現職有利は当初から言われていたが、時代にそぐわぬ結果になったと言わざるを得ない。理由は後で述べたい。

 まずはデータから。
 有効投票総数13,102票のうち、鴨志田氏へは35.5%、現職の長谷川氏へは64.5%という結果だった。有権者総数23,285人を分母としてみると、現職は根室の住民の36.3%の支持を得たに過ぎない。

かもしだ リエ4,646票
はせがわ 俊輔8,456票


  8,456/23,285=36.3%

 これが有権者全体からみた現職市長の得票率、有権者の三人に一人強が支持を表明したにすぎぬ

 鴨志田氏を担いだ市議の壺田重夫氏は前回市議選で1192票を獲得しただけだから、鴨志田氏はその基礎票に3500票を上積みしたことになる。現職候補者に対して善戦したといえるだろう。
 政策面で大きな違いを出せば浮動票がもっとでただろう。選挙戦略にミスがあった。

 選挙戦略のミスにより鴨志田リエ氏は勝機逃がしたとはどういうことか説明しておきたい。
 13日付の北海道新聞に拠れば、1957年の第一回根室市長選挙は西村氏と富樫氏で争われ、投票率は85.87%であった。1974年の市長選挙は寺嶋氏と栃久保氏で争われ投票率は80.44%だった。投票率が80%を超えたら浮動票が雪崩を打って流れて鴨志田氏の勝利だっただろう。だから鮮明に対立する政策を掲げなかった選挙戦略のミスが痛かった。
 (市長選挙は13回対立候補がありそのうちの5回は投票率が70%を越えていた。)
 しかし、時代も違う、1957年や1974年は根室には若い人たちが多かった。'74年は団塊世代が二十代半ばである。

 地元出身の30代や40代に市長選挙に立候補できるほどの器の持主がいないようでは、4年後の選挙はまた無投票になり、振り出しに戻ってしまう。
 根室の町の人材の枯渇こそが憂えるべき問題だろう、問題の根っこは教育にある。

 若い人が少ないことも選挙の結果に大きく影響しているだろう。社会保障・人口問題研究所の2015年の根室市の人口推計データは次のようになっている。

 20-39歳 5,260人 23.9%
 40-64歳 8,512人 38.7%
 65歳以上 8,238人 37.4%
   合計  22,010人

 このデータからは、76.1%を占める40歳以上の住民が市長を決めたという構図が浮かび上がる。根室の将来を担う40歳未満は23.9%と少ない。20代は1,119人いるが、この層は政治にほとんど興味がないだろう。しかし、膨らんだ市の借金を返して、つくりすぎた諸施設のメンテナンスをし、利用されない施設を取り壊すのは彼ら・彼女達である。

 時代にそぐわぬ人が12年間根室市のリーダとして旗を振り続ける。その8年間の足跡を簡単に再確認してみたい。
 市が招聘したコンサルタント提案、年間売上(25億円)の範囲内での建て替え、を無視して、70億円の総事業費で病院建て替えを行い、市債が50億円増えた。
 毎年病院事業の赤字の穴埋めに一般会計から17億円もの繰出金がつぎ込まれ、これも借金を増やす一因となっている。前市長時代は年間8億円前後の赤字であった。
 老人保健施設へ30ベッドの増床に9億円、特別養護老人施設の30ベッドの増床に5.5億円。老健施設は国基準を10倍も上回る補助金交付。
 小中学校は統廃合を先にすべきなのに後回しにして耐震改修をした。市街化地域の小中学校はそれぞれ1校でも間に合うような生徒数になっている。一番古い花咲小学校の今年の新入生はわずか39人である。団塊世代のebisuのときは花咲小学校は1学年6クラス360人、全校生徒数2000人弱だった。統廃合を先にやれば、4校の耐震改修は不要だった。今頃市教委は市街化地域一校体制の検討をはじめている。先を見ないデタラメな仕事ぶりにあきれる。
 いままた明治公園の再開発を40億円をかけてやろうとしている。それを決めた委員会の委員長は元信金理事長である。借金はどこからなされるのだろう?根室では有力者とされる人々が我が田に水を引くようなことが多すぎる。李下に冠を正さずという姿勢を貫いてもらいたいが無理なのか。

 公共事業ばら撒き、予算膨張、市立病院事業の赤字2倍に拡大という絵に描いたような古いタイプの市政が8年間続いている。困難な時代がすぐそこまで来ているのに、時代にそぐわぬリーダが市政のトップの座に座り続けている。わたしはアリとキリギリスの寓話を連想してしまう。
 誰のための何のための市政なのかはこの8年間の実績をみたらよくわかる。それでも根室の40代以上の世代は現職を支持した。あなたたちは子供や孫の世代に責任が持てるのか?

 自分達さえよければふるさとがどうなっても構わぬという輩が多すぎる。根室はこのままでは夕張市の後を追うことになりかねない。
 大事なことは基礎学力がしっかりしていて、心根がまっすぐで、自分のことよりもふるさとのことを優先して考え・行動できる人間を育てることだ。20年後、30年後に根室を支える人材はいまつくっておかなければならない。30年、40年、50年前にそうした努力を怠ったから現在の惨状がある。

 根室高校を卒業してから35年目にふるさとに戻って塾を開いた。30年後に根室を支えるにたる能力とまっすぐな心根の人材を数名育てたつもりだが、まだ数年やるべきことがあるようだ。
 成果を見ることはかなわぬ、気の長い話だ。
 知っている歯科医の先生たちやマチの有力者たち(故人)が自らスコップをもって警察署の下の公園に植樹をしたのは50年ほど前のことだったが、いまでは小さな森となって木蔭をつくっている。ああいう仕事をする人が町の有力者にいなくなった。

 鴨志田リエ氏が根室の住民になかなか感慨深い敗戦の辞を述べている。K大文学部卒らしい才女のさわやかな読後感の文である、URLをクリックして全文を読んでもらいたい。

*http://ameblo.jp/rie-kamoshida/entry-11925041874.html
「・・・素晴らしい資源と潜在力がありながら、2050年には根室市は過疎地になるとの予測があります。
ここにこそ政治が必要、この選挙を契機に我が街を政治を諦めない市民が増えて欲しいと思います。 」


<余談>
 北海道新聞東部・辻中販売所が選挙に関するチラシを折り込んでいた、いい企画だ。新市長に対する6人の市民の意見が載っている。冒頭の学校の先生(58)の意見だけ抜粋引用させてもらう。
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 新聞報道で知る限り、両候補の公約はいずれも経済政策が中心です。しかし、まちづくりで大切なのは「人づくり」、進学などで根室を離れても、再び戻って来たくなる機会、環境をつくってもらいたい。
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 裏面には過去15回の市長選挙の候補者名と得票数、投票率が載っている。過去15回で投票率が70%を超えたのは5回、無投票当選は長谷川氏の2回のみ。

<余談-2>
 根室市が招聘したコンサルタント提案がどのようなものであったのか新聞記事を引用して解説しています。医療機器を含めて25~30億円でやるべきだと取材に答えています。
*市立根室病院建て替えへの疑問 #762 Oct.18, 2009 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-10-18



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