シリーズ3回目は紋別の実例が引かれている。人口2.5万人の紋別は根室の近未来を映しているようにも見える。統廃合の影響は思わぬところにも表れるのだ。
 北海道新聞根室支局の担当記者はこのシリーズ全体のデザインをどういうものにしているのだろう。全体がまだ見えてこないところがドキドキワクワクだ。
 シリーズ第3弾は根室の外側へ広がりを見せる。高校統廃合は根室だけの問題ではない、全道各地で起きている問題であり、根室の戦いが他の地域の先例になりうる。ええ格好しいの根室人としては、格好良く捌きたいものだ。
 根室支局と紋別支局、支局ネットワークがシリーズ記事にさらに奥行きをもたせ、説得力が増した。それでは「第1部 高校統廃合③」を紹介する。

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 教育再考 根室の未来
  紋別の新設校
   効率優先 不満くすぶる

 人口2万5千人の紋別市では、1学年5学級の紋別北高(普通科、商業科)と、道2学級の紋別南高(工業科、家政科)が統廃合され、2007年にどう6学級の新設校、紋別高(普通科、工業科、商業科)が誕生した。

  市民の議論低調
 「まちから高校がなくなるわけではないので、危機感が足りなかった」。掛村均・元紋別北高PTA会長は、統廃合に関し市民の議論が盛り上がらなかったことを残念がる統廃合をめぐっては、紋別市教委と有識者で作る「市公立校適正配置等懇談会」が02年以降、道教委に2校存続を要望。道教委が市政を軟化させないため、統廃合の2年前に"条件闘争"に入り、伝統ある北高の校舎を 使うよう求めた
 だが、道教委はこれも拒否。北高より南高の校舎が新しいこと、新設校に工業科を設けるには、工業の施設のある南高を利用したほうが財政面でよいとの理由だった。

  説明会が後手に
 こうした経緯は、市民には直前まで詳しく伝えられていなかった。統廃合の07年に長男が紋別高に入ったパート従業員の女性(46)=南高卒=は、06年になってから説明会が開かれ「来年統廃合という話しがバタバタと伝わった」と振り返る
 長男は先輩のいる北高でバスケットボールをしたかったが、同校は募集停止に。女性は道教委だけでなく「2校存続にこだわるだけで、市民に情報が来ていなかった」と懇談会に対しても憤る
 北高は、1943年、南高は66年の創立。旧2校の同窓会は、紋別高の第1期入学者が卒業した今年、紋別高同窓会としてやっと合併した。それぞれ伝統があり「同窓会は合併しなくてよい」との意見もあったが、通常は学校に置かれる同窓会事務局が維持できず、合併やむなしとなった。
 北高同窓会で最後の会長を務めた笹渕一朗さん(76)は「本当は今でも合併は不満。紋別高の卒業生を自分の荒廃とは思えない」とため息をつく
 現在の紋別高はどうなっているのか―。

  授業工夫し効果
 統廃合した当初、保護者には「校内の学力差が大きく、進学指導が心配だ」との懸念があった。だが、今春の卒業生は23人が国公立大へ進学。「進学実績は北高並み」との評価が定着しつつある。
 同校は勉強の得意な生徒から苦手な生徒まで対応できるよう、英、数の2教科で習熟度別授業を実施。普通科の就職希望者と、工業科や商業科の生徒が受ける共通の授業もある。堺俊光校長は「教員数が多いと授業の工夫ができる」と統廃合の効果を説明する。
 だが、失われたものも。普通科1年の女子は高残念がる。「北高の自由な校風にあこがれていたのに・・・
 統廃合の過程で、道教委が地元の意向をくんだのは「校名を「紋別高」にすることだけだった」(教育関係者)。地域の声より効率を優先した道教委の判断は市民の心に傷を残した。

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< コメント >
 根室にも「~検討委員会」というのが立ち上げられているが、紋別市教委と有識者で作った「市公立校適正配置等懇談会」と同じ役割を果たしつつある。だから、有害無益でただちに廃止し、市民の任意参加による教育問題市民検討会議を立ち上げろというのだ。
 道庁は財政難から統廃合を進めているのだだから、「陳情方式」ではまったく対抗できない。市長も教育長も市教委は代案を提示して交渉に当たるべきなのだが、北方領土問題で長年陳情一本やりの癖がついてしまったせいか、智慧がないのか、代案が出てこない。このままでは紋別と同じことになる。
 私は病院の経営改善をして2億円を捻出しろと代案を公表した。半分の1億円負担を条件にすれば、道教委と交渉のテーブルに着くことができるだろう。詳細は記事#1124のURLを貼り付けておくのでそちらを参照して欲しい。

 さて、統廃合後のことについては紋別が先例とはならないことを書き留め、記者の分析の補足説明としたい(ただしだ、同窓会は同じ問題を抱えることになる。芭蕉同窓会は伝統ある同窓会であり、卒業生には同窓会の統合は抵抗がある。しかし、紋別同様に受け入れざるを得ないから、記者の取材どおりのことが根室にも起きる)。

 結論から先にいえば、紋別と根室は事情が異なり、このまま統廃合をすれば進学実績に深刻な影響が出かねない
 根室西高は普通科のみ、単科の高校であり、紋別南高が家政科と工業科であったとは事情が異なっている。

 紋別南高のの工業科の生徒はそのまま新設校の工業科へ移動したから問題がなかったが、根室の場合は新設校の普通科に両校の生徒が混ざってしまう。前回のブログでも論じたが、学力差がありすぎて同じ教科書を使って教えることが不可能だ。英語も然りである。国語は数英ほどはひどくはないだろうが、やはり学力差は大きい。

 私は高校普通科の科目を通常の授業ペースでこなせる生徒の比率は、根室に限っての議論だが、三分の一以下だと判断している
 元々高校の授業を受けるのが無理な生徒が高校生になっている。そして、卒業までにおおよそ一人当たり200万円の公費がかかっている。
 厳しいことをいえば、義務教育ではないのだから全員が高校進学する必要はないのだが、現実は高校を卒業していないと履歴書すら受け取ってくれない会社が世の中にはほとんどだろう。高校すら卒業できなかった者には冷たい。それどころか上場企業にいたっては大卒あるいは専門学校卒でなければ就職試験すら受けさせてもらえない企業がほとんどいう現実がある。高校卒業は社会へ出るための最低限のパスポートでもある。

 だから、統廃合後の高校には根室西高の生徒を受け入れる科が新設されなければならないのだが、社会(民間企業)のニーズは基礎学力重視の「普通科」である。進学を考えても、大学入学試験は普通科以外の生徒がたいへんなハンディを背負うように変ってしまった。
 何か工夫をしないと、このままでは根室の将来が危うい。地元の高校生の学力のさらなる低下は、長期にわたる地元経済、市政、市議会の衰退やレベル低下を引き起こす。いや、とっくに起きているのだ


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 ◎#1249 「教育再考 根室の未来(2):第1部②高校統廃合(北海道新聞)」
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-10-20

 ◎#1248 「教育再考 根室の未来(1):第1部①高校統廃合(北海道新聞)」
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 #1152 「教育における投資対効果を考える」
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 #1127 「限度を超えた部活動の実例(釧路)」
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 #1125 「公教育の充実へ予算を増強して」
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 ◎#1122 「高校統廃合問題:商業科と事務情報科は歴史的使命を終えたのでは?」
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 ◎#1111 「根室の高校統廃合問題について「異見」あり(1)」
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