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#3387 高2 Further Reading 1 を読む  Aug. 6, 2016 [49.3 高校英語教科書を読む]

 正午の気温は26.1度、南南西の風5.1m/sec、涼しげに風が吹いている、根室の夏は最高、日本一涼しい!

 高2の生徒が教科書の Lesson 10 を終了して、木曜日(8/4)に付録の短編小説 'A Retrieved Reformation' を読み始めた。これは二つある短編小説の内の最初のもの。2年の教科書をあと2回で読み終わり、3年の教科書を3~4ヶ月間かけて読み切る予定だ。そのころには、長文への苦手意識が消滅して英文に慣れ、長文問題は得点源に変わっているだろう。
 この特訓をはじめたのは学校祭(7月初旬)が終わってから。1ヶ月間ほど読んでいるので、生徒が読めていないところがだいたい見当がつくようになってきた。文構造が多少複雑なものと熟語が苦手なようだから、そこに焦点を絞った解説をすればよい。テーマによっては周辺知識の解説も重要である。
 引っかかるところは共通しているだろうから、長文が苦手だと思っている高校生の役に立つことを願っている。

 156~158ページまで、7箇所引っかかった、そのうち質問があったのは(1)を除く6箇所。

(1) He was a big man, and famous for his skill at solving very difficult and important cases.

(2) He was the only person who knew how Jimmy did the job.

(3) People with safes full of money were glad to hear that Ben Price was at work trying to arrest Mr. Valentine.

(4) Jimmy Valentine looked into her eys, forgot at once what he was and became another man.

(5) Jimmy saw a boy playing on the steps of the bank and began asking him questions about the town.

(6) The clerk was so impressed by Jimmy's clothes and manner that he kindly gave him as much information about the town as he could.

(7) "Mr. Spencer" told the hotel clerk that he would like to stay in the town for a few days and look over the situation.

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  最初の文は質問がなかった。カンマがあるのとないのとではどのような違いがでるのだろう?そんなことがわたしは気になる。「カンマの用法」なんてものは関係代名詞の非制限用法にしか出てこない。「, and」用法なんてことを説明している受験参考書はない、だから、受験勉強としては必要ないのだろう。でも、...気になるから、俎板(まないた)に載せるのでお付き合いいただきたい。

 He was a big man and [he was] famous for his skill

 カンマなしでandでつながれていたら、「ビッグマンでかつ有名だった」ということ、これら二つは同格である。 ではカンマがある本文の意図するところはいずこにありや?
  カンマありの文を見よう。

 He was a big man, and famous for his skill

 カンマは本来「区切り」を表している。カンマで切れているから、同格ではない、後ろに続く節は前の名詞句 'a big man' の補足説明である、これが英語の語彙配列に関する一般原則のひとつ
 大学受験英語で唯一カンマのある文が採り上げられているのは関係代名詞の非制限用法である。関係節はカンマの直前にある名詞句の補足説明になっているから、同じ用法だと理解してよい。次のような訳文が適切だろう。

「彼はガタイの大きな男で、むずかしい重大事件を解決する能力があることを誰もが知っていた」

  and以下は付加情報である。

 his skill at solving very difficult and important cases

 at 以下の前置詞句は直前の名詞句 his skill の補足説明であるら、これも語彙配列の一般原則に従っている。
 ちょっと手の込んだ文である。
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 2番目の文は生徒から質問があった。how 以下の文意がつかめなかった。
(2) He was the only person who knew how Jimmy did the job.

 onlyがついたら、関係代名詞はthatだと習ったのではないか。『表現のための 実践ロイヤル英文法』270ページ「128c that が比較的好まれる場合」の項に次のように書いてある。

「次のような場合にはthatがよく用いられるが、thatでなくてもよい。 ①先行詞に最上級、first、only、best などがついているとき」

 whoでもthatでもよいのである。江川泰一郎『英文法解説』でも同じ扱いである。学校の定期テストの問題に、onlyの場合は関係代名詞はthatでなければバツにする先生がいるかもしれない。いたら、「thatでなくてもよい」のですと言おう。それは単なる勘違いなのだから。

 さて、意味を明瞭につかむために文を三つに分解してみよう。

① He was the only person (彼が唯一の人)
② He knew somthing (彼は何かを知っている)
③ how did Jimmy do the job. (ジミーが仕事をどのようにやるか)

 「彼(ベン)はジミーの手口を知っている唯一の人間だった」

 ③の文はシンプルセンテンスではないが、意味をつかむためにはここまでで充分、必要以上に分解する必要はない。
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 三番目の文は、構文が少し複雑である。動詞がたくさん使われているが、本動詞はどれ?文を見るときには、主語は何か、本動詞は何か、そしてその動詞は「現在か過去か」「進行相か完了相か」「能動態か受動態か」「仮定法かそうでないか」、これらのことを常にチェックしながら読もう。

(3) People (with safes full of money) were glad to hear that Ben Price was at work trying to arrest Mr. Valentine.

 どれが主文の主語と動詞なのかの判断がつけば、簡単である。慣れないとすぐにはわからないから、たくさん読んで慣れよう。

① People were glad to hear something
② Ben Price was at work trying to arrest Mr. Valentine.

 ようするに、「人々が何かを聞いて歓んだ」というだけの文である。括弧でくくった前置詞句を文に書き直すと、
 People have safes. (人々は金庫をもっている)
  They(safes) are full of money. (金庫にはお金がびっしり詰まっている)
 at work [which is] trying to arrest Mr. Valentine

 主語は「金庫の中にお金をびっしり溜め込んでいる人たち」
 「ベン・プライスがバレンタインを逮捕しようと仕事に取り掛かっていると聞いて、金庫にびっしりお金を溜め込んでいる金持ちたちはよろこんだ。」

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 意味がつかめない、つまり、シーンが具体的にイメージできないという質問があった。こういう小説を読むときには、シーンがありありと脳内に再生されていなければ理解したとは言えない

(4) Jimmy Valentine looked into her eys, forgot at once what he was and became another man.

 言葉からイメージをつむぎ出せたら、いい場面なのである。この短編小説のタイトルの解釈にも関わる重要なシーンだ。構文的には難しいことは何にもないし、わからない語彙もひとつもないだろう。
 「A, B and C」という構造の単純な重文である。起こった順番そのままに並んでいるだけだから、脳内にイメージができるか否かが勝負の文だ。素直に読んだらいい。
 
① Jimmy Valentain looked into her eyes. (JVは彼女の瞳を覗き込んだ)
② He forgot at once something. (彼はすぐに何かを忘れた)
③ what was he? (彼がどんな仕事をしていたのか)
④ He became another man. (彼は別の人間になった)

 ②の at once は forgot を修飾する副詞である。「瞳を見た瞬間に忘れた」という意味だ。3番目の文が理解できなかったのだろうと推測する。中1で出てくる簡単な文が、こうして埋め込み文で使われると形に惑わされて知っているはずの情報と結びつかない。

 What is he? (彼は何者?=彼の職業は何?)
  Who is he? (彼は誰?⇒個人的な関係は?)

 「ジミーはアナベルに一目惚れしたのだ。恋の力は偉大だ、それまで金庫破りを生業にしてきたが、その技術を頭の中から棄て去って、別の人間になったのである。アナベルに出遭った瞬間の出来事だった。」

 ジミーはアナベルに一目ぼれして、それまでの金庫破りという生業をやめたのであるが、それは改心したからではなく、恋心からだった。作者はこの元金庫破りがすでに改心していることを金庫に閉じ込められた少女を救う場面で示す。金庫破りのジミーはすでに過去のものであり、そこにいるのは別の人間、ラルフ・スペンサーである。ジミーを追っていた探偵のせりふがにくい。短編の題名は含意が深くお洒落だ。生徒はこのタイトルからどういう日本語をつむぎだすのか、楽しみだ。

    A Retrieved Reformation

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 文脈を読みそこなったので、playing の適切な訳語が思い浮かばなかったようだ。

(5) Jimmy saw a boy playing on the steps of the bank and began asking him questions about the town.

 重文構造で最初の文はSVOC、第5文型である。「少年が遊んでいるのを見た」後の文は第3文型なのだが、beganの目的語にaskingという4文型動詞が使われている。動名詞句が目的語になっている。

① Jimmy saw a boy playing on the steps of the bank
①-1 a boy [who is] playing on the steps of the bank
② [Jimmy] began asking him questions about the town
②-1 Jimmy asked the boy questions about the town

  「主格の関係代名詞+be動詞」は省略されるから、名詞を修飾している分詞句が後続する形になる。play the guiter, play soccer, play with dhildren, play a role, etc
 子どもの世界ではplayは「戯れる」がコアイメージであるが、大人の世界ではときに違う意味合いを帯びる。playboy, playgirl は恋の駆け引きの好きな男と女を表す。ここでは a boy と書いてあるから、「戯れる」でいい。
 ②のhimは a boy を指している。

「アナベルの父親の経営する銀行の正面玄関の階段のところで少年が遊んでいるのを見とめると、その少年に町についていくつか尋ねた。」

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 この文も意味がわからないと質問のあった。代名詞が多用されているので、「彼が」「彼に」「彼は」と訳したのでは、訳した生徒自身も意味がつかめない。

(6) The clerk was so impressed by Jimmy's clothes and manner that he kindly gave him as much information about the town as he could.

 この文は構文が多少複雑だが、難しいのはそこではなく、代名詞の多用にある。代名詞を代名詞のまま「彼」と訳出したのでは何がなんだかわからない。英語は代名詞で置き換えることになっているからそうなのであって、日本語に置き換えるときは原則としてもとの名詞を意識しろと生徒には普段から指示している。代名詞は元の名詞を日本語訳に当てはめるようにさせているのだが、それができなければ訳は完成しない。
 ここで登場する人物は二人だけ、元金庫破りのジミー(ラルフと別名を使っている)とホテルのクラークである。
 so~that の解説は不要だろう。as 以下はどれだけ kindly かの程度を表す補足説明である。「as~as」文だから、これも受験参考書の範囲だ。

 he kindly gave him as much information about the town as he could [give him].

  代名詞を識別するために、[ ]書きで元の名詞を挿入すれば文意は簡単だ。

 The clerk was so impressed by Jimmy's clothes and manner that he[the clerk] kindly gave him[Jimmy] as much information about the town as he[the clerk] could.

「ホテルの客室係りはジミーの身なりとマナーのよさに魅了されて、自分が知っているこの町の情報を全部ジミーに話した。」

 日本語の小説をたくさん読んでいる生徒は、こういうときに文脈の読み方が適切だ。濫読期を経験している生徒は、代名詞が指示している名詞を混乱なく理解できることが多い。「文脈把握力」は母語で書かれた文章を多読することで磨かれる能力である。読書量の多寡が文脈把握力を決定している。受験勉強のみでは、英文を読む能力は高(たか)が知れているということ

 クラークがフロントマンか客室係かはわたしにはわからない。ホテルの規模にもよるだろう。客の身なりやマナーで値踏みして、相応の部屋を勧める。そういうプロから見ても、ジミーはちゃんとした身なりで育ちのよさそうな青年に見えた。だから、クラークは警戒心を解除して自分の知りうるこの町の情報を洗いざらいジミーに話したのである。怪しげなところがちょっとでも見えたら、ホテルのクラークがそういう情報を見知らぬ客に与えるはずがない。もし何かあれば自分の信用が根こそぎ失われる。ジミーの身なりとマナーはクラークの警戒心を完全に解除するほど板についていたと作者は言いたいのだろう。
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 次の文も質問があった。look over の意味がわからないという。生徒は電子辞書を利用しているが、紙の辞書はもっていない。近頃こういう生徒がほとんどである。中学校の授業で英和辞典を使わないから、こういう弊害が出る。高校生になるといきなり電子辞書を使い始める。電子辞書では熟語が引けないと生徒は言うが、使い方を知らないだけか、引き方が面倒なだけだろう。

(7) "Mr. Spencer" told the hotel clerk that he[Mr. Spencer] would like to stay in the town for a few days and look over the situation.

 Mr. Spencer が the clerk に言った。

 "Mr. Spencer", the hotel clerk told him[Spencer] that he[Jimmy] would like to ... 

  over の意味、空間的な位置関係がわかれば、lookと組み合わせることで、意味は推測がつく。overは「上を覆っている」「何か障害物があってその向こう側」「高いところから見下ろす」というのがコア・イメージだ。lookと組み合わされて、「高いところから見る⇒調べる」と意味に推測がつけられるようになればいい。ここでは look over the situation だから前置詞である。定冠詞がついているから、「数日滞在して、ホテルのある町の状況をつぶさに調査したい」という意味だ。

「Mr.スペンサーはホテル・クラークに次のように言った。数日間滞在してこの町の状況をつぶさに調査したい。」

 HN「後志のおじさん」は、冠詞類や前置詞・副詞をネイティブ並に使いこなせるようにという、遠大な目標を立てて、修行をいまも怠らない「英語の達人」である。動詞のコアイメージだけでなく、前置詞や副詞が示す空間的な位置関係のイメージとそれが動詞と組み合わさって派生してくる「句動詞」の意味もネイティブ並に理解する修行を積んでいる。そういう努力は高校生だってして悪いわけがない、いや若い人ほど効率的に習得すべきだ。
 夏休みだから、田中茂範著『わかる 覚える 使える 英単語ネットワーク 前置詞・編』に目を通してみたらいい。数冊類書があるが1冊だけを選べといわれたらこれ。日本語にない機能である冠詞についても一冊読んでおきたい。冠詞を解説した本は数冊もっているが、これといったものがない。

 紙の辞書はその項目の全体が一覧できるので便利だし熟語を引くのも簡単。電子辞書は不便なところもある。
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<文の構造のおさらい>
(1) 重文
(2) 埋め込み文×2
(3) 名詞修飾語(前置詞句)、hearの目的語が節構造となっている。
   熟語のat work は「仕事中」
(4) 重文+埋め込み文
(5) 主語の倒置と代名詞の多用+重文
  熟語 look over

 最初の内は、ノートに書いて、必要な程度にシンプル・センテンス(あるいはシンプル・センテンスへといたる途中の文)に分解して文意をつかんだらよい。慣れてくれば、頭から読んでも、自動的にシンプル・センテンスに分解しながら読めるようになる。数をこなして慣れることが大事だ。
 慣れてきたら、英文を頭から読み、先読みしながら、英語を英語のイメージのまま理解するようにステップ・アップすればよい。



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#3384 syntax(統語論)をめぐって(2)  Aug. 3, 2016  [49.3 高校英語教科書を読む]

 高校生や大学生が「普通の英文」を読むときに、頭から読むのが難しい文がたまに出てくる。どういう種類の文かというと、それは「構文」という観点から見ると二つに分かれる。
 慣用文とか、専門知識の有無とか背景に関する知識の有無なども文を読み解く上で重要な要素ではあるのだが、ここでは「構文」という観点からのみ、読みづらい文を取り上げ、それを読み解く技術を呈示してみたい。

 前回、二つの文例を示した。出展は大野照男『変形文法と英文解釈』千城書房(昭和47年刊)である。1975年(昭和50年)に大学院入試の3週間前にめぐり合った本である。会うべくして出遭った本に思えた。

(1) You who read are the final judge of the value to you of the book you are reading.
(2) A cow is easy to milk.

 どちらの文も難解な単語はひとつもないが、syntaxは複雑である。
 最初の文は新聞英語では頻出する。名詞に修飾節がぶら下がっていて、どれが本動詞かすぐに理解できる高校生は少ないだろう。関係節の埋め込み文が2箇所あるが、わたしが見た限りで、高校教科書で埋め込み文は2箇所以上のものはなかった。新聞英語では3箇所あるものが時々出てくるので、面食らう高校生が多い。
 2番目の文は、1ヶ月ほど教科書の読破トレーニングをしている高校2年生がすんなり読み解いた、これには驚いた。英文を読む感覚がこんなに急によくなるとは予想していなかった。
 (1)の文は文の主要素だけを取り出すと、Ⅱ文型の簡単な文である。

  You are the final judge

 これにごちゃごちゃと飾りがついているだけ。
 著者の大野照男の説明を引用する。

--------------------------------------
 この文は、これといった難解な単語を持っていないが、その文法的技術はかなり複雑で難しい。この短逸文も五つの minimum sentences からなっていることを見抜けなければ、その意味を正確に理解したとは言えないだろう。まずその表面構造を分析しよう。

〔You (who read)1 are <the final judge of《the value>2 to you of the book》3 (you are reading)45

  関係節を( )で示し、文状名詞句を< >で示し、土台文を〔 〕で示した。それらを文に戻してみると、
      1. You are the man.
      2. You read.
      3. You finally judge the value.
      4. The book is valuable to you.
      5. You are reading the book.

 となろう。したがって、この文は例文1の修飾構造(Noun Modification)と、例文3の文状名詞(Nominarization)の双方の文法技法がからみ合って one sentence を形成している。
 したがって、読みにくい文とは、より多くの Clause の連続(例文2のタイプ)の文とうよりも、多くの文がいかに統合されて単一文を形成しているかということにあると言えよう。
        同書11ページ
〔読書をするあなたが、いま読んでいる本があなたにとって価値があるかどうかを最終的に判断する人なのです〕
--------------------------------------

 2番目の文に移ろう。
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 A cow is easy to milk.

  は、きわめて抽象的な文構造をなしているが、Native speakers には、別に苦労といったものをも感ずることなく、その意味を理解してしまう。しかし、我々にはそれが簡単ではない。ここに考えられることは、この表面構造を形成している'内'なる知識を、母国語話者は無意識のうちに内在化してしまっているが、我々にはそれがないということだろう。この内在化されているもの、つまり、その言語を創造(create)していける言語能力(我々は日本語を生成していく言語能力はすでに有してしまっている)を身につけていくことが、本来の意味での外国語学習ということになろう。
 その概念構造(以後、本論では基底構造と呼ぶ)から、表面構造に至るプロセスを概略しるせば、およそ次のように考えることができるだろう。

 a. We milk a cow.
  b. It is easy.
  c. It <we milk a cow> is easy.
     It <for us to milk a cow> is easy.
     It is easy for us to milk a cow.
     It is easy to milk a cow.
  d. A cow is easy to milk.

 ...
 特に英語を母国語とする者が、reading をしていく場合、そこに生じたさまざまの表面構造を次々に内面構造に戻して読んでいるのであり、その点を考え合わせるならば、我々の英文解釈が、表面に生じた構造のみを追いかけていたのでは、真の理解に達することはないと断言してもよいのではないかと思う。
   同書12ページ
--------------------------------------
 
 とくに付け足すことはない。高校英語の教科書なら、1ページにひとつか数ページにひとつしか変形文法を使って解説すべき箇所が現れない。テクストの難易度が普通の英文よりもずっと低いからである。これが Japan Times クラスのレベルになると13個の段落程度でも、数箇所解説の必要のある文がでてくる。説明するほうがしやすいのと、生徒が理解しやすいという二つの理由で、わたしは変形文法を利用している。

 分詞構文について、安井稔『英文法総覧』では、文末に来る分詞句を等位接続(重文構造)と言い切っているが、従属接続の分詞句の例文が『変形文法と英文解釈』には載っている。この点は後志のおじさんがハリーポッターからの引用文ですでに指摘したことでもある。
 ついでだから8ページにある「例文3」を「文状名詞 nominalization」を紹介しておきたい。

 3. I went home early and brought some more enamel paint --- black time --- and spent the evening, touching up the fender, picture-frames...
 (私は早く家に帰って、もう少しペンキを手に入れた。こんどは黒にした。そして暖炉の囲いや、額縁を塗ったりして夜を過ごした。)   8ページより

 大野は英文解釈上の5つの困難に対応する英文を挙げて論じている。
「以上、五つのタイプのむずかしさを考えてみたが、これらの文から考えられることは、1)歴史的知識、2)社会的知識、3)日常生活、4)慣用表現、5)文の統語論的知識、といった諸相が挙げられる。」 8ページ

 大学受験をする高校生がもし経済学部が志望学部なら、JT紙の経済記事には目をとしておくべきだろう、理科系ならば、健康関連記事、温暖化記事、天体、医学や医療に関する記事など、科学関連記事には目を通しておいたほうがよい。周辺知識やその分野の語彙を知っているといないとでは、英文の理解に関わってくるからである。

 分詞構文について、前回ブログ#3383で後志のおじさんとの議論を紹介したが、高校生・大学生用に書かれた『英文法総覧』では、分詞句の説明に足りないところがあることが判明した。『変形文法と英文解釈』にはちゃんと記述があった。
 受験参考書はある限界の中で書かれたものだから、余力のある生徒は『変形文法と英文解釈』のような専門書にも手を出してみたらよい。最初はピンと来なくても、背伸びして読み進むうちにわかってくる。

 『変形文法と英文解釈』はよい本だが、とっくに絶版になって手に入らない。安井稔氏が変形文法を利用した英文解釈で類似の本を出している。わたしはまだ読んでいないが、紹介だけしておきたい。

納得のゆく英文解釈 (開拓社叢書)

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#3380 高1英語教科書読破トレーニング(2) July 30, 2016 [49.3 高校英語教科書を読む]

 第1段落だけで一回目が終わってしまった。2回目は第2~4段落を扱う。Part 2はとくに新たに解説すべき事項がないのでカットした。

  Now, clean types of energy are becoming popular. For our environment, this way of making electricity is kinder than the use of fossil fuels.

 主語と動詞を見つけ出すように指示してある。動詞の訳は、目的語とセットで考えなければならないことは前回書いた。
 主語を「エネルギーのクリーンタイプ」と訳すと日本語がこなれないので、頭から「クリーン・タイプのエネルギーは」と訳すほうがよい。生徒はpopularを「人気」と訳したが、AKB48ではないのだから、「普通になってきた」くらいがいい。進行相であることはイメージに関わるから押さえておこう。「~している最中である」というのが進行相の共通のイメージ。発電設備が新設されるときには、クリーン・タイプのエネルギーが当たり前になってきているという状況を想定すればよい。

 この段落の2番目の文章は後志のおじさんがよく言っていたもの。たくさんの英文を読んできたからこういう一般化ができたのだろう。

  Adv.P+S+Adv.P

 要するに副詞句は前あるいは後ろに来るということ。副詞句には場所を表すものPlace、時をあらわすものTimeの順序、理由をあらわすものなどがある。要するに、動詞句を修飾している。Ⅲ文型でいうと、次のようになる。

  S+V+O+Place Phrase+time Phrase

  表層構造の文例を集めると副詞句が先頭に来る場合が頻繁に出てくる。しかし、深層構造では副詞句は文末である。「単純なものからより複雑なものへ」というデカルトの「科学の方法」の順序に従えば、副詞句は文末が基本ということになり、文頭に来るのは深層構造に強調変形操作を加えたということ。

 文頭に出された副詞句は、話の焦点がそこにあることを強調している。「わたしたちの環境にとって」どうであるのかというのが焦点である。比較級の説明は要らないだろうから省略する。
 生徒には2番目の文を二つのシンプルセンテンスに書き直して、再びそれを統合してみせた。生成変形文法のやり方だが、数学が得意な生徒はこういう説明が理解しやすい。
 「kind」を「親切な」「種類」とだけしか覚えていなければアウトだ。文脈を常にチェックして、意味が通じないときは、辞書を引くこと。そういう習慣が英語の学力を上げるために重要である。文脈を読むことに慣れてくれば、辞書を引かずとも「環境に・・・やさしい」と読めるようになる。化石燃料の利用よりも、クリーンエナジーのほうが環境にやさしいに決まっている。だから、文章の文脈を読み、つねに次の展開を予測しながら読むとストレスが少なくなり、速度が上がる。

 ここでも日本語のテクストを読むときに使っている技、「文脈読みの技」が応用できる。日本人でありながら日本語テクストの文脈読みができない者に、英文の文脈読みができるだろうか?
 高校生になってから英語の学力の伸びがストップしてしまっている生徒は、国語力をチェックしてみたらいい。日本語の「読み・書き」能力の大きな生徒は高校生になってから、英語のみならず「学力全般の伸び代」が大きいというのは塾先生たちに共通する意見だろう。

 3段落目を取り上げたい。タイトルを読まなかったために、この段落の4番目の文の訳が、次のページを見るまで合点がいかなかった。高1の教科書でも、ちゃんと手順に従って読めということ。

 However, we have some problems to solve. Solar energy generation doesn't work at night. It is also influenced by the weather. But the newest ways to make electricity only need our everyday actions.

①  we have some problems
②  we should solve them.
③  we have some ploblems [which we] should solve.
④  we have some ploblems to solve.

 ①と②の二つのシンプルセンテンスに分解してみた。「意味はシンプルセンテンスにあり」、②のセンテンスが④の文では句構造になって組み込まれている。
 英語だから we have と書くのであって、こういうケースでは日本語にするときには訳出の必要がない。
 「解決すべき問題がある」
 
 2番目の文は単純現在形であることに注意を払おう。生徒はgenerationを「同世代」と訳してしまった。わたしは文脈から判断して「発電」と訳したが、生徒にGENIUS4版を引かせたが適切な訳語がない。
 Solar energy generation doesn't work at night.

 generation: ①同世代の人々。②世代。③出産・生殖;(電気・熱・ガスなどの)発生

 「太陽エネルギーの発生は夜には働かない」では日本語の文章としてはまずいだろう。
 CALDを引くと次の説明が載っている。
generation: ④the production of energy in a paticular form (特定のやり方でなされるエネルギーの生産)
     Erectricity generation from wind and wave power 

 「太陽エネルギー発電は夜間は使えない」

 太陽が出ていなければ、太陽発電ができないことは、今も昔も変わらぬ物理的な事実である、つまり「普遍的な真理」、それゆえ、単純現在形でしか表現するのが英語の作法。 

 三番目の文はalsoの訳しかたを説明しただけ。「同時に~にも」と訳すと格調が高くなる。代名詞itは元の名詞に置き換えて訳そう。
 「同時に、太陽エネルギー発電は天気にも左右される」

 四番目の文が面白い。単純現在形であることに注意して読もう。
But the newest ways to make electricity only need our everyday actions.
 
 主語の'the newest ways' とは to不定詞句が示すように「最新の発電方法」である。それが、「わたしたちの毎日の行動を必要とするのみ」という意味が理解できなかった。何を言っているのか、イメージが浮かばなかった。
 後に続く句やセンテンスは前の語句やセンテンスの説明であるから、次のページを見て納得がいった。地面に敷いてあるパネルを人間が踏むと、その圧力で発電できる装置の写真が載っていた。当然、説明文もあった。橋の下に設置して、車が通るときの振動で発電して、橋に設置されている照明に電力を供給するものもある。化石燃料も要らない、太陽エネルギーや風力などの自然エネルギーも要らない、もっぱら人間の日常活動を利用した発電方式がありうるのである。

 章のタイトルをちゃんと見ておけば、すぐに具体的なイメージがわいただろう。(化石燃料にも、太陽エネルギーにも、風力にも依存しないで)わたしたちの日常活動から電気が起こせると書いてある。canは可能性を言っているのだから、それが具体的に何なのかが、この章のテーマであることがわかる。タイトルおろそかにすべからず。

    'Our Actions Can Make Electricity'
    
 ここまでで、Part 1が終了である。次のページはPart 2であるが、特にあらたに解説すべき事項は見当たらないので解説はこれで終了したい。

 わかりやすい報告書や協議書、稟議書を書ける者は英文の翻訳にもちゃんとした日本語が使えるのではないだろうか。
 生徒から聞いている限りでは、学校の授業では本文の解説があまりなされていないようだ。この十年間で生徒たちの学力が落ちているので、もっと本文の解説と和訳に力を入れてもらえないだろうか。社会人となったときの作文能力の高低は仕事に少なからぬ影響がある。

<余談>
 1990年に出版された 'Global warming The Greenpeace Report' Edited by Jeremy Leggett、Oxford Paperbacks が本棚にあった。もう26年前に買った本だ。このころ地球湯温暖化や環境汚染、生態系に関する本を好んで読んでいたようだが、この本は150ページほど目を通しただけ。554ページの本に文献ノートが63ページもつけられている。 

Global Warming: The Greenpeace Report

Global Warming: The Greenpeace Report

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  • 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr (T)
  • 発売日: 1990/09/20
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#3379 高1英語教科書読破トレーニング(1) July 30, 2016 [49.3 高校英語教科書を読む]

 高2、高3に続いて、高1の生徒も教科書読破計画に興味をもったようだ。この生徒も英語が嫌いで、4月から数学のみをやっていた。
 どこからはじめようかと訊くと、学校よりも先をやりたいということになり、'Lesson 4'からやることになった。予習方式は成績アップに絶大な効果があるから、教科書本文の理解を充実させてから学校の授業に臨みたいということのようだ。今日は完全なマンツーマンの授業、個別指導でここまでやったら、効果は大きい。ほかの生徒は質問があれば挙手するから、その間は中断、自分で調べ、考えてもらうことになる。

 タイトルが48ページに載っていたのだが、このページを飛ばして、50ページの本文からはじめた。タイトルを飛ばしたのはまずかった。

'Our Actions Can Make Electricity'

  なぜまずいのかは途中でわかる。
 たった2ページ読んだだけだが、高2や高3の教科書よりも平明な英語で書かれている。
 
 Electricity plays an important role in our daily lives. Traditional power plants use a lot of fossil fuels. However, using them gives off CO2 into the air. This has become a big cause of gloval warming.

  取り上げられているトピックスの全体の見通しを与えてくれるので、タイトルと1段落の理解が大事なことは英字新聞記事と変わらない。
 受験英語で頻出する「play a role」が早速出てきた。「役割を演ずる」とセットで覚えておきたい。動詞の意味は目的語とセットにして初めて確定する。ここら辺りも日本語と違うところだ。「役割をする」とか「役割を弾く」、「役割を遊ぶ」とは言わないから。目的語と動詞はセットで、目的語に応じた語彙(動詞)を使い分けるというのが日本語の特徴だろう。

 生徒に読ませたら、'in our daily lives' のlivesのところで躊躇したので、いい勘をしていると思った。リブズと読むかライブズと読むか迷ったのだろう。先読みして意味まで理解できた生徒はライヴズと読む。「日常生活」という意味だから、「生活 life」の複数形である、「ライフ⇒ライヴズ」である。「住む⇒live」だと「リヴ⇒リヴズ」である。
 英語の文も日本語テクストを読むときと同じように、「先読み」をしよう。漫然と音読をしても効果は小さい。

 Hirosukeさんは、日本語の意味をイメージして、「イメージ音読」を繰り返す効果を説くし、後志のおじさんは「同調音読30回」「書き取り10回」をススメる。英語の達人であるこの二人はどちらも漫然とした音読はしていない。だから、わたしも音読で「先読み」をススメたい。日本語の音読や黙読で培った技は英語の音読でも有効であるから利用しない手はない。ここでも、母語が基礎で、母語に関するトレーニングをちゃんとした者は英語でも断然有利だということがわかる
 Hirosukeさんも後志のおじさんも「古典文学」に関する知識がしっかりしていた。コメント欄での英語談義に、そうした知識が随所に出てきたことでわかる。とくに仮定法のところでそういう知識が披露された。要するに二人とも日本語の知識がたっぷりあるということ。

 生徒が発音で間違えたのはもう一箇所あった、 'global warming' である。「ワーミング」と読んだので、部活で練習の前にするのは「…アップ?」と訊いてみた。「ウォーミングアップ」だから、「ウォーミング」だ。知っているはずのことが、英語の単語を見て出てこないのは困る。こういうことを繰り返すことで、頭の中にある知識を関連付けて再整理することができる。語彙のネットワークの紐付けを編集しなおす。慣れてきたら、言われる前に自然に気がつくようになる。いまは取り出し方がわからないだけ。

 この句が辞書を引いても訳せなかった。
 'using them gives off CO2 into the air'
 
 代名詞は全部元の名詞に置き換える習慣をつけるように指示したので、themがどの名詞を受けているか探してもらった。近いところにある名詞で条件に当てはまるものから見ていけばよい。この場合はthemが複数代名詞だから、前のセンテンスの複数形の名詞を検索すると、「a lot of fossil fuels」がヒットする。これでいい。
 'give off'をGINUS4版で引くと、「(煙・におい・光・熱・音などを)発する」と書いてあるが、そのまま使うと「化石燃料を使うこと二酸化炭素空気中に発する」とうような、ヘンテコリンな日本語になる。「二酸化炭素を空気中に放出する」くらいが妥当な訳語だが、辞書には「放出する」という訳語がない。
 そもそも辞書にすべての訳語を載せることは無理で、ただの目安と思ったほうがよい。コアイメージをつかんだら、適切な日本語語彙を自分の頭の中の引き出しから取り出せばよいのである。ここでも母語の威力が重要で、日本語語彙や文章がある程度インプットされていなければ、適切な訳文が出てくるわけがない

 「化石燃料を使えばCO2が大気中に放出される」

 airは定冠詞のtheがついているので、「空気」ではなく「大気」としたほうがよい。これも文脈からの判断である。atmosphere(大気)という語彙もついでに覚えておこう。
 この文章が単純現在形で書かれていることにも注意を払いたい。化石燃料を燃やせばCO2が大気中に放出されることは、千年前もいまも変わらぬ真理=普遍的真理だから、単純現在形でなければ言い表せないのである。次の完了相の文章と対比してみると両方の含意がよくわかるはず。aspect(相)にも注意を払って文を読んでほしい。

 This has become a big cause of gloval warming.

 現在完了形は、現在に関心の焦点があるから、過去のある時点から始まったものが現在もその状態あるいは動作が続いていることをあらわしている。そして動名詞であるwarmingは進行相だから、いままさにそういう事態が進行している最中であることを表すので、「温暖化」という語彙が適切。
 'a big cause' の句にある不定冠詞の 'a' も見過ごしてはいけない。これと区別される他の 'a cause' を書き手が想定しているのである。たとえば、森林の倒木の腐敗によるメタンガスの放出や凍土(ツンドラ)の溶解による地中に保持されてきたメタンガス放出である。

--------------------------------------
 わたしは、こうして大気中に放出されたメタンガスが、雪の取り込まれたり、直接海水に取り込まれて、極地の深層海流に運ばれて、深海の圧力で固化しメタンハイドレートが生成されるのではないかと考えている。そうしたメカニズムが働いているなら、日本近海の深海底に大量に転がっているメタンハイドレートは採っても採ってもなくならない。生成される量だけ採集すれば永久につかえる資源ということになる。
---------------------------------------

 この用法のthisは、高2の教科書にも高3の教科書にも頻出するので覚えてしまおう。前の文全体を受けるthisだ。
 「化石燃料の使用によるCO2の大気中への放出は、地球温暖化の大きな原因の一つとなっている」
 
<ペースを2ヶ月で2倍に上げよう>
 90分授業1回で2ページを消化した。英語が苦手ということと、初回なので、丁寧な説明が必要だった。2ヵ月後には2倍の4ページ消化できるようになっていることを当面の目標にしたい。トレーニングが進めば、重複して出てくることはだんだん説明の必要がなくなり、独力でやれる部分が少しずつ拡大していくのが実感できるだろう。深く読めるようになってきて、書き手の意図がるかめるようになると、英文を読むこと自体が楽しくなる。

<高卒で就職するなら英語の勉強の手を抜いてよいか?>
 この生徒は高校を卒業したら就職しようかと考えている。進路については正直なところを話せば迷っているというのが本音ではないかと思う。
 就職する場合でも、成績証明書に数学と英語が5であれば、採用権限者の目を惹くことになるから、文武両道の手を抜いてはならない。
 偏差値50以上の大学へ入学できるだけの学力を備えた高卒なら、何人採用試験に応募しようが倍率に関係なく、北海道庁でも市役所でも合格できる。途中で大学へ進学したくなった場合でも、数学と英語の学力がしっかりしていれば、いつ進路変更しても戦える。高卒で就職しても、NHKの放送大学で大卒にはなっておくべきだ。よい職場に就職するほど、大卒と仕事で協力したり、渡り合ったりしなければならない機会が増える、そういうときに物怖じしなくなる。

 授業でやったことを文章で説明すると冗長になる。長くなりそうなので、2回に分けることにしたい。



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#3376 高3 受験生の夏 July 24, 2016 [49.3 高校英語教科書を読む]

 大学受験する高3は、夏休みに入ったら毎日10時間勉強するのが普通だろう。英語が大嫌いな高3の生徒がようやく英語の勉強をはじめた。
 英語の教科書 「BIG DIPPER English Communication Ⅲ」を通して読むトレーニングを7/23から開始。
「どこからやる?いまやっているところからやろうか?」
「最初からお願いします」
 殊勝な申し出だったので、第1章からスタート。2時間半でどれくらいの分量をやれるか計測して、今後の目安にする。

 教科書のサイズはB5版で、高2のものよりも一回り大型で135ページある。25章、本文は38ページある。1~3章の平均値を出して全体の語数を計算する。

 lesson 1 180 words
 lesson 2  197
  lesson 3  197
     合計     574 
     平均     191.3 words

 191.3×38ページ=7,270 words

  都立高校入試の5回分の分量しかない。三年間で3倍だとしても、このような分量で間に合うような大学なら授業内容は知れているから授業料がもったいない。
(高校の3年間、たったこれだけしか読まないような習慣がついてしまったら、大学生になってから癖として身についてしまった「不勉強の垢」を落とすのは容易ではない。社会人になってからも、仕事に必要な勉強をやろうと思ってもやれない性格になってしまっているだろう。)

 ついでだから、高2の教科書のワード数を計算してみよう。
 10章、各4パートで各パートが1ページであるから、
  10章×4ページ×135 words=5400 words

  どうやら、高3のほうが4割ほど分量が多いようだ。1年生は2年生よりもさらに分量が少ないから、3年間で読む英文の分量は、都立高校入試英語長文問題のテクスト13回分、じつに貧弱な量である。高校英語は何を目的としているのだろう?
 成績上位10%には現代国語の教科書程度の分量の英文を授業で読ませたらどういうことになるだろう。
 比較してみよう。高2の『精選 現代国語B』(大修館)は390ページあるから、
   390ページ×135 words=52,650 words
 高校3年生の英語教科書7.2冊分の分量があるが、そんなに多くはない。最低限これくらいやらないとものにはならないということだろう。

 高3のこの生徒は4月から休みが多かった。6月初旬の前期中間テストが終わってからは学校祭が終了する7月初旬まで、ほとんど来なかったので、先週引導を渡した。自覚がなさ過ぎる。
 「何度いってもなにやかやと毎回理由があってほとんど塾へは来られないようだから、数学の授業は打ち切りにする、こういうペースでは数学はもう間に合わない。これからは君が嫌いで逃げ続けてきた英語の授業だけ、次回からは英語教科書を持ってくるように。授業料は英語のみになるので半分になる」

 保護者と3者面談するつもりにしていた。7/23(土)の授業にちゃんと英語の教科書を持ってきて、2時間半かけて苦手の英語を3ページやりきったので、1ヶ月間様子を見ることにした。
 段落ごとに音読してからぶつ切りに日本語にしていく。構文の複雑なものだけは解説して専用ノートにとらせた。家では意味をイメージしながら大きな声で音読。スラッシュ・リーディングで英文のイメージを日本語に置き換える。その後で音読と書き取りを繰り返す。書き取りは1センテンスごとに3回音読して、教科書を見ないで書き取るトレーニングをするように言い渡す。きつい修行を課した。

 来週から夏休みだからちゃんとやり切れたら、9月以降も通塾を認めるが、できなければ8月いっぱいで退塾してもらう。本人にはその旨伝えた。保護者を交えた三者面談は1ヶ月延期。

 歳をとると気が短くなるようで、ちゃんとやらない生徒は今後は退塾してもらうことにする。本人の自覚がいつかは出ると信じてズルズル引き延ばしてもやらない生徒はやらないから、方針を明確にする必要を感じたしだい。
 きちんと勉強する生徒だけ面倒を見る、やらない生徒はニムオロ塾へ通塾する必要はない。塾をやめて、授業料分で本を購入したらいい、ずいぶんたくさん買える。

 成績の良し悪しではない、どんなにいま成績が悪くてもやる気のある生徒、努力する生徒の面倒は見るが、やる気のない生徒の面倒は見切れないということ。
 辛抱しきれなくなったのはひとえに歳のせいです。(笑)

 この高3の生徒は当分の間、1対1の個人レッスンになる、そんな贅沢な授業を私塾でやるところはほとんどない。何年も付き合ってきた生徒だから、やれるところまでやってみる。

 ニムオロ塾を続けられるのはあと数年だと思っている。年々体力の衰えを感じる。今日は午後からサイクリングに行くつもりだったが、午前中にお腹の具合が悪くて体力を消耗したので中止。体調が悪いとすぐに体力を消耗して回復に数日かかる。
 折りよく高校時代の友人(Y口)が、血糖値が低下したときの用心にといって「CHITOSEぶどう糖SOFT」を札幌で手に入れてもって来てくれた。上がってもらい久しぶりに二時間ほど話をした。高校2年からの付き合いだから、もう50年を超えた。日本最東端の造り酒屋の「番頭さん」だ。まっすぐな性格で頑固なところがあるが、還暦をとっくに過ぎてずいぶん丸い物言いが上手になった。(笑)
 友人たちからは「オ○ヤ」と呼ばれている。親しい友人はお互いに名前で呼ぶのがなんとなく習慣になっているから、高校2年生のときからあいつはわたしのことを「トシ」と呼ぶ。高校3年生の秋に、あいつは急性アルコール中毒でぶっ倒れたことがあった。ウィスキーをそのままブランディーグラスに並々と注いで一気飲みしたのである。吐かせて胸を冷やして介抱された。その後で酔いつぶれた数人は抛っておかれた。高校時代にこういうことを経験しておけば、大学や専門学校へ行ってから、急性アルコール中毒で死ぬということはないだろう。どの程度から危険かを知るし、介抱の仕方も心得ることになる。だから、若いときの無茶は適度にしたほうがいいのである、リスクを引いてもそこから学べることのほうがはるかに大きい。

*千歳精糖株式会社ホームページ
http://www.chitose-grp.co.jp/ 

*#3375 高2 英文多読演習にチャレンジ  July 23, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-07-23


< 余談: 大学時代に読んだ英語で書かれたテクスト量 >
 わたしは商学部会計学科の学生だったから、会計学関係の原書購読があった。会計学の専門書の一部をタイピングしてコピーした30ページほどのテクストだったから、量は多くない。3年次に時事英語を履修したので、毎週英字新聞「毎日ディリーニュース」の前日の社説を授業で読んだ。土曜日午前中の授業だったから、金曜日の社説を読んだ。時事英語の授業だけで、高校3年生の1年間分の分量は読んだだろう、ニクソンショックで固定相場制から変動相場制に変わる時期だったから、経済や外国為替の記事が多く、高校教科書とは雲泥の差があった。明治大学大学院卒の担当の先生はしばしば訳に窮して、英語の単語を辞書の訳語のまま並べただけの「珍訳」を披露することになりお気の毒だった。経済用語辞典を引けばよかったのだが、時事英語を担当しているのに、そういう辞書をお持ちではなかったようだ。専門用語はほとんど誤訳だらけ。英文学研究科卒ではとても時事英語は教えられない。社説が扱っているテーマについての専門知識の持ち合わせがなかったのである。
 わたしは経済学の体系構成について興味があり、哲学科の教授の市倉ゼミでマルクス『資本論』と『経済学批判要綱』を研究していた。研究の焦点を絞り込むのは虫観図を描くのに似た作業で、やればやるほど別の視点=鳥観図を描いて点検する必要を感じた。そういう理由で経済学説を広く知る必要があって先輩の薦めもあり経済思想史の本を読んだ。経済学説を広く知ると同時に英語の勉強をしようと、一石二鳥の試みだった。Eric Roll 'A History of economic thought' を300ページほど読んだ。慣れるまで、100ページほどはノートに訳を書いた。
 1ページ当たり366 words あるから、
  366×300ページ=109,800 words
 高校3年生の教科書が7,270 wordsだったから、
  109,800/7270=15.1年

 高校3年生の英語教科書の分量の15年分をこの1冊だけで読んでいる、経済学説史の専門書だから、内容も構文のレベルも高校教科書とは比較にならない、大学とは本来そういう場所なのである。
 必要があって英文を読むとはそういう分量を読むことで、高校時代の「英語のお勉強」とは分量も内容のレベルも比較にならない。
(その後は、英文法の専門書や問題集や言語学の専門書群は英語で書かれたものに重点が移った。)
 マルクス『資本論』も重要と思われる箇所はドイツ語版で読んだ、そうしなければ、判断のつかない箇所が出てくる。フランス語版はマルクス最後の編集だから同じ箇所はそちらもチェックすることになった。学べば学ぶほど疑問が次々に湧いて、読むべき本の範囲が広がるもの。
 そういうときに英語やドイツ語で書かれたオリジナルに直接アクセスできるかどうかは、学問研究では決定的な差を生む。
 


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#3375 高2 英文多読演習にチャレンジ  July 23, 2016 [49.3 高校英語教科書を読む]

 英語が嫌いでやりたがらなかった高2の生徒が、1ヶ月ほど前から教科書「VIVID Ⅱ」の読破にチャレンジしている。
 昨日は1時間半の授業で「lesson 9」part 1~ 4をやり終えた。前回も1時間半で4パートをやったので、1時間半の授業で1章を消化するペース(速度)が確保できたようだ。最後の章の後に、読み物の付録が数点載っているが、cover to cover で全部やっても8月初旬には終わりそうだ。前半の章よりも後半の章はすこしテクストの構文レベルが上がっているのだが速度が落ちないのはよい傾向だ。

(次(第2段階)で予定しているのは3年生の教科書である、目安は3ヶ月での読破。第3段階は読みやすい小説を数冊用意して選ばせようと思っている。100ページくらいやればあとは自分で読めるだろう。第4段階はJapan Timesである。全部やりきれば偏差値は70を超えるだろうが、やり切れる生徒は少ない。)
 
 本人の弁によると、単語を引く回数が減ったという。引く場合でも言い付けた通りに意味に見当をつけてから引くようにしている。当たる回数が増えてきたと喜んでいる。学習にはこういう上達の手応えが感じられる仕掛けがあったほうが意欲がわく。

 1章(lesson)が4パートに分かれているが、それぞれのパートに、1・2箇所キー・センテンスがあるので、そこは重点的に解説している。昨日は、その部分に質問が集中していたから、腕が上がってきた。

 3~5回音読しながら和語に直してもらう。辞書そのままで日本語として成立しないような訳や漢語訳をそのまま使って硬すぎる場合は、「大和言葉落とし」をして、普段使うやさしい日本語に直させる。辞書に並んだ漢字訳語をそのまま並べて和訳ができたつもりの高校生や大学生が多いから、適宜「大和言葉落とし」で英文のイメージを語ってもらうのは語学のセンスを磨く効果がある。

 レッスン11はアフガニスタンンの反政府武装勢力の「武装解除」がテーマである。タイトルは、
  'The Challenge of Disarmament'

  これを生徒は、「軍縮へのチャレンジ」と訳した。パート4まで目を通して、辞書を引いたあとでこの訳ではダメ。「軍縮」の話ではなく、手持ちの武器を自主的に差し出させることを目的とするプロジェクトのようなものだから、「武装解除、やったるぜ!」くらいがよい。日本史では「刀狩」だ。

 「大和言葉落とし」とはこういう訳を謂う。関西人なら「武装解除、やったろうやないか」とやればよい。言葉が生き生きしてくるのが実感できるだろう。死んだ言葉では肝心なものが伝わらないことがある。しかし、全部を「大和言葉落とし」する必要はないから、大事なところを選び適宜試みたらよい。
 ここで生徒はdisarmamentを軍縮と訳したが、dis+armament、armは武器、armamentは「軍備」「武装」、写真や図を見ると武装解除という日本語が適切であることは一目瞭然、言葉だけでなく、図や写真をちゃんと見て文章や文中の語彙と付き合わせる習慣も養いたい。センター試験ではグラフを読む問題が増えている。

 パート1でピックアップした文章を示す。

 "War is over," said the President. Then, the soldiers had the weapons checked and gave them up.

 「大統領が戦争は終わったと言った」という文は倒置法で、新聞英語記事の冒頭部分でよく見られる書き方である。問題はその次の文である。ちょっと紛らわしい。こういうところをしっかり解説しておかないといけない。案の定、意味がつかめていない訳になっていた。デカルトの「科学の方法」「第二」にしたがって、必要なだけの小部分に分解してみる。

① the soldiers had the weapons checked
②  (the soldiers) gave the weapons up

 この二つの文が重文として統合された。①は「have+O+PP」で受験問題に頻出する文である。使役と受身の意味があるが、じつはどちらも受身である。

①-1 the soldiers had the weapons (which was) checked (by someone) 
    1-2 the soldiers had the weapons
     (兵士は武器を持っており)
    1-3 the weapons was checked by someone
     (その武器は誰かによって点検される)

  被害を受けるというコンテキストなら受身に訳し、そうでなければ使役「~してもらう、させる」である。

------------------------------------------------
 この項に関しては、江川泰一郎著『英文法解説』「191. Have+O+過去分詞」の記述が詳しい。3冊の中で例文も一番多かった。綿貫・マーク=ピーターセン共著『表現のための実践ロイヤル英文法』も引きやすかった。

 安井稔著『英文法総覧』は索引に「have+O+PP」の項があったが、「28.2.2」には一例が載っているだけである。「have+O+原型不定詞」の使役用法と比較しているので、前2書とは視点がちょっと違っており、これはこれで役に立つ。
  I had my room painted, and got the cupboard repaired.
  (私は自分部屋を塗ってもらった、そして食器棚を修理してもらった。)
  I had Tom paint my room.
  (私はトムに私の部屋を塗らせた。)

 全般的なことを言うと、この本には生成変形文法による「参考」や「解説」コラムがときどき顔を出すが、それと断っている場合と、示唆せずに踏み込んでいる場合があるが、いずれもきわめて初歩的なものにとどめているので、興味のある人は専門書を読んだらいい。生成変形文法はチョムスキーの普遍文法=構造言語学がベースなので、文系と理系の両方にまたがる学問分野で、理解できる日本人の英文法研究者はすくない。こういう分野は翻訳者と読者の両方が文系と理系の分野を自在に歩き回れることが条件になるので、翻訳書もほとんどないから、原書を読むことになるだろう。翻訳もたいへんだし、本が出ても読む人が少ない。日本人の手になる研究書は少数出版されている。
 構造言語学は自動翻訳の基礎理論でもあるから、日本人の研究者のニーズは小さくないだろう。興味を持って、構造言語学関係の本を読み漁る大学生が増えてほしい。
------------------------------------------------

 ②は主語を補うだけで文意が明確になるだろう。「the soldiers had gave them up」でないことだけはgaveが過去形だから間違えないだろう。

 「兵士たちは(自ら進んで)武器の点検を受けた後で(それを)引き渡した」

 さて、発展問題である。この文からandを抜くとどうなるか?
 英字新聞なら次のように書くのが普通だろう。高校英語では「分詞構文」は頻繁に出てくるが、こういう修辞上の配慮がなされた普通の文がでてこないのはとっても不思議だ。英字新聞での出現頻度は百対1ぐらいだろう。もちろん分詞構文が1である。そして分詞構文の出てくる記事はほとんどが日本人スタッフライターの手になるものだ。andでつないだ文の主語を省略するぐらいなら、ingをつけて句に書き換えるのが当たり前。読み手は前の文から主語を補って動詞の時制を合わせてすんなり読む。

 "War is over," said the President. Then, the soldiers had the weapons checked, giving them up.


 和訳に際しては代名詞はすべて元の名詞に置き換えて訳させている、日本語では代名詞はあまり使わないし、前述の名詞をかならず代名詞で受けないといけないという文法規則がないからである。
 代名詞をそのまま「それ」「それら」とイージーに訳していたら、わけのわからぬ日本語になる。

 パート2では次の文の質問があった。どういうシーンかを想像するために前後関係が必要だから2文ピックアップする。

 Seya used to work for the United Nations as a volunteer.  Then, asked by Foreign Ministry of Japan, she joined a disarmament project in Afghanistan.

 二つの文は関係があるので、つながりを意識して文脈を読まなければならない。こういう箇所に来ると、日本語の良質のテクストをたくさん読んでいるかいないかの差がはっきり出てくる。年齢相応に読書レベルを上げて多読していないと文脈が読めない。予期した通りの結果になった。
 「文法知識+文脈理解力」が問われる文である。本をたくさん読んでいる生徒は問題なくここを通り過ぎるだろう。

① Seya used to work for the United Nations as a volunteer.
 
 太字は受験英語のトピックのひとつだ。「かつては国連でボランティアとして働いていたことがある」ということは、現在はそうではないということだから、「いまなにしているの?」と文脈が読めた人は、次の展開が予測できる。後続の文は前の文の説明であることが多いのが英文の特徴のひとつだから、そういうつもりで読め!

② Then, asked by Foreign Ministry of Japan, she joined a disarmament project in Afghanistan.

 ②1 (being) asked by Foreign Ministry of Japan,
     1-2 as she was asked by Foreign Ministry of Japan,

 こういう変換は繰り返して読んでいるうちに慣れてきて、無意識にシンプルセンテンスに読み換えて瞬時に意味がつかめるようになる、「慣れ」が大事だ。
(だから、生徒と先生の「対面での技の伝授」が理想である。頭が人よりもすこしよければ、時間がかかるが理屈を聞いただけで自分でやれる。教えてもらわないとできないようでは、ものにはならぬ、職人仕事は親方の仕事を見て真似る
 教えてもらわなければわからないようでは、一人前の職人にはなかなかなれないし、まして自分で工夫して親方を超えることはできない。勉強も同じで、塾や予備校で手取り足取り教えでもらって一流大学へ入学したって、社会人になったときにはまるでひ弱で戦えない。どこかでだれのサポートも受けずに自力で学び始めなければならないのだよ。)
 
 askを「たずねる」と訳してしまった、
「それでは言っていることの意味がさっぱりわからないだろう?この訳語では前後関係がおかしいなというアンテナが働かないとアウトだ」
 違和感を大事にしないと上達しないから、小さな違和感が生じたら、まずは辞書をよく読むこと。「依頼する、頼む」という訳語がある。
 「日本の外務省が彼女に依頼したので」という訳が適切だ。ついでに言うと、United Nationsを国際連盟と訳した。国際連盟は第一次世界大戦の終戦処理でできたもの。ベルサイユ条約に日本が人種平等条項の折込を主張して、人種差別の激しかった米国と、白豪主義でボリジアニを差別していたオーストラリアが強硬に反対し採択されなかった。このことが次の大戦への伏線になっている。国際会議の場で堂々と人種平等を主張し、白人の世界支配を根底から覆しかねない有色人種の国、日本が許せなかったのだろう。だから日本を叩き潰すオレンジ計画を策定して、20年をかけて日本を戦略的に追い詰めていった。
(そういう周辺知識もあったほうが文意を取り違えない。受験勉強の範囲を出て、さまざまな本を読み、意見の違う人と議論する必要がある。受験知識だけでは偏差値70はなかなか超えられない。)
UNは国際連合である。第2次世界大戦の連合国という意味だ。敗戦国であるドイツと日本は70年が過ぎても大きな差別を受けており、いまだに安全保障理事会常任理事国入りができない。

「(国連のボランティアを経験した後で)日本外務省の依頼で、瀬谷さんはアフガニスタンの武装解除プロジェクトに参加した」

 このあとに地雷と地雷の除去作業の話が出てくるが、英文を読んで地雷がどういう状態で残っているのか、その除去作業がどのように行われて、周辺住民にその危険な作業がどのように受け取られているのか、英文からイメージできてはじめて適切な日本語になる。そういう作業を一緒にやって、稚拙な箇所を指摘し、お手本を示してやるのである。

 When they dug mines out of the ground, the residents appriciated their work. This, in turn, made them happy. In this way, the former soldiers gradually became ordinary citizens.

  この生徒はappreciateを電子辞書の筆頭に載っている「正しく理解する」のまんまで訳した。その時点で、この文の意味がまるでわかっていないことが判明する。「なんかおかしい?」という違和感、the sixth sense(第六感)が働いていない、トレーニングで感覚が呼び覚まされることを期待している。
 地雷を地面から掘り出す作業はたいへん危険で、まず地雷を確認するために地雷のありそうなところに歩いて入らなければならない。地雷を見つけたら、周りの土を静かに除去して信管を取り外すか爆発させるのだが、そのときが一番危険である。地雷が周囲に仕掛けられたままになっているので、その地域に住む住民は子どもを外で遊ばせることもできない。地雷の除去ができれば子どもたちは外で遊べるし、住民は周辺を安全に歩き回ることができる。地雷をひとつまたひとつと除去するたびに、それを見ている住民は危険な作業をする兵士に感謝の言葉をかける、兵士はそれを聞いて、自分の仕事が役に立っていると実感する。そのことが兵士をハッピーにする。
 こういう好循環を繰り返すことで、兵士は普通の市民へ戻っていき、二度と武器を手にすることがなくなる。

 文章を通して、どれだけ具体的なシーンをイメージできるかが大事なのである。あとはそのイメージを自分の日本語語彙の範囲で表現すればよい。

 この高2の生徒は8月初旬には高校3年生の教科書を読んでいるだろう。40s前半の英語の偏差値が60を超えるのがいつになるのか楽しみである、そしてそれがどこまで伸びるかは本人しだい。偏差値70をクリアできる科目があれば受験はずいぶん楽になる。


< 余談: 教員の英検準1級取得率 >
 今朝5時ころのNHKラジオ放送で、高校英語教員の英検準1級取得率が57%、中学校の英語教員は3割を超えているという解説があったが、これはデータがおかしい。
 おそらく「英検準1級相当」ということで、いろんなものが混ぜられて「英検準1級」にカウントされている。以前に弊ブログで論じたことがある。
 根室高校では最近準1級を受験した先生がいるようだが、合格していればただ一人である。ましてや、市街化地域の3中学校の英語の先生で準1級取得者は一人も居ないだろう。文科省は「英検準1級○名○%、英検1級○名」「TOEIC800点以上○名○%」とちゃんとしたデータを公表すべきだ。
 そうでないと根室の学校の英語教員は、異常に英検準1級取得者が少ないということになりかねない。こういう好い加減なデータ公表は誤解の元だ。
 根室市教委さん、市内の中学校の英語担当教員に英検準1級所得者がいるなら、どの学校に何名いるのかデータを公表してあげたらいかが?スキルアップに努力を惜しまない教員は大いにほめてあげよう。

< 余談-2:データ >
 中学校英語教員数 31,487人
 高校英語教員数   29,255人
       合計       60,742人 

 英検準一級年間合格者数は約4000人、合格率15%。
 このうち、3%が英語の先生になったとして試算すると、
  4000×3%×38年=4560人
  4560人÷60,742人=7.5%

 中学校と高校の英語担当教員で英検準一級「純正取得者」数の推計値はおおよそ7.5%である。これが20%なんてことはとても考えられない。「英検準一級相当」なんてインチキ・データではなく、本当のデータを検定の種類ごとに実際の数字を公表すべきだ。おそらく惨憺たる数字が出ている。文科省はデータを収集して知っているから、こんなあいまいで出鱈目な数字を公表しているのだろう。


*中学校と高校の英語教員数推計値(文科省:平成19年10月1日現在)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/082/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/02/18/1301726_03.pdf

  データから見る英検準1級
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/082/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/02/18/1301726_03.pdf


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