高校3年生は来年根室の親元を離れて一人で都会生活をはじめる人が多いだろう。自由奔放な生活にリスクはつきものである。そのなかの一つはHIV感染、3月に卒業して4月から都会で大学生や専門学校で学んでいる学生そして都会で就職口を見つけた君たちが一番アブナイ。高校1年生も2年生も予備軍だから身のためだ、この記事は読んでおいたほうがいい。日本ではこの種の情報が少なすぎる。
 中高生のこどものいるお母さんたち、こどもにニムオロ塾のこの記事を読ませよう。羞恥心が邪魔をして、自分のこどもに性知識を伝えられない親が案外多いもの、あなたはそうした親の一人なら読ませよう。
 「ニムオロ塾」って面白いブログがあるから、グーグルで検索して#2024の記事を読んでごらん」

 せっかくだから語彙を三つ覚えてもらおう。
 STD: Sexually Transmitted Disease 性感染症(性行為で移る病気)
 HIV: human immunodefeciency virus (ヒト免疫不全ヴィールス)
 AIDS: Acquired Immune Defeciency Syndrome (後天性免疫不全症候群)
         a serious disease caused by a virus which destroys the body's natural protection from infection, and which usually causes death.(体の免疫システムを破壊するヴィールスで、(発症すれば)死ぬしかない)
 頻度の副詞を不等号であらわすとこうなっている。
 sometimes<often<usually<always
 
  HIVに感染したら治ることはなく、伴侶を選ぶのもたいへんだ。生涯にわたって治療を継続しないといけなくなり、その費用は患者一人当たり5,000万円と見積もられている。現行保険制度を前提にすると患者負担は1500万円。夏休みで性行動が活発になる時期だからこそ、よく読んで考えよう。男子の草食化傾向はひょっとしたら無意識下の危険回避行動なのかも知れぬ。
 HIVに感染したら治す薬はない、さまざまな薬はHIVに感染した後、エイズの発症を遅らせるだけだ。米国で新発売の新薬はパートナーがHIV感染者である場合に、パートナーへの感染予防薬だから、ずっと飲み続ける必要がある。月額いくら薬代にかかるか知らないだろう、書いてあるよ。

 7月17日の「毎日JP」に載っていた記事を紹介する。
http://mainichi.jp/english/english/newsselect/news/20120717p2g00m0in022000c.html
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U.S. approves first pill to help prevent HIV

WASHINGTON (AP) -- The Food and Drug Administration on Monday approved the first drug shown to reduce the risk of HIV infection, the latest milestone in the 30-year battle against the virus that causes AIDS.

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 例によって著作権の関係から全文転載ができないので、URLをクリックして印刷して読むといい。

 米国でギリアド・サイエンス社*の"ツルバーダ"という錠剤がHIV感染予防薬として初承認となった。
*山崎淑子の生き抜くジャーナル ギリアド・サイエンス社がどういう歴史をもち、どのような資本関係にある会社かがわかる。社会科(世界史および政治・経済)の勉強にもなる。
 731部隊⇒日本の武田製薬⇒モンサント⇒ギリアド・サイエンス
 http://enzai.9-11.jp/?p=6286

 パートナーがHIV陽性である場合、HIVに感染する恐れが強いので、そういう人たちを「ハイリスクグループ」を呼んで一般の人たちと区別している。
 そのハイリスクグループへの感染予防薬が承認され、病院で処方できることになった。薬は便利な反面、厄介な問題も引き起こす、薬の有害な副作用を避けるために処方に当たってはHIV陰性であることを検査で確認する。
 この薬は毎日飲まなければ効き目がない、飲み忘れたりして感染するとウィルスが薬剤耐性を獲得して治療が困難な新型ウィルスに化けることになるから要注意だ。いろいろな薬とウィルスの戦いは無限に繰り広げられている。
 新薬開発⇒ウィルスの薬剤耐性獲得⇒新薬の開発⇒・・・
 (たとえば結核菌には超多剤耐性結核菌が出現して化学療法が不可能になっている。超多剤耐性結核の治癒率は30%である。)

 米国ではこの15年間毎年5万人の新規HIV感染者が出ており、120万人のHIV感染者がいると推計されている。そのうち24万人は自分が感染していることに気づいていない。自覚症状のないキャリアーが感染者の五人に一人いる計算になる、怖い話だ。

The two developments are seen as the biggest steps in years toward curbing the spread of HIV in the U.S., which has held steady at about 50,000 new infections per year for the last 15 years. An estimated 1.2 million Americans have HIV, which develops into AIDS unless treated with antiviral drugs. And it's estimated that one-fifth, or about 240,000 people, are unaware that they are infected.

 米国の人口はほぼ3億人であるから、1000人に4人の割合でHIV陽性のキャリアーがいることになる。
 しかし米国の話しだから生活実感がないので、米国全体を根室に縮小してわたしたちの生活実感の範囲内で考えてみよう。根室の人口は2.9万人だから40人のHIV感染者がいるという計算だ。8人が自分がキャリアーだということを知らずに遊んでいる。こうして身近な数字に引きなおして想像してみると、米国にHIV感染者がいかに多いかわかるだろう。
 息子や娘を米国留学させるのはたいへんリスクが高いということだ。

 では日本国内のHIV感染の実態はどうだろう?「図録 HIV感染者」という資料がある。
 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2250.html

 その資料によれば、2011年末で届け出のあったHIV感染者は12,648人、最近5年間は約千人で急激な拡大期を脱したように見える。
 米国と同じ比率なら52万人だから米国の1/40しかいないように見えるが、日本は安全だと勘違いしてはいけない。これは病院の医師からエイズサーベイランス委員会へ報告があった数であり、実態とはかけ離れた数字の可能性がある。

 ebisuは1980年代終わりに、日本最大手の臨床検査センターに勤務していた。HIV検査は陰圧にしたウィルス検査室でなされている。へパフルターを使って強制排気し、レベル3実験室と同等の環境下で検査が行われていた。そのころ1日300~500検体検査依頼があった。年間500件前後陽性でそのご確認検査が行われていたから、新規HIV陽性がひとつの検査センターの検査分だけでそれだけあったということ。上記の資料では88年は23人となっている。そんなに多くないと思いたいが、エイズサーベイランス委員会の公表データの50倍の陽性者が存在している可能性も否定できない。
 そのご(80年代終わりごろ)、学術開発本部に異動したが、なぜ厚生省は検査センターにHIV陽性件数を確認しに来ないのだろうとわたしたちは話していた。あの数字が公表されていたら、日本のHIVへの対策が全然別のものになったことは想像にかたくない。

 ごく一部の感染者しか公表しない厚生省の方針で、先進国で日本だけが対策が遅れ、90年代にHIV感染者が激増している(上記資料のグラフを見よ)。対策が後手に回ると大きな被害が国民に生じる。開発途上国のタイは学校でのエイズ教育を徹底し、90年代患者数を激減させている。
 福島第一原発事故と同じ構図がここにもある。国民にリスクの大きな情報は公表したくないのだろう。どんなにリスクがあっても公表しなければ日本ではなかったことになる。おかしな話だが、厚生省だろうが経済産業省だろうが原子力保安院だろうが東京電力だろうがみな同じだ。不都合な情報は出さない、徹底的に隠蔽し、データを捏造し、事実を小出しにする。

 さて、治療コストの問題を検討してみよう。この薬はの服用には年間14000ドルの薬代がかかる。おおよそ110万円だが、健康保険制度があるから3割負担で年間33万円だ。

 Gilead Sciences said Monday that it would keep the pill at its current price, nearly $14,000 per year. 

 この記事の最後の部分で患者一人の生涯治療費が60万ドルかかると書いてある、約5千万円である。
The lifetime cost of treating one person diagnosed with the AIDS virus has been estimated at more than $600,000.

 たいへんな医療コストがかかる。10万人の患者が保険を使ってHIVやエイズ治療をしたら、いくらかかるのだろう?

 10万人×5000万円=10^5*5*10^7=5*10^12円

 5兆円である。かりに米国と同じ比率でHIV陽性患者がでたとすると、その5倍25兆円がHIV陽性患者がエイズを発症しないために、そしてエイズを発症した患者の治療に医療費がかかることになる。年間7000億円程度HIV陽性患者に医療費がかかることになるのだろう。

 HIVやエイズは先進国でも国家財政や保険制度の維持に係わるにかかわる大きな問題なのである。
 若い諸君、HIVに感染するな、安全なセックスをして生涯HIVとは無縁であれ。

 HIV検査はセックス後4週間たたないと血液検査で抗原抗体反応が出てこないので、心配なら1ヵ月後に検査を受けたらいい。あわてて翌日に検査に行っても意味はないから、だれともセックスしないで4週間待つ。
 4週間後に検査して陽性なら、それ以降は仲間(感染者)を増やしてはいけない。以後の人生はたいへん苦しいことになる。経済的な負担もバカにならぬ。エイズ発症を遅らせるために高い薬を購入し、飲み続けなければなければならない。
 そして患者を増やさぬためには患者同士でセックするしかない。感染していない好きな人がいたらあきらめるしかない。辛い人生になる。きついのは就職状況や全国54基の原発だけではない、人間の本能に係わる部分に大きなリスクを抱えている。とにかく君らはそういう時代に生まれてしまった。
 安全に、そして心おきなくたのしめ。そのためにどうしたらいいのかそれは自分で考え、友人たちと話し合い、足りないところは調べてみたらいい。

【25日追記】
 コメント欄にあるドクターからのコメントが寄せられている。HIV陽性は風俗関係にはほとんどないという感想を10年間の診察に基いて書き込んでくれた。
 国内の新規HIV陽性者は5年前から約千人であり、拡大期を脱した感があることは事実だ。日本には保険制度が充実して薬剤の自己負担が3割だから、抗ウィルス剤による治療で感染拡大が防げているのかもしれぬ。

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*「HIV検査豆知識」
 http://www.hivkensa.com/mame/

  錠剤の写真と角度の違った詳しい解説が載っているので、もう一つ紹介したい。
 HIV Prevention Dryg Approved
 http://the-scientist.com/2012/07/17/hiv-prevention-drug-approved/

  #2026 高校生のためのホットな性感染症知識(2):国際エイズ会議 July 25, 2012 
  http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-07-25
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