生活習慣の改善は成績向上をもたらす

 8月28日の新聞で4月実施の第3回全国学力テストの結果が報じられた。小学校は47都道府県で46位、中学は2つ上がって44位である。
 民主党は実施校を絞る「抽出方式」にする意向らしい。わたしはこの政策には反対である。都道府県・市町村・学校単位に学力がどうなっているかを知り、具体的な学力向上策の効果を測定するためには、全校の学力テストデータ公開が必要である。
 学力テストデータがなければ、改善策のチェックができない。道新は道南の中学校長の意見を載せている。「学力向上の目標や課題を明確にする教員が少なく、校長や教頭もそのような学校運営をしていない。道教委の努力が足りない」と。
 札幌の主婦は「高校1年の息子は中学時代、『放課後の教室利用は安全管理上できない』との理由で補習がなかった。これでは学力は上がらない」と述べている。
 低学力の生徒の学力を上げるには補習が一番効果的である。放課後部活に熱心な学校が、手間のかかる補習には安全管理上の理由を挙げて拒否する、本末転倒としか言いようがない。
 民主党にしてもらいたいのは全国学力テストの完全実施と都道府県・市町村別・学校別データの公表である。文部科学省や日教組の思惑ではなく生徒の学力向上を第一に考えて政策を決めるべきだ。学力は国力の源泉である。

 さて、夏休みが空けて市街化地域の1校と郡部の1校のみ学力テストが行われた。対象校のサンプル数は中2の生徒6人であるが、4月の学力テストよりも5科目合計点が平均で38.5点上がった。一人のみ前回よりも1点下がったが、他は30点以上あがっている。最高値は70+α点のアップだった。成績は上がり下がりするのが当たり前だから数回のアップに一喜一憂するよりも、しっかり毎日の勉強に身を入れることだ。
 4回連続でテストの点数が上がっている者と3回連続で上がった者がいるが、学校から帰ると勉強を1~2時間やってからテレビを見るとか携帯で遊ぶというように生活習慣を切り替え中の生徒だ。

 一般的な話しをすると、家庭学習習慣がついて復習と予習をするようになった成績中位の生徒たちは、1年くらいかけて400点(500点満点)とれるようになる。5科目合計点がおおよそ150点ほどもあがる。
 数学と英語の学習の仕方が身につけば、他の科目への応用が利く。その結果5科目ほとんどの点数が上がってしまう。勉強の仕方がわかってしまうからなのだろう。だから、塾で全部の科目を学ぶ必要はない。子供の塾への過度の依存は自立への妨げとなるからだ。自立的な学習習慣を育むことも塾教育の目標の一つであるべきだろう。

 小中学生は仲間と遊ぶことを通して多くを学ぶ。遊びと同様に重要なのが学習である。家庭で健全な学習習慣を育むことが子供の成長の糧となる。小学校低学年で健全な家庭学習習慣を身につけた子供は成績がよい。北海道の子供たちの学力が低い原因のひとつは小学校低学年での家庭学習習慣の育成に失敗している家庭が多いことの表れでもある。もちろん、北海道の教育環境や学校教育にも問題はある。成績上位層の半数以上が私立中学受験をする東京とは学習の動機において差がつくのはやむをえない。それをなにかでカバーしなければ、学力の地域格差は縮まらない。
 都市部との格差に加えて、根室の問題は北海道の他の13支庁管内と比べても学力が低いというところにある。対策は簡単であると同時に困難だ。
 健全な家庭学習習慣を育むことは生徒自身と両親の意識改革を迫るものだ。学校で補習をすれば成績下位の生徒たちの成績は劇的に改善できるが、教える側の熱意と多大な労力を要する。週2回の補習を半年程度継続することが現在の先生たちにできるだろうか?昔は小学校の先生たちが熱心に補習してくれたので、分数や小数の加減上除算ができない小学生はほとんどいなかった。珠算塾の衰えも基礎計算能力の低下に拍車をかけている。

 学力テストと同時に行われた家庭学習に関するアンケート調査では、道内の小中学生の学習時間が全国平均値よりも少ないことが報じられている。根室管内の生徒の学力は14支庁管内で最低である。
 生徒の実態を見ても、小学生でおおよそ2割は家庭学習時間がゼロ、40%は1日30分未満だろうと考えられる。中学生の普段の学力テスト結果(学校で点数の分布表を出している)からはそのような実態が読み取れる。

 成績を上げたかったら、生徒は生活習慣を見直すことだ。家に帰ってきたら勉強が最優先だ。勉強を1~2時間やってから他のことをしよう。
 学校は本気で生徒の成績を上げようと思うなら、労力を厭わず、週に2日は部活を中止してでも学力不足の生徒たちに補習すべきだ
 生徒が家庭学習習慣を身につけ、学校が補習すれば、根室の子供たちの学力は全道トップレベルにできる。それほど難しいことではない
 難しいのは生徒自身が生活習慣を改善し健全な学習習慣を身につけることや親の学習に対する意識改革だろう。そして補習に関する学校の意識改革もはなはだ困難なことではある。

 小学校で6年間家庭学習をしてこなかった生徒が中学生になってから健全な過程学習習慣を育むことは非常に難しい。6年間家庭で勉強しない習慣が身についてしまっていると、それは性格の一部にまでなってしまうからだ。
 しなければいけないが、嫌なこと、つらいことを我慢してやったことのない者が嫌いな勉強を毎日継続することはたいへんである。それでもいけないことに気がつき、自分の生活習慣を改善する中学生が小数だがいる。
 優先順位を間違えないことや嫌なことでも努力して克服することを経験しておくのは重要である。そういう生徒は社会人になってからも優先順位を間違えないし、仕事で必要な専門知識や専門技術を嫌がらずに努力して身につけるだろう。

 もし、中学生がこのブログを読んでいたら君もがんばれ、生活習慣を変えてみせろ。今日から、休日は朝早く起きてまず2時間勉強しろ、他のことはそのあとでやる、たったそれだけだ。

 私塾では学力不足の塾生に対しては無料の個別補習をしているところもある。塾生でない人は電話して4回程度の無料補習が可能かどうか問い合わせてみることだ。先生との相性もある。
 小学校低学年なら日本の伝統文化・技術である珠算も基礎計算能力の育成には有効だ。根室にはすぐれた歴史をもつ珠算塾がまだある。
 試してみれば体験を通していろいろなことがわかる。それも「学び」である。

 2009年9月5日 ebisu-blog#729
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