3月20日NHKラジオ「ビジネス展望」での慶応大学教授金子勝の意見は大略次のようなもの。

(1)平均耕作地面積比較
   米国200ha、
   オーストラリア3000ha、
   日本は1.9ha
 農業規模が違いすぎるから、TPPに参加すると日本の農業は壊滅する。
(2)TPPは途中で抜けられない。交渉参加について秘密の取り決めがあるが、秘密を盾に安倍総理は内容を開示していない。
(3)自民党は政権公約でTPP参加の条件として6項目挙げているが、最近は1番目だけを言い、他の5つを無視している。ここに論理のすり替えがある。
(4)ISD条項は民間企業が相手国政府を訴えることができるもので、主権を侵害するような訴訟が続発するリスクが大きい。

 そこで自民党がどのようなことを言っていたのか検索してみた。
 H24年の選挙時の政権公約では、
「政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。」
*第46回衆議院議員選挙「国民と自民党の約束 政策パンフレット」より
http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/seisaku_ichiban24.pdf

 平成24年3月9日の自民党"The Fax NEWS"では野田民主党政権のTPP政策に対して次のような6項目のTPP交渉参加条件を明示している。

「TPP 交渉参加の判断基準
① 政府が、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対する。
② 自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない。
③ 国民皆保険制度を守る。
④ 食の安全安心の基準を守る。
⑤ 国の主権を損なうようなISD条項(注)は合意しない。
⑥ 政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる。

(注)ISD 条項…外国政府の差別的な政策により何らかの不利益が生じた場合、投資家(Investor)である当該企業
が相手国政府(State)に対し、差別によって受けた損害について賠償を求める(Dispute)権利を与えるための条
項。これが濫用されて、政府・地方自治体が定める社会保障・食品安全・環境保護などの法令に対し、訴訟が起こさ
れる懸念があります。」

*http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/recapture/pdf/055.pdf

 6項目の内容を見るとどの項目も真っ向からTPPを否定するものであり、そうならTPPに参加しなければいいだけのこと。
 この6項目の論理的帰結はTPP不参加表明のはずで、そんなことは中学生でも理解できる。前段でTPPの基本方針を説明した後に、6項目並べてTPPに参加の必要の有無を問う問題を出したら、不参加が正解とほとんどの中学生が答えるだろう。
 こんな当たり前のことが、政権が論理のすり替えをやり、マスコミが喧伝すると8割が反対だったTPPに今度は8割が賛成するというようなことが起きる。かように世論は簡単に操作されてしまうのである。

 野田政権がTPP参加を約束し、政権が変わっても米国大統領との約束はそのまま受け継ぐ。安倍総理はTPPの実態が明らかになったところで引責辞任、自民党はすべての責任を安倍総理一人に押し付けて、違う総裁を選出して生き残る。
 正直とか誠実とかいうことと正反対の仕事振り、自分の頭で判断し行動する庶民が増えないと、政治はよくならぬ。

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