インプラント治療のために2週間東京へ行ってきた。聖跡桜ヶ丘駅前のビル6FにあるH歯科医院、3月に2週間、4月末に2週間、そして今度が三回目である。

 インプラント治療について賛否両論あり、どうしようか迷っている人が多いだろうから、私の事例を材料のひとつにしてくれたらいい。
 専用手術室があるのか、三次元画像解析装置を使って顎の骨を計測して、埋めるボルトのサイズ・深さ・角度を決定しているか、事故事例の種類とその件数・比率、治療費など、患者として事前に知っておきたい情報はいろいろあるだろう。

 何ごとも基本が大切なようで、インプラント治療は顎の骨にボルトを埋め込み、その上に歯をつくるのである。埋め込む材料の硬さと顎の骨組織の構造、そしてその両者の関係を知っておいたほうがいい。下顎の下端部は硬いが歯茎に近い部分は案外すかすかで、大げさに言うと密度の大きいスポンジ状に近い骨をイメージしてもらいたい、そこへチタン製のボルトを埋め込むのである。
 たとえば60歳でインプラント治療をする、10年すれば70歳であるが、顎の骨組織も薄くなる。個人差が大きいが、インプラント治療をやったときとはボルトを支える顎の骨の状態が変化してしまう。老化だから避けられないが、そうした年齢によるリスクもある。
 ものごとは仕組みや事実を知ることが大事なのだろう。

 右下奥歯2本のボルト(メスネジ)はしっかり固着していた。奥から二本目がマイナス3~4、一番奥がマイナス7~8である。なにやら測定用の器具を取りつけてハンマーで叩くと、振動でボルトの固着度合いが測れるようだ。音声で数値を機械が喋る。
 一番奥は術後一月で外れてしまってやり直したから、深く埋め込まれているので固着度合いが大きいのだろうとかってに想像している。5ヶ月たっていたから、先生は「しっかりついていますよ」とうれしい診断。

 10月1日(月)メスネジの上にオスネジを立てて、「歯茎の移動術」をやり縫い合わせ、その上をセメントで覆った。治療時間は1時間半ほど。抗生剤と痛み止めが処方された。抗生剤は口内炎が起きるので弱いものに替えてくれていた。
 翌日通院して状態をチェックした。
 一週間後の9日に抜糸、もちろん痛い、ちょっと我慢だ。胃の手術では「ホッチキス」で縦一列に二十数か所とめてあったが、外すときに痛みはまったくなかったから、そういうつもりでいた。アハハである。
 根元が傷み噛み合わせが悪かった隣の歯を1本治療した、「この前(5月初旬)やっておいてもよかったね」とドクター、かみ合わせ改善のためにその隣の歯もクラウンを剥がして仮歯を入れた。
 11日木曜日に、インプラントの仮歯とその隣の2本の仮歯を外して4本分の型をとった。インプラント部分はオスネジを外して長い棒を立ててから型をとっていたから、時間がかかる。仮歯の再調整に一番時間がかかった。治療時間は1時50分から7時まで、5時間。
 遠方から治療に来ているので配慮してくれたようで、今日はここまでやるつもりはなかったようだ、二日分を一気にやってくれた。不具合があると調整しないといけないので、「金曜日は様子見ましょう、具合が悪かったり、異常を感じたりしたら土曜日に来てください」とドクター、まことにありがたい。

 インプラントはただボルトを埋め込みその上に歯を作ればいいだけではない、隣接の歯や歯茎の状態も考慮に入れ、それぞれ対処しなければならないから道具(X線CT)と熟練技術のいる仕事だ。自分の歯や歯茎や顎の骨の状態を説明してもらって理解と納得の上に治療方針を決めながらやっていただいたが、考慮すべき事項が多く、専門職でなければトラブルが起きるのはあたりまえのような気がする。

 インプラント学会があるようだから、事故事例を分類して、件数や比率を公開したらいい。そして、それらの事故ごとに対処のガイドラインを示すべきなのだろう。インフォームド・コンセントを考えると、潜在患者がこれらの情報をあたかじめ知っているほうがいい。
 顎の骨の組織へのダメージを伴うから、場合によっては腕のよい口腔外科医でないと対処不可能なものもあるだろう。そういう場合に相談できる専門機関を公開してあれば、患者は安心して学会認定医のインプラント治療を受けることができる。事故保険も学会主導で損害保険業界と仕組みの創設をやるべきなのだろう。
 インプラントは患者にメリットの大きな治療法であるが、リスクもともなうし、歯科医に高度な熟練技術を要求するから、それを支える社会的・経済的な仕組みが必要な時期に来ているのではないだろうか。
 事故のない医療は理想だが、現実に事故は起きる。その割合がベテラン歯科医師で1%であっても、無視はできない。信頼できる専門医からリスクについての説明をしてもらってから、やってもらうのがいい。

 インプラントは本物の歯の80%程度の強度しかないので、氷をかじったり、ゲンコツ飴をかじったりしないようにと注意があった。鉄欠乏貧血で氷をかじる癖のある人があるようだ。
 ボルトはチタン製だから下顎の骨よりもはるかに硬いので、大きな圧力をかけると、骨の組織が壊れることが稀にあるらしい。だから、三次元画像で下顎の骨の幅や形状を0.1mm単位で測定して、使えるボルトで一番太いものにするのだろう。細ければ圧力が一点に集中して骨組織を破壊する事故が起きやすくなる。
 この歯科医院ではすでに500例ほどインプラント治療を実施している。いろんな事例に遭遇し、さまざまな術式をマスターすれば腕が上がるのは当然だ。歯科医に限らず、どの分野でも熱心な先生の腕は年々上がっていく。

 木曜日に状態を観察して仮歯を外して4本分の型をとった。様子を見て、異常があれば土曜日に来るようにと指示アリ、北海道から来ているので一日前倒しして治療してくれたようだ。

 H・T先生は札幌のご出身、この歯科医院にはお二人の先生とスウェーデンや国内の学会でトレーニングを受けた優秀な歯科衛生士さんが4人いる。彼女たちの成長も楽しみだ。インプラント専用手術室と他に診療室が4ブースある。
 東京だと、スウェーデンに行くにも国内の学会のトレーニングを受けるのも、チャンスが多い。この点は根室は不利だ。歯科材料も最新のものを問屋やメーカーが次々にもってくるので、これも差が大きい。歯科治療の地域格差はどうやったら縮められるのだろうか。
 根室の歯科医院は札幌の大学病院と連携しているところがある。F歯科医院で左上奥歯の抜歯をしなければならなくなったとき、北大から口腔外科の専門医が来てやってくれた、ありがたかった。インプラント治療も相談すると、自分のところではやらないので札幌の大学病院を紹介できるということだった。まずは、かかりつけの歯科医院へ相談してみるといい。

 ebisuはニコニコ恵比須顔、食事が楽になった。スキルス胃癌で胃の全摘手術を6年前にしているので、口の中でよくかまなければ消化不良を起こし、腸の炎症や口内炎に頻繁に見舞われる。痛みを我慢しながら食事したのでは、つくってくれる人に申し訳がない。食事はニコニコしながら食べ物本来の味をたのしみたい。

 先ほど東京からもどって、ほっとしている。
 H・T先生どうもありがとうございます。
 受付の人が「超特急でしたね」と笑っていた。

  中3の総合C学力テストと2学期期末テストが終わってから、仮歯を本歯に取替えに12月にもう一度いくことになる。それでインプラント治療は終了。塾生の皆さん、ご迷惑をかけています、
  m(_ _)m

 明日から元気に授業再開。
 

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**「#2367 インプラントは定期点検が大切 Aug. 9, 2013 」
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-08-09

 #2157 インプラント治療終了 Dec.16, 2012 
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-16

 #2099 インプラント治療の実際(3) Oct. 14, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-10-14 

 #1918 インプラントの実際(2) : 片方固着せず、やり直し  May 2, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-05-02

 #1896 インプラント治療とQOLの改善 Apr. 8, 2012 
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-04-08


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