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#1861 "先生、みて!" : うれしい学年トップ Mar. 1, 2012 [57. 塾長の教育論]

 夜になってもマイナス0.7度で暖かい。暦は3月にはいり、5時頃でも明るい、日が長くなった。

 昨日のことだが、生徒が最近受けた進研模試の個人成績表をもってきて、"先生、みて!"とうれしそう、英語の全国偏差値が65を超えていた。もちろん学年1位、生徒の笑顔はいい。中学生には理知的な大人のお姉さんに見えているようで、結構人気がある。ほかにも二人ほど人気のある高校生の"お姉さん"がいる。

  (偏差値50が平均値である。偏差値60で上位16%、全国偏差値65なら全国で上位6.7%に位置しているということ。根室高校学年トップがこのレベルだ。ちなみに校内偏差値は83となっていた。全国レベルに比べて根室高校生の平均点が低いということだ。全道14支庁管内最低レベルという全国学力テストの結果が根室高校普通科の生徒たちの全国模試の偏差値にそのまま現れている、この点は悲しくなるね。)

 この生徒は高校へ入学してからニムオロ塾へ来た生徒である。ジャパンタイムズを使った時事英語は4月からの予定、長文読解スキルにさらに磨きがかかるだろう。

 ところで時事英語授業を始めたのは2003年だっただろうか、そのときに高校2年生が二人授業に参加してくれた。根室の高校生で英字新聞を読もうという意欲のある生徒が何人いるだろうかという心配があったのでほっとした。最初のうちは丁寧に構文を解析しながら新聞英語になれてもらい、1年過ぎた頃から辞書を引きながら自力で和訳ができるようになってきて、駿台模試の偏差値が62に上がった。学年順位は入塾当初20~30位、3年の秋以降は1、2位になっていた。この生徒は中学校になってから英語を始めた生徒である。
 一度だけ高校英語の夏期講習をやったことがある。使った問題集はケンブリッジ大学出版局から出ている"Grammar in use intermediate"である。2週間毎日3時間の短期講習だった。小学校低学年から個人レッスンを受けていた高2の生徒が飛び込みで参加した。どうしてきたのか理由を聞いてみたら、英検2級を2度受験したが合格しない、限界を感じてなんとか現状を打破したいからと目標を語った、この生徒は英語の学年順位が2位だった。一人勝てない生徒がいたようだった。

 良質のテクストで辞書を引く労をいとわずにきちんと勉強すれば小学校で英語をやっていようとやっていまいと根室高校なら学年トップになれる。

 教えていて感じることだが、国語能力の高い生徒は学力のノビシロが大きい。
 数学だって日本語で書かれており、文章題はその日本語をどこまで整理して考え、捉えるかということにかかっている。新しい単元を予習するときには書かれてある説明をどこまで具体的に理解できるかということだから、日本語能力が数学の予習にも深く関連しているのである。社会も理科も教科書(英語を除いて)は日本語で書かれている。
 高校では学校の速度で勉強していたら全国模試で偏差値60以上をとることはできない。出題される問題の半分は学校で勉強するレベルを超えているのだから、その部分で半分得点できなければ偏差値60に届かぬ。

 学習の基本はいまも昔も「読み・書き・ソロバン(計算)」、一番大事なのは先頭にある"読み"だ。だからお母さんたち、学力の高い子どもに育てたいなら小学校で良質の日本語テクストをたくさん読ませるべきだ。意味はわからずとも良質のテクストを音読させてみよう。もちろん一緒にやればいい。小学校2~4年生の間にやっておこう。
 国語辞書と漢和辞典は傍においておこう。意味のわからない言葉は自分で引かせればいい。こどもは飛躍的に語彙を増やしていき、その語彙群が中学生になってから濫読を可能にし、学力を大幅に伸ばす原動力になる。
 優秀な数学者たち(岡潔、小平邦彦、藤原正彦)は日本語や日本的情緒の重要性を説いている。小学生の時期は日本語語彙(とくに文章語)の大拡張期である。その季節を逃してはならぬ、語彙が伸びる旬があるからだ。

 こうして小学校低学年で音読トレーニングをした子どもが中学生になると自分の興味のある分野の濫読期が訪れる。読む本のレベルを上げていくこともちょっと意識させるべきだ。

 子どもの成長過程全体を考えると、小学生の時期は良質の日本語テクストを選び音読トレーニングをして、辞書を引いて文章語の日本語語彙を増やすべきときであり、ほとんどの生徒に英語なんてやっている暇はない。日本語語彙を増やすべきときに、その時間を削り英語に時間を費やすと、伸びるべき日本語能力の芽が充分に育たない。
(ニムオロ塾では小学生と中学生には良質のテクストを選び日本語音読トレーニングをしている。輪読した後、三色ボールペンで線を引く。明大教授の斉藤孝方式である。)
 英語の学習は中学生からで充分である。現に小学校から英語をやっている生徒とそうではない生徒が混在する根室高校普通科でも全国模試で学年トップクラスの生徒は中学以前に英語をやっていたかどうかはほとんど関係がない。

 ニムオロ塾の時事英語はおおよそ学校の4倍量を読むから、辞書を引きながら読めるようになれば長文読解の力がぐんとつくのはあたりまえのことだろう(テクストのレベルはおおよそ大学3年次)。
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 釧路の教育を考える会のメンバーが小学校での英語教育についてブログに意見を掲載している。

 "大学受験と高校受験と教育ブログ"
 「小学校の英語授業……まず国語じゃないでしょうかね」
 
http://maruta.be/gakusyu/273

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<余談> 2016年11月20日追記
 全国模試の英語偏差値65で笑顔を見せた生徒は、釧路江南高校へ合格したのだが、なぜか4月から根室高校へ通うことになった。塾へ来た初日はご機嫌斜めで憮然とした表情をしていた。根室に戻りたくなかったように見えたので、理由を聞いてみたら、こんなことを言っていた。
 仲のよかったと思っていた友達が、転校した後に誰も連絡をくれなかった、それがショックだったというのである。「心が傷ついた」。
 連絡しなくても、「どうしてるかな」って心配していた友達は何人かいたと思うよ。中学校のときに仲がよかった友達が高校は根室ではなかったので、とっても気になっていたけど、1年間は手紙も連絡もしなかった。音信不通の期間があったけど、いまも仲のよい友達だ、そう伝えるとなんとなくほっとした様子。翌日、小学校時代の同級生が塾に入って来るなり、「おまえなんでここにいるの!」とびっくりした様子。「昨日から来てるんだ」とわたしが説明した。それから3年間仲良くやっていた。
 ブラスバンド部の練習で忙しい生徒だった。面白い子で、普段は勉強にさっぱり熱が入らない、しかし試験の3日くらい前になると、「先生、数学ぜんぜんわかんない」と学校から直行してきて、後ろの席でほかの生徒の合間を見ながら4時間ほど質問に答えていると、「ああ、そういうことだったの、なんだかわかってきた」と目が輝き始める、授業の前は40点取れるかなというくらい悲惨な状態なのだが、毎回80点を超えていて、ずっと最上位のガンマクラスだった。頭がよかったのだろう。
 もう一人の生徒は3週間くらい前から試験勉強をやっているのだが、一日で追い抜かれて、いつも後塵を拝していた。英語も数学もよくできた。なぜか男女共学ではなくて藤女子大へ進学した。
 もう一人は女子バレー部、学校の先生になって女子バレー部を指導したいと張り切っていた。英語の先生を目指して教職課程のある大学へ進学した。
 二人とも3年間部活三昧、部活・恋愛・勉強、5:3:2、思い出いっぱいの高校生活、まあまあバランスの取れた3年間だっただろう。

<余談>2018/8/17追記
 女子バレー部の生徒はたまたま受けたエアドゥーに受かって2年前からCA(キャビンアテンダント)をしている。教員になってバレー部の指導する夢どうしたんだ?
 5年くらいCAやって実戦で英語のスキルを磨いてから、教員採用試験を受けたらいい。ebisuが高校時代に元CAの英語の先生がいたら、英語の勉強に猛烈に熱が入っただろう。勉強の動機は「美人な先生に気に入られたい」でもいいのだ。英語が大好きな男子生徒が量産されることはまちがいない。 


*#1379 「読解力 (1)」 Feb.15, 2011
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-02-15

 *#1213 「数学者岡潔(1):『日本という水槽の水の入れ替え方―憂国の随筆集』」
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-09-20

 #753 「英語教育論:数学者藤原正彦『国家の品格より抜粋」 Oct. 8, 2009」
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-10-08

 #749 「フィールズ賞受賞数学者小平邦彦と藤原正彦の教育論」 #749 Oct. 4, 2009
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-10-04

 #1171 「具体的なデータによる根室の子どもたちの学力」 Aug. 23, 2010
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-08-23

 「#1573 学力と語彙力の関係(3): 英英辞書と母語の語彙」 July 7, 2011
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-07-07

 #1572 「学力と語彙力の関係(2): 5科目合計点が高い⇔国語の得点が高い?」 July 6, 20
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-07-05-3

 #1733 「"クサレン"って何?:日本語ボキャブラリー 」Nov.16, 2011
 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-16-1

 #1750 「教育再考 根室の未来第 シリーズ4部連載開始(北海道新聞)」 Nov. 25, 2011
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-11-25

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Hirosuke

青き春 自信と喜び 何にも勝れり
我には来たらぬ 黒き冬にて
我は今 我が青き春の 淡き儚き思ひのみを 
待ち人の 来らむを知るれど
ただ独り書きつくるは あな侘びしかりや

by Hirosuke (2012-03-02 08:58) 

ebisu

>我には来たらぬ 黒き冬にて

「白き冬」なら希望に満ち溢れて明るいですね。日本海の冬は暗いイメージですが、北海道の冬景色はまばゆいばかりの銀世界。そういう冬ではない「黒き冬」。雪のない冬とも読めますね。

>ただ独り書きつくるは あな侘びしかりや

反語の"や"ですね、「侘しいはずがない、独り書き創るも あな楽し」に聞こえました。(笑い)


ところで、生徒もそう感じているでしょう。

>青き春 自信と喜び 何にも勝れり

さらに高みを目指して勉学に励むことでしょう。
若い人の成長を間近に目撃することができるのは教師の役得です。

by ebisu (2012-03-02 10:48) 

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