朝のNHKラジオ番組(10分間)に「社会の見方、わたしの視点」というのがある。今日は森永卓郎氏の番だった。採りあげたのは東芝粉飾決算。

 東芝は8年にわたって1500億円もの粉飾決算をやっていた。こんなに粉飾を続けていて監査法人が知らないわけがない。監査法人の責任も追及されてしかるべきだ。東芝の担当していたのは新日本有限責任監査法人である。2010年の資料によれば、担当していた被監査会社は4103社、業界最大手である。東芝が監査会社をだましたのか、監査会社が意図的に見逃していたのかということを問題にする人もいるようだが、このようなレベルの経理操作をベテランの監査人が通常の監査手続きで見破れないなんてことは実務上ありえないから、このままでは日本の監査法人の監査への国際的信頼性が失われかねない。
 ずいぶん昔(1965年)に山陽特殊鋼の粉飾決算と経営破綻があったが、取締役7人と監査法人は責任を問われた。いまに比べると昔はちゃんとしていたように見えてしまう。

*山陽特殊鋼倒産事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E9%99%BD%E7%89%B9%E6%AE%8A%E8%A3%BD%E9%8B%BC%E5%80%92%E7%94%A3%E4%BA%8B%E4%BB%B6

 山陽特殊鋼粉飾決算事件は70億円の粉飾である。ライブドアも十数億円の粉飾決算をやって社長は実刑判決が出た。近くはオリンパス事件がある。
 今回の東芝の1500億円もの粉飾決算事件にマスコミは「不適切な会計処理」という言葉を選び、「粉飾」という言葉を使っていない。8年にわたる意図的な利益操作は会計学上も会社法上も証券取引法上もまぎれのない粉飾決算である。

 森永卓郎氏はなぜマスコミが粉飾という用語を使わないのかを鮮やかに解説して見せた。
 東芝は原子力発電所にとってなくてはならない重要企業で、国策会社であるというのだ。東芝が粉飾決算でつぶれたら、政府の原子力政策の土台が揺らぐというのである。原発を順次再稼動したい政府の意図を東証とマスコミが斟酌したとも読める。最近のマスコミの報道姿勢は、戦時中に軍部の意向を読み取り、自主規制していったのに酷似してきているようで、気持ちが悪い。

 これだけの粉飾をやったら、ただちに管理ポストへ移行するのがいままでの東京証券取引所のやり方である。上場廃止がただちに検討される。今回のケースだと、上場廃止が当然だ。
 東京証券取引所自主規制法人理事長は佐藤隆文、元大蔵官僚である、うまくできている。政権としてはここのポストに影響力をもっておけば匙加減ができる。
 「阿吽の呼吸」「以心伝心」「魚心あれば水心あり」、日本語は便利だ、事態を適切に表現できる語彙がいくつもある。日銀総裁もそういう風にして政府が操る。

 法の恣意的な適用を許してはならぬ。日本の原子力発電を支える国策企業だからといって、別扱いが許されるのかというのが森永卓郎氏の論点である。わたしの耳には至極まともな意見に聞こえた。


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