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#5030 「原爆初動調査の全貌」:NHK隠蔽体質の匂い? Aug. 6, 2023 [8. 時事評論]

 午後3時20分から、NHK衛星放送の標記番組の再放送を見ました。米軍は長崎県西山地区の残留放射能調査をし、さらに継続して健康被害も調査していたのに、原爆開発の責任者でもあったレスリー・グローブス少将は残留放射能はないと死ぬまで断言し続け、戦後も原爆開発に邁進しました。

 わたしが驚いたのは、福島第一原発事故の水素爆発の映像です。1号建屋の水素爆発でしたが、あれはこの番組ににふさわしい映像だったのかということ。
 1号炉、2号炉、4号炉は水素爆発だったようですが、3号炉の爆発は赤い炎と黒い煙がきのこ雲状に270mも吹き上げていました。ガラガラと大きなコンクリートの塊のようなものがその雲の中から落ちてくるのもはっきり写っていました。いまだに、明確な説明がありません。真上に270mも吹き飛ばすというのは、筒型の巨大な砲のようなものから発射されたと考えるのが自然でしょう。とすると原子炉格納容器と原子炉圧力容器の上部が吹き飛んだのではないでしょうか。格納容器にはコンクリート製の分厚い黄色い蓋があったはずで、爆発後の飛行機がとった写真には3号炉には黄色のふたの部分が映っていませんでした。水素爆発だと假定したら、高崎放射性核種観測所で、核爆発時直後にさまざまな放射性物質の核種を観測できるはずもありませんでした。状況証拠は核の暴発を指しています。
*爆発後の3号機建屋の写真
 「原爆初動調査の全貌」と題する番組ならあの爆発と3号炉建屋の放射能汚染のすさまじさこそ取り上げるべきではないのかと思いました。番組ディレクターはどういう判断で3号炉爆発映像を避けたのか知りたいものです。

 長崎県西山地区は爆心地とは離れています。山を越えた隣に位置して、プルトニウム原爆が爆発して大量の放射能を空気中にばら撒き、それが黒い雨になって降り注いだのです。住民はその後も危険を知らずに放射能汚染された水を飲み、その水で煮炊きをして生活し、畑で作った作物を食べ、そして商品として販売して生活していました。そういう状況下に30年以上も置かれて、急性骨髄性白血病やさまざまな癌を発症して相次いで住民がなくなったのです。人体実験そのものです。

 福島第一原発でも、4つの原子炉建屋が相次いで爆発した後に、北北西方向に風が吹き、放射能が狭い地域に高濃度で降り注ぎましたが、当時の民主党政権の枝野官房長官は「直ちに健康被害が生ずることはありません」とテレビで繰り返しました。放射能感受性の高い子供たちすら避難させず、そのまま汚染地域に放置したのです。長崎県西山地区の住民と状況が似ていませんか?

 NHKはそのこともこの番組では取り上げませんでした。戦後に駐留米軍がやったのと同じことを福島第一原発災害で日本政府(しかも、民主党政権)がしたのですから、取り上げるべきでした。

 福島第一原発事故で残留放射能汚染の問題はもう12年たってほとんど取り上げられません。たくさん出た子どもたちの甲状腺癌も因果関係なしということになっています。

 原爆被害も原子力発電所爆発事故による放射能汚染による被害も同じです。
 米軍による情報の隠蔽と住民の健康被害を無視して医学実験データを撮り続けた姿勢は、福島第一原発事故でもよく似ています。同じ構図で情報の隠蔽と被害の拡大が続いているのは怖いことです。

 放射線による被害は遺伝子を傷害して、代を継いで被害が現れるリスクがあります。
 1945年の広島と長崎への原爆投下は残留放射能問題と体内被曝による骨髄性白血病や癌などさまざまな病気を引き起こし、人々を苦しめ続けています。妊娠2か月で被爆して、生まれてきた子供が小頭症という事例が紹介されていました。

 NHKの報道番組の在り方が、戦争直後もいまもそれほど変わっていないことに慄然としました。受信料で成り立っているのですから、日本政府の意向に忖度しない報道姿勢を取り戻してもらいたい。


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#5007生成AI利用に関するガイドラインとその背後にある問題 Jul. 5, 2023 [8. 時事評論]

<最終更新情報>7/6朝9時 <システム開発要員の質の問題>を追記

 文科大臣が学校現場での生成AI利用に関するガイドラインを公表しました。

 生成AI活用法について、「不適切な例」と「適切な例」をガイドラインとして挙げています。突然、生成AIがいくつかオープンになって、利用が進んでしまっているので、慌ててガイドラインを出したように見えます。

 生成AIに関する利用技術は利用することでしか磨けません
 結論から言うと、従来型の授業が成り立たないのが実情です。四つ理由をのべます。

 令和2年の調査によれば、小中高の学校は24723校あり、学校の先生の総数は90万人です。学校の先生のうちで、情報技術について基礎的なことを学校で学んだことのある人は1%もいないでしょう。
 中学校からは科目担当制になっていますが、その科目を大学で学んでなければ、教員にはなれません。教師が教える科目について確かな専門知識と教えるスキルを有しているということが、学校の授業の前提条件です。情報スキルに関してはこれが成り立ちません

 2つ目は、生徒の1割くらいは90%の先生たちよりも、情報ツールを使い慣れているということ。教えられる生徒の方が先生よりも使い慣れているという実態があります。これでは、従来型の「授業」が成り立たない。

 3つめは、文科省にすら、デジタル技術について専門的な知識と経験を積んだ官僚がほとんどいないということ。
 そういう官僚の育成を怠ってきたツケが回ってきました。いま旗振り役は大変な苦労をしていると思います。
 台湾がCOVID-19対策で、情報スキルの分野でめざましい効果を上げましたが、旗振り役がオードリー・タンという情報技術に関して専門知識と経験を有する人物であったからです。プログラミングもできないようでは仕事の差し建ができないので無理です。河野デジタル大臣がその典型、専門的な知識や経験ばかりでなく、謙虚さがないので、印鑑の廃止もマイナンバー制度も「人災」でしかありません。必要とされる専門知識や経験もなく、仕事のできない者が張り切って仕事すると碌なことにならないのです。知らないなら、謙虚にやればいいだけです。専門的な知識のない人と、対話するのは実に不効率で、話がなかなか伝わらないのです。専門用語を使うことで、対話は正確なものになるのですが、専門知識がなければそうした対話が成り立たないのです。

 4つ目は、高校の文系・理系の区分けがもう現実の人材要請と合わない時代になっています。高校教育と大学教育の根源的な見直しが必要だということ。
 例えば、文系コースや商業科でも、数Ⅲの選択ができるように変えるべきでしょう。総合大学では、文系学部でも理系学部の科目履修が可能なように変化を起こしているところが出てきていますが、30年以上遅い。
 情報科学に特化あるいは重視した学部配置の大学の設立もほとんどありませんでした。米国ではカーネギーメロン大学の対応が早かった。

 東大法学部卒の文系の官僚が主導するこの国の文教政策は、30年間遅れてしまったということです。だから、いま、文科省はたいへんです。ギガスクール構想で、小中校の生徒に一人一台の端末を配布して、ICT化を進めています。学校現場には情報スキルの高い先生はごくわずかしかいません。複数の学校をまとめて担当させるサーバー管理者すら配置できない。サーバー管理者はスキルが高いので、こういう人材配置があれば、一般の教員は利用技術でわからないところがあれば質問できます。でも、20-30年かかりそうです。
 だから、10年後に2割の教員が、情報技術について基礎的なことをマスターし、利用できるレベルを目指せばいい。当面は、ZoomやTeamsが使え、ロイロノートのようなものを補助教材として使えたらいい。慣れの問題だから、これくらいなら、問題なくできそうです。COVID-19で遠隔授業が浸透したので、このレベルならすでにできている学校が多い。COVID-19の果たした役割は大きい。そこへ今度は生成AIの利用が降って湧いた。

<システム要員の必要数試算>
 一部上場企業では、社員の2~3%程度のシステム要員を抱えています。仮に、教育村では2%のシステム要員が必要だとすると、「90万人×2%=1.8万人」ということになります。学校のさまざまな業務を生産性を上げる方向でシステム化するには、生産性の高い実務設計をすることになるので、その開発と運用と保守にすくなくとも1.8万人のシステム要員が必要ということになります。そうでないと、セキュリティの面からも、学校での様々な業務の生産性を飛躍的にアップすることは困難でしょうね。いまのままで、さまざまな業務を同じサーバーで運用すると滅茶苦茶になります。学校現場がシステムに慣れてくると、基礎的な技術を持っていない人たちがいろいろやりたがるようになって、セキュリティ面でのシステム障害の発生をとめようがなくなります。マイナンバーのついた、学力データが漏洩したら、たいへんなことになります。いまのままだとなりかねません。

<システム開発要員の質の問題>
 昨日、投稿欄で「四谷怪談」というハンドルネームの方のポスティングを読んでいて知ったことがあります。SEには開発系と、運用系と保守系の三種類があるということです。わたしが仕事していた1980年代は開発系のSEだけが「SE]と名乗れました。運用・保守系の担当者はシステムデザイン能力がない人たちがやっていました。現在は、運用や保守業務が複雑になって専門化しているようで、そこを担う人たちもSEというようです。認識を改めました。
 ところで、ロイロノートやZoomやTeamsはその都度便利なものを使えばいいだけで、自前で開発する必要がありません。ところが、学校の業務の生産性をアップするためのシステム開発は、開発に熟練した高度なスキルをもったSEが必要になります。利益の管理をしなければならない民間企業とは違って、学校の業務がそれほど複雑とは思いませんが、それでもいままでやったことのないシステム開発にはなります。このレベルのSEは業界でも人数が少なく、奪い合いになっています。デジタル庁は民間からのレベルの高いSEのスカウトなしに業務がこなせないことはマイナンバーでも明らかです。住所表記が不統一で、入力データを突合するのに考慮しなければならない事項であったことは、基本に属することですが、そういうことが簡単に見落とされているほど、担当したSEもそれをチェックしているはずの上司の仕事も、請け負った会社の仕事の体制も怪しい。文科省の官僚が仕様書を書けないのだから、面倒くさくて無視した可能性は小さいがありそうです。
 1980年代に株式上場準備のために経営統合システム開発をしましたが、オービックのトップレベルのSEのSさんと日本電気情報サービスのトップレベルのSEであるTさんと仕事しています。1984年にはNCDさんの3人のレベルの高いSEとも仕事していますが、その経験を踏まえて言うと、開発系のSEで、経営情報系の実務デザインができるSEは一人もいませんでした。いままでにない実務を設計するのですから、使う帳票をまったく新しいものにデザインし直さないといけません。そしてデザインした実務がトラブルなく動かなくてはいけないのです。
 輸入業務もあるので為替の知識や輸入業務の専門知識、実務知識は不可欠です。真ん中に計系システムがあるので簿記の専門知識も公認会計士レベル以上で必要になります。工場やラボがあれば原価計算に関しても公認会計士以上の専門知識と経験が必要になります。経営改善のために経営分析に関する知識も、日本ではなく米国のトップレベルの知識が必要です。在庫管理に関しても専門知識が必要になります。支払いとつながるので、会計システムの知識もなければいけません。売上債権に関しても同じことが言えます。固定資産管理と投資に関しても予算システムとの関係で、予定減価償却費が精度よく計算されなければいけないので、今までないシステム開発が要求されました。そしてそれらのシステム間のデータの整合性を保障する仕組みも考えておかなければなりませんでした。つまり、これらの複合分野のアプリケーションに関する知識と経験なしにはこの手の経営統合システム開発は不可能なのです。1997年に製薬メーカー向けの臨床治験データ管理パッケージシステムを開発したのが、システム開発では最後の仕事でした。これは具体的な事業分野開拓の方針と、開発に必要なツールとラックマウントの強力なNTサーバーを用意してやっただけで、実際の開発業務は精鋭の4人が担当してくれました。その結果、設立後3年で、赤字会社が黒字転換できました。
 学校の業務はずっと簡単ですが、生徒の学力データを扱うので、セキュリティ・レベルは高いものが要求されます。運用も熟練したSEが監視していないと危ういのです。
 だから、学校の業務をシステム化するのが一番困難な仕事になるでしょう。担えるレベルのSEが日本には少なすぎます。20年あるいは30年かけて育てなければならない。長期戦略が必要です。
 

<二つの課題:応急手当と長期戦略>
 ふたつの課題に同時に取り組む必要があるのでしょう。
 暫定的な方法としては、スキルの高い生徒が教えるという授業スタイルの導入が必要だということ。なにをどうやっても混乱は避けられませんが、いまある資源を有効に使うには、スキルの高い生徒を授業で上手に使うということ。そして、情報科学について高度なスキルを持つ大学・学部の定員を増やして、技術者を2倍程度にもっていく長期戦略を立案し、実行すること。

<学校業務の生産性アップいう課題>
 応急手当と、長期的に情報スキルを担当できる人材を2倍に増やせるように戦略立案・実行の両方が必要です。
 たいへんな仕事です。一人一台の端末配布は、一部上場企業では1990年代半ばには実現していました。そこから25年以上遅れて、学校現場にようやく生徒一人一台の端末配布が実現し、新型コロナの影響もあり、遠隔授業には慣れました。これからはさらに生成AIの利用技術に関する(優秀な生徒をリーダとする)授業と、生成AIの活用を適切に指導できる教員育成、そして生産性向上を目的とする学校業務のシステム化という三つの課題に取り組まないといけない事態になりました。
 学校業務の生産性をアップして労働環境を改善しないと、優秀な人材が集められないので教員の数と質を維持できません。すでに、各地で教員採用の応募倍率が激減しています。2倍になっているところが増えています。一部上場企業では数十人の採用に、1万人が応募してきます。100~500倍の難関企業が少なくありません。それに比べると、教員採用が2倍というのは、希望したらほとんどが採用されるということです。これでは授業の質の維持は無理でしょう。教育村に優秀な人材を集められません。業務の生産性も自分たちでアップすることがはなはだ難しいものになります。外部依存するしかなくなります。
 自分たちの業務の生産性改善もできないような学校という組織に、子供の教育をゆだねられますか?そういう深刻な問題が起きているということなのです。

<正解のない未知の分野へのチャレンジ>
 いま、文科省では人材がいない中でがんばるしかありません。受験勉強をし過ぎた頭の固い東大法学部出身の官僚にはとても無理です。彼らが得意なのは、正解のある問題を高速で解くことにあります。教育分野へのICTの導入・普及は決ったやり方や決まった正解のない未知の分野ですから、受験エリートには無理です。そうではない人に白羽の矢が立ちました。意義の大きい仕事ですが、旗振り役のMさん謙虚ですから、きっと命を削るような仕事をしています、健康に留意している暇なんてないのでしょう。誰かが担わなきゃいけない。



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#5006 日本郵政損失850億円計上:経営能力ナシ Jun. 30, 2023  [8. 時事評論]

 日本郵政は2019年に楽天の株を1500億円買い入れた。楽天の三木谷社長が、日本郵政の増田寛也社長に資本提携と業務提携を持ち掛けたもの。
 当時、増田寛也社長は「最高の組み合わせ」だと絶賛していた。「相乗効果が期待できる」とも、意味不明のことをおっしゃっていました。

 日本郵政は2006年に元住友銀行頭取の西川善文氏が初代社長に就任、現在の増田寛也氏が6代目です。日本郵政は2021年に資本提携と業務提携を目的として、1500億円出資しています。1100円/株での取得だったようです。6/30の終値は499円でした。
 日本郵政は楽天株の下落で評価損を850億円計上すると今日(6/30)発表しました。

 楽天はモバイルフォーン事業がうまくいかず、資金不足を解消するために日本郵政に資本提携と業務提携を持ち掛けました。具体的な相乗効果が出せる話などなかったのです。大きな会社が業務提携すれば、赤字事業が黒字になると勝手に思い込みました。経営者としては幼児に等しい思考です。

 1996年11月に帝人とSRLの治験検査合弁会社の立ち上げプロジェクトが暗礁に乗り上げ、急遽、子会社へ出向していたのですが、親会社の社長のKさんに呼ばれて、
①新聞公表通りの期日(1月)に立ち上げ
②赤字部門同士の合弁なので、3年以内に黒字化
③3年で合弁を解消して、SRLの完全子会社にする
④帝人の臨床検査子会社の吸収合併
 これら4項目を3年でやるように直接指示を受けました。経営の全権を委任してもらわなければやれるはずがないので、それを条件に飲んでもらいました。常勤の常務と非常勤役員に親会社の役員が2名の体制でした。取締役ではないただの管理部門の部長が経営の全権を委任された変則的な体制でした。1年半後に職位を上げて平取締役ということになりました。帝人側からは親会社のI常務が非常勤取締役として毎月の取締役会に出席していました。経営戦略の立案と取締役会への説明、そして実行管理はわたしの仕事でした。帝人側から合弁会社の社長を出してもらっていましたが、I常務はとっても協力的で、好きにやらせてくれました。赤字が続いていた臨床検査子会社の経営が帝人本社内で大きな問題になりつつありました。I常務とM専務が臨床検査事業をどうするか、Y社長から方針決定を迫られていたからです。お二人は、合弁会社だけでなく、帝人の臨床検査子会社の経営もやってほしかった。実際にI常務から、帝人の臨床検査子会社を合弁会社の子会社にするから、兼務で両方の社長をやって、経営をしてもらいたいと申し入れを受けています。しかし、SRLの人事慣例で不可能でした。その結果、人員整理、事業縮小ということになってしまいました。かわいそうでした。社員を救う具体案はありましたが、別会社で権限が及ばないので実行できません。対BML戦略で、首都圏の一般検査子会社の売上を2倍に拡張する案だったので、自分でやらないと調整がつけられません。SRL東京ラボが首都圏をエリアとするラボでした。システムを更新して、新ラボを建設し、生産性を2倍に上げれば、首都圏でBMLの売上を食うことになるので、BMLの売上が縮小し株価は暴落したでしょう。千葉ラボで1992年に一部実験済みだったので、検査機器に双方向のインターフェイスを標準装備して、使い勝手の良い基幹業務システムとラボ検査システムをつくれば達成できる目標でした。SRL本社の社長が権限を使えるような立場においてくれたら、具体案を話して実行するつもりでした。
 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」で行きたかった。

 合弁会社が動き出してから調べると、粗利益が20%前後しかありません。治験検査はSRLと帝人羽村ラボへ外注ですから、合弁会社の取り分はとても小さかった。こんな状態の収益構造で経営したら、2年で自己資本はゼロ、増資しなければ債務超過になることはあたりまえでした。赤字部門同士を出して合弁会社をつくったらそういうことになります。おまけに、SRL八王子ラボ側に5名ほど、検体の保管と抜き出し作業に従事している社員がいることが、数か月後に判明。SRLの業務システム本部長のN取締役に、費用負担を新会社でしてもらいたいと当然の要求があったのです。Nさんから話を聞いて、こちらの事情を説明して、収益構造を変えるめどがつくまで半年待ってもらいました。彼とは馬が合っていました。八王子ラボで4年間ほど仕事していたので、お互いに仕事のやり方や人柄を承知していたからです。八王子ラボ勤務のときに、業務本部の忘年会に招待されたことがありました。
 システム担当グループとデータ管理グループを集めて、情報を整理して、某製薬メーカー向けに開発した治験検査データ管理システムを、汎用パッケージに作り替えることで合弁会社の収益構造を変えて、黒字化することに決めました。NTサーバーに変えることに強い反対が出ましたが、譲れないので押し通しています。ベテランのシステム屋が、ユニシスの提案で三菱のオフコンをずっと使っていました。1979年に使ったことがあったので、時代が違うと、そしてパッケージシステムを創ったものをオフコンに載せるわけにはいかないと説明しました。売れるわけがありません。パソコンベースでパッケージシステムを開発すると開発費が1/10以下になります。カスタマイズ部分は別料金をいただくので、利益率が大きかった。
 若いシステム屋のK谷君と応用生物統計担当のM野君の二人がC言語のプログラミングに慣れていたので、オフコンでやるわけにはいきませんでした。三菱のオフコンは数値計算に弱いのです。無理数の計算や指数計算の演算子がありませんから、統計計算は不可能でした。1997年当時は業務用のパソコンでは間に合わず、他の業務も載せるので、強力なNTサーバーでの開発でした。この分野(治験検査データ管理事業分野)の利益率が高くて、黒字転換できました。事業の軸足を、治験検査事業から治験検査データ管理事業へとシフトしたのです。ほとんどの製薬メーカーが取引先でしたから、この分野で5~10年間は大きな利益が期待できます。その次の事業展開は大学病院向けの治験検査データ管理システムパッケージの開発でした。こちらの方が市場が大きい。合弁会社の社員に、SRL以上の年収を保障してやりたかったからです。売上高経常利益率を20%にもっていくつもりでした。
 親会社の社長のKさんからわたしが請け負った四項目は約束通り、3年で終わっていました。経営の全権も仕事が終わったのですから、親会社社長へお返しすることになります。SRL以上の給料を保障してやりたくても、自分の好きなようには経営できません。帝人の子会社から転籍してもらう社員の年収は2倍になる予定でした。人生とはなかなか思う通りには行かないものです。黒字化のカギは経営の軸足をデータ管理事業へ置き換えることでした。治験データ管理事業へ踏み出しました。
 仕事が終わってしまったので、かねてお誘いがあった300ベッド弱の特例許可老人病院の常務理事の仕事を引き受けることにしました。療養型病院へ転換することで、老健施設やナースステーション、グループホームなどを配置して、シームレスな老人介護を実現したかったのです。

 増田寛也さん、ありもしない「相乗効果」を期待していましたね、経営者としてはとても甘い。
 彼の経歴をみると理由がわかります。東大法学部に2浪して合格、建設官僚として仕事していたようです。菅政権の時に総務大臣に抜擢されています。どうしてこんな人に、民間企業の日本郵政の経営をゆだねたのでしょう?

 官僚の仕事は前例踏襲ですが、民間企業となった日本郵政のマネジメントは、まったく未知の分野へ踏み入ることになります。増田氏には最も向かない仕事でした。
 増田氏は受験勉強をやりすぎています。受験勉強の悪いところは、正解のある問題を、既知の解法でできるだけ速く解くことです。東大法学部に合格したくて人よりも2年間多くそんなことに没頭せざるを得なかった。思考の鋳型ができあがってしまっていて、社会人になってからは壊せないのです。こういう人は官僚になるしかありません。
 経営は正解のない問題を考え、その解決法を組み立て、戦略を練り、実行することです。受験エリートの東大法学部出身者には一番不向きな仕事です。実行してうまくいかなければ、すぐに代替案を考え、戦略修正をしながら、最終的に目標を達成します。頭脳が柔軟でないとマネジメントはできません
 ろくに受験勉強しないで東大法学部に合格できた人なら、その中100人に一人ぐらいはマネジメントに優れた腕を発揮するかもしれません。そういう人材はいないのでしょうか?

 民間企業へ転換した日本郵政の経営という未知の分野にチャレンジするには一番まずい人選でした。まるで経験がないし、そういう智慧がないのですから。だから「相乗効果」なんて妄想を抱いてしまったのです。
 楽天というネット事業者と資本と業務提携すればなんとなく良いことが起きそうだと、そう思い込みました。思考パターンがまるで子供です。結果は3年間で850億円の損失を計上することになりました。仕事のできない人が張り切って仕事すると、こうした「災害」が起きます。デジタル担当大臣の河野氏がその典型でしょうね。マイナンバーがひどいことになっています。大きな責任を伴なう仕事なのですから、デジタル大臣引き受ける前に、ちゃんとデジタル技術のイロハぐらいは勉強してからにしてほしいものです。台湾のオードリー・タン氏に比べたら、雲泥の差です。
 こういう経営の失敗が起きたら、責任をとるのが代表取締役社長の役目ですが、辞任は聞こえてきませんね。ここでも、常識外れです。

 人材がいませんね。政治家で日本郵政の経営を担える人が思いつきません。与野党を問いません。政治家の中で、こういう仕事に一番不向きなのは、松下政経塾出身者かもしれませんね。空理空論が多い、松下幸之助はそういう人ではなかったと思います、何という皮肉でしょう。


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#5005 税収見込み71.5兆円と企業経営 Jun. 27, 2023 [8. 時事評論]

 過去最高の税収は2019年度の62.5円だったが、財務相の試算によると2022年度の税収は71.5兆円に達するという。

 いきなり記録を8.9兆円もアップしたということ。伸びた税収で目立つのは消費税と法人税である。新型コロナ禍で3年間窮屈な生活を強いられたが、5類になって消費が拡大しているという観測もあるが、物価が上がり続けているので、同じものを購入しても価格が高くなっているので支払う消費税が増えているということ。それがベースで、海外からの観光客が新型コロナパンディミック以前に戻ったことなどが寄与している。

 2022年度4-11月期の自社株買いは前年同期比の1.2倍、7.6兆円だったが、2023年5月1日から25日までで上場企業の自社株買いは3.24兆円に達している。年間ベースでは30兆円に達しそうな勢いだ。

 1989-2018年までの30年間の実質賃金の推移をみると、実質賃金は減少しており、そこへこの物価高が直撃しているので、家計には打撃になっている。2018年は452.1万円、2018年は433.3万円である。

 さて、これらのことを組み合わせてものごとを観ると、全体像が現れてくる。企業経営者は社員の半分を非正規雇用に置き換えていくことで人件費を削って利益を上げ、内部留保を積み増した。それを投資には使わずに、自社株買いをして株価を操作することに狂奔しているということ。こういうのを「短絡反応」というのではないか。頭の悪い奴はこういう反応をするものだ。
 上場企業経営者層に経営能力がないために、新規事業分野を開拓できず、成長のための投資ができない。あまりに内部留保が増えすぎたので、自社株買いをして株価を操作することに執着している。本来は新規事業の成長によって株価をアップするというのが、経営の本筋であるのに...

 日本の上場企業はどうしてこんなに劣化したのだろう?
 最近急に劣化したのではない、もともと劣化していたのが、環境の変化でごまかしがきかなくなったのだ。
 日本の上場企業は株式の持ち合いをしていた。業績が悪くなれば、持ち合い株の一部を市場で売却すれば、益出しができたから、どれほど経営者が無能でも経営基盤は盤石だった。会計基準が取得原価法から時価法へ変更され、含み資産がなくなり、株式保有は経営にとってリスク以外の何物でもなくなった。持ち合い株を放出して、上場企業株の1/3以上が海外の投資家の手に渡った。だから株価は、海外の投資家の動向によって大きく振れるようになった。
 無能な経営者でも、新規事業分野へ5年かけて育てるだけの余裕が、保有株式を取得原価で計上している時代にはあったが、そういうことができなくなったので、上場企業経営者は新規事業の開拓に手も足も出なくなったというのが実情だろう。

 新規事業分野は未知の分野である。決まったやりかたなんてない。難関大学へ合格した受験エリートたちは、決まった解法のある問題を速く解くことに特化した能力をもっているだけで、未知の分野を開拓することに経験がない。むしろ、答えのある問題を速く解くことに慣れ切ってしまい、答えのない問題に対する能力が失われた「出がらし」の状態のものが多い。これは難関大学出身者に限らない。
 そう考えると、利益をアップするために、非正規雇用を増やして人件費を削るという経営が、上場企業全般にみられるのはあたりまえのことだ。新規分野で売上を増やし、企業を成長させることではなくて、現状維持で人件費を削ることでイージーな利益確保をしているだけ。
 自分の利益だけを考えているからうまくいかない。自我本能に操られていると、「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」なんて伝統的なビジネス倫理とは真逆の方向に走ることになる。自分と他人は別、他人は不幸であったり、貧困であっても、自分だけがよければいいなんて経営者が増えたら、実質賃金が30年間上がらないなんてことになるのだろう。
 平等性智*を働かせなければならない。
*「#3954 ハラリと大数学者岡潔

 難関大学出身者を上場企業の経営層に就けることが問題の根源かもしれない。では何を基準に、経営幹部に育てる人材を採用したらいいのだろう?
 受験勉強には目もくれずに、トライアンドエラーを繰り返している人材を採用すべきなのだろう。アップルのスティーブ・ジョブズはそういう人間だった。大企業の採用システムや人材育成システムからは出てこない人材である。
*「#4067 Steve Jobs
 
 まともに学問を究めようとすると、次々に正解のない疑問がわいてくる。それを一つ一つ取り上げ、丁寧に考え抜くことを繰り返した者は、未知の分野へ分け入る能力を獲得している。
 


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#5004 未遂に終わったロシア版「本能寺の変」:プリゴジン Jun. 26, 2023 [8. 時事評論]

 プリゴジンは、「ウクライナ特別軍事作戦」は、NATOがウクライナと一緒になってロシアに攻めてくる、ドンバスのロシア人をウクライナ軍が殺しているという虚偽情報でプーチンが決定したと主張し、ジョイグ国防相とゲラシモフ参謀総長を弾劾して、モスクワ200kmまで、迫った。
 プーチンが祖国に対する重大な裏切りとテレビで公表して、ワグネルを国家反逆罪の罪に問うと明言。
 その後、ベラルーシのルカシェンコ大統領が仲介して、プリゴジンをベラルーシへ亡命させることで、収まりがついたかに見えるが、これで終わるはずがない。

 ロシアの正規軍はウクライナ戦争で前線に張り付いており、モスクワ周辺には治安部隊しかいなかった。だから、わずか1日で、ロストフ・ナ・ドヌの南部軍管区司令部を制圧し、そこから1000㎞あるモスクワへあと200kmのところまで少人数の部隊で進軍できた。
 本能寺に入った信長が、わずかの兵しかともなっていなかった状況によく似ている。明智光秀はその間隙をついて、信長を殺した。秀吉は毛利討伐で戦線が膠着して動けない状態だった。

 プリゴジンがそのままモスクワへ攻め入ったら、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長を殺害できたかもしれない。軍部のエリートの無能さと政治家の息子は徴兵を免れているなど、国民の批判は根強いようで、支配下に置いたロストフ・ナ・ドヌでプリゴジンはロシア国民の歓迎を受けている。

 さて、FSB出身で裏工作で政敵を殺害し続けてきたプーチンの考えることは、容易に推察がつく。ベラルーシへ亡命させたのはルカシェンコの提案ではなくて、プーチンの提案ではないのか?
 亡命させておいて、暗殺する、これはプーチンの常とう手段だ。影武者を2人使い、地下室に隠れ、猜疑心が強くて、権力を誇示しなければ気が済まない気の小さな男である、行動や考えることがわかりやすい。
 ワグネルは罪に問わない、プリゴジンの亡命も認める、そうロシアのペスコフ報道官が発表している。昨日の決定がまるで嘘のようだが、はたして額面通りに受け取れるか?

 プリゴジンはお人よしだ。暗殺を含めて、プーチンの私兵としてさまざまな裏工作を担当してきた人間が、亡命先で軍事力を有する政敵になるかもしれないのだ。危なくて、そのままにしておけるはずがない。
 どうせ殺されるなら、プリゴジンはモスクワへ突入して、ショイグ国防相、ゲラシモフ参謀総長、プーチン大統領を殺害すべきだった。殺すか殺されるかの一線を越えてしまったのだから、腹をくくるべきだった。
 戦争の大義を否定され、メンツを潰された狭量なプーチンがどのような行動に出るかは、近くにいて一番よく知っていたのではないか?判断が甘い。

<自他弁別能と平等性智>
 プーチンは自我本能むき出しの人。自他弁別能が脳を支配しいる。自分の利益のためなら政敵や批判的なジャーナリストを暗殺することをいとわない。不正蓄財も同じ本能の発動である。
 大数学者の岡潔によれば自他弁別能は動物本能そのもので、それを乗り越えたところに、平等性智とその働きがある。他人も自分も一緒というのが平等性智である。
 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」は他人も我も同じということ。自分が得をするときは自分に関わる全ての人が得をするべきで、他人の不幸や他人の損失の上に蓄財してはならないということ。
 日本の老舗企業は経営者が平等性智の持ち主であるケースが多い。それが伝統となっているから百年、二百年と経営が代を継いで存続している。

 そうしてみると、日本の上場企業の経営者たちも自我本能の制御ができないものがほとんどのようだ。非正規雇用割合を増やして人件費を削りながら、自分たちの報酬は天井知らずでアップする。そうして、巨額の利益を上げながら、内部留保し、自社株を購入・消却して株価を上げて株主に還元している。働いている社員や非正規雇用者はどうでもいいかのような、経営がまかり通っている。会社を経営している自分たちと、社員や非正規雇用者は別の存在、自他弁別能が発動している。

 岸田総理は自分の息子を秘書官にして、度重なる不祥事で首にした。どの政治家も自分の息子を政治家にしたがる。これも自我本能の発動だ。だれも国の未来なんて考えてやしない、平等性智が働いていないのだから、政治が劣化するはずだ。

 ウクライナ戦争を始めたプーチンと日本の企業経営者と有力な政治家たちには、同じ自我本能が発動していて、平等性智が働かない。その知性も情緒も動物並みということ。その欲望は足るを知らぬ。


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#4996 粋ということ:不倫は動物本能 Jun 16, 2023 [8. 時事評論]

 広末涼子(1980~)の不倫騒動で報道各社はにぎやかだ。

 40過ぎて、理想の恋愛のお相手はなかなか見つからないだろう。魅力的な男性は仕事でも成果を上げている年齢であるし家族もいる、そういう男が魅力的に見えるのだからどうしようもない。
 その一方で年齢から言って、身を焦がす恋はそろそろ人生で最後かもしれない。
 夢中になって我を忘れて下半身の命ずるままになったって、誰が非難できよう。
 子供がいるとかいないとか、関係なしになってしまうほど、夢中になったということ。
 ふと目が覚めたら、代償の大きさに気がついた。
 いい肥やしにして、大女優へ脱皮してほしい。

 気に入った異性とセックスしたいというのは、動物本能である。優秀な子孫を残すためにプログラムされているのは哺乳類に限らない。人間本能に関わることだから、みんな同じ問題にぶつかり、多かれ少なかれ苦悶した(あるいはこれから苦悶する)時期があるよ。乗り越え方はそれぞれ、他人ごとではないのだ。

 40歳を過ぎた人なら、誰にだって、多少は身に覚えがあるのでは?
 そもそも女優家業に聖人君子を求める方がどうかしている。マリアだって、処女受胎なんてことになっているが、ヘブライ語の原典では不特定多数の男といたして、誰が父親かわからないということだと、ロシア語翻訳家の米原真理が本に書いていた。聖書のラテン語への翻訳ミスで「処女受胎」という解釈が生まれた。だから、聖職者はセックスを忌避し、人間本能を否定することで精神をやられ、児童への性的虐待が後を絶たぬ。聖書ではセックスなしに生まれた神の子ということになっている。それはキリスト教徒の物語だから、事実関係はどうでもいい、物語の方が大切なのだ。その物語が、聖職者を精神病患者に駆り立てている。人間本能の否定は碌な結果を産まない。
*弊ブログ#4791参照

 『サピエンス全史』の著者によれば、不倫が絶えないことや離婚率が高いのは、わたしたちが自分の生物学的ソフトウェアと相容れない、核家族と一夫一婦の関係の中で生きるように強制された結果だというのである。
*「#4287

 どなたか有名な映画監督の奥方が、本番をする映画のオファーがあったら受けると答えた方が、昔はいた。それは職業魂かもしれない。仕事と夫婦関係は関係なしということか。
 恋は演技の幅を広げるもの。
 大目に見てやったらいいではないか。これからますますますいい演技をして見せてくれるだろう。
 沢尻エリカという個性派のすてきな女優さんがいたが、スキャンダルを乗り越え、またスキャンダルを巻き起こして、女優として復活してもらいたい。4年前に麻薬取締法違反で逮捕されたんだ、もったいないね。
 薬物でセックスの感度を上げるのは癖になる。相性のいいパートナーを見つけたら薬物なんて必要がなくなるが、それがなかなか見た目だけではわからない。見つけるために試してみなけりゃわからないので乱脈になる。人間のサガだね。
 ヨガも座禅も武道も、呼吸が大切だ。マスター(達人)は呼吸が違う。呼吸がコントロールできるようになるといいね、深くてゆったりとした呼吸を手に入れるために、相性の良いパートナーとトレーニングに励んだらいい。

 日本人は本来、セックスにはおおらかだった。盆踊りやお祭りはもともと乱交の場だった。結婚している男女もお祭りの3日間はそれぞれ別々に出かけて、踊りの輪の中で相手を見つけて、まぐわう。宮中でも歌垣(乱交)が催された記録すらある。称徳天皇主催の大乱交パーティである。あれは日本書紀だったか。
 盆踊りの夜にはらめば、それは当然に自分の子として育てた。乱脈ではないのである、寛容とルールがしっかりあった。粋ではないか。

*「#4177大人の恋愛事情:鈴木杏樹さん
*「#4035 何もかも小さきものはみな美し
*「#3615 万葉集と宇治拾遺とあの時代の性風俗

<余談-1:谷崎潤一郎の妻千代子の佐藤春夫との不倫>
 谷崎潤一郎は3度結婚していますが、2番目の妻千代子は佐藤春夫と不倫、後に、三人連名で谷崎が妻千代子を佐藤春夫に譲渡する旨の声明文を発表しています。
 佐藤春夫は千代子と恋してかわいらし詩を作っています。

 こぼれ松葉をかき集め
 をとめのごとき君なりき、
 こぼれ松葉に火をはなち
 わらべのごときわれなりき。

 わらべとをとめよりそひぬ
 ただたまゆらの火をかこみ、
 うれしく二人手をとりぬ
 かひなきことをただ夢み。

 入日のなかに立つけぶり
 ありやなしやとただほのか、
 海べの恋のはかなさは
 こぼれ松葉の火なりけむ。

 不倫がなければ、この詩は生まれなかった。
 実年齢とはまったく別に、少年と少女の恋に仮託した、読後感がほのぼのとする詩ですね。詩人はどろどろした現実世界から飛翔して仮想現実の世界で生きることができる。だれにでもそういう能力は多寡の差はあっても、あるもの。
 恋をしたら、想いの丈を紙に綴ってみてください。技巧なんて必要なしです、素朴ないい詩になるかもしれません。

 メディアは稼ぐために面白おかしく騒ぎ立てる。人の恋路をうんぬんするよりも、恋をして粋に生きることの方が大切ではないかね。

<余談-2:色好み>
『徒然草』第137段より
 逢はで止みにし憂さを思ひ、あだなる契りをかこち、長き夜を一人明かし、遠き雲井を思ひやり、浅茅が宿に昔をしのぶことこそ、色好むとはいはめ。

 昔の人は粋でした。現代語訳は、こちらのサイトでご覧ください。
*徒然草第137段


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#4992 家族名義口座誤登録13万件:無能なデジタル大臣 Jun. 8, 2023 [8. 時事評論]

 マイナンバーカードで、家族名義の口座への誤登録が13万件あったとデジタル担当大臣の河野氏から、ようやく報告があった。すでにマイナンバー法案は参議院でも可決成立している。

 河野大臣の説明は、システムには問題がなかった、入力した人(利用者)のヒューマンエラーだという。阿呆もいい加減にしてもらいたい。マイナンバー入力プログラムに、マイナンバー名義人名と銀行口座の名義人名の突合処理を追加したらいいだけだ。10分あれば書き換え可能。
 要するに、システム仕様にそういう処理が漏れていただけのことで、設計ミスである。

 13万件も家族名義口座への登録があったということは、そうした突合処理がマイナンバー登録ソフトになかったというシステム設計上の基本的なミスがあっただけではない。
 いままで世帯主交付という給付金制度を、個人ベースに切り換えるという説明を丁寧にしていないから、自治体職員ですら今まで通りに家族名義の銀行口座で支障がないと考えた人が少なくなかったということだろう。

 そこで思い出したのは、コロナパンディミック時にシステム関係整備の指揮で獅子奮迅の活躍をしたオードリー・タン氏のことである。IT担当閣僚として自らのIT技術をベースに的確な指示をしながら、必要なシステムを次々に立ち上げて、コロナ封じ込めに成功している。日本政府はコロナウィルス接触アプリ「COCOA」すら満足に稼働できなかったのと対照的であった。これも河野デジタル大臣の担当でしたね。報道関係者あてに2022年11月11日に厚労省からCOCOAの機能停止のお知らせが出ている。

 この二人の違いは、IT技術を知っているかいないかで、仕事の結果に大きな違いが出ている。13万件の「誤登録」は、スキルのない人が指揮することによって起きた人災ということ。それにしても、仕様書書いている人がいるわけで、大丈夫かね? あまりにも初歩的なミスなので、驚いています。

 情けないのは、デジタル技術分野に専門的な能力を持った国会議員が一人もいないこと。だったら、民間から採用したらいい。
 河野大臣、そろそろおやめになったらいかが?

 諸外国では、国民のプライバシー侵害が問題になっているのに、日本ではその点がまったく論じられていない。河野デジタル大臣から、プライバシー侵害の問題や犯罪への利用の弊害についての、そしてセキュリティの説明がまったくないのはどうしたわけだろう?
 この人の発言を聞いていると、「気違いに刃物」という言葉が頭の中に時々浮かんでくる。

<余談:セキュリティへの不安>
 マイナンバーに医療保険が紐づけられるという。医療保険は全国の病院、クリニックで使われている。例えば、わたしが東京都で診療を受けたり、入院したりしたとする。すると、全国のどの医療機関でもわたしのマイナンバーを病院システムに接続されたパソコンへ入力したら、診療記録やカルテが閲覧できるということ。そういう運用を目指していると口を滑らせている。
 マイナンバーはすでに国税庁の確定申告のシステムに採用されている。だから、この二つはマイナンバーをキーにすればハッキングできるということ。いや、そんな技術がなくても、医療記録は他の医療施設の端末から閲覧が可能になる。興味本位で見る者が出るし、マイナンバーのリストが売買されることになるだろう。
 運転免許証がマイナンバーカードに置き換わるらしいが、違反記録がマイナンバーでハッキングできる可能性が出てくる。
 銀行口座開設にマイナンバーが登録されたら、預金の残高や入金・支払い記録もマイナンバーをキーに漏れる可能性がある。
 これからどのようなシステムがマイナンバーを採用するのか、政府の裁量次第になっている。勝手に官庁システムで採用されていく。
 マイナンバー情報が洩れたら、関連するすべてのシステムの情報がマイナンバーをキーにハッキング可能になる。高い金額で、精度の高い情報が売買されるようなことになるのだろう。米国にその先進事例(犯罪)がたくさんある。国民の7%が被害を受けているなんて事態を引き起こしかねないのだ。

 マイナンバー制度の一般的な名称は「国民ID制度」という。それを制定した後に廃止した国や問題続出している国がある。
 ●イギリス
 ●米国
 ●ドイツ
 ●韓国
 ●スェーデン
 例えばイギリスは2006年にIDカード法が成立したが、費用対効果の問題やプライバシー侵害が問題となり、2010年に廃止された。

 米国では「社会保障番号」がそれにあたるが、従業員の不正などで盗まれた社会保障番号で、「なりすまし」が横行、クレジットカードを勝手に作られたり、勝手のローンを組まれたりする弊害が続出し、2014年には国民の7%、1270万人が被害に遭っている。

 ドイツでは1970年代に検討されたが、国民のプライバシー侵害の懸念が大きく、成立に至らなかった。ドイツでは行政機関ごとに別々の番号で管理している。
 あとは、青・太字をクリックしてお読みください。


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#4990 「らくらくスマホ」の生産会社の破綻 Jun. 3, 2023 [8. 時事評論]

 女房殿のガラケイが壊れて、慌ててスマホに替えたのが2月でした。ドコモショップのおススメは「らくらくスマホ」かシャープのアクオスでした。高齢者は「らくらくスマホ」の方が字も大きくて便利との説明で、そちらを選択してました。ドコモの委託生産品かと思ったら、FCNTという会社が生産していました。5/31に民事再生法の適用申請をして、経営破綻が報じられました。元々は富士通の子会社でスマホでは老舗企業、業界3位だったそうです。
 ドコモショプではスマホ初心者に講習会を開催してくれるので、親切でありがたい。女房殿は初心者コースはほとんど終わったようです。そのうちに電子決済のコースの講習会に出てみようかななんて言ってました。

 わたしは3月10日に、ガラケイからスマホへ移行しました。iPhone SEで、「らくらくスマホ」よりも薄型、スタイリッシュです。ドコモショップの人に、「周りに使っている人いますか?」「いません」と答えたら、首をかしげていました。お客様だから失礼だと思って言わないけど、高齢者がいきなりiPhoneは無理だよと表情が語っていました。(笑)

 ガラケイでは、電話とemailしか使いませんから、そのつもりでスマホに乗り換えるとしばらくたいへんでしょうね。スマホはパソコンの機能は全部網羅しています。その上、スマホで支払いや飛行機の搭乗処理、バス亭で待っているときにバスがどのあたりを走行しているかも確認できます。どんどんアプリが増えるので、機能としてはパソコンよりも上です。パソコンを使い慣れている人にはスマホは問題がなさそうですが、パソコンを使っていない高齢者がいきなりスマホを使いだすのは、なかなかたいへんなようです。
 三輪車に載っていた児童がいきなりロードバイクに乗るようなものですよ。ドコモショップの人の眼にはわたしもそう映ったんでしょう。

 2026年3月末でドコモはガラケイの取り扱いをやめるようですが、その1年前くらいからスマホに切り換える高齢者が激増するでしょうね。
 講習会でも説明がわからない人がいますね。うまく動かないのでドコモショップに来て大きな声でクレームを言い立てるお年寄りも見かけました。それって、あなたに問題がありますよって言いたくなるような内容でした。ドコモショップの人たちは対応がたいへんです。ストレスたまるでしょうね。でも、老人もたいへんなのです。

 これから「らくらくスマホ」がなくなったら、ドコモショップは高齢者に普通のスマホを販売することになるのですね。民事再生手続きがうまくいって、高齢者用の「らくらくスマホ」があと5年くらいは供給してもらえると、ドコモはありがたいでしょうね。

 便利ですが、機能がありすぎて理解できない高齢者が、2026年4月から便利さの陰にあるリスクに気がつかないで使い出したら、なかなかたいへんなことになりそうです。銀行口座は通帳を発行しないところが増えています。いずれ全部廃止になるでしょう。スマホで管理しなければなりません。
 マイナンバーカード一つで4つのパスワードを使い分けなけりゃいけません。
 スマホでamazonや楽天など銀行口座引き落としになる買い物をするときには、それぞれの買い先にパスワードを設定しなければなりません。同じパスワードを使いまわしするとリスクが大きくなるので、別々に設定すると、今度は管理がたいへんです。半年に一度くらい変更したほうがいいですからね。
 スマホでの支払いもできますから、なくしたときの手続きもあらかじめ調べておかないと、トラブルになります。便利な分だけ、セキュリティ管理は複雑になるのです。

 自動車免許証もスマホで確認なんてことになり、スマホがなけりゃ生活できないようになるのでしょうね。

 30年もすれば、現在70歳以上の高齢者は全員死んでますから問題がなくなるでしょう。しばらくは、ドコモショップの人たち、対応に大わらわということになりそうです。

 


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#4977 マイナンバーカードと預金口座の紐づけ:事の重大性わかっているの? May 23, 2023 [8. 時事評論]

 マイナンバーカードに関する事故が頻出してニュースになっています。
 ●マイナンバーカードと住民票を紐づけしたら、他人の住民票が出力されたという事例。コンビニでの住民票発行システムでのトラブルです。これは松本剛明総務省管轄の事例です。コンビニでの住民票発行は富士通ジャパンが開発したシステムだそうですが、デジタル庁の河野太郎担当大臣は、システムを開発した会社の責任だと言ってます。そうではないでしょう。一体どういう仕様書を書いてわたし、どんな検収をしたのか、おそらく丸投げです。業者任せだったということ。発注する側も開発する側もスキルが広く劣化しているように見えます。コロナの「COCOA」っていいましたっけ、ウィルス接触アプリ、機能しませんでしたがあれと同根です。官僚の側のシステムスキルが低いのです。仕様書も書けないで、丸投げしていたら、次々に同じ問題が起きます。
 ●印鑑証明でも11件発生しています。コンビニで印鑑証明書発行手続きをしたら、他人の印鑑証明書がプリントアウトされてます。
 ●マイナ保険証では全国で7312件の誤登録がありました。これは加藤勝信厚労大臣のマターです。

 2月の段階で判明していましたが、公表したのは昨日(5/23)でした。健康保険組合が、住民データベースから情報をとっていますが、間違えて別人のものを誤登録したケースや、同姓同名の別人を登録してしまうなんてことがありました。どうやら、Aさんが登録した後に別のBさんがチェックしていないのです。これはシステム運用の基本的な実務設計ミスです。誤登録で受診歴や薬の処方の記録が漏れました。仕事したことのない人がやるとこんな基本的なこともクリアできないようです。氏名と生年月日、性別、住所の4項目でデータの突合をしているようです。これからは、氏名は漢字と仮名の両方で登録することに変更するそうです。いくらか減るでしょうが、別の人によるダブルチェックがなければ、また事故が起きます。
 ●Aさんが銀行口座と紐付けしようと入力を始めたが、口座番号がわからないので後日入力するということで、ログアウトせずに中止。そのあとに利用したBさんが口座番号を画面から入力したので、AさんのマイナンバーカードにBさんの口座が登録されてしまった。Aさんへ給付金等が交付されたら、Bさんの口座に入金されることになります。この一連の操作には横で自治体の職員がついていて指導していたようだ。コンピュータのことがわかっていない人が地方自治体職員には多いのは想像に難くありません。

 デジタル担当大臣河野太郎氏マイナンバーカードに不利益はないといってましたが、ありますよ。補助金が違う人へ交付されたり、過去の診療記録が間違って別の人に開示されてしまうなど。先日、立憲民主党の人がマイナンバーカードについて、国会で河野大臣へ不審な点を問いただしていましたが、さっぱり議論がかみ合わないのです、仕組みが理解できないようにみえました。

 だいたい、ユーザーに自分で端末を操作してマイナンバーを口座番号を入力させているが、これではミスが続発して当たり前です。

 もう五十数年前になるが、カードパンチ入力は「パンチ」と「ヴェリー」と別の人が入力してチェックしていました。二回入力することで、不一致のデータをはじくわけです。
 わたしは1984年に最大手臨床検査会社SRLへ転職しましたが、そのころ検査依頼書の入力、患者IDや検査項目コードの入力は、Aさんが「キーパンチ」したデータを次にBさんが「ヴェリー」入力します。不一致の場合は自動的にコンピュータがはじいて、今度はCさんが検査依頼書を見て判定します。それで誤入力が1/1,000,000になります。コンピュータシステムで一番大事なのが、情報の入力です。後はプログラムにバグがなければOKです。プログラムが納入になれば、テストデータで検収します。ちゃんとやっているでしょうか?やられていないから、次々にトラブルが起きています。新型コロナ関係の政府システムもトラブル続きで間に合いませんでした。
 入力に関してはミスがありうるという前提で、その確率がどこまで許容できるかで、入力チェックシステムの厳密さを決めます。臨床検査は患者IDコードと検査依頼項目の紐づけが間違ったら、Aさんの検査が、Bさんになって届くというようなことになります。だから、厳重なチェックが必要です。すぐにバーコード入力になりました。いまはQRコードかもしれませんね。

 マイナンバーカードはさまざまな情報と紐づけがなされます。医療保険を結びつけば、マイナンバーが漏洩したら、診療履歴が外部に出る可能性があります。税務署のデータと紐づけされたら、課税所得データが流出しかねません。銀行口座と結び付けたら、名寄せして、預金残高が漏洩することになります。クレジット決済や電子決済をした買い物データと結びついたら、いつどこで何を買ったのかも漏洩することになります。

 マイナンバーカードとこれらの情報を紐づけしたい人だけがやればいい。セキュリティの現状を考えると、危なくてとても利用する気になれません。
 マイナンバーカードを利用している人は、ポータルサイトで自分で登録情報をチェックしましょう。利用者登録とログインが必要です。

 デジタル担当大臣の河野氏は、まるでコンピュータシステムをご存じない様子。理解しようとすらしているようには見えません、知らないのに傲慢すぎます、下で働く者が迷惑しているでしょう。こんなに仕事の能力のない人は珍しい、デジタル庁を担当するのは無理です。箸にも棒にもかかりません。岸田総理も人が悪い、総理候補の一人だった河野太郎氏をつぶしたくて、デジタル庁担当大臣に任命したのかもしれませんね。

 新型コロナワクチンでも大チョンボしていますよ。ワクチン接種が始まった途端に超過死亡が+に転じていますが、不勉強な彼はいまだに気がつきません。mRNAワクチンの五回目のブースター接種を勧めています。
 mRNAワクチン接種と、超過死亡には強い正の相関関係があります。その数は毎月2-3万人です。つまり、24-36万人ほど、ワクチン接種の副作用で亡くなった可能性があります。薬学専門家の村上康文氏(東京理科大名誉教授:薬学)が、同一抗原のワクチンを7-8回、20匹のマウスに打つと全滅したという動物試験結果が昨年出されています。危険性の催告なしに、日本人で大規模な人体実験をしているようなものです。史上最大の薬害事件に発展するかもしれません。メーカーは契約書に免責条項が入っているので、訴訟リスクがありません。日本政府がすべての損賠賠償の責任を負います。
 いまだにワクチン接種を勧めているのは世界中で日本だけです。他の国はとっくにやめています。河野太郎大臣、少しは勉強してほしい。
 SARS-CoV-2mRNAワクチン副作用と超過死亡の関係は、3度弊ブログ(#4970、#4971、#4973)で取り上げましたが、森田洋之医師のmRNAワクチン接種と超過死亡に関する強い正の相関関係に関する懸念が5/22の東洋経済電子版に掲載されたので、後ほど稿を改めて紹介します。

*「マイナンバーに別人口座を誤登録が相次ぐ 河野氏 総点検の方針表明」
**「解説 マイナンバーカード・トラブル続出”人為的ミス”や”システムに問題”


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#4969 日銀経営破綻とは何か? May 15, 2023 [8. 時事評論]

 日本銀行は中央銀行であるから通貨発行権をもっている。発行権をもっていたら、日銀総裁の判断で通貨増発をできるかというと、そう簡単ではない。紙幣の印刷は独立行政法人国立印刷局が行い、そこの理事長の任命権者は財務大臣であるし、主務官庁も財務省である。
 だから財務大臣の合意なしには、勝手に通貨の増発ができるわけではない。
 同じことは財務省の国債発行についても言える。日銀が金利ゼロで発行された国債を無制限に買い入れたら、財政は破綻するから、国債の日銀買い入れは財政法第五条により原則禁止です。国会の議決の範囲内で国債の引き受けが可能です。つまり、国会が議決・承認しているということ。
---------------------------------------
財政法第五条:すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借り入れについては、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲では、この限りではない。
---------------------------------------

 財政法第五条は「但し書き」によって、骨抜きされてしまっています。
 政府と日銀と国会がグルになれば、実質上国債の無制限の増発と日銀による無制限の引き受けができます。そうなっていますよ。政府と日銀と国会が一つの閉鎖的な村社会を構成していますどんなに法律で縛っても、独立な意思決定機関であるべき財務省と日銀と国会がグルになれば、戦時体制のような国債の無制限発行と日銀引き受けが可能になりますそうした場合には、日銀が債務超過になっても、債務不履行による日銀の経営破綻は起こりません。通貨発行権を駆使して足りない分は、財務大臣の了解をもらって、独立行政法人国立印刷局に紙幣を印刷してもらい、日銀が発行して補えばいいだけですから。経営破綻は別の形で現れます
 閉鎖的な村社会の「恣意的なやりたい放題」を外部の眼はどのように判断するのでしょう?

 海外から見たら、どのように見えるでしょう?
 税収の20倍もの国債を発行している国があり、新規発行国債や借換債の引き受けを中央銀行が無制限にやっています。主要通貨ですが、信用できない通貨ということになります。
 国内上場企業の財務担当取締役の眼で見たらどうでしょう?
 預金保険機構で保障されるのは1銀行につき1000万円までです。500億円の預金があるとしたら、どういう手があるでしょう。国債利回りが3%にアップしたら、取引銀行の保有している国債が30%以上の評価損をこうむります。日本の会計規則上は満期保有目的の債券は評価損計上の必要がありません。しかし実際に金利上昇で30%評価額が下がれば、1兆円の国債は7000億円でしか売れません。国際的な会計基準では債券についても時価での評価があたりまえですから、評価損の計上が原則です。海外投資家は国際会計基準に従って評価損を計算して日本の銀行を評価します。
 上場企業の財務担当役員が、取引銀行の破綻懸念を抱くと、その銀行の預金を全額引き出して、別の銀行に預けます。パソコンで瞬時に送金手続きできますから、数時間で10兆円を超えるような預金払い戻しが起きて、支払い不能に陥る可能性があります。邦銀の経営破綻がそういうシナリオで起きます。
 国内の銀行全般に信用不安が起きれば、外銀へ預金が移されます。大量のドル買いが起きますから、急激な円安が進行します。
 こうして主要通貨である円が、主要通貨の座から滑り落ちます。急激な円安進行をストップするために長期金利を上げれば、日銀が巨額の債務超過状態になっていることが明らかになります。為替リスクを回避するために輸入はドル契約があたりまえになり、国内企業が円安リスクをかぶることになります。輸入がドル建て契約になるということは円が国際的に信用されていないということです

 もうひとつのシナリオは、首都直下型地震や東南海連動型地震です。二つとも数百兆円の被害が出るでしょう。富士山の大噴火は1707年の宝永大噴火ですが、あのクラスの噴火があれば首都機能は数か月間麻痺するでしょう。大噴火は数百年に一度、規則性はなく確率は小さいですが、起きれば被害は大きい。
 大きな災害があれば税収は激減します。資金需要が増し、企業は銀行から預金を引き出して、自社の経営立て直しにあてます。政府は復興資金獲得のために新規国債を数百兆円単位でしなければなりませんが、日銀引き受けでは円の通貨としての信用を失います。市中銀行のシンジケート団に消化してもらうには、5%以上の金利をつけないといけないでしょう。このときにも日銀に百兆円を超える債務超過が明らかになります。ヘッジファンドは円を売り浴びせますから、急激な円安が進行します。200円/ドル超えくらいのことはあるでしょうね。
 国民や企業がもっている金融資産は1800兆円ですが、ドルベースで見たら半分になってしまう、そんなことが起きます

 日銀が債務超過になったら、増資によって資本充実をしなければいけません。その資金も政府にはないので、新規国債の増発によってあがなうことになるのでしょう。これも、長期金利上昇の要因となります。はたして現在のようなゼロ金利政策を続けられるでしょうか?国内の銀行から円の流出が起き、ドル預金が増えると思います。上場企業の財務担当取締役がそういう判断をします。銀行の経営破綻懸念で、預金機構が1000万円しか保証しないのですから、そうしなければならない状況に追い込まれるということです。
 そうなれば日銀が増資しようと、破綻処理して新しい中央銀行をつくろうと、破綻は破綻です。

 日銀の経営破綻とは、回復不能の巨額債務超過状態に陥ることです。政府が増資によって日銀の損失を補填しようがしまいが関係なしです。円の国際的な信認が崩れ、階段を一段降りたような円安が続きます、それが日銀の経営失敗による破綻です被害は国民の金融資産の大幅な減価として現れます。ドルベースで半額以下になる可能性があると思います一般の銀行のように支払い不能になれば、預金者だけが損をすることでことは収まりますが、日銀の破綻は支払資金の不足としては現れません。その代わり、国民の金融資産がドルベースで半分になる形で現れます
 アベノミクス三本の矢が声高に叫ばれ、日銀総裁が白川氏から黒田氏へ替わったところから、日銀経営破綻は始まっています。ドルベースで、国民の金融資産も一人当たり国民所得も3割減となってしまっています。何らかの理由で長期金利が上がれば、それらは半減ということになります。次のような結果になるでしょう。

<アベノミクスは何をもたらしたのか>
 2012年の12月26日に第2次安倍政権とアベノミクス三本の矢が登場しました。そのときの12月末の為替レートは80円/ドルでした。いま135円/ドルですから、ドル換算では国民の金融資産はすでに40%下落しています。これが200円/ドルになったら、国民の金融資産はドルベースで60%も下落します。半分以下です。

 ドルベースでの国民一人当たり所得水準はアベノミクス以降どれくらい落ちたのでしょう?
 データは「世界のネタ帳」のサイトの「対ドル為替レートの推移」「一人当たり国民所得」からピックアップしました。

 2012年 392.3万円 79.8円/ドル  49,160ドル
 2023年 443.8万円 132.5円/ドル 33,494ドル
  対2012年比68.1%
 対ドルベースでの一人当たり国民所得は第2次安倍内閣がスタートする直前に比べて31.9%減少しています先進国でこんな国は日本だけです。日本はもう先進国ではないのかもしれませんね
 200円/ドルで計算すると22,190ドルですから、45.1%、半分以下になります。

 2017年のGNI(一人当たり国民所得)統計によれば、日本は22位で45,470$ですが、2023年の推計値を当てはめると36位ですから、所得水準からはとっくに先進国ではありません。それどころか、ドル相場が200円/ドルになると$22,190ですから56位です。ロシア(51位)よりも下です。
 2023年の一人当たり国民所得ランキングサイト見つけました。33,821ドルで、世界30位です。米国76,348ドルの半分以下。
 観光産業がインバウンドなんて喜んでいますが、日本の所得水準がドルベースで3割も低下し、円安ですから、とっても割安なだけです。海外からの観光客は放っておいてもますます増えるでしょう。

<自然災害が引き金になる>
 円の国際的な信認が落ちるのは、大災害が引き金になります。新規国債を200兆円も発行しないといけない事態が起きれば、国債の利回りを5%以上にアップしなければいけなくなります。その瞬間に日銀は百兆円を超える債務超過、政府財政は金利負担に耐えられない。平時に国債を発行しすぎたツケが一気に回ってきます。家計にたとえると、年収400万円の収入で8000万円の借金をしているようなものです。返済計画の立てようがありません。

 自民党や公明党も、国会議員も、財務官僚も一人も責任を取りませんよ。野党だって日銀の独立性や債務超過の可能性、大幅な円安到来のリスクなと国民生活に深くかかわることなのに、国会で真剣に議論してません。
 愚かな国民も賢い国民もひとしく大きな損害を被ります

 対ドルベースで国民の金融資産や一人当たり国民所得が半分になる危機がひたひたと迫っています。外銀だってSVBのようにいつ潰れるかわかりませんから、Goldを買い込み貸金庫に預けるのが、リスク回避にはベストな方法です。
 もちろん、そんな心配せずに、何もしないで暢気(のんき)に構えるというのもありです...みんなで仲良く
  「1億玉砕」
 あれから80年近くたつのに、日本政府のやることはあまり変わっていませんね。(笑)
 歴史は繰り返すのでしょうか?
 繰り返さぬためには、国民が現実を直視して、歴史から学ぶしかありません。
 マスコミは真実を語らぬし、ネット情報は玉石混交で何が真実なのかなかなか見分けがつきません。
 それでも、何がほんとなのか、自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分の頭で考えて、判断するしかありません。
 

<余談:国際主要通貨のシェアー>
 2023年3月の調査
 ドル83.7%、円1.76%、人民元4.50%
 情報ソース:5/18放送テレビ朝日「大下容子ワイド!スクランブル」 



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