整えば、根室の高校生から日商簿記1級合格者を出すことは可能だ。
 情報処理関係についても全商検定から国家試験レベルやマイクロソフトの公認資格がいろいろある。これらも高校の範囲を超える。生徒たちはそういうレベルの入り口に立っているのだという現況を認識しなければならぬ。
  見上げると登るべき山は峻険にそそり立っている。

 まとめると、次のステージの課題は二つだ。
  ①入学する生徒の質の向上
  ②教える側のレベルアップ

 ①は小中学生を教えている学校の先生たちと市教委の課題だ。根室の子供たちの学力を上げることができるか否かだ。②は根室高校の先生たちの課題だ。相当きついが良質な生徒たちの期待に応えるために精進するしかないだろう。それが教師の心意気だ。生徒の成長に合わせて自らも成長しなければならぬ。
 OBの私は生徒と先生たちの両方に期待している。峻険な山にアタックして欲しい。
 

*#1404 全国商業高校協会検定1級3科目以上」倍増24人(1)
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-03-03



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