高校問題検討委員会の作業部会が結論を出し、解散したという。メンバーはたった6人。相変わらず市民参加なしの密室の決定、道教委提案の鵜呑み、根室はいつまでこのようなバカげた方法で町の将来を決めるのだろう。

 保護者と現職校長の6名だから、学力差の実情をご存じないはずはあるまい。
 普通科といっても両校の生徒は学力差がありすぎて、国語・数学・英語の三教科は同じ教科書を使えない。両校の普通科で使っている教科書と教科書附属の問題集や参考書を目の前において、委員全員で比べてみたらいい。
 教科書だけではない。根室高校普通科1年では数Ⅰと数Aをやるが、根室西高校では数Ⅰのみで、数Aは2年次でやっている。2年次の数Bの扱いも両校で異なっている。他の科目だって、世界史は授業内容の密度が大きいから、無理だろう。
 何をどうするか、科目ごとに検討しておかないといけない。

 假定の話しをしよう。統合後に根室高校普通科の現行教科書を使い同じレベルの授業をすると、50人単位で留年や退学が出るだろう。それを畏れてレベルを下げた教科書を採択し、授業レベルを下げるとすれば、大学進学希望の生徒が被害者となる。
 経済的な余裕があり学力の高い生徒はますます根室を出ることになり、成績上位層が全国レベルの数分の一の地域となる。成績上位層が多数いて競い合わないと、偏差値50を超える大学への進学は難しい。

 いまでも根室高校普通科は全道偏差値で42だから、全道の高校を100校とすると80番目の学力下位校だが、今回の案でやるとさらにレベル低下は必死だ。偏差値は40を切り、子供たちの学力低下は将来の根室の町の衰退を加速する。
 いまだって全国の平均的な大学進学率は50%に近いのに、根室はその半分程度である。地元に残る生徒達のレベルもさらに下がっていく。

 学力が高くなければやれない仕事があるし、そこそこの基礎学力がなければ責務を果たせない仕事がある。
 たとえば、医者、学力が高くなければ医学部への進学はできない。不況が続いているので、女生徒の看護学校進学希望者が増えており、競争が激しくなっている。正看護師になつためにはしっかりした基礎学力が要求される。このままでは医者や看護師不足が将来にわたって解決不能な問題化しかねない。
 学校の先生はいまでも根室出身者が少ないのだが、さらにその割合が半減してしまう。
 市立病院の経営改善をするのにも基礎学力の高さが物をいう。
 町の将来を議論するためには幅の広い教養をバックに、高いところから考え抜かないといけない。市議会は市議が20名もいるのに市政のチェックがまるっきりできない。市議も私欲を離れることができて基礎学力の高いものが数人いなければ困る。
 地元の企業経営者も基礎学力があり教養がないと、広い視野にたってオープンな経営ができない。企業サイドでも人材育成ができないと、地元企業は次々に廃業していくだろう。それは、高校卒業した子供たちの職場が失われるということ。人口減が加速する原因となる。
 根室には多くの分野で、志が高く基礎学力がしっかりした人材が不足している。

 学力格差によって生じる具体的な問題の調査も検討もなされないまま「統合」だという、驚くほど雑な議論だ。
 同窓会の問題も俎上にすらのぼっていない。道内のどこかの市で高校統廃合に伴い、同窓会の統合問題でずいぶんもめたという新聞記事を読んで記憶があるが、弊ブログでも取り上げたような気がして検索してみたが引っ掛からない。

 問題は、生徒数減少で2年後には根室西高校に20人しか入学者がいなくなるということだ。ならば、根室西高校廃校という選択肢がある。これなら道内他の地域で大問題になった同窓会統合の問題は生じない。これはこれで、疑問符がつくから、根室高校の芭蕉同窓会を入れたオープンな議論が必要だろう。

  根室西高校廃校の他にも選択肢はある。根室市が経費を負担して2校体制存続をするという案だ。市立根室病院は藤原前市長時代は年間8億円程度の赤字だったが、今年度は15億円、来年度はおそらく20億円、赤字を1億円減らせば高校2校体制を維持できるから、経営改善をして1億円捻出すれば、1学年40人体制で根室西高校存続が可能だろう。
 一人当たり年間83万円の負担となることに市民の異議がなければ可能な案である。
*「閉校悩む地元自治体 高校統廃合 自力存続に財源の壁」
http://www.asahi.com/edu/student/news/HOK201104060003.html

 現在の案は道教委の提案の丸呑み。病院建て替え市民整備委員会のときも市側の提案をすべて丸呑みしただけ。こういう「委員会」形式は危うい。いままですべて市の提案を追認して判断を間違えたのではないか。「市議会病院建て替え特別委員会」もそうだった。同じ愚を繰り返してはならぬ。

 文化会館で日曜日ごとに市民参加で半年ぐらい具体案をいくつか検討すべきだ。だれでも参加できる形が望ましい。病院建て替えでは市民参加を拒否して、総事業費をコンサルタント提案の2.5倍に膨らませ、大失敗している。高齢者医療の療養型病棟もない。こんな失敗は2度としてはならぬ。

1月22日付け北海道新聞根室地域版より
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 統合後「単位制が有利」
  市内高校問題検討作業部会
   来月にも案提示
【根室】しない2高校の在り方について考える市内高校問題検討委員会の作業部会(会長・慶伊吉夫海星小中学校長)は21日、市総合文化会館で会合を開き、両校が統合した場合の教育課程について「普通科、商業科共に単位制が望ましい」と結論をまとめた。来月にも上部組織である検討委員会に案を提示する。
 道教委は2019年度までに2校を再編し、新しいタイプの高校を設置する方針。昨年10月に道教委側から3年間で、決められた数の単位を取れば卒業できる「単位制」、普通科と専門家の枠をなくし、幅広く学べる「総合学科」の案が提示されていた。
 今回の会議では「単位制では教員が多く配置され、きめ細かい指導が期待できる」「総合学科は子供の数が減ると、学べる科目が少なくなる」などの意見が上がり、「両学科の単位制が生徒に有利」との意見で一致した。
 統合後の空き校舎の利用法については「議論すべきことではない」と結論を出すのは見送った。
 作業部会の案は来月にも開かれる検討委員会に示される。
 同作業部会のメンバーは小中高の保護者、小中学校の校長ら6人。昨年7月から5回にわたって会議を開いたが、結論が出たため、今回で解散した。(笠原悠里)

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*#1080 教育問題に関する質問(佐藤敏三議員):市議会第二回定例会 Jun. 21, 2010 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-06-21

 #1757 教育再考 根室の未来 第4部④:小中一貫教育(北海道新聞) Nov. 30, 2011 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-30-1

*#1756 教育再考 根室の未来 第4部③(北海道新聞) Nov. 30, 2011
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-30

  #1753 「教育再考 根室の未来 第4部②(北海道新聞)」
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-27-1

 「#1750 教育再考 根室の未来 第4部連載開始(北海道新聞) Nov. 25, 2011 」
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-25


 #1307 教育再考 根室の未来 第2部 低学力④:荒れる中学校
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19-1

  #1306 教育再考 根室の未来 第2部 低学力③:若手多く指導に苦戦も
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19

  #1304 教育再考 根室の未来 第2部 低学力②:「学ぶ意味」尊重されず 
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-17

  ◎#1253 教育再考 根室の未来(5):第1部⑤高校統廃合(北海道新聞)
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-24

  ◎#1251 教育再考 根室の未来(4):第1部④高校統廃合(北海道新聞) 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-22

 ◎#1250 「教育再考 根室の未来(3):第1部③高校統廃合(北海道新聞)」
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-21

 ◎#1249 「教育再考 根室の未来(2):第1部②高校統廃合(北海道新聞)」
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-20

 ◎#1248 「教育再考 根室の未来(1):第1部①高校統廃合(北海道新聞)」
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-19






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