今度は元データの性質をチェックしてみたい。都道府県別・科目別データの「国語A」を例にとってデータ範囲をみてみると、最小値は鳥取県の4898人、最大値は東京都の74,366人である。神奈川県が65,352人で意外と大きいのに驚いた。北海道は41,769人、全国101.7万人の公立中学生が受験した。

 都道府県別データの元となった都道府県別平均正答率は数千人から7万人までの平均正答率、47組でできている。正答率の幅は秋田県の84.4%(正答数27.0/32問)~沖縄県の74.4%(正答数23.8/32問)の間にある。最高と最低で平均正答率の差は10.0ポイント、平均正答数の差は3.2問/32問に過ぎない。分布が狭いから分散値が小さくなっていることは計算するまでもない。
 これらのことから個人別データの分散を一つ一つ累計した個人別偏差値用の分散の方がずっと値が大きくなることは想像に難くない。

 都道府県別偏差値は都道府県別・科目別平均正答率で基本統計量を計算すればいいから、都道府県別偏差値表は個人別偏差値と同じように考えてよい。しかし、最下位の沖縄が偏差値18.6だからといって、沖縄の中3生の大半の個人別偏差値が20以下だなんてことはなく、平均正答率で7~8ポイントの差にすぎないのである。
 都道府県別・科目別標準偏差で沖縄の平均正答率の平均偏差を標準偏差Aを使って測定した結果が偏差値18.5ということで、それくらい沖縄の平均正答率は他の46都道府県から離れていると判断してよく、それ以上でも以下でもない。沖縄にも学力の高い生徒も低い生徒もいる、学力上位層が他の都道府県に比べて薄く、学力下位層が多いということは言いうるだろう。でもそれはそれで、データの分布図で具体的に確認すべきことなのだ。根室管内版の「~結果報告書」をクリックしてご覧いただけば、全国版での25%タイル値が根室管内でどれくらいあるのかはっきり明示してあり、標準偏差も二桁でまるめて出ている。

 地域別偏差値を計算するための基本統計量は全国101.8万人の中3生をそれぞれの集計単位で集計し、平均値を集めて計算される。都道府県別偏差値は47都道府県に全国の中3生を区分して標準偏差を計算して算出される。
 市町村別偏差値は全国の「市町村および特別区」ごとに平均正答率を計算して、そのデータを基礎データとして計算されるから、全国を1741区分することになる。
 次の不等式から、14支庁管内別偏差値は③と⑤の間に位置していることがわかる。

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   ①受験者数<②学校<③市町村<④14支庁<⑤都道府県
  
 受験数:約101.8万人
  参加中学校数:9742校 北海道621校
 市町村数:市790、特別区23、町745、村183、合計1741市町村
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 北海道は41,769人が受験しているがこれを14支庁管内に分割すると単純平均で2983人だから、都道府県データの標準偏差Aを利用してもその値に大きな差はないものと予想される。
 北海道にある市の数は35だ、これを14支庁で割ると、1支庁管内当たり2市ということになる。これを全国規模で想定すると

   790市÷2.5=316支庁

全国市町村数の1741よりは都道府県の47に幾分近い。

   1741市町村<316支庁<47都道府県

 根室管内偏差値29.0は全国をこうした数市町村を合併した支庁管内を想定して考えると、都道府県の分散値に近いと考えていいのだろう。

 日高・後志・根室の3支庁管内の偏差値が30以下であるのは、全国レベルで見ると偏差値46.8の北海道で、最底辺グループなのだから学力下位2%以下という評価が妥当なのかもしれない。
 しかし、正答数を見ると国語Aの平均正答数では沖縄と秋田県で32問中たったの3.2問しか違わないのである。偏差値で見ると大きな差があるが、テスト問題が少なくて分布の幅が狭いからそうなっているだけで、正解数では最下位と最上位にそんなに大きな差がないことがわかる。
 適切な戦略を練って実施すれば短期間に簡単にひっくり返せる。

 全国の平均正答率データと、全道の平均正答率データ、そして14支庁管内別の平均正答率データを並べておく。差はわずかだ。
 こんなわずかの差を何年かかってもひっくり返せないのは信じがたい。民間企業では目標管理をするが、こんなわずかな差を改善できなければ管理職は無能と判断される。戦略も当然練り直しが命じられるが、市教委は毎年同じような教育政策を立案し、当たり障りのない結果報告書を提出するのみで、政策妥当性のチェックすらなされない。それを評価報告書で指摘した人(ある退職校長)がいるが、つい先ごろ根室市教委のホームページで確認したら今年の評価報告書からははその人の名前が消えていた。


 2014<正答率データ>
 国語A国語B数学A数学B合計平均
根室市78.0 45.9 62.8 55.8 242.560.6
根室管内76.7 45.0 61.8 55.0 238.559.6
全道79.4 49.9 66.0 59.4 254.763.7
全国79.6 51.0 67.4 59.7 257.764.4

  <14支庁管内別正答率データ>
 国語A国語B数学A数学B合計平均
全道A78.547.9164.1456.95247.561.9
全道79.4 49.9 66.0 59.4 254.763.7
0.9 2.0 1.9 2.5 7.2 1.8
全国79.6 51.0 67.4 59.7 257.764.4
2014<14支庁管内別正答率データ>
 国語A国語B数学A数学B合計平均
全道79.4 49.9 66.0 59.4 254.763.7
全国79.6 51.0 67.4 59.7 257.764.4
石狩80.351.967.561.7261.465.4
上川80.25167.160.725964.8
十勝7949.266.459.3253.963.5
留萌79.54965.258.6252.363.1
胆振78.9496557249.962.5
釧路79.547.965.756.4249.562.4
空知7847.164.757.9247.761.9
渡島78.44864.256.8247.461.9
オホーツク78.547.963.756.3246.461.6
檜山79.147.462.956.2245.661.4
後志77.146.363.155.3241.860.5
根室76.74561.855238.559.6
日高75.645.561.553.7236.359.1
宗谷78.245.559.152.4235.258.8
14支庁平均78.547.964.157.0247.561.9



*北海道教育委員会「全国学力・学習状況調査北海道版結果報告書」
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/gky/gakuryoku.htm

 根室管内版
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/gky/gks/h26chosa/77_80_nemuro.pdf

 根室管内版レーダーチャートを見ると、国語Bの「読み」「書き」が全国平均に比べて相当悪い。本を読む生徒が少ないだけでなく、書く能力が低いのはふだんの授業にも問題がありそうだ。中学生になったら、400字詰め原稿用紙で50枚くらいのものを書かせて見たらいい。学力の高い低いに関わらず、面白いと思ったら、400~1000字ぐらいに粗筋を書かせて、それにそっていろんなシーンを肉付けする形で書かせてみたらいい。3本も書けばすいぶんと文章がしっかりしてくる。

 全国学力テストの根室管内版の結果報告書に載っているレーダチャートをみると、根室管内の中学生は全チェック項目の中で書く能力が全国平均値に比べて一番劣っている。書かないからだろう。書かせるような授業を工夫するとか、適切なきっかけを与えてやれば、子どもは書きたくなるものだ。それは学力の高低とは関係がない。


*#2889 遊びながら書くトレーニング:小説仕立て  Nov. 29,2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-11-29


  #2890 個人別偏差値と地域別偏差値論考(1)  Nov. 30, 2014   
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-11-29-1

 #2891 個人別偏差値と地域別偏差値論考(2)  Nov. 30, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-11-30

 #2893 個人別偏差値と地域別偏差値論考(3)  Dec. 1, 2014  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-12-01

  #2894 個人別偏差値と地域別偏差値論考(4):14支庁管内別偏差値の妥当性  Dec. 3, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-12-02




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