10分間のNHK朝のラジオ番組「社会の見方・私の視点」で、社会学者の山田昌弘中大文学部教授が面白いことをとりあげていた。この人は「パラサイトシングル」という用語の生みの親だ。その彼が、「絶食系」という用語を紹介していた。

    絶食系<草食系<肉食系

 草食系が自ら能動的に女性に声を掛けられないが異性には興味を残している「女子の積極的な行動をひたすら待っている男子」なら、絶食系はもはや女性に興味を失ってしまった男子を表す言葉だ。そんな男子はいたとしても3%以下だろうと思っていた。

 『少子化対策白書』によれば、20-40歳未満の未婚の男女で
  恋人(異性としての交際相手)がいる人は35%
  恋人(異性としての交際相手)がいない人65%

 交際相手がいない人の6割は恋人を欲しいと思っているが、4割は恋人を欲しいと思わない人、つまり「絶食系男子」と「絶食系女子」であるという。全体に対する割合はおおよそ26%(65%×40%=26%)である。この割合に男女差は認められない。

 2010年の山田氏の調査によれば、68%が恋人が欲しい、30%が欲しくないという結果だった。この4~5年をみても、日本社会の中で男女交際は低調になってきている。異性と付き合うのが当然だというこれまでの価値観では推し量れない状況が生まれてきて、どんどん成長している感じを受ける。

 3年ごとに行われている東京都の調査によれば、中3に「異性と性的接触をしたいと思うか」という質問にyesと答えた割合は、
 1987年には男子の86%、女子の36%
 2014年には男子25.7%、女子10.9%

 じつに中3年生の4人に3人が性的接触をもちたいと思わなくなっているのである。

 何が原因になっているかについて、山田氏は三つの要因を挙げている。
①性情報の氾濫:アダルトビデオをネットでいくらでも見れるので、興味を失ってしまった
②ゲームとかネット、アイドルなどバーチャルなもので満足してしまっている
③母親が専業主婦だと男の子は性的興味が少なくなる:過剰管理

 海外では中年になっても手をつないだり、キスをしたり、楽しそうだ。しかし、日本ではそうではない、中年ばかりでなく、若い恋人同士も楽しそうではない。

 まとめると、未婚の大人(20-40歳未満)の四人に一人が異性と付き合いたいとは思っていない。中学3年生では、男子の74.3%、女子の89.1%が異性と性的接触をもちたいと思っておらず、この4・5年をみても、異性に性的興味のない生徒が増大している。その原因として三つの原因が考えられるというのが山田教授の説明である。

 海外では若者たちが性的関心や興味を失いつつあるという傾向は報告されていないから、どうやらこれは日本特有の現象のようだ。①②はそうだろうとわたしも思う。③もそういう傾向はあるのだろう。
 その上さらに、2011年3月の福島第一原発事故による広域の放射能(広島型原発30発分)汚染が関係していないだろうか?
  そこで仮説を一つ提供したい。放射能がどのような影響を子孫に及ぼすのかわからないので、無意識に異性への性的関心を低くしているというものである。つまり、子どもをつくりたくない。福島第一原発事故による放射能汚染は日本人の心の奥深くに繁殖への危険サインとして刻まれてしまったのかも知れぬ。
 サインは現実になりつつある。百万人に一人であった小児甲状腺癌は汚染地域ですでに100人を超えた。当然他の癌も増えていると考えなければならない。核爆発とメルトダウンを起こした3号炉のMOX燃料がどうなっているのかすらいまだにわかっていない。地下100m~200mを流れる地下水へ汚染水が到達したら、海洋汚染はこれから深刻さをますことになる。安倍首相は放射能汚染は「under cotrol (コントロール下)」にあると世界に向かって英語で発言したが、メルトダウンした核燃料がどうなっているのかすら、4年4ヶ月たったいまもまったくわからないし、地下凍土壁での地下水流入遮蔽もまったく不可能であることがわかった。そしてさらに深度の深いところに地下水流のあることが判明した。この地下水流は海に注いでいる。これほど事実とまったく異なることを平気で言える首相は、日本の歴史上では初めてではないか。日本人は嘘吐(うそつ)きが大嫌いなはずだが、ずいぶん慣れてしまったらしい。民主党政権の嘘は輪をかけて大きかった。政治家も政治も、大多数の国民が信用しないという状況が固まりつつある。

 少子化の原因はいくつか複合しているのだろう、しかし若者たちの性的興味の減退傾向は事実としてあり、それが長期的な人口減少に拍車をかけることは、「資本論と21世紀の経済学」シリーズで言及した。わたしは日本人の若者たちの性意識の変化が気になっている。意識変化で少子化がさらに加速しそうである。
 世界の人口が後一世代で百億人を超える、そうなれば世界中で国家間の食糧争奪戦が起きる。富める国の富める国民は食糧に不自由しないが、多くの国で人類史上かつてないほど餓死者が増大する。したがって、少子化は国家戦略上はまことに都合がよいことではある。人口が半減すれば、日本人は食糧を輸入せずとも食べていける。
 そのためには国土を放射能で汚染しないことだ。子孫が放射能で汚染された土からできた作物を食べ、汚染された水を飲み、汚染された海から獲れる水産物を食べなければならないような事態を引き起こしてはならない。
 
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*#2935 『資本論』と経済学(1):「目次」 Jan. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-25

 #2936 『資本論』と経済学(2):「1.経済現象と日本の国益」 Jan. 26, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-26

 #2937 『資本論』と経済学(3):「円安はいいことか?80⇒120円/$の威力」 Jan. 27, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27

 #2938 『資本論』と経済学(4) : 「経済学とは?」 Jan. 27, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27-1

 #2939 『資本論』と経済学(5) : 「『資本論』の章別編成」 Jan. 27, 2015  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27-2

 #2941 『資本論』と経済学(6) : 「マルクス著作の出版年表」 Jan. 29, 2015   
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-28-1

 #2942 『資本論』と経済学(7) : 「デカルト/科学の方法四つの規則」 Jan. 29, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-28-2

 #2943 『資本論』と経済学(8) : 「ユークリッド『原論」 Jan. 29, 2015   
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 #2944 『資本論』と経済学(9) : 「何をやりつつあったかは残された文献に聞け」 Jan. 29, 2015    
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 #2945 『資本論』と経済学(10) : 「プルードン「系列の弁証法」 Jan. 29, 2015    
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 #2947 『資本論』と経済学(11) : 「労働観を時間座標系においてみる」 Jan. 29, 2015     
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  #2948 『資本論』と経済学(12) : 「学としての『資本論』体系解説」 Jan. 29, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-30

 #2950 『資本論』と経済学(13) : 「マルクスの経済学体系構成法」 Jan. 31, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31-1

 #2951 『資本論』と経済学(14) : 「マルクスの労働観と日本人の仕事観」 Jan. 31, 2015
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 #2952 『資本論』と経済学(15) : 「ヨーロッパ労働観⇔と日本の仕事観」 Feb.1, 2015
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 #2953 『資本論』と経済学(16):「仕事がキツイ!に潜む心(仕事観)の問題」 Feb.1, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01

 #2955 『資本論』と経済学(17):「要領の悪いものほど忙しいとぼやく」 Feb.3, 2015
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 #2958 『資本論』と経済学(18):「教育の職人」 Feb. 5, 2015
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 #2960 『資本論』と経済学(19):「日本経済の未来」 Feb. 6, 2015
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 #2961 『資本論』と経済学(20):「経済成長の天井 山田久氏の論」 Feb. 7, 2015
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 #2964 『資本論』と経済学(21):「過剰富裕化論」 Feb. 8, 2015 
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 #2966 『資本論』と経済学(22):「相対的貧困率上昇と富裕層増大」 Feb. 9, 2015
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 #2967 『資本論』と経済学(23):「ピケティの空想的所得再分配論」 Feb. 10, 2015
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 #2968 『資本論』と経済学(24):「浜矩子 予算案と公共性について」 Feb. 11, 2015
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 #2971 『資本論』と経済学(25):「村落共同体と税:自由民と農奴について」 Feb. 12, 2015
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 #2972 『資本論』と経済学(26):「文部科学大臣下村博文「教育再生案」について」 Feb. 13, 2015
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 #2973 『資本論』と経済学(27):「注-1~5」 Feb. 13, 2015
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 #2974 『資本論』と経済学(28):「注ー6」と主要文献リスト Feb. 14, 2015  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-13-1

 #3082 『資本論』と経済学(29):利便性の追求の果てには何があるのか July 15, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-07-15

 #3087 『資本論』と経済学(30):外国人持ち株比率3割の意味するもの(金子勝慶応大教授) July 21, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-07-20

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