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#1407 「マスコミの功罪」 &余談の蕎麦談義 Mar. 6, 2011 [40. 医療四方山話]

 新聞記者もいろいろ。今回は裏を取らずに取材先の発表をそのまま記事にする記者もいるという具体例をあげて解説している。場所は福島県、例の産婦人科医の訴訟が起きた県だ(それ以来産婦人科医志望の医学生が減ってしまったという、きっかけになった事件である)。
 なお、アンダーラインはebisuがつけた。


「マスコミの功罪」(m3.comより)

福島県立医大、医師を“玉突き”派遣 移動短く診察長く
 へき地医療支援システム
11/03/03記事:毎日新聞社提供:毎日新聞社

 福島県立医大(福島市)から2病院を通して医師を“玉突き”で医療過疎地の診療所に派遣する「へき地医療支援システム」が注目を集めている。都市部の大学病院から直接診療所に派遣する仕組みが一般的だが、県立医大方式は医師の移動時間が短くて済み、診療にじっくり取り組める利点がある。11日に開かれる文部科学省の医学部定員に関する検討会で、菊地臣一学長が全国的にも先進的な「福島モデル」として概要を発表する
 システムは04年度に開始。
(1)県立医大の助手15人を県立会津総合病院に週1回派遣
(2)会津総合は助手受け入れで診療時間が空く医師を県立宮下と県立南会津の両病院に派遣
(3)同じく余裕ができた宮下から柳津町と金山町の国保診療所に、南会津から只見町国保朝日 診   療所に医師を派遣する。

 これにより、柳津町で毎週月曜▽金山町で毎週火~金曜▽只見町で隔週木曜--に内科医と整形外科医の応援が受けられるようになった。 玉突きの元となる助手は、臨床研修が終わったばかりで、県立医大で研究しながら診療に当たる。県が1人当たり年間800万~1000万円の人件費を負担する。安くはないが、立場が不安定になりがちな臨床研修終了直後の助手を好待遇で迎えることで医師確保ができる。県立医大は助手枠を90人に増やし、別事業では地域の拠点病院に定期的に派遣するなど、地域医療再生に取り組んでいる。【種市房子】

以上が日本中の医師の間で毎度お馴染み”医師の敵”な毎日新聞の記事です。それに対して次のような書き込みがありました。

「こんなのうそです」
 当方は、この情報にある地域側に勤務する医師です。県からの補助が出て大学にお金が入り、大学からは県立会津に毎週派遣がありますが、県立会津はそもそも人的余裕がないので、応援は受けますが玉は突きません。 玉突き方式が県民に公表される前から、(玉突きがないころから)宮下病院から金山診療所・柳津診療所の応援は行われていたし、只見診療所ががたがたのときは県立会津から応 援はありませんでしたが、県立南会津病院から只見診療所への応援がなされていました。県および福島県立医大が地域医療に貢献しているような書き方ですが、事実は大きく違い ます。県立南会津病院・宮下病院・只見診療所は自治医大卒の医師で成り立っており、その病院間で助け合っているのが現状です。県立医大から月何回が応援が来ていますが、玉 が衝かれる以上にもっと田舎の診療所への応援が自治医大卒の医師によってなされ、玉が衝かれない分、南会津病院および宮下病院の自治卒の医師ががんばっている事実があるこ とを真実どおり
公表していただきたいです。

毎日新聞の記事と、この医師の書き込みを比べて戴きたい。皆さんはどのように理解されたでしょうか。

本来最初から大学から末端の診療所にワンステップで医師を送れば済む話を、何故に3ステップで? 
それぞれのステップで動くのは勿論常勤医ではなくアルバイト医です。勘の良い方はもうお気付きでしょう。時間当たりの給料が高いアルバイト医がA→B→C→Dと玉突き状態で動けば、1人で済むところを3人が動く事に成り、それぞれの移動で交通費、アルバイト代などの経費の増大が生じます。勿論事務的な手間暇も掛かります。 更に医師を送り出すA、B、Cの病院では、そのスケデュールに依ってはその医師が診ていた患者さんを他の医師が診なければ成らないケースも考えられます。何故こんなシステムを考えたのか・・・思うにA大学病院の医師はプライドが高いので僻地の診療所などには行かない。しかしせめてB県立病院なら我慢して行く。同様なドミノ倒しがB、Cについても起きるなら「末端のD診療所にも医師が来る」と言う理屈です。

しかし実際には、投稿された該当地域の医師のお話では違っている。確かにA→Bまでは有ってもそこから先は無い。C病院やD診療所は自治医大OBの医師が頑張って支えている・・・つまり福島県の発表は事実とは違う。もしその医師の言う通りだとすると、毎日新聞は何時ものように全く調べずに(裏を取らずに)意味も分からず提灯記事を書いていることに成ります

因みに、医師の世界に(主にネットで)”聖域”と言う言葉が有ります。つまり”禁断の地”ですから「行ってはならない場所」と言うわけです。福島県はかって「大野病院」事件で”聖域”の仲間入りを果たしている地域です。あの時福島県当局は大野病院に対して不利に動きました。その事を日本中の医師たちは何時までも忘れません。(実際あれ以降産婦人科医たちの”お産離れ”が加速しています)

by 医療四方山裏話 (2011-03-04 13:32)

*福島県立大野病院産婦人科医逮捕事件(ウィキペディアより)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E7%9C%8C%E7%AB%8B%E5%A4%A7%E9%87%8E%E7%97%85%E9%99%A2%E7%94%A3%E7%A7%91%E5%8C%BB%E9%80%AE%E6%8D%95%E4%BA%8B%E4%BB%B6


【余談】
 只見という地名が出てくるが新潟県と福島県の県境ではなかったか。確かダムがあった。奥只見へ行く途中会津に花泉*という酒造がある。美味い酒だ、銘酒のひとつだろう。この蔵元の酒は地元でもなかなか手に入らない。何本か飲んだ。経営分析をし、出資交渉を担当して出向した会社の専務と2時間ほどで花泉を2本あけたことがあった。お互いにコップで一杯ずつさしつさされつ、楽しい酒だった。3本目を飲み始めたところで、店を変えて今度はバーボンのストレート。常務が来て専務が帰り3時過ぎまで飲んでから、常務と二人で屋台のラーメンを食べた。へべれけ、よく飲み、ほどほどに仕事した。社長も専務も常務もそれぞれに癖がありいいやつらだった、どうしているのかな。
*花泉酒造
http://www.hanaizumi.ne.jp/top.html

 記事中に出てくる柳津という地名はヤナイヅと読む。
 会津には竹田総合病院という1000ベッドの大病院があると記憶する。50キロほど離れた郡山には800ベッドの大田総合病院がある。会津、郡山共に民間の大病院がしっかりあるというのがこの地域の医療の特徴だ。
*竹田総合病院
http://www.takeda.or.jp/3_index/3_zaidangaiyo.html

 会津も郡山もどこを掘削しても温泉が出る。米は美味いし、水もいいから当然のごとく酒も美味い。お蕎麦は郡山市内に何軒かいい店があるが、市内はあえて天麩羅専門店の"奈良木"を挙げておきたい。いい店だ。天麩羅を揚げるオヤジがいい、そしてモンペ姿の奥方の漬けた漬物も絶品である。
 郡山から会津に向かう途中に磐梯熱海があるが、そこに美味しい蕎麦屋が二軒ある。3時には売り切れで店終いだ。店の名前はなんといったかな、思い出した、"石筵"である。国道沿いにあるからすぐにわかる。途中の猪苗代湖の近くには爺さんと婆さんが経営する素朴な蕎麦店"磐梯そば道場"があり、会津には"桐屋"という名店がある。どの店もそれぞれに個性的で、挽きたて・打ちたて・茹でたての蕎麦はどれも美味い。それぞれの店主がとことんこだわりぬいてつくる蕎麦である。
 職人技。

 根室にこれほど蕎麦作りにこだわり抜く店があれば楽しいのだが・・・どの店も石臼をもち、朝5時ころから粉を挽いて蕎麦を打つ。選び抜いた新鮮な材料と磨きぬかれた蕎麦打ちの技術、美味いはずだ。生徒たちに教え、味あわせてやりたい、これが日本の物づくりの原点のひとつだと。
 本物の職人仕事と出会うことが大事なのである。出遭えばわかる。仕事とはここまでやるものなのかということが。そうすることが楽しいのだ。不徹底な仕事は、それをする人も味わう人もどこか気持ちがよくない、引っ掛かりを感じてしまうもの。日本人はそういう微妙で繊細な感覚を大切にしてきたのではないだろうか。


*天麩羅 奈良木
http://www.fukulabo.net/shop/shop.shtml?s=356

*「石筵」⇒写真が載っていました
http://plaza.rakuten.co.jp/junko23/diary/201002250001/

*磐梯そば道場ホームページ
http://www.aizu-soba.com/bandai/

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#1406 ベンツが欲しかった Mar.5, 2011 [40. 医療四方山話]

 ベンツにかかわる話は私にも思いで深いものがありますが、それはあとで・・・


「ベンツが欲しかった」(m3.comより)

駐車場に止めてあった高級外車「ベンツ」の車体に持っていた鍵で「ベンツ」と削り書きしたとして、千葉県警船橋署は3日、器物損壊の現行犯で、同県船橋市海神、開業医、八 木佳彦容疑者(58)を逮捕した。同署によると、八木容疑者は「自分もベンツが欲しかったが、買う金がなかった」と容疑を認めている。逮捕容疑は同日午後1時15分ごろ、 同市海神の市中央保健センター駐車場で、止めてあった面識のない歯科医師の女性(57)=東京都江戸川区=が所有するベンツに、自宅の鍵を使って一文字約20センチの大き さで「ベンツ」と削り書きし、傷つけたとしている。同署によると、八木容疑者が犯行に及んでいるところを、駐車場を利用していた男性(46)が発見し取り押さえた。

何とも身につまされる記事です(笑)。以前札幌でのキャンピングカー入手作戦失敗談を書きましたが、あの時「お前、医者なのに600万程度の金も持って無いのか!?」でした。Benzにも様々の種類が有り安いBenzなら同程度の金額位でしょうか。
知り合いにゲレンデバーゲンと言う4WD(BenzのGクラス)に乗っている医師が居ますが、その車は1000万を越えるそうです。

どうもBenzは金持ち度を計るバロメーターにされていますが、新車or中古車(中には盗難車を再生した物まで)、どのタイプか、何台目の車かなどで、単に「Benzに乗っているからあの人は云々・・・」とは言えないでしょう。ファラーリやリンカーン・コンチネンタル、ロールスロイスを乗り回すほうがむしろ金持ちに見えますが・・・。しかし思い返して見ると、小生が馬鹿にされた例の札幌の金持ちもそれらの車は持っていながら日常の乗用はやはりBenzでした。

この元ネタに対しての医師の反応は様々ですが、面白いのは「歯科医(女医)のBenzに開業医が嫉妬した」と言う構図に、「もうこれからは医者も終わりだな・・・」と言う書き込みや、「歯医者のほうが人数が余っているから収入が苦しい筈なのに、何故にBenz?」、「開業医の癖にBenzも買えないヤブ医者!」etc。
1人「どうして新聞社はこんな程度の事でも医者だと名前を出すんだ!?」と何時ものようにマスコミにキレた方が居ました。実際医療関係(特に医師)のトラブルに関する記事には、かなりの確率で早い時期から実名が晒されます。それに対する医師側の感想は、「医者や病院が叩かれる記事は読者に受けるから、マスコミは出来るだけ悪辣に表現する」と感じている者が多いようです。
by NO NAME (2011-03-04 11:30) 

【ベンツの思い出】 
 ある方の紹介で300ベッド弱のある医療法人の常務理事をやっているときのことでした。私は「高級車」であるベンツの助手席に座っていました。
「この車上げるよ」
 私のおんぼろ車を気にして、常務理事だからいい車に乗れとそういう配慮だったのでしょう。まだ1年たっていない車です。笑いながら、
「先生、要りませんよ」
 それから数ヵ月後のことです。
「近くに(横浜のある場所)に6千万円で家が売りに出たので買ってあげる」
 これもお断りしました。首を傾げていましたね。
「断る奴はいないよ」
善意でそう言ってくれているのはわかっていました。事業の相棒でいて欲しいから親切心から出た言葉だったのです。「心配いりませんよ、私はあなたの忠実な相棒ですよ、ですからそんな必要ありません」と心の中でつぶやいていましたが、照れくさくて言えませんでした。
 人間関係は難しいものです、善意を拒絶されたと感じたようです。
 首都圏で療養型病床群の病院を核にして、老健施設や看護ステーション、グループホームなどのシームレスな介護医療事業の展開を考えていましたが、頓挫しました。特例許可老人病院から療養型病床群の病院へ建て替え事業をやり終えたところで手を引きました(市や県そしてゼネコンとの交渉については経験があるので市立根室病院建て替えについてブログで物申したのです)。
 プロトタイプを一つつくり上げれば、金太郎飴方式で10や20の事業体は管理できますから。日本の介護医療を少しばかり変えることができたのかもしれません。プロトタイプを含むクラスターのようなものを考えていました。
 わたしの器が小さかったようですが、同じ申し出をその後に受けても、私の答えは同じだったでしょう。人間50歳を過ぎたらほとんど成長しませんからね。
 わたしが市立根室病院の療養病床設置にこだわるのはそういう思い入れもあるのです。つられてそう遠くない昔話をしてしまいました。爺になりました、お笑いください。


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#1402 "患者様"と呼ぶことの副作用  Mar.1, 2011 [40. 医療四方山話]

  患者様と呼ぶのが良いのか悪いのか、医師の側の「副作用」にかかわる話しを聞いてみたい。

「患者様??」(m3.comより)
今一番hotな話題です。先ずは新聞記事をご覧ください。

 重体患者より「先に診ろ」…院内暴力が深刻化
   11/02/21記事:読売新聞提供:読売新聞
香川県内の医療機関で、職員が患者から暴力や暴言を受ける被害が深刻化している。先月には県内で、傷害や暴行の疑いで逮捕される患者も相次いだ。
これらの「院内暴力」に対処するため、ここ数年、専門部署を設置したり、警察OBを常駐させたりする病院も増えている。県も今年度、暴力の予防に重点を置いたマニュアルづくりに乗り出しており、医療現場での対策強化が進んできている。
 ◆深刻化
「何で俺を先に診察せんのや」。先月初旬、ある病院の救急処置室。路上で倒れ、救急車で運ばれてきた男が声を荒らげ、男性医師に突っかかった。病院には当時、心肺停止状態の別の患者がおり、その処置を優先したことに激高した。職員や看護師6人が取り押さえようとしたが、男は医師の胸を数十回突き飛ばし、病院が警察に通報。男は暴行容疑で逮捕された。
別の病院でもその数日後、「質問が気に入らない」と、職員の顔を殴った男が傷害容疑で逮捕された。
「早く処置をしろと言って胸ぐらをつかんだり、備品を蹴ったりするのは日常茶飯事」「看護師の首を絞め、殺すぞとすごむ患者までいる」……。複数の病院の担当者がそんな現場の現状を明かす。ある病院が職員約100人を対象に院内で調査したところ、4割が「患者から、身体的暴力を受けた」との結果が出た。
県によると、県立の4医療施設では、2-3年前から医師や看護師への暴言が目立ち始め、次第にエスカレートしているという。最近では、被害に悩んで辞職した看護師も出ている。担当者は「理不尽な暴力にじっと耐えている職員も多く、把握できているのは氷山の一角。本当の被害は計り知れない」とため息を漏らす。
 ◆対策
院内暴力の深刻化を受け、ここ数年、対策を本格化させる病院が出てきている。県立中央病院では2008年、マニュアルをつくった。騒いだり、必要のない治療を強要したりした患者には、院長が退去を命令できることなどを盛り込んだ。昨年には初めて、警察官を講師に、院内暴力の対処法講座も開いた。
 高松赤十字病院は05年、院内暴力などのトラブル対策を担う「医療安全推進室」を設けた。各科の待合室には「脅迫的言動をした患者は診療を断る」などと書いたポスターを張り出した。
両病院と、香川大医学部付属病院では、3-5年前から、県警OBの職員が常駐。警察とも緊密に連絡を取れる態勢を整備した。
 ◆予防へ
県は今年度、予防に重点を置く県立病院共通のマニュアルづくりも進めている。「見せる警備」を行う▽待ち時間を短縮し、待合室を静かにして、患者をいらだたせないようにする--といった内容で、3月末までに完成させ、来年度から県立の各医療施設で運用することを目指している。県立病院課は「院内暴力がこれ以上ひどくなれば、医療が崩壊しかねない。先手を打ち、食い止めたい」としている。

救急車で搬送されてきた患者が医師を始めとした7人に暴力を振るった・・・どう考えても可笑しいシチュエーションです。そんな元気な人間が救急車で搬送?きっと救急隊も収容現場で途方に暮れていたのでは。
この事件に対して多くの医師がコメントを寄せています。その大部分が、医療機関が「患者様」と呼ぶようになってから横暴な患者が増えて来た、と感じているそうです。何故「患者さん」から「患者様」に変わったのか。色々な説が有るようです。一説には千葉県鴨川市にある、何かと話題の提供に事欠かない「K総合病院」の院長が使い始めたとの事。とにかくマスコミ的にも派手な病院で、1泊何万どころかホテルのペントハウスのスイートルームのような超豪華病室を持っている所ですので、そりゃあ確かに「患者様(お客様)」でしょう。(笑)。それと最近何処でも接遇云々が取り沙汰されています。勿論基本的には職員教育は良い事と思いますが、しかし物には程度があります。患者を大事にするという事と、こちらが遜ることは違います。まして「患者」と言う状態は好ましくない状態なのに、それに「様」を付けるのは日本語として滑稽でさえある様に思われます。「患者様」と呼ぶべきだとの主張には、「医療はサービス業で、患者様はお客様なのだ!」と言う考えが見え隠れしています。この考えは看護師を束ねる組織や現場の婦長連中、そして病院事務方に強いようです。難しい本質を考えようとせず安易な表面上の取り繕いで誤魔化そうとすれば、それを相手に利用されるだけです。「そうだ、俺達は患者様だ。お客様だ。何でも俺達の言うことを聞け!」。

今の日本は何処かが狂っています。特に医療機関に対する世間の無理解にはほとほと参ります。例えば今度の香川の暴力患者の件にしても、世間の人々はあまり病院に同情しません。ところが、これが逆に医療側が患者に暴力を振るった」なんて事にでも成れば、もう非難の嵐でしょう。
医師が当直などでどんなに疲弊してもお構いなし。「だって医者だろうが。患者を診るのは当たり前だ。患者は何時でも医者を呼び出す権利がある。大体あいつらは普段から法外な給料を貰ってるんだから出てくるのは当然だ」。
診療費を払わずに逃げても全く反省無し。またしつこく請求しない医療機関。
「病院は散々儲かっているんだから別に俺が払わなくたって構わない。大体患者は病人で弱者なんだ。弱者は守られる権利があるんだ。何だったらマスコミに投書してやる」

これは余談ですが、札幌の大手の病院(精神神経科)の看護師に聞いたことがあります。「患者が暴れた際にはどうやって大人しくさせるの」「それは後ろから両腕を掴んで動きを静止させます」「例えば掴まえて投げ飛ばすとか蹴りをいれるとか、柔道や空手の技は」「そんなことしたら家族から訴えられます。過剰防衛で警察沙汰になっちゃいます」「じゃあ相手が刃物を持ち出して切り掛かって来た場合は」「それでも駄目です。剣道やってるからって棒の様な物で小手を打って刃物を落とすのも駄目です」「それじゃあ、下手したら刺されちゃうじゃない!」「ええ、まあそうなんですが・・・」。
どこかの知事が聞いたら、即座に「何馬鹿なこと言ってんだよ!自分の身を守るの、当たり前じゃないか」と激怒しそうですが(笑)。残念ながら何故か日本では、医療機関の中は外国に対してでなく自国に対して治外法権のようです。


by 医療四方山裏話 (2011-02-28 17:24) 


例えばebisuさんが消化器内科医で当直に当たっていても、結構何とか成ります。仮に直ぐに臨時手術に成るような急性腹症や臓器出血なども診断は内科も外科も一緒です。また脳梗塞や脳出血の患者が来ても、診断はCTやMRIで出来ます。むしろもっと小さな事の方がやり難いかも知れません。板前さんが包丁で指を切って出血を抑えて飛んで来て「縫ってくれ!」。何とか出血部を消毒・圧迫止血して局所麻酔の注射針を縫う部位に刺してナイロン糸で連続縫合する手順ですが、場数を踏んでいないと頭で考える程手際良く行きません。慣れからくる度胸が多少必要ですね。多分ebisuさんが困惑するのが妊産婦でしょう。これは産婦人科以外の何科の医師でも敬遠し勝ちです。ほとんどの医師はお産を実習で見たことは有る筈ですが、当事者になって実際にお産を取り上げた経験は殆ど無いでしょうから、即産婦人科医を呼ぶか、居なければ最寄りの産婦人科医の居る病院に搬送ですね。その搬送の手段として、道東にもドクターヘリがスタンバイしていますので、日中ならば以前よりは搬送が楽に成りました。
基礎的な部分ではどの科もそれ程大きな違いは有りませんので、経験が有る医師であれば一人で当直していてもまあまあ最低限のレベルでは役に立つと思います。(眼科医にとってはちょっときついかも知れませんが)。
by 通行人 (2011-02-28 23:30) 


【言葉は時と場所と機会に応じて使い分けよう】
 アンダーライン部はずいぶんと横柄な主張です。患者の側も節度を心得なければなりませんね。テレビでどこかの町で医師との会話集会で「医者だから24時間患者を診るのは当たり前だろう」と言い張っていた住民がいましたが、あんな街へ赴任したいと思う医者は稀でしょうね。どこの街にもそうした人は小数ながらいるでしょう。たくさんいたらたまりません。

 ずいぶん前のことになるが診察の順番で看護婦さんにクレームを言っている患者さんがいました。行き違いはあるから予約時と約束が違うという主張は理解できるが、言い方が気になった。
 還暦をとっくに過ぎた年齢の方だったが、家族に対するようなぞんざいな言葉づかいで看護師さんへくどくどと文句を並べている。看護師さんは赤の他人なわけだから、それなりの言葉づかいがあるはず、TPOで使う言葉を分けるのが大人の所作の一つであると私は思う。
 ご当人はざっくばらんでいいと思っているのかもしれないが、回りで耳にする者にとっては聞き苦しく、横柄に感じてしまう。こういう患者が根室には他の町よりすこし多いのかもしれない。そういう人を"患者様"扱いしたらどこまでゴンボホルかわかったものではない。数年前には夜間診療に来て「乱暴狼藉」を働いた大莫迦者もいたようだ。癪にさわるが、上にも(市政や地元経済団体)下にもこういう手合いの多いのが根室の欠点ではある。

 お互いに礼を失しないようなコミュニケーションをしたいものだ。症状を伝えてきちんと診察してもらう、それでうまくいく。
 家庭の躾や職場での躾の役割は大きい。躾の崩壊している家庭が増えていることは想像に難くないが、職場での躾もルーズなのではあるまいか。そもそもお手本を示せる大人が少ないのだろう。人材の枯渇はこうした躾面にも現れているような気がしてならない。

 

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#1397 医師から見た当直医にまつわる諸問題  Feb. 26, 2011 [40. 医療四方山話]

  医療四方山話、医師と市民のコミュニケーション・シリーズです。一般市民の知らない医療の仕事にまつわる問題を医師の視点から市立根室病院の実態に即してコメンテーターがとりあげてくれています。
 最後の段落で、市立根室病院のアルバイト当直医のコスト(1回25万円)と採算の問題が解説されています。
 今年度は常勤医師数が増えたにも関わらず赤字額は拡大しました。おおよそ13億円です。そのうちの2.4億円が常勤医不在時の医師確保のために支払われたコストです(最後の段落の太線部をご覧ください)。このような実態では医師が増えても病院事業赤字の額は減らないわけです。解説を読んでなるほどと思いました。
 それならそうと最初からそうした赤字をきちんと計算に入れて予算編成すべきなのですが、「関係者たち」は正直で誠実な仕事がお嫌いなようで、来年度予算も現実とかけ離れた「辻褄併せ」に精を出すのでしょう。その一方で病院事業の経営改善はないがしろにされたままです。嘘や偽りだらけのところに改善の芽は育たないということです。



「当直医の問題」

先ず次をお読みください。“お上“の「当直医」の解釈です。

厚生労働省労働基準局  2002年3月、
  「医療機関における休日及び夜間勤務の適正化について」
労働基準法における宿日直勤務は、夜間休日において、電話対応、火災予防などのための巡視、非常事態が発生した時の連絡などにあたることをさす。
医療機関において、労働基準法における宿日直勤務として許可される業務は、常態としてほとんど労働する必要がない業務のみであり、病室の定時巡回や少数の要注意患者の検脈、検温等の軽度または短時間の業務に限る。
夜間に十分な睡眠時間が確保されなければならない。
宿直勤務は、週1回、日直勤務は月1回を限度とすること。
宿日直勤務中に通常の労働が頻繁に行われる場合は、宿日直勤務で対応することはできず、交代制を導入するなど体制を見直す必要がある。

 では実際の現場ではどうでしょうか。
 大体地方の中央病院(根室では市立病院)は救急指定と成っていて、夜間帯も救急外来の形で診療を受け付けています。(実態は“救急“とは名ばかりで、いわゆるコンビニ受診の夜間外来に過ぎません)。当直医は大体各科の医師が順番で受け持ちます。時間帯は平日は大体17時~翌日8時の当直、土曜は8時~17時の日直と17時~翌日8時の当直、日曜は8時~17時の日直と17時~翌日8時の当直の事が多く、それぞれの区分を1コマとすると、1週間では9コマで1カ月では平均約40コマに成ります。もし日・当直に関し全ての医師を平等に扱うのが病院の方針であれば、その40コマを常勤医の数で割ります。
 つまり院長以下全部で40人の常勤医が居れば当直は月1と成ります。しかし実際には病院の代表で日頃から対外交渉に忙しい院長や、定年間近い年齢の医師は当直免除、また病院によっては眼科医には当直は酷だとして外している所もあり、結局当直を月1にするには常勤医が50人前後居て初めて可能な事で、医師不足に悩む地方の病院はどうしても最低でも月2程度の当直は割り当てられてしまいます。この点だけは何とか労働基準法をクリアーしています。

 しかし問題はその当直内容です。現実の夜間外来の当直は全く労働基準法で言うところの当直とは違います。夜中ひっきり無しに患者が訪れ、当然まともに寝ている暇はありません。そしてその睡眠不足のまま翌日も通常業務です。労働基準法はその大問題である「夜間救急外來」と言う表現を避けて「宿日直勤務中に通常の労働が頻繁に行われる場合」と言葉を濁しています。更に「宿日直勤務で対応することはできず、交代制を導入するなど体制を見直す必要がある」と全く他人事です。この9年間厚生労働省は日本中の病院の当直の実態を把握していながら何の手も打って来ませんでした。それは“お上”にしてみれば至極当然の事と思われます。「金銭的な事を言うのははしたない」と言う医師たちのつまらないプチブル的プライドや「月に1~2度くらいなら、まあ当直も仕方ないか」と言う医師のボランティア精神を上手く利用して、本来はもっと多くの医師を配置して莫大な費用が掛かる全国の救急病院システムを現行の医師数でしかも安く上げようとしているのですから。ちなみに北海道の公立病院の当直料は2~5万程度(勿論夜間外来もして)です。しかし外部から当直医を呼べば、1晩で10数万は掛かります。ですから「寝た子は起こすな!」。

 ところが最近思わぬ役所が「寝た子を起こし」に掛かっています。それはこのシステムを改善しようなどと殊勝な考えからではなく、「もっと税金を巻き上げろ」と言う下賎な目的です。そう、税務署が病院勤務の医師の当直料に課税し始めました。
 税務署の解釈では、何処の病院の当直も院内の患者に備えるいわゆる「寝当直」ではな、明らかに夜間帯の「時間外診療」である・・・全くその通り! しかし税務署は現行の労働基準法違反の「当直」にメスを入れてくれる役所ではありません。皮肉を言えば、国のいい加減なシステムの被害者である多くの医師の懐から更に税金を巻き上げる「泣きっ面にハチ」的行為ですね。

 これまでの話、「当直医」と言う主語を単数で表現していましたが、実は違います。通常地方病院の救急外来対応は少ない医師で遣り繰りする為、窓口は順番制で専門科は問わずに1人です。その日直接当直医が出ていない科でも、当直医の手に余る場合に呼ばれて出て行く“待機当番”が普通です。その中でもしばしば呼ばれるのが外科、循環器科、整形外科辺りですね。また脳神経外科も結構呼ばれます。或る意味では全科が待機状態にあり、医師が複数の所はまだしも1人医長の科などでは医師は好きな晩酌も控える羽目に成ります。つまり個人の本当のプライベートな時間はありません。この待機状態(つまり拘束されている)に対しては殆どの病院が報酬の対象にはしていません。これは放射線技師や臨床検査技師、薬剤師、看護師、臨床工学士などでも同様です。実際に病院に呼ばれて出勤して初めて時間外の対象(些細な額ですが)に成る病院が多いようです。言ってみれば、「救急外来」をやると言う事は、一部の事務も含めて病院全体がバックアップ体制を採る・・・つまり国が期待している病院は、「365日、24時間open!」と言う事でしょう。それならそれで適合したシステムを作ってくれれば良いのですが、少しでも医療費を抑えようと企んでいる国がその線で動く事は有り得ないでしょう。
 依然としてマスコミなどを使って無責任に国民を煽ります。「医者なんだから」「病院なんだから」

 御当地根室の市立病院では、医師1人当たりの日・当直は月2回までとの事ですが実際の常勤医でのコマ数は20コマ。残りの20コマは主に札医大からアルバイトを雇っているようですので、日・当直料、往復の飛行機代とタクシー代などで少なくとも1回に25万近くは飛ぶでしょう。週末の日・当直ともなれば単価も上がるでしょうから単純計算でも毎月約500の経費が掛かっていることになります。
 更に当直医以外にも日常の外来・病棟勤務や常勤医不在時の待機医(内科、外科、産婦人科、小児科、整形外科、泌尿器科、麻酔科、耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科の全科!)に経費が掛かります。その額は年間で約2億4000万円(H市議のHPに載っている市立病院院長の話**より)で、果たしてそれでどの位の収益が上がっているのか・・・医師一人当たりの収益が計算通り1億円などは科によってはとても無理な相談で、今の実態からは医師を増やす事での収益増は望む方が無理でしょう。むしろただ単に増員するだけならば一層赤字が増大して行くと思います。


by NO NAME (2011-02-26 02:55) 


【コメント】
 当直手当ては非課税となっているのですか、民間企業では議論のあるところかもしれません。私は給与計算をしたことがありませんので断言はできませんが、実質から判断すると課税対象でしょうね。食事が外出先でなされるのでその補填のための営業手当ては通常2~3万円程度だったと記憶します。それから出張手当などは課税対象外です。
 判断基準は宿直手当の金額と職務内容次第ということでしょう。通常勤務とあまり変わらないようなコンビニ受診対応のような仕事が多ければ宿直の範囲を超えて通常の交代勤務と判断するのでしょうね。あまりつつくと、やぶをつついてヘビ(課税判断)が出ることになりかねません。微妙な問題を含んでいます。

 もう一つの論点は一人の医師が当直で全科を診るということですが、無理がありますね。どんな患者が飛び込んでくるか分からない、たいへんでしょうね。私が消化器内科の医師なら、外科の患者や脳疾患の患者が来ても困ります。自分の専門外なら診れないですから、専門医のいる病院へ転送するしかありません。

 根室はコンビニ受診が多いようです。はやく根室の医療を守る会のようなものができて、積極的な活動をすることが望まれます。この手の活動は草の根的なものが基本でしょう。おそらく「××ネットワーク」は役に立たない。活動の主体がたんなるイベントです。活動の本質が違います。
 たとえば、柏原病院小児科を守る会のホームページを見ても「飲み会」とか「懇親会」とかその種のイベントはありません。役に立っているのならとやかく言うつもりはありませんが、市から予算まで出ているが疑問に感じる市議は一人もいないのは「異常」と感じます。議会はさまざまな市民の意見を代表してさまざまな意見が表明されるという「バランス」が必要です。


*県立柏原病院小児科を守る会
http://mamorusyounika.com/

**「市立病院東浦院長の講話」(本田市議ブログより)
http://nimuoro.typepad.jp/honda/2011/02/post-8eab.html


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#1392 医療四方山裏話(6) Feb. 23, 2011 [40. 医療四方山話]

 医者から世間を見ると世間がどのように見えるのか、本音でおおらかに語ってくれている。患者や一般市民は医者がどのように世の中を見ているのかを知る機会は少ない。そういう意味では貴重なコメントである。私は、医者が世間をどのように見ているかをその一例を知った。私はこのドクターのコメントを楽しんでいる、お返しに私のほうも少し情報を提供しておきたい。

 (東証一部上場企業のラインの部長職の年収を書いておきたい。十数年前のことになるが現在でもあまり変わらないだろう。おおよそ1200~1500万円の範囲内に80%以上が収まると思う。日産自動車を除いて、会社法上の取締役は2000~3000万円がほとんどだろう。株主代表訴訟があれば数十億円単位の、ときに数百億円単位の訴訟になるからリスクは大きいし、日頃からリスク管理は自己責任である。そういう意味では部長職辺りが危険が少なくて職務上の権限がそこそこあり、ウマミがある。
 会社法上の責任が重いのでコンプライアンスが声高に問題にされる。ここをきちんとしておかないと取締役は責任を問われることがある。金額の大きさにおいて医療訴訟とは比べものにならない責任を上場企業の取締役は負っている。どなたか詳しい方がコメント欄へ書きこんでいただけるとありがたい。
 お互いの事情を知った上でその基盤の上に新しい何かが生まれるのだろうと私は確信している。)


「医者は金持ちでは無い!」と言う思い出話を一つ。

 今から20数年前、オホーツクに面したとある病院に勤務していた時の事です。キャンピングカーが好きな小生は、当時横浜の自動車会社が作っていたトラックキャンパー(イスズ・ロデオのトラックの後ろに大きなキャビンをくっつけた)を無理して買いました。確か500万前後だったと思います。勿論車はそれ1台しか有りませんので、通勤や趣味の釣りに張り切って使っておりました。
 そのキャンピングカーは本などで徹底的に研究手した後、電話でやり取りして横浜の会社に発注。或る日向こうのセールスが自身で北海道のオホーツクまで陸送して来ました。中々感じの良い40台位の方でしたが、半分冗談で「お宅のお客さんの中では僕なんか一番貧乏なんでしょうね」と振ってみたところ、しばらく何か考えていたそのセールスの方は徐に口を開くと「はっきり申し上げれば、その通りですね。うちからキャンピングカーを買われるお客さんでローンを組まれたのは先生が最初です!」。何と皆さんは現金なんだそうです。思い起こせば当時の日本はまだまだバブルの炎が燃え盛っていた頃です。小生のように何とか頑張って頭金を貯めてキャンピングカーを買う人間など居ない・・・と言うわけです。「皆さん、大体が適当に買われています。金が余っているから一度キャンピングカーに乗ってみるか・・・のノリですね。我々が食っていけるのはお客さんの御蔭ですから大きな声では言えませんが、殆どが土地を転がされる関係の方やキャバレーやパチンコ業界のオーナーですね。先生の様なサラリーマンの方は珍しいです。会社に電話が掛かってきて「「買ってやるから〇〇を持って来てくれ」。車を持ってお宅に伺うと、何やら押入れから新聞紙で包んだ四角い物を持って来ます。包みを開けると中から1万円札の束がぎっしり。「幾らや?」「諸経費込みで950です」「なら車の変わりにその包み持ってけ。丁度1000有るから残りは駄賃や!」

 それから数年後札幌に戻りそろそろ違うキャンピングカーに目移りがし出した頃、オホーツクの病院時代のパラメディカルから電話が来ました。「札幌に兄貴が住んでいて、兄貴から貰うアメ車の4WDをこれから引き取りに行くので先生も御一緒しませんか。兄貴の所は外車だらけでキャンピングカーも持っているから、もしかしたら先生が気に入ったら兄貴が安く売ってくれるかも知れませんよ」。直ぐにその話に飛び付きました。
 8月の30度を越えた真夏日、2人で高級住宅街の「宮の森」の中でも更に一等地にある奴さんの兄貴の家に向かいました。路地の坂を歩いて行くと「あそこが兄貴の家です」。見ると何やら真っ黒な塊が路上に蹲っています。近付いて見ると、それは何と黒光りする宇宙船の様なスポーツカーでした。「何だこの車?」「フェラーリのテッサロッサです」「あんたの兄貴、こんなの乗ってるの!?」「まだ良い方ですよ(笑)」。そこへ来客の気配を感じた奴さんの兄貴が玄関から出てきました。ジーパンに作業着の中肉中背の40台後半位の男です。3人で玄関先で立ち話している所へ、遠くから2人連れの若者が歩いて来て、車の前に立ち止まり何やら2人で興奮しています。オーナーが「何だ、お前ら?」。「あのー、ちょっと聞いても良いですか?」「何だ?」「これっ、テッサロッサですよね!」「ああ、そうだ」「何に使うんですか?」。オーナーは苦笑して「馬鹿だな、お前も。車なんだから走らせるに決まってるだろう」「やっぱり・・・そうですよね。もう少し見ていて良いですか?」「構わんが、触るなよ!」。
 小生たちは主の案内で豪邸の中に入りました。余り詳しく書くと場合に依っては個人が特定される恐れがあるので書きませんが、兎に角小生が今まで中に入った事がある家の中で一番の平屋の豪邸でした。玄関の横に大きなガレージが有り、外車が4台入っています。先程のフェラーリは入れる場所が無いので路上に置いてあるのだそうで・・・いやはや何とも。オーナーが所有しているフォードのバンを特注で4WDに改造したキャンピングカーが札樽国道沿いの外車ディーラーに預けてあるから行こうと言う事になり、3人でオーナーの凄いベンツで出掛けました。途中車に関する話がオーナーの口から出ます。「これから行く所においてあるFORD、あれは900万位するんだが、ディーラーの社長が欲しがってるんだよな。手持ちのリンカーンと交換して欲しいと言われてんだが、リンカーンなんて2台も要らん」。弟の話ではロールスロイス、リンカーン・コンチネンタル、キャデラック、ランボルギーニ、フェラーリ、アストンマーチン、ブロンコ、ベンツ、アルファロメオ、他は度忘れしました。全部で15台、それもスーパーカーと呼ばれる車が大半で、個人の車だけで世界のスーパーカー・ショーが開けそうです。
 目的の外車ディーラーに着くと確かにFORDの大きなフルサイズバンが置いてありました。中に入って見ると小さなバスユニットまで付いています。弟の話では、兄貴の会社(名前は伏せます)の仕事の関係でちょくちょく使っているようで、モデルの撮影などの際に着替えルーム代わりだとか。名前も挙げれば皆さん知っている有名な俳優もちょくちょく使っているそうです。オーナーは小生に向き直ると「どうだ、気に入ったか?」「ええ、まあ・・・」「お前も変な奴だな。フェラーリには全く興味が無いくせに、こんな車が良いんだ(笑)」「スポーツカーなんて熨斗を付けられても要りません!」。しばらく考えていたオーナー氏。「分かった。お前に譲ってやる!弟が色々世話に成っているようだから、600で手を打つ」「あのー、600万ですか?「そうだ、600ぽっきりで良い!」。小生は急に600万の話が飛び出して来て頭の中が真っ白。「どうしたんだ。600万までまけてやるんだぞ」「いや、お気持ちは有り難いんですが。
 今の車を頭金にして残りはローンで何とか・・・」「おいおい、俺の前で下取りだとかローンだとかそんなくだらん話は止めてくれ。兎に角600持って来れば譲ってやる! それとも何か。お前600のはした金もどうにも成らんのか?」。実際その通りなので小生は言葉が出て来ません。「聞けばお前、医者だって?」「ええ、まあそうです・・・」「もしかしたら夜中に呼ばれて仕事してんだよな」「ええ・・・」「お前、給料はどの位なんだ?」「大体1×××位です」「何だ、お前。大の男が夜中まで仕事してたったそれぽっちなのか。お前、金玉付いてんのか?」
 そりゃあ何ヘクタールの土地を転売して一度に何億円も利ザヤが転がり込む人達から見れば、小生なんかゴミでしょうが・・・しかし生涯であれ程馬鹿にされた事は未だかって有りません。結局小生がはっきりとした意思表示をしなかった(出来なかった)ため、FORDに不満があると勘違いしたオーナーが違うキャンピングカーの話を始めました。「東京の社長の事務所にベンツのキャンピングカーがあるんだが、それで良ければ300位で良いぞ!」「えっ、あのベンツの!?」。当時ダークブラウンのシックなベンツのキャンピングカーがありました。先ず東京でもあまりお目に掛かれない高級車です。それが300万で・・・FORDを諦めた小生もベンツのキャンパーの話にすっかり喜んでオホーツクまで帰って来ました。
しかしその後オーナーの弟からベンツの話がなしの礫。或る日思い切って尋ねてみると「あの話ね。何でも兄貴の話じゃ、先生にと思っていたところ、向こうの事務所の若い奴で1年間遅刻しなかった真面目な社員がいたんで、その褒美に社長があの車やっちゃったんだそうですよ」・・・・。
何とまあ、1年間無遅刻無欠勤と言う(当たり前)だけでで数百万もするキャンピングカーを与えてしまう・・・つまり他の社員は皆もっといい加減・・・だったんですね。何だかその会社の中身が透けて見えるような話です。そして当時は、キャンピングカーは今とは違いバブルの金余りの飾りにしか過ぎなかったわけです。

 奇しくも大好きなキャンピングカーに映し出されたのは「金持ちで無い」自分の姿でした。しかしだからと言って、医師である事に後悔はしていません。真面目にやっていれば何とか食べて行けます。そして時々ですが患者さんから感謝されます。これは金には代えられない幸せかも知れません。また医師の良いところは、定年が関係有りません。探せば仕事はあちらこちらに有ります。まあ、本来なら普段真面目に貯金して或る程度の歳(世間での定年と同じ位)には引退して残りの人生をのんびり好きに過ごすのが理想でしたが・・・今もって貧乏暇無しの生活です(笑)。
    by 医療四方山裏話 (2011-02-22 16:48)

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#1391 医療四方山話:異論あり Feb. 23, 2011 [40. 医療四方山話]

 シリーズ6回目はcccpcameraさんからのオブジェクション(異論・反論)を載せたい。かれは北方領土問題、とくにその歴史と国際法関係に詳しい。北方領土団体はかれのようにマニアックに情報を収集している人とコラボレーションしたほうが運動が広がるかもしれない。考え方は真っ向からぶつかるだろうが、異論・反論に出会うのを嫌う運動は所詮弱い。
  浅田次郎『終わらざる夏』の感想を書いたときには、小説が史実と大きな齟齬があることを指摘いただいた。浅田氏はもう少し史実に沿って書くべきであった。
 末尾にかれのブログのURLを貼り付けておく。いいようはきついがまじめで一途な方とお見受けしている。今年になって大学の数学の入試問題の解説記事を書いている、なんとも不思議な人だ。

 さて、5回にわたってのんびりとあるドクターが「四方山話」と銘して、裏話も交え本音を語ってくれている。気分よく語りつくしてもらいたいとわたしは願っている。なにせ、医者の本音を聞く機会はなかなかないのだから。仕事や個人的な事情で数人の医師とお付き合いはあったし、いまもあるが、臨床医の本音を聞く機会は2度目である。
 ZAPPERさんが関連して書いてくれたコメントもあわせ載せたい、
 なお、cccpcameraさんへ、根室の状況についてコメント欄に書き込んで説明しておいた。現実を踏まえて、かれは何かいいアイデアを書き込んでくれるかもしれない。
 このブログがいろいろな意見(異見?)の集いの場になり、相互理解が進む一助になれば幸いである。そこからしか見えてこないものがあるはずだ。

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 あのー、一連のBlogを読んでいて、良く分からないのですが、根室は医師不足なのですよね。根室は、地方の中核都市なのだから、根室の子が医師になって、地域医療を担わなくてはなりません。他の地域出身者に根室の医療を助けてもらいたいなどと虫の良い期待は、しない方が良いです。
 幸い、北海道には旭川医大のような立派な医科大学があるので、ここに根室の子が、どんどん入学して医師になれば、根室の医師不足の問題は容易に解決します。

「現実を知った上で、覚悟を決めてぜひ医者になる」かどうかを考えるのは、医学部に入れる成績のある子供だけに、許される悩みで、成績の悪い子には、無関係な話です。根室には、旭川医大に合格できる偏差値の子は、どのくらいいるのですか? 昨年の、旭川医大の数学の入試問題は、難しかったですよ。こういう入試問題に果敢にチャレンジできる子を育てないといけないのです。

「医師は金持ち?」の記事、とんでもない勘違いがあります。医師になると、ほとんどすべての人が、卒後20年程度で中堅医師になるわけです。この人の平均的収入が大企業の部長クラスとは、とんでもない、高給取りです。一流大卒で、大企業の部長クラスに出世する人は、一部に限られています。
 医師の平均的な収入は、他の学部卒者の特別に出世をした最高給与程度だから、たいしたことないなどと、いったいどんな勘違いをすれば言えるのでしょう。
by cccpcamera (2011-02-22 15:23)

*cccpcamera blog
http://cccpcamera.asablo.jp/blog/

北方領土問題
http://www.ne.jp/asahi/cccp/camera/HoppouRyoudo/index.htm


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医師の年収云々の話は別として。
ebisuさんは、地元の医師不足解消策として放流・リリース方式、栽培漁業方式とも云える方法を力説なさっていますよ。釧根の子ども達が、どんどん医学部を目指してくれればいい。それだけなんです。

しかし、釧路で言えばそれを目指せる子は、毎年・市内全体で片手に余る状況でしょう。最上位校たる湖陵高校(理数科含む)も年々学力が落ちる一方。根室なら2~3年に一人でしょうか。だから、そもそもの基礎学力を高めることが先決なんです。

この地の子ども達の学力向上のために、力を、力を貸して下さい…
by ZAPPER (2011-02-22 21:59)


*#1301 『終わらざる夏』
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-14

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#1390 医療四方山裏話(5) Feb. 22, 2011 [40. 医療四方山話]

 医者は医者でご苦労があるようです。とくに大学卒業直後の処遇はあまりよろしくなかったようで、その辺りの具体的な事情がつづられている。とはいっても30年前の話でいまは事情が少し違うようだ。
 勤務する病院によっても処遇には大きな違いがあるし、勤務医と開業医の違いもある。コメントには書いていないが、開業医は開業医で悩みがある。診療だけでなく経営に対して責任があるからだ。両方に目配りしながら病院の採算をプラスに維持するのはそれはそれで結構煩瑣な仕事を伴うものである。おまけに民間事業であるから、経営に失敗したときには何もかもなくす事になりかねない。リスクも大きいのである。ある江東区内の150床の病院経営者のため息を思い出す。そのうちに書くかもしれない。500ベッドの総合病院経営に失敗して数十億円の負債を抱えた例も知っている。勤務医は権限が小さい替わりに責任も軽いのである。

 さて、5回目のコメントを紹介したい。医者と患者、お互いに相手のことは気になるものであるから、下世話な話もあったほうがいい。
 結論から言うと、誠実に仕事をすると医師というのは相当しんどい商売である。休みがほとんど取れないし、24時間勤務あるいは待機状態に自分をおくことになる。どんな職業を選択しても収入に見合ったそれなりの苦労はあるということだろうか。
 さあ、医師を志す君にも読んでもらいたい。それでも医者になりたいか?現実を知った上で、覚悟を決めてぜひ医者になって、地域医療を支えて欲しい。

「医師は金持ち?」
 その昔、「お医者さんは金持ち」と言う常識(笑)がありました。
例えば彼らの車を見れば、外国車に乗っている方が結構多いですね。それも何故かアメ車よりもヨーロッパ車(特にベンツやアウディなどのドイツ車)が好まれ、ボルボやサーブなどの北欧車、ベントレーやロールスロイス、ランドローバーやディフェンダー、オースティンなどの英国車、シトロエン、プジョーなどのフランス車、アルファロメオなどのイタリア車はマイナーな様です。もっともかって「ファラーリやランボルギーニに乗ってみたければ北見の〇×病院にアルバイトに行け!」と言われたように、いわゆるイタリア車でもスーパーカーを所持している医師は居ります。因みにその病院は時々保険上のトラブルなどで新聞紙面を賑わせますが・・・(だからスーパーカーを持てるのかも)。
医師がドイツ車を好む傾向があるのは、多分に日本の現代医学がドイツ医学を源流にしていることと関係があるのかも知れません。
 また車以外にも医師にはちょっとした傾向があります。昨今は仕事では猫も杓子もPC頼みですが、どうも医師はMAC系が好きなようです。小生はずっとwindowsマシンですが、何時も「あれ、マックじゃないんですか?」と意外がられました。ドイツ車に芸術関係や建築関係者が好むMAC・・・どうもいわゆるインテリっぽい嗜好が医師にはあるようです。それにしてもまるで金太郎飴ですね(笑)。

 さて本題の「医師は金持ち?」ですが、そうですね、多分言える事は「貧乏では無い」でしょうか。しかしそれもその医師の立場に依ります。かって小生が大学病院勤務の時、現在は釧路の病院で部長をやっている後輩がノイヘレン(新人)で居りました。彼は奥さんと共稼ぎだったのですが、或る時小生に泣き付いたことがあります。「先生、僕本当にお医者さんなんでしょうか」「どうしたんだ?」。つまり彼の話はこうです。久し振りにすき焼きでもやろうとスーパーに買出しに出掛けたんですが、すき焼き用の肉が高くて買えなかった・・・のだとか。札幌のスーパーで売っている牛肉ならば当時高くとも精々100gで1000円はしないと思います。小さな子供2人の家族4人でしたら、肉も400gも有れば足りるのでは。その肉が高くて買えない・・・後輩が情けなくなった気持ちは良く分かります。世間では「医者は金持ちと」と決め付けていますが、実際はその医者の立場によってはそうでもないのです。
 では当時の後輩はどんな立場だったのか。先ず彼は医師に成りたての1年目を大学の教室で過ごします。当時の彼の身分は「非常勤医」で公務員に準ずる立場です。国立大学では助手(現在の助教)以上が国家公務員で、助手以下は非常勤医でした。この非常勤と言う代物、「国家公務員に準ずる」と言えば聞こえはまずまずなんですが、実際には昔のインターン並みにこき使われる立場です。先ず給料ですが基本的に日当! それも小生の頃は1日6000~7000円でした。この辞令と言うのが傑作です。「4月1日付けで発令され問題が無い場合は毎日自動的に契約が更新され、翌年の3月31日まで継続する」と言う奴です。つまり言い換えれば「日雇い労働」ですね。勿論ボーナスも昇給もありません。更に悪い事に、当時の国立大学には「総定員法」と言う文部省の縛りがあり、大学全体で一定の人員が決められ予算が下りていました。勿論実際の人間は予定数より遥かに多いので、少ないパイを多くの人間で分けなくてはなりません。大学病院には非常勤医が溢れています。特に外科や内科の大所帯には多くの非常勤医が居ますので(まるで食い詰め浪人!)、彼らにも少ないながら給料を渡すためには少人数の科(非常勤医は少ない)の割り当て分から回さなければなりません。月に30日働きながら支給される日当は20日前後しかありません!そうなるとただでさえ少ない給料が更に減額されてしまいます。しかも勤務は朝8時頃から夜10時過ぎは当たり前。勿論土・日・祝日も関係ありません。大学では助手以上に当直が回ってきますが、それを実際には非常勤医が肩代わりして、本来助手以上に支給される当直手当を貰います。月に4~5度の当直料を合わせても、手取りが月に12~13万でした。勿論それでは食って行けませんので、月に何日か地方の病院にアルバイトに出かけます。大体3泊4日の旅で25万前後の稼ぎには成りますので何とか生活が出来るようになります。しかし或る時からその事が問題に成り始めました。外にアルバイトに出ている時に大学での非常勤勤務の届出をしたままの事が多く、「大学病院の医師はアルバイト先と大学から給料の2重取り!!!」とマスコミに騒ぎ立てられました。勿論医者を袋叩きにしたいマスコミは、大学病院の非常勤医の日雇いの値段を絶対に書きません。書けば世間はあまりの酷さに医師へ同情するからかも知れません。

 科によって違いはありますが、小生の教室では1年目は大学で悲惨な非常勤医(年収400万前後)。2年目から外の研修病院に武者修行に出ます。これは市立病院クラスの大きな病院で、大体上にそれなりのベテランが居てそこの医療のやり方を学びます。勿論そのこの病院では正職員として扱われますので、給料は800~1000万位は貰えます。翌年、翌々年位まで1年毎に外の病院を転々として、ある程度現場の病院の様々なスタイルを学んで大学に戻って来ます。今度は助手として一応国家公務員に成りますが、給料は医師と言っても公務員に医療職と言う毛がちょびっと生えたに過ぎません。相変わらずの貧乏生活に舞い戻り一応研究もどき生活を2年~3年程送ります。そこで取る物(学位)を取って再び外の世界に出ます。今度は末端の地方の病院で医長や部長として上に立って後輩を指導する立場に成ります。科によってはその科の医師が自分一人と言う場合もあり(一人医長)、患者さんの全ての責任を一人で背負う事になり結構ビビります。
 メス科の場合は複数でやる手術の時には近くの関連病院や大学から手伝い(先輩が多い)が来ます。その頃で医師としてはやっと半人前でしょうか。しかし外科などでは、自分に自信が付いてやたら切りたがる医者が出てくる時期でもあるようです。その後適当な病院に就職する者(固定)、大学に戻るもの、更に道外の専門病院に武者修行に出る者etcと様々な道が医師を待っています。その頃は経済的に都会では年収1000~1500万程度、地方では1500~2000万前後かと思います。そうですね、医学部を卒業して約10年で一応一人の医師として巣立つことに成ります。

 ここで一つ声を挙げて申し上げますが、皆さんは医師の移動はいわゆる「転勤」と勘違いなさいます。「転勤」とは、普通一つの組織内で移動する場合に使われます。しかし医師の移動の場合はそうではありません。大学に居る時は国家公務員ですがどこかの市立病院に移ればそこの市職員、町なら町の職員、厚生連などの団体ならその団体の職員などと身分が目まぐるしく変わります。勿論年収などはその組織の規定で決まり、移る順序によっては給料が下がったりします。勿論健康保健や年金も毎回申請のし直し、子供の学校の問題も頭を悩ませます。そして何よりも問題なのは、1年~3年で次々に職場を変わることが多く、「継続」が美徳とされる日本社会では退職金などの面で非常に不利に扱われます。その退職金も普段の給料からは考えられない安い金額の事が多く、年金も雀の涙・・・。大体医師のボーナスは月給から見ると少ないのですが、その理由は、医師の給料は本給はそれ程多く無く諸手当をテンコ盛りにしてそれなりの額にしていることが多く、従って本給X??と言うジャンルは非常に安いことに成るわけです。
 医師の収入に関していえば、卒後20年程度の中堅医師の場合で全国展開の大企業の部長クラス辺りでしょうか。しかし、そちらは最低でも完全週休2日なのに対して、医師の場合は時に週末も連休も無く24時間体制。加うるに昨今では結果が悪ければ親の敵のように恨まれ罵られ・・・それでも貴方は医師になりたいですか?

(注)ここに書いた医師の立場は、一般的な医療機関の勤務医の話で、御自分で開業されている医師の方たちはこの限りでありません。
by 医療四方山裏話 (2011-02-21 12:39) 


P.S
尚、北海道の医師の年収がどの程度のものかを考える際に、北海道地域医療振興財団のHPに出ている各施設の求人欄に記載されている年収を見ると、或る程度の参考になると思います。

   
http://www.iryozaidan.or.jp/
by 医療四方山裏話 (2011-02-21 12:47) 


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#1388 医療四方山裏話 (4) Feb. 20, 2011 [40. 医療四方山話]

 私は4年半前に40日ほど消化器外科と内科、循環器内科と外科のある釧路の専門病院に入院していたことがある。事情はカテゴリー「C」に書きかけて中断している。
 あるときデイルームの自販機の陰の椅子に座って隠れるようにアンパンを食べている女性の患者さんをみかけた。「あれ、いいの?」と声をかけたら照れくさそうに笑って「とめられているの」。その後何度か見かけたが、みて見ぬふりをした。その人は個室に入院している50前後の患者さんだったが、2週間ほどして朝、搬送用ベッドで点滴されながら釧路市立病院へ緊急搬送された。病気を甘く考えていたのだろうか?個室でなければ、あるいはそういう状態にはならなかったのかもしれない。同病の患者さんたちがまわりにいれば、教えてもらえることは多い。わたしは同室の患者さんや別の病室の患者さんたちに自分がどうなるのか教えてもらった。同病の先輩諸氏の話に勇気付けられた。個室だとそういう有益な情報ははいらない。建て替えられる市立病院には個室が多すぎることがちょっと気になる。入院したことのある患者の意見をどれほど聞いたのだろうか?

 医者の言うことを聞かない患者はいる、そして病気は確実に悪化する。セルフコントロールできない中年の患者さんを思い出しながら、毎日向き合っている生徒たちが将来病気で入院したは10人のうち半分我慢できるだろうかと心配になる。それほど「我慢」というトレーニングができていない子どもたちが増えている。親は子供に不自由をさせ、我慢・辛抱を躾けておくべきだ。その躾が将来あなたの子供を救うことになる。
 もう一人の同室だった患者さんのことを書こう。医者は膵臓癌だと宣告していないが、同じ病室の私にはあきらかに膵臓癌だと分かる患者さんがいた。病院内では禁煙になっているので、建物を出て隠れてタバコを吸っていた。習慣はやめられないのである。膵臓癌は多くの場合手遅れとなる。昔、あるメーカの膵臓癌の検査試薬開発に検査会社側の開発部スタッフとしてちょっとだけタッチしたことがある。その検査は「死のマーカー」と呼ばれていたから、その患者さんの場合はしかたがないな、そう思ってみていた。可哀そうで何も言えなかった。「とくに治療はないんだよな、入院しているだけだ」って一度だけつぶやいたことがあった。翼をもがれた鳥のようで可哀そうだった。夏だったから、時々玄関からでたところの日陰にしゃがみこんでタバコを吸っていた。あまりおいしそうには見えなかった。健康と美味しい空気の両方があってこそタバコは美味いもの。

 ここまではわたしの入院患者としての観察と想いである。医者の側はどのように観て、どのように感じているのだろう。今回も貴重なコメント、「医心伝信」4回目である。医者と患者のコミュニケーションと想って読んでいただけるとありがたい。


「M3.com」
So-Netが経営するm3ドットコムと呼ばれる医療専門のサイトが有ります。その中の一部は「医師限定コンテンツ」として一応医師でないとアクセスできないことに成っていますが、実際にはかなり多くの医師以外の方が見に来ているようです。その「医師限定コンテンツ」の中で最も有名なのが「Doctors Community」と言う掲示板でしょう。ここはm3に登録している医師なら適当なハンドル(一人が10個まで登録できる)で好きなことが書き込めます。また誰かの書き込みに対して「閲覧数」「賛成数」「反対数」「不適切」の感想(判定)も表せます。

大抵の場合元ネタは主に医療関係の新聞の報道記事(毎日新聞、読売新聞、朝日新聞、共同通信etc)で、その内容に対する井戸端会議ですが、やはり医療現場を殆ど知らない(勉強していない)記者が書いた記事ばかりなので、しばしばそのことが俎板に乗り非難が浴びせられます。
特に最近多発している各地の医療訴訟の裁判官の判決には殆どの医師がキレています。何故なら医師の側から見て明らかにミスではなくよく起きる合併症のトラブルが多いのに、医療に不案内な裁判官は医師や病院のせいにします。そして患者さんの立場も顧みず高額な賠償金の判決。しかし一番医師達が怒っているのは、どんなミスジャッジをしても謝りさえしない裁判官が、生意気にも医師に対しては容赦なく結果論で弾圧している事です。そしてそのような訴訟を煽る弁護士の存在も無視できません。特にこれからはロースクールで量産される弁護士の食い扶持を維持するためにどんどん訴訟が増えるでしょう。
もしこのような風潮がエスカレートして行けば、いずれ医師側は自衛のために萎縮医療の方向を目指すかも知れません。今でも現場では、患者さんに何かの手術や処置、検査、強い薬物投与などに際しては本当に膨大な書類が用意されます。医師は全てを説明する時間などありませんから、後は渡された説明や承諾の書類を患者さんや家族が全て目を通してお互いが署名するのが普通です。しかし実際に何かの合併症が起きてしまい、その結果が悲惨なことになってしまった場合、やはり家族が医師や病院を訴える可能性は十分にあります。そして結果は、医療側に対して「患者側に十分な説明がなかった。手術の合併症で死亡する可能性について触れなかった」・・・
もし貴方がこれから手術を受けようかと言う時に、「貴方は手術で死ぬこともあり得る」などと言われたらどうされますか?しかし裁判になれば、そのことが取沙汰されてしまいます。
実際こんな話を聞いたことが有ります。血液透析を受けている慢性腎不全の患者さんは、最初のうちは尿が出ているから良いのですが、次第に尿量が減って来るとその分の体重増加を来します。それぞれの患者さんには自身の基準体重が決められていますので増加分は透析の際に除水しなければなりません。しかしそれには安全な除水範囲があり、それは大体基準体重の3%~5%と言われています。つまり50キロの方なら体重増加の許容範囲は1.5~2.5キロ程度です。それ以上の体重増加を短時間(大体4時間位)で処理しようとすると血圧低下や頭痛、足のツリなどの合併症が出やすくなります。結局一回の透析で安全に除水できる量は限られますから、かなりの体重増加で来院されるとどうしても未処理の水分が残ります。そしてその悪循環が続くとやがて肺に水が貯まる肺水腫の状態に至ります。この状態は呼吸困難を招き心臓も肥大し(心不全)、治療方法やタイミングを誤ると患者さんが死亡することに繋がります。ですからどこの透析室でも医師や看護師、臨床工学士などのスタッフは事あることに「余分な水分は摂らない」「体重は増やさない」ことを患者さんの耳が痛くなる程注意(指導)します。しかし残念なことに、どこのクリニックにも豪傑!(無理解な患者)は居るもので、クリニック側の説得にも応ぜず豪快!に体重を増やし、遂に不可逆性の肺水腫に陥りとうとう亡くなった方がいます。今流行の言葉で言えば「自己責任」、つまり自業自得です。しかしその方の娘さんが「病院の管理が悪いからお父さんが死んだ」と病院を訴えました。そして判決は原告側の勝訴。何故なら、「病院は患者が命を託して来ているのだから、それに応えて患者を説得する義務がある!」
のだそうです。それに対し病院側は「もう気が遠く成る程毎日注意していた」と反論しても、「では何故患者が受け入れるまで説得を続けなかったのだ」・・・。
もう今や医療機関は完全な弱者です。診療費不払いの患者さんに料金を請求すれば「病院に来るような弱い人間を苛める!」と何故かマスコミに叩かれます。今やどこの地方自治体でも悪質な税金の滞納は銀行に連絡して口座から強制徴収しています。食堂でラーメンを食べて料金を払わなければ無銭飲食で捕まりますね。しかし医療機関相手だけは何をしても大手を振って通れます。救急車の使い方が可笑しいと無用な使用に5000円程度の料金徴収を考える自治体は数多ですが、実際に施行できている所はほんの一握りです。また夜間外来に押し掛ける患者さんに対して別料金を徴収する病院もあまり有りません。勿論皆考えてはいても、何故か医療関係がその方向で動こうとすると必ず「待った!」が掛ります。

ではこちらの(善意の)意向に従ってくれない患者さんは医療機関としてどうすれば良いのか。答えは意外に簡単です。そうです。診なければ良いんです。最初から関わらなければ良いんです。先日「機内でのドクターコール」のテーマで書きましたが、手を出せばどんなに頑張っても結果が悪ければ訴えられる。しかし診なければ(少なくとも)訴えられない。医師としての忸怩たる思いは有るだろうが・・・ですね。

M3の医師の掲示板には、何時もこのような医師側の自嘲やマスコミ、裁判官、弁護士への怒りなどが渦巻いています。

by 医療四方山裏話 (2011-02-19 23:47)


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#1387 医療四方山世間話 (3) Feb. 19, 2011 [40. 医療四方山話]

 さて、3回目は「医師の立場」である。医師と医者、教員免許をもっているだけの者と現場の教師、喩えがあるとわかりやすい。
 あなたが医師で飛行機に乗っているときにドクターコールがかかったらどうするかという具体的な問いかけである。一緒に考えてもらいたい。 


「医師の立場」
 この部分も普段皆さんが気が付かない(考えたことも無い?)所かと思います。現在では医師に成るためには、医学部を卒業して国家試験に合格すれば国家に医籍登録されて医師として認められます。まあ平ったく言えば国家公認の医師に成るわけです。しかし、です。ここから先が肝心な部分です。ところで、この先は話の便宜上国家資格の「医師」と言う身分と実際に医師として機能する状態をわざと「医者」と書き分けますので御了承ください。

 「医師はいつでも医者なのか?」
 「何を馬鹿なことを。当たり前じゃないか」と思われる方もいらっしゃるでしょうね。では例えば学校の先生はどうでしょう。勿論皆さん「教員免許」はお持ちです。ですが世の中には「教員免許」を持ちながら「先生」ではない方が大勢いらっしゃいます。安定した職業である学校の「先生」は競争率が高い狭き門なので中々就職できないようです。また大学の在学中に教職課程を取り一応教員免許を持ちながら他業種に就いている方も多いでしょう。教員免許を持つ人間がどこかの学校に就職して初めて「先生」状態になるわけです。

 医師も同様です。どこかの職場(主に医療機関)に属して初めて「医者」として機能できます。医者は御存知のようにかなりの権限を持っています。人間を診察し治療する。診察では個人のプライバシーを暴露し、治療では「切った・貼った」、麻酔を掛け、薬(麻薬を含む)を使い、X線を浴びせ、亡くなれば死亡宣告、時に遺体を解剖する・・・つまり相手の健康面の全てを支配できる絶大な力です。

 しかし、例えば薬の処方を採ってみます。処方箋に薬の種類や投与量を書き込むわけですが、処方箋には必ずその処方した医者の名前が記載され、また何処の医療施設の処方箋かが明示されています。つまりA医院やB病院の名前の下で初めて医者が処方行為ができるわけです。ですから幾ら医者だからと言って、旅先などで薬局に立ち寄り「これとこれを処方して欲しい」と言っても薬剤師は受け付けません。その医者が所属する医療機関の処方箋が無いからです。「俺は医者だぞ!」と幾ら叫んでも無駄です。所属の医療機関を離れた環境では「医師」は「医者」ではなくなります。

 それ程の法に認められた権力を持つ医者ですから、それなりの義務があるのは当たり前かも知れません。医師に関する法律(医師法)には「診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」応招義務と呼ばれる規定があります。この項目に対する罰則規定は有りませんので、いわば医師たる者の倫理観(努力目標)ですね。しかし医師法第十九条はこう続きます。
 医師法第十九条にいう「正当な事由」のある場合とは、医師の不在又は病気等により事実上診療が不可能な場合に限られるのであって、患者の再三の求めにもかかわらず、単に軽度の疲労の程度をもってこれを拒絶することは、第十九条の義務違反を構成する。 2 医師が第十九条の義務違反を行った場合には罰則の適用はないが、医師法第七条にいう「医師としての品位を損するような行為のあったとき」にあたるから、義務違反を反覆するが如き場合において同条の規定により医師免許の取消又は停止を命ずる場合もありうる。また、休診日であっても、急患に対する応招義務を解除されるものではない。くわばらくわばら!(笑)

 さてそこで以上を踏まえた上で今回の本題に入ります。よくドラマなどではスーパードクターが院外で活躍する場面が出てきます。果たして現実はどうなのでしょうか。また機内アナウンスで「病人が出たのでどなたかお医者さんはいらっしゃいませんか?」と言ういわゆるドクターコールに 手を上げる義務があるのでしょうか。

 以前青年海外協力隊関係に属する元北大形成外科のHドクターがラジオ番組の中でその事を話題にしたことがあります。仕事柄やはり海外出張が多いHドクターは「ドクターコール」について彼なりに調べ、番組の中でははっきりした結論には触れませんでしたが取り敢えず「呼び出しに対して応じる義務は無い」との見解に至ったそうです。医師には前述の「応招義務」が有る筈なのに何故でしょう?
 その理由は、こう考えると良いのだそうです。医師法に謳われている「応招義務」はどこでも成立するわけではありません。「医師がその所属する場所で医師と分かる状態に有る時」と言う条件があります。つまり「外来などで診療中に診察を求めた来た患者は正当な理由無しには断れない」と言うことです。これは逆に言えば、「医師が本来仕事を出来る環境(権利)においては、義務もまた発生する」わけですね。因みに機内でのドクターコールについて考えてみましょう。先ず「医師と分かる服装=白衣を着ている」ではありません。また自分を名指しして来た訳でも有りません。「誰か居ませんか?」です。つまり不特定多数に対する呼び掛けです。まして機内には厄介なケースに対してそれなりの器材を積んでいるわけでもありません。まあ今ではさすがにAEDくらいは積んでいるでしょうが。
以上を総合すると、「飛行機や鉄道、バスなどで移動中の医師は”医者”では無い。従って”応招義務”も適応されない」と言うことに成ります。
 では多少条件を変えて考えて見ましょう。同じ機内に知り合いが乗っていてこちらの身元が知られている場合です。或いは自分の患者さんが同乗していた場合です。この場合には「応招義務」が成り立つのでしょうか。答えはやはり「義務は無い」のだそうです。何故ならば機内はその医師が働いている職場環境ではないからのようです。つまり機内では「医師」ではあっても「医者」ではないと言う事です。しかし現実にはどうなるでしょうか。知り合いに頼み込まれれば、法律は別にして医師としての使命感(倫理観)で動くでしょうね。但しその場合はあくまでも「医者」ではなく「医師」としてのボランティアでです。
 では別のケースで、患者さんには面識が無いが自分が医師である事が知られている場合は?その場合も患者さんを診るとすれば、やはりあくまでも「医師」としてのボランティアでですね。
 今回の話で「医師」と「医者」の様に敢えて書き分けた理由は、医師にも様々な立場があるからです。
 現在のシステムでは、医学部を卒業した時点で皆国家試験を受け、合格すると医師として国家に登録されます。その後多くは臨床医を目指しますが、勿論それが全てではありません。卒業後生理学、解剖学、生化学、薬学、法医学、衛生学、公衆衛生学などの基礎系の研究室に入る者も居ます。彼らは身分上「医師」ではあっても臨床現場に勤めていないので「医者」ではありません。また厚労省の役人に成る者も居ます。彼らもまた「医師であっても医者ではない」立場です。しかし世間ではどんな「医師」でも皆「お医者さん」と思いがちです。何故なら「医学部時代に全部の科を勉強しているんでしょう」と言う思い込みがあるからです。
 確かに医学部では卒業前に臨床実習で臨床各科を回りますが、それはあくまで工場見学と同程度の事で、それで現場が分かると言うレベルの話ではありません。実際に卒業後臨床医に成って何十年経っても、例えばその地域でお産があり「医者なんだから何とか診て欲しい」と頼まれても大抵の医者は尻込みするでしょう。確かに学生時代臨床実習で1度や2度はお産の現場を見た事があっても、実際の現場ではそんなもの全く役に立ちません。むしろ生半可な知識は危険です。その事を身に滲みて知っているのは他ならぬ医師自身です。つまり今までの専門分化したシステムの上で学び生きてきたために、他科的な疾患を診ると言う融通が利きません。このような医者は都会では役に立っても地方の国保病院などの医師数が限られている臨床現場では困ります。そこで最近地方の現場でも活動できるように、取り敢えず浅く広く患者さんを診れる「総合内科医」の方向が打ち出されてきているわけです。今までの専門医は患者さんを診る前から「これは自分の分野では無い」でしたが、これからは先ず患者さんを診る総合内科医のような医者が増えていくでしょう。

 ここで最初のテーマに戻ります。医師の「応招義務」を守れば、自分を殴りに来たと思われる患者さんをも断れないことに成ります。診て治せばまた殴りに来るだろう事が分かっていても。もしまた殴りに来る途中、病院の中でその患者さんが目の前で倒れたとします。「俺は殴られたくないからこの患者を診ない」と突き放しその結果死なれてしまった場合、もし裁判にでもなればどのような判決になるでしょうね。
 現在のところ多発している医療過誤の裁判では患者さんは弱者扱いされ医者側は非常に辛い立場に立たされています。何にでも誰にでもトラブルは起きます。しかしその患者さんに関わったために結果が悪く出た場合に裁判で有罪に成ります。しかし敢えて関わらなければ(診なければ)、確かに医師法に 「応招義務」は明記されていても裁判では有罪には成りません。言ってみれば「診てミスったら有罪だけど、診ない罪は問われない」のです。それならば「自分の良心に鍵を掛けて診ないに越した事は無い」と言う消極的な態度の医師が増えても不思議ではありません。

 お尋ねいたします。もし貴方が医師だったら、ドクターコールに手を上げますか?
         by 医療四方山世間話 (2011-02-18 13:23) 

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#1386 医療四方山裏話 (2) Feb. 19, 2011 [40. 医療四方山話]

 医療サイドからの現行保険点数制度の矛盾について具体例を引いた解説がコメント欄に寄せられた。こういう解説にはメッタにお目にかかれない。やってられないな~という声が聞こえてきそうである。相互理解のためにはおおいにぼやいてもらわねばならぬ。
 「医心伝信ネットワーク」もこういうコミュニケーションがしたかったのかも。「なるほど、そうですね」と肯くだけでもずいぶんストレス解消にはなるでしょう。たまには共感を持って相手の話に耳を傾け、うなずく。医者だって人間です。


[医療保険とは]2
 日本の健康保険制度の根幹を成しているのは減価償却主義です。高い機械や使い捨て器具を使えば点数が高く成ります。極端なケースで考えてみましょう。
 貴方が急に胸が苦しくなり倒れたとします。市立病院に搬送され、いわゆるCPR(以前はABCと呼んだ救急蘇生)が始まります。心臓が止まっていれば心マッサージ(30分までは2500円)、余裕が有れば気管内挿管(5000円)、どうしても心臓の拍動が戻らない時に除細動(=カウンターショック。備え付けのAEDを使えば25000円。AED以外の器械なら35000円。しかし病院内で医師以外の者がAEDを使った場合は”無料”)。もちろんこれらの経過中には昇圧剤やアルカリ化剤の静脈内投与が行われ落ち着いたら中心静脈補液ルート確保がなされ、場合によっては人工呼吸器に繋がれる事も・・・その場合は更に諸経費が加算されては行きますが。
 心臓マッサージに器械は不要です。両手のマンパワーだけです。気管内挿管は技術的には難しい手技ですが、道具は喉頭鏡と気管チューブがあればOK。AEDは20万前後で購入すれば、後は使い捨ての1万くらいの電極の代金だけです。つまりこの一連の手技は技術的には結構難しいのですが、使う道具に金がそれ程掛かりません。その事が保険点数に反映されています。
 以上何とか心臓が動き出した(一命を取りとめ)段階で、取り敢えず2500+5000+25000=32500円。ざっと考えても50000円程度でしょうか。50000円で何が買える(何が出来る)でしょうね。「人命は尊い。金には代えられない!」

 一方で、90歳を越えた老人を弱ったからと無理矢理入院させ、肺炎にでも掛かって亡くなろうものなら「肺炎で死んだのは病院の管理が悪いからだ」と病院を訴え、また裁判所も何故か2~3000万もの賠償金を命じるケースが最近続出しています。医師専用のm3の掲示板には、そのような家族や裁判官に対する怒りが何時も渦巻いています。

 若い働き盛りの命を取り留めて50000円と言う保険点数も異常なら、寝たきり老人に当たり前の合併症を病院の責任にされ裁判官もそのように認定する。
 今までお互いの性善説でやって来た日本の奥ゆかしい文化は一体何処へ行ってしまったのでしょう。

by 医療四方山裏話 (2011-02-17 17:55) 

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