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35. 感染症および自己免疫疾患 ブログトップ
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#4194 日本の医療行政の人材劣化現象はなぜ起きたか? Mar. 1, 2020 [35. 感染症および自己免疫疾患]

 前回、新型コロナウィルス感染症に対する政策を台湾と日本を比較しながら分析してみた。この感染症に対する特別法は台湾ではまだ感染症患者が出ていないうちから検討され、患者が出始めてすぐに1/25に台湾立法院で可決成立して、ただちに実施されている。マスク不足への対策は、政府がメーカから全量買い上げ、健康保険カードを使って、一人一週間に一度だけ買えるように制限したから、マスクがなくて困っている国民はいない。健康保険カードは1995年に導入され、ICカードになって購入履歴が書き込みできるのでコントロール可能だ。日本にはこういう制度がない。
 日本では1993年ころに臨床検査項目コードが標準化されている。臨床検査会社6社と臨床病理学会の5年にわたる産学協働プロジェクトの成果である。最大手の臨床検査会社SRLに事務局があるが、新型コロナウィルス感染症PCR検査を新規登録すれば、翌日からでも病院から民間検査センターへ検査外注できるから、いま公的機関80施設でやっている900ID/dayの制限がなくなる。20倍は検査可能だ。ラボ側の受け入れ調整があるので、実際には検査項目コード登録から3日後くらいになるだろう。この点では日本は世界中のどの国よりも進んでいる。何しろ、臨床検査項目コードを国内で統一した国はないからだ。
 臨床検査項目コードの標準化も台湾の健康保険カードも医療のインフラと言っていい。ほんらいは行政がやるべき仕事だが、日本の厚生労働省からそういう発想や提案が出てきたことがない。
 「東大村」という仕組みのせいだと思う。人脈が狭いのだ、人脈が狭いと視野も狭くなるようだ。前回のブログで書いたが長くなりすぎたので、こちらへ転記して紹介する。

 2/29に唐突に出された、全国の小中高一か月間一斉休校要請は、集団ヒステリックのようなもの。理由は一連の新型コロナウィルス感染症関係の記事でいくつか書いたのでそちらをご覧あれ。
 新型が厄介なのは、再発率が14%(中国の事例)もあることだ。ウィルスが検出されなくなっても、どこかに隠れていて、薬が切れたり免疫が下がると再び増殖してしまう。まるで、帯状疱疹ヘルペスウィルスのような性質をもっているらしいことだ。それが何に由来するのか、新型コロナウィルスを遺伝子モデリングで分析してもらいたい。インフルエンザウィルスにはいままでそういう性質がなかった。罹患して治療完了すれば抗体ができて再発はなかった。世界中の研究者が競って解析してるから、いずれ学術論文が出てくる。



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<余談:人材考>
 なぜ、厚労省から臨床検査項目標準化というデジタル時代の医療システムのインフラともいうべき重要なプロジェクトが提案されなかったのだろう。そして、わたしたちがやった産学協同プロジェクトは厚生省に声をかけなかったのはなぜだろうか考えてみた
 答えは簡単、必要ないからだった。わたしが集めたのは、臨床検査項目コード制定に必要なメンバーだけ。一つは実務で使っているグループ、それが大手6社(BML,三菱BCL,住友バイオサイエンスなど)のシステム部門と学術部門の専門家だった。臨床病理学会は自治医大の河合先生が国際病理学会長でその一番弟子の櫻林郁之助教授が臨床病理学会の項目コード検討委員長だった。そして彼はSRL顧問でもあったのだ。SRL自身が河合先生の提案を受けて、富士レビオ創業社長の藤田さんが作った会社だった。それらを結びつける接着剤が必要だった。それがわたしの役割。入社1年目に毎月各大学の先生たちを招いて開いた社内講習会があったが、そこで櫻林郁之助(当時は助教授)から項目コード制定の作業を手伝ってほしいと頼まれていた。中途入社まだ1年のわたしは、暗礁に乗り上げていた統合システム開発の中核部分を担当した。会計及び支払い管理システムと投資・固定資産管理システムの二つ、実際には購買在庫管理システムの担当者(3名)が困っていたので、外部仕様書の半分くらいを書いてやった。
 入社3か月目に富士レビオの子会社、東レ富士バイオから腫瘍マーカCA19-9の価格の決め方を向こうの取締役と話して決めてきてくれと、経理部長から頼まれた。輸入試薬の仕入価格に適用する為替レートも、上場審査上関係会社取引になるので、利益操作にならないような方法が求められていた。SRLの前は産業用エレクトロニクスの輸入商社にいたから、そのあたりの書類のフォーマットやコンピュータシステム上の仕組みは、統合システムですでに経験済みだった。関係3課長が数か月協議して、処理案ができなかった。話を聞いて3日後に事務フローや帳票類のデザインを説明して納得してもらったから、経理部長の岩本さん、「ebisu、練馬ラボまで来るように、東レ富士バイオの担当取締役に電話しとくから、行って決めてきてくれ」、課長越しに頼まれた。いまでも腫瘍マーカCA19-9は使われている。汎用性が高いからだ。わたしも岡田医院で3か月ごとにやっている定期検査に年に2度くらいはCA19-9がはいっているようだ。じつになつかしい。(笑)
 上場要件を満たすための統合システムには、わたしの担当した二つのほかに、購買在庫管理システム、原価計算システムと販売会計(売上債権管理と請求書発行)システムがあった。これらサブシステムとのインターフェイスが一番難易度が高かったが、インターフェイス仕様書は依頼されて1週間で完全なものを書き上げた。いまでも、各システム間のインターフェイスは1984年4月に書いた仕様書通りに動いているのだろう。各サブシステムの内容が分かっていないとできない離れ業だった。一番遅れていた会計及び支払い管理システムの担当がわたしに交替して8か月で最初に本稼働した。2か月の並行ランを含んで8か月である。ノートラブルでスタートした。他のシステムは1年半、長いもので3年かかっている。そういう手際の良さをシステム開発部の栗原課長が見ていて、提案書にも目を通していた、それでBML社がラボを新設するので業界標準コードをつくって自社コードにするために大手6社に声をかけて1回目の会合が開かれたので、2回目の会議に一緒に行こうと声をかけてきてくれた。臨床検査部長の川尻部長(女性)を誘おうということになり、彼女へ話した、すぐに櫻林先生の案件になるからというと、よろこんで協力して来れた。櫻林先生は臨床検査部2課の顧問だった。免疫電気泳動分野が研究対象だったからだ。当時わたしは入社3年目で平社員、でもこうして非公式に必要な人材が動かせる面白い会社だった。仕事の実績さえあれば、職位に関係なく、仕事=プロジェクトに必要な社内人材が協力してくれる。人事部も無関係。人事部長がそんな仕事を理解できるはずもないから話すだけ無駄。大事なところは稟議書や提案書を書いて、創業社長である藤田さんの了解をもらえばいいだけ。
 面白いことに、プロジェクトに6社から集まったメンバーに東大卒はいなかった。東大村には関係のないプロジェクトだが、日本の未来の医療制度には不可欠のインフラだった。医療カードとカルテの標準化もそうだった。

 東大理3卒、大学院で応用生物統計を学んだM君が帝人との治験合弁会社立ち上げのときに、必要な人材だったので、研究部から異動してもらった。M君の上司のH川は旧知の間だったから、二つ返事で異動を承知してくれた。(当時の)社長の近藤さんに話して、異動を人事へ伝えてもらった。M君は仕事のできる男だったが、応用生物統計の専門家のF川の評価は厳しいものだった。異動の5年ほど前にF川が「ebisuさん、酒を飲もうと」初めて誘ってくれ、日野駅前の居酒屋で飲んで話した。「Mはセンスがない、センスは教えられない」というのだ。数学や統計学はセンスがない奴にはダメだというので、教え方次第だと議論したのを覚えている。議論は平行線だったが、お互いにそれぞれの分野の職人としての腕のほどは分かっていたから気が合った。F川はわたしが学術開発本部でやった仕事を見ていた。沖縄米軍向けの出生前診断システム開発プロジェクトである。ニュヨークから東女史が取り寄せた資料をわたしの机の上にポンとおいて、「これ、学術営業の佐藤君が困っている、システム部にやれないって断られたの、あなたならやれるでしょ、手伝ってやって」、学術開発本部に異動した数か月後のことだった。東さんわたしの向かいの机、米国で臨床検査の仕事を25年ほどやったことのある人だった。机の上に置かれた英文の学術論文を読み、システム部が断った理由がわかった。検査受託の入力項目に妊婦の妊娠週令、体重、民族の項目がないから、受付処理ができない。受付システムを出生前診断検査で必要な項目を含めるように改造するのは1989年の時点ではお金がかかりすぎてやれない相談だった。別の方法を考える必要があった。とりあえずプログラム仕様書は書かなければならないから、HP41cをつかって載っていたグラフとデータから曲線回帰分析をして2次方程式で近似し、プログラミング仕様書を書いた。沖縄営業所で検査IDと3項目データを入力、3項目の検査後、入力したデータと検査結果報告データファイルとを沖縄営業所に置いたパソコンでファイルの結合処理をすれば、米軍が要求する検査報告書作成が可能だった。上司のI神取締役に、「学術営業の仕事、システム部に断られたから手伝ってやるよ、いいよね」と言うと、OK.学術営業部長は窪田さんだった。いま、一部上場企業ぺプリドリームの社長をしている。その部下で米軍むけの出生前診断検査と慶応大学産婦人科医との産学協同プロジェクトの仕事を担当した佐藤君は8歳下だったが、会社を辞めて留学し、米国臨床栄養士の学位をとって栄養医学研究所を立ち上げ独立起業した(立ち上げの3年間ほど、出資と監査役を頼まれてた。日本の臨床栄養学の草分けとなったが、2年半前に急逝している。癌だったのではないだろうか。亡くなる1か月前の講演会の写真を見たら、痩せていた)。
 パソコンのプログラムだったのでシステム部からC言語のプログラミングのできる上野君の応援を依頼し、1か月でシステムができて、上司のI神さんと学術営業部の佐藤君と上野君、わたしの4人で沖縄米軍を訪れた。ずいぶん喜んでくれて、三沢基地の米軍の取引を全部SRLに出してくれるということになった。米軍は法律の縛りがあって、女性兵士が妊娠したら出生前診断検査を受けさせる義務があった。国内でその要望に応じることができたのはSRLのみ、おまけにSRLは部国の品質管理基準のCAPライセンスも1988年ころに取得していた。上司のI神さん、米軍の「ゼネラルミーティング」に何度か呼ばれて参加していた。
 そのあと慶応大学産婦人科医たちと、出生前診断検査MoM値の基準値研究プロジェクトをマネジメントするために、佐藤君と一緒に信濃町の慶応大学病院を訪れた。多変量解析を伴うので古川の協力が必要だったがかれは二つ返事でOKしてくれた。「ebisuさんから来た仕事だからやるんだ」そう言っていた。わたしが間に入っていなければ、仕事を断って会社を辞めただろう。かれは産婦人科学会で慶応大学のドクターが発表したときに、そのデータがBML社のものだったので、データそのものに信頼性がないこととデータ処理に関する異議を申し立てたことがあった。応用生物統計に関しては臨床検査センターではナンバーワンの職人だから、彼の主張は正しかったのだろう。当時のBML社の検査データは技術レベルや品質管理に問題があった。慶応のドクターはかんかんに怒って、取引停止騒動になったが、社長の藤田さんが慶応大学病院を訪問して頭を下げてこはおさまった。古川は数年にわたってこの仕事を担当していい仕事をやってくれた。Mom値は白人の基準値よりも、黒人が2割高い、日本人は間の110%くらいと見当をつけて妊婦の協力を得て多変量解析を進めたら、130%だった。これは人種的な問題で示唆に富んだ結果である。日本人は白人や黒人とはまったく別のグループに属しているのだ。このプロジェクトが終わると、F川は会社を辞めて独立起業した。帝人との合弁会社の役員をしたときに、仕事をいくつかまわした。かれにとっては必要がなかったかもしれぬが、立ち上げ当初は思い通りにはいかぬものだ。
 このプロジェクトは、必要な三つの検査試薬は製薬メーカ2社に話して、研究結果が出たら論文を販促に自由に使っていいからという条件でタダにしてもらった。そのっ旨慶応大学病院のドクターにも伝えて了解をもらった。4年前に試薬の価格交渉で辣腕を振るったわたしが購買部長になる可能性も、本社でまた予算編成を任される可能性もあったから、製薬メーカは当然協力してくれた。恩を売っておいた方が製薬メーカは得になるから、喜んで受け入れてくれた。検査にかかるコストと多変量解析にかかるコストはSRLもちにしたから、慶応大学病院のドクターたちは予算ゼロで画期的な学術論文が書けた。数年にわたり、6000人ほどの妊婦に協力いただいたので、3項目で1.5万円としたら、多変量解析を含めると1億円を超えたかもしれない。この仕事をやったときの職位は学術開発本部の課長だった。

 東大理3応用生物統計出身のM君は帝人との臨床治験検査及びデータ管理に関する合弁会社で素晴らしい仕事をしてくれた。当初は一緒に役員出向したO部さん(営業担当常務)の部下だったが、データ管理グループを丸ごと管理系役員のわたしの下にもってきた。M君、「SASが必要なんですが…」とさっそく言ってきた。SASは慶応大学病院とのプロジェクトで研究部のF川が使っていたソフトで、仕事に必須のものだった。「SASは生物統計にはなくてはならないソフトだ、いくらするんだ?」、50万円だった、すぐに買ってやった。よろこんでいました。NTサーバを使うつもりだったから、若いほうのシステムエンジニアK谷とM君をパッケージ開発でタッグを組ませた。治験データ管理実務は若手だがベテランの優秀な三宅をメンバーに加えた。プロトタイプは武田薬品向けのデータ管理システムでできていたので、治験検査データ分野の仕事は初めてのかれらでも新しいツールを使ってできた。チャレンジャブルな仕事だった。ラックにマウントしたNTサーバーはかっこよかった。それまで、三菱電機製のオフコンとプリンターをつかっていた。プリンターだけで1000万円を超えていた。もうオフコンの時代ではなかった。わたしは前職の産業用エレクトロニクス輸入商社で1978年から4年間三菱電機製のオフコン2台を使ってシステム開発していたことがあった。NECの汎用小型機への乗り換えと統合システム開発を1983年に経験していた。14年もたっているのに、いまさらオフコンは選択肢になかった。古手のシステムエンジニアのW辺はNTサーバーへの切り替えに反対だったが押し切った。歳を食うと新技術への対応ができなくなる、不安なのだ。プログラミング言語もC++に切り換えている。1997年だったかな。方針を明確に打ち出すことが大事、そして何をやるのかビジョンを具体的に説明して納得してもらう。こうすれば、赤字のこの会社は黒字になり、転籍したときに、親会社以上の給料と賞与を払える、払うよと約束して、がんばってもらった。じっさいに、備品類やパソコンは親会社よりもグレードの上の製品でそろえたから説得力があった。口先だけの約束では人は動かない。決め手は言っている人物が信用できるか否かだろう。
 帝人との合弁会社は赤字部門の治験検査受託だったので、資金繰りが厳しい会社だったが、黒字にすればお金はいくらでも使える。机やいす、パソコン、書架などSRL本社よりもいいものを揃えた。非常勤取締役でSRL本社営業部門担当役員とラボ部門担当役員が月に一度取締役会にきており、備品を見て文句を言ったことがある。「なんだ、ebisuこれ本社よりもいい」、「赤字の会社を黒字にしてくれる社員に使わせるんだから、最高のものを揃えた」といったら黙った。黒字にできなかったら騒ぎ立てるが、それまでの仕事を見ているからぐうの音も出ない。1992年にできた関係会社管理部は営業本部に属していたから、その時代の2年間は、臨床検査会社の経営分析と買収や資本提携交渉がわたしの仕事だったので、親会社の営業担当役員といえどもわたしのすることにあまり口出しできない。営業本部で取引検査センターの経営改善を5件ほどやってあげたし、買収や資本提携もほとんど単独でやって成果を上げていたのである。会社内では相手が誰であろうと仕事の実績がモノを言う。そもそも親会社の営業担当役員を合弁会社の非常勤役員に据えたのは、親会社社長の近藤さんが、わたしたちが親会社と調整ごとがしやすいようにと、営業担当のT村さんと、ラボ担当役員のH泉さん一緒に貼り付けてくれたのである。彼らの役割は親会社との調整事項である。お目付け役だと勘違いされては困る。3年間で黒字化と、資本引き取りによる合弁解消、帝人臨床検査子会社の子会社化が近藤社長からわたしに課せられた課題だった。全部、期限内に片づけた。
 合弁会社では社内の人材がそれぞれの持ち場でしっかり仕事してくれたので、3年足らずで黒字になった。M君に指示してやらせたデータ解析用のパッケージシステム開発が成功して、営業がやりやすくなったためだ。彼とその(データ管理)グループで、利益で2億円貢献してくれた。社員60人ほどの小さな会社だったから、経営への影響は大きかった。赤字部門の切り離しで成立した合弁会社は黒字になった。

 民間企業では東大卒は有能な上司が使ってこそその力が発揮できる。順調に課長そして部長職になって、マネジメント比率が上がるにしたがって、スポイルされてしまうケースが多いのではないか、もったいない。使い方次第でいい仕事してくれる。
 M君に見るように、東大卒は一定の品質の仕事を約束してくれる。具体的な目標を設定し、必要なツールと時間を与えてやれば、いい仕事をしてくれる、速度も大きい、受験エリートの力は侮れないのである
 しかしだ、マネジメントだけはセンスがモノを言う。この面では受験エリートはからっきしである。一ツ橋卒の人5人ほど、京都大学の理系学部の課長とも仕事したが、たまたまなのだろうが、マネジメントのセンスのいい人は一人もいなかった。ズタボロだった人も二人いる。受験エリートは中高の時代に受験勉強に専念する代わりに、その時期にしか身につかない大事ななにかを失っているように見える。慶応・早稲田は一部上場企業ではそれだけでは社内エリートの物の数には入らない。

 わたしが手掛けた産学協同プロジェクト二つには、どちらも東大出身者がいなかったが、プロジェクトはいい仕事をした。これら二つのプロジェクトには東大卒が必要なかった。
 「東大村」だけでやっているのではもう時代遅れで、やれない仕事、プロジェクト、事業が増えている。そういう日本政府の、そして各省庁の政策決定過程と人材の弱点が、今回の新型コロナウィルス感染症で露呈したのである
 「東大村」のなかで仕事に慣れてしまったら、グルーバルなスケールで時代の30年先を行く仕事はできない。財務省や日銀を中心とした財政・金融分野にとくに弊害が著しい。かつては都市銀行にはMOF担なんて言葉があった。もうとっくにそういう時代ではない。
 国全体の人材を考えたときに、東大卒は数がすくない。東大の外にいる人材の方が数の上からは圧倒的に多い。ただ、東大卒は高度な学力レベルの品質保証がある。だから他の大学に比べて、外れは少ない。

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 1986年に原価計算学会へ加入しようと思い、一橋大にある原価計算学会事務局へ電話したことがある。専門を訊かれて、「理論経済学」と言うと、断られた。なぜ、学会に入る必要があったかというと、原価計算システムを発展させて、利益管理用のシミュレーションシステムを創るつもりがあったからだ。新規商品の価格設定による、販売量と売上高とコストの変化をシミュレーションして、最適な価格設定を見つけたかった。
 提案書数枚書くだけで、予算はいくらでも使えたから、会社のコンピュータをお金を使って大きな研究成果が期待できた。会社は利益が増えるのでいくらでもお金を出せる。自分の手でDEC社のミニコンを使って見たかった。統計計算が入るので事務用コンピュータ言語では無理、データ量から考えて汎用機は必要なかった。5000万円もあれがやれた。経理担当役員の岩本さんと管理担当副社長のY口さんがノーと言うはずもない。それまでの原価計算理論が一気に陳腐化してしまう新理論登場のチャンスだった。当時の原価計算の大家は一橋大学の岡本清教授。
 日本の原価計算学者で1986年当時、コンピュータシステムを理解できる者が一人もいなかった。一部上場企業の原価計算はすべてコンピュータシステムでなされていたのに。文系と理系の分野がクロスオーバしていたから、日本の原価計算学者は手が付けられなかった。大学1年のときにはやはり一ツ橋の番場嘉一郎さんの著作を読んだ。番場さんも岡本さんの本も1000ページ近い大著である、役に立ったが、読み終わったら、次のステップがばくぜんと現れだす。そのためのたたき台にすぎない。



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#4193 蔡英文台湾総統と安倍総理の力量の差 Mar. 1, 2020 [35. 感染症および自己免疫疾患]

<最終更新情報>
3/1午前10時半<余談:人材考>追記

 安倍総理が新型コロナ感染症対策について、今日午後6時から記者会見を行った。具体策はこれから。台湾の蔡英文総統の対策と比べてみたい。

 台湾ではマスクは国民にいきわたっている。それはある仕組みを利用したからだ。日本の厚生省はそういうものをもっていない、台湾に比べて実にお粗末であることは後で述べたい。
*https://www.msn.com/ja-jp/news/national/新型コロナ“神対応”連発で支持率爆上げの台湾-iq180の38歳天才大臣の対策に世界が注目/ar-BB10xmg9
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 たしかに、台湾の対応の早さは他国と比較しても際立っている。日本では1月16日にはじめて国内の感染者発生が公表されたが、新型コロナウイルスを「指定感染症」として閣議決定したのは1月28日。台湾は感染者が一人も出ていない1月15日の時点で「法定感染症」に定めていた。
...

台湾立法院(国会)は25日、600億台湾ドル(約2200億円)を上限とする経済対策の特別予算案を可決した。大きな打撃を受けている観光産業への支援などが柱になる予定だ。

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 日本政府に比べて素早い対応です。国内の感染者がゼロの時点ですでに具体策の検討を始めて、1/28に「法廷感染症」に指定しています。
 日本では経済対策は具体案すら練られていないが、蔡英文総統は1/25すでに予算案を台湾立法院で可決させています。
 何かをやるにはテクノロジーの支えが必要ですが、日本政府は首相官邸にも厚生労働省にも台湾に比肩するような有能なスタッフがいないようです。大きな目で、長期的な視野で、制度設計とテクノロジーを融合させられる人材がいません。台湾の事情は次のようになっています。
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台湾が誇る天才が、感染症対策でも活躍している。日本と同じく台湾でも、1月後半からマスクの在庫不足が問題になっていた。まずは輸出や持ち出し、転売が禁止され、2月6日にはマスクの購入が実名制になり、7日間で2枚しか買えないようにした。厳しい供給規制に反発がおきる可能性もあったが、タン氏は衛生福利部(保健省)中央健康保険署と協力して、台湾国内の薬局にあるマスクの在庫データをインターネット上に公開。すると、民間のITエンジニアがそのデータを地図上に落とし込み、在庫状況がひと目でわかるアプリを開発して無償配布した。
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 マスクの不足問題を「健康保険カード」を利用して見事に解消しています。日本はこの方面では台湾に20年以上遅れていることが明らかになってしまいました。日本の厚生官僚は台湾のはるか後塵を拝しています。
*https://wedge.ismedia.jp/articles/-/18823
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李登輝が台湾社会に大きく貢献したもののひとつに、全民健康保険制度がある。1995年にスタートした「全民健康保険」は、全国民はもちろん、居留証(外国人登録証に相当)を持つ外国人も加入が義務付けられる。それまでの台湾では、軍人や公務員、教師だけが社会保険制度を享受してきたが、その制度から漏れていた約4割の国民にも安心して医療を受けられる国民皆保険の環境を整備したのである。

 それと同時に、健康保険カードも導入した。このカードはのちにICチップが内蔵され、様々な情報を収められるようになった。氏名や生年月日などの個人情報のほか、いつ、どこの病院で診療を受けたのか、処方箋や薬物アレルギー、過去の予防接種記録、女性の場合は妊娠や出産に関する記録なども収められている。

目下、日本も台湾もコロナウイルスによる新型肺炎の感染拡大防止に躍起になっている。台湾は2003年にSARSを経験したこともあり、政府がとった動きは迅速かつ厳格だった。中国の感染拡大が報じられると、中国人の団体旅行客の入国を拒否したことを手始めに、矢継ぎ早に入国制限(現在は、中国籍の人間は一律入国拒否)した。

 また、折悪しく旧正月とぶつかったため、マスク工場が稼働しておらず、マスク不足のパニックかと思われたが、政府は即座に備蓄を放出すると発表。その後、買い占めや転売を防ぐため、台湾国内で製造されたマスクはすべて政府が買い取ったうえで「記名制」によるマスク販売を行った。

 この「記名制」で活用されたのが健康保険カードである。政府は身分証(外国人の場合は居留証)の末尾によって購入できる曜日を指定し、購入間隔を7日以上空けなければならないと定めた。薬局には必ず処方箋を処理するための健康保険カード読み取り機が設置されているため、ICチップに購入履歴が残る。一人が代理購入できるのは他の一人分までと決まっており、イカサマがやりにくい、公平性のある制度になっている
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 臨床検査項目コードの日本標準を制定する引き金になったプロジェクトは、1986年8月に書いた「臨床診断支援システムとCAI事業化案」です。SRL創業社長の藤田さんが、予算200億円の提案書にOKを出してくれました。入社2年目のことです。入社初年度に材料費のコストカットを提案して、プロジェクトをつくり製薬メーカ相手に20億円の値引き交渉に成功していたことと、上場準備のための統合システムを8か月で本稼働させたので、ご褒美だったのかもしれません。臨床診断支援システムを利用したCAI事業は血液疾患専門医や病理専門医の育成支援をしようというものでした。どこまで対象疾患分野を広げられるかは全国の大学病院や疾患ごとの専門病院と産学共同研究スタイルでやろうと思っていました。1987年から始めた臨床検査項目コード標準化に関する産学協同プロジェクトは、臨床検査会社大手6社のシステム部門と学術部門のメンバーと臨床病理学会項目コード検討委員会・委員長の櫻林郁之助教授で構成され、5年間毎月作業部会をやってようやく制定にこぎつけました。いま全国の病院システムがこの日本標準臨床検査項目コードで動いています。臨床検査項目コードの管理事務局はSRLにあります。
 「臨床診断支援システム及びCAIシステム事業化案」には10個のプロジェクトを考えていましたが、そのうちの二つ目が、カルテの標準化でした。予備調査でICカードは容量が小さいので、開発されたばかりの光カードを使おうかと思い、オリンパスの宇津木台研究所を訪れ、容量とコストについて調査してます。オリンパスがSRLの取引先であり、当時私は購買課でラボの機器を一人で全部購入していたから、光カードの開発担当チームを紹介してもらえました。オリンパスにとってSRLは重要顧客の一つだったからです。八王子ラボとオリンパス宇津木大研究所は目と鼻の先にあります。レントゲン写真も入れたかったので、光カードでも容量が足りません。光カードへの情報はどこまで入れたらよいか、整理しなかればいけません、カルテのフォーマットを考えていました。数十万枚枚単位で買うなら価格がICカードよりも安くなるので、光カードの採用を決めていました。あとは大学病院いくつかと産学共同研究に持ち込むつもりでした。NTTデータ通信事業本部と数回検討会をもちましたが、コンピュータの性能と通信速度の問題、そして臨床診断支援システムの容量などの要求仕様を満たせるのは30年先という結論になり、事業化案はとん挫しました。台湾は「健康保険カード」の標準化を1995年にやっている、えらいと思います。
 日本政府にはそういう視点が決定的に欠けており、新型コロナウィルス感染症に見舞われて、ようやくこれから、この25年間意味のある仕事をしてこなかったことに気づくのでしょう。準備がないから、一月以上たったのに手も足も出ません。
 ちゃんと手を打っている台湾は学校閉鎖なんてやってませんよ日本もインフルエンザのときの学級閉鎖基準、「20%以上か1/3以上」という基準で、粛々とやればいいのです。学校にも経済にも大打撃です
 なにも具体的な手が打てなかったので、突然「小中高の休校要請」なんてことを言い出しました、中身は何もない、これからのようです。

 台湾では2/25に新型肺炎対策特別法が成立していますが、日本はこれから。台湾の蔡英文総統と日本の安倍総理の資質の違い、スタッフの能力の違いが如実に出ていると思うのはわたしだけではないでしょう
*https://www.sankei.com/world/news/200225/wor2002250031-n1.html
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特別法は、新型肺炎の治療に従事した医療関係者への補償や経済的な影響を受けた企業への補助を定めるほか、隔離によって個人が受けた損害の補償を認める。自宅隔離や外出禁止を守らなかった者に最高100万台湾元(約360万円)以下の罰金を科し、衛生当局に個人情報の公開を認めた。虚偽の感染情報を流布した者も懲役3年以下の刑を科す。
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 臨床診断支援システムと専門医育成用CAIエキスパートシステム事業に必要な通信速度、コンピュータの処理速度、巨大サーバ、これらどれもがとっくに要求仕様を満たしています。走り出せば、この分野では世界市場を制覇できます。GAFAのどれよりも巨大なビジネスが生まれる可能性があります。臨床検査項目コードがすでに日本ではあるので、一番有利でしょう。だれかやったらいい。冒険家はいないか?

<余談:人材考>
 なぜ、厚労省から臨床検査項目標準化というデジタル時代の医療システムのインフラともいうべき重要なプロジェクトが提案されなかったのだろう。そして、わたしたちがやった産学協同プロジェクトは厚生省に声をかけなかったのはなぜだろうか考えてみた
 答えは簡単、必要ないからだった。わたしが集めたのは、臨床検査項目コード制定に必要なメンバーだけ。一つは実務で使っているグループ、それが大手6社(BML,三菱BCL,住友バイオサイエンスなど)のシステム部門と学術部門の専門家だった。臨床病理学会は自治医大の河合先生が国際病理学会長でその一番弟子の櫻林郁之助教授が臨床病理学会の項目コード検討委員長だった。そして彼はSRL顧問でもあったのだ。SRL自身が河合先生の提案を受けて、富士レビオ創業社長の藤田さんが作った会社だった。それらを結びつける接着剤が必要だった。それがわたしの役割。入社1年目に毎月各大学の先生たちを招いて開いた社内講習会があったが、そこで櫻林郁之助(当時は助教授)から項目コード制定の作業を手伝ってほしいと頼まれていた。中途入社まだ1年のわたしは、暗礁に乗り上げていた統合システム開発の中核部分を担当した。会計及び支払い管理システムと投資・固定資産管理システムの二つ、実際には購買在庫管理システムの担当者(3名)が困っていたので、外部仕様書の半分くらいを書いてやった。
 入社3か月目に富士レビオの子会社、東レ富士バイオから腫瘍マーカCA19-9の価格の決め方を向こうの取締役と話して決めてきてくれと、経理部長から頼まれた。輸入試薬の仕入価格に適用する為替レートも、上場審査上関係会社取引になるので、利益操作にならないような方法が求められていた。SRLの前は産業用エレクトロニクスの輸入商社にいたから、そのあたりの書類のフォーマットやコンピュータシステム上の仕組みは、統合システムですでに経験済みだった。関係3課長が数か月協議して、処理案ができなかった。話を聞いて3日後に事務フローや帳票類のデザインを説明して納得してもらったから、経理部長の岩本さん、「ebisu、練馬ラボまで来るように、東レ富士バイオの担当取締役に電話しとくから、行って決めてきてくれ」、課長越しに頼まれた。いまでも腫瘍マーカCA19-9は使われている。汎用性が高いからだ。わたしも岡田医院で3か月ごとにやっている定期検査に年に2度くらいはCA19-9がはいっているようだ。じつになつかしい。(笑)
 上場要件を満たすための統合システムには、わたしの担当した二つのほかに、購買在庫管理システム、原価計算システムと販売会計(売上債権管理と請求書発行)システムがあった。これらサブシステムとのインターフェイスが一番難易度が高かったが、インターフェイス仕様書は依頼されて1週間で完全なものを書き上げた。いまでも、各システム間のインターフェイスは1984年4月に書いた仕様書通りに動いているのだろう。各サブシステムの内容が分かっていないとできない離れ業だった。一番遅れていた会計及び支払い管理システムの担当がわたしに交替して8か月で最初に本稼働した。2か月の並行ランを含んで8か月である。ノートラブルでスタートした。他のシステムは1年半、長いもので3年かかっている。そういう手際の良さをシステム開発部の栗原課長が見ていて、提案書にも目を通していた、それでBML社がラボを新設するので業界標準コードをつくって自社コードにするために大手6社に声をかけて1回目の会合が開かれたので、2回目の会議に一緒に行こうと声をかけてきてくれた。臨床検査部長の川尻部長(女性)を誘おうということになり、彼女へ話した、すぐに櫻林先生の案件になるからというと、よろこんで協力して来れた。櫻林先生は臨床検査部2課の顧問だった。免疫電気泳動分野が研究対象だったからだ。当時わたしは入社3年目で平社員、でもこうして非公式に必要な人材が動かせる面白い会社だった。仕事の実績さえあれば、職位に関係なく、仕事=プロジェクトに必要な社内人材が協力してくれる。人事部も無関係。人事部長がそんな仕事を理解できるはずもないから話すだけ無駄。大事なところは稟議書や提案書を書いて、創業社長である藤田さんの了解をもらえばいいだけ。
 面白いことに、プロジェクトに6社から集まったメンバーに東大卒はいなかった。東大村には関係のないプロジェクトだが、日本の未来の医療制度には不可欠のインフラだった。医療カードとカルテの標準化もそうだった。

 東大理3卒、大学院で応用生物統計を学んだM君が帝人との治験合弁会社立ち上げのときに、必要な人材だったので、研究部から異動してもらった。M君の上司のH川は旧知の間だったから、二つ返事で異動を承知してくれた。(当時の)社長の近藤さんに話して、異動を人事へ伝えてもらった。M君は仕事のできる男だったが、応用生物統計の専門家のF川の評価は厳しいものだった。5年ほどまでのあるときF川が「ebisuさん、酒を飲もうと」誘ってくれた、日野駅前の居酒屋で飲んで話した。「Mはセンスがない、センスは教えられない」というのだ。数学や統計学はセンスがない奴にはダメだというので、教え方次第だと議論したのを覚えている。議論は平行線だったが、お互いにそれぞれの分野の職人としての腕のほどは分かっていたから気が合った。F川はわたしが学術開発本部でやった仕事を見ていた。沖縄米軍向けの出生前診断システム開発プロジェクトである。ニュヨークから東女史が取り寄せた資料をわたしの机の上にポンとおいて、「これ、学術営業の佐藤君が困っている、システム部にやれないって断られたの、あなたならやれるでしょ、手伝ってやって」、学術愛発本部に移動した数か月後のことだった。東さんわたしの向かいの机に座っていた。米国で臨床検査の仕事を25年ほどやったことのある人だった。机の上に置かれた英文の学術論文を読み、システム部が断った理由がわかった。検査受託の入力項目に妊婦の妊娠週令、体重、民族の項目がないから、受付処理ができない。受付システムを出生前診断を含めるように改造するのは1989年の時点ではお金がかかりすぎてやれない相談だった。HP41cをつかって載っていたグラフとデータから曲線回帰分析をしてプログラミング仕様書を書いた。沖縄営業所で検査IDと3項目データを入力、3項目の検査後、入力したデータと検査結果報告データファイルとを沖縄営業所に置いたパソコンで結合処理をすれば、米軍が要求する検査報告書作成が可能だった。上司のI神取締役に、「学術営業の仕事、システム部に断られたから手伝ってやるよ、いいよね」と言うと、OK.学術営業部長は窪田さんだった。いま、一部上場企業ぺプリドリームの社長をしている。その部下で米軍むけの出生前診断検査と慶応大学産婦人科医との産学協同プロジェクトの仕事を担当した佐藤君は8歳下だったが、会社を辞めて留学し、米国臨床栄養士の学位をとって栄養医学研究所を立ち上げ独立起業した(立ち上げの3年間ほど、出資と監査役を頼まれてた。日本の臨床栄養学の草分けとなったが、2年半前に急逝している。癌だったのではないだろうか。亡くなる1か月前の講演会の写真を見たら、痩せていた)。
 パソコンのプログラムだったのでシステム部からC言語のプログラミングのできる上野君の応援を依頼し、1か月でシステムができて、上司のI神さんと学術営業部の佐藤君と上野君、わたしの4人で沖縄米軍を訪れた。ずいぶん喜んでくれて、三沢基地の米軍の取引を全部SRLに出してくれるということになった。米軍は法律の縛りがあって、女性兵士が妊娠したら出生前診断検査を受けさせる義務があった。国内でその要望に応じることができたのはSRLのみ、おまけにSRLは部国の品質管理基準のCAPライセンスも1988年ころに取得していた。上司のI神さん、米軍の「ゼネラルミーティング」に何度か呼ばれて参加していた。
 そのあと慶応大学産婦人科医たちと、出生前診断検査MoM値の基準値研究プロジェクトをマネジメントするために、佐藤君と一緒に信濃町の慶応大学病院を訪れた。多変量解析を伴うので古川の協力が必要だったがかれは二つ返事でOKしてくれた。「ebisuさんから来た仕事だからやるんだ」そう言っていた。わたしが間に入っていなければ、仕事を断って会社を辞めただろう。かれは産婦人科学会で慶応大学のドクターが発表したときに、そのデータがBML社のものだったので、データそのものに信頼性がないこととデータ処理に関する異議を申し立てたことがあった。応用生物統計に関しては臨床検査センターではナンバーワンの職人だから、彼の主張は正しかったのだろう。当時のBML社の検査データは技術レベルや品質管理に問題があった。慶応のドクターはかんかんに怒って、取引停止騒動になったが、社長の藤田さんが慶応大学病院を訪問して頭を下げてこはおさまった。古川は数年にわたってこの仕事を担当していい仕事をやってくれた。Mom値は白人の基準値よりも、黒人が2割高い、日本人は間の110%くらいと見当をつけて妊婦の協力を得て多変量解析を進めたら、130%だった。これは人種的な問題で示唆に富んだ結果である。日本人は白人や黒人とはまったく別のグループに属しているのだ。このプロジェクトが終わると、F川は会社を辞めて独立起業した。帝人との合弁会社の役員をしたときに、仕事をいくつかまわした。かれにとっては必要がなかったかもしれぬが、立ち上げ当初は思い通りにはいかぬものだ。
 このプロジェクトは、必要な三つの検査試薬は製薬メーカ2社に話して、研究結果が出たら論文を販促に自由に使っていいからという条件でタダにしてもらった。そのっ旨慶応大学病院のドクターにも伝えて了解をもらった。4年前に試薬の価格交渉で辣腕を振るったわたしが購買部長になる可能性も、本社でまた予算編成を任される可能性もあったから、製薬メーカは当然協力してくれた。恩を売っておいた方が製薬メーカは得になるから、喜んで受け入れてくれた。検査にかかるコストと多変量解析にかかるコストはSRLもちにしたから、慶応大学病院のドクターたちは予算ゼロで画期的な学術論文が書けた。数年にわたり、6000人ほどの妊婦に協力いただいたので、3項目で1.5万円としたら、多変量解析を含めると1億円を超えたかもしれない。この仕事をやったときの職位は学術開発本部の課長だった。

 東大理3応用生物統計出身のM君は帝人との臨床治験検査及びデータ管理に関する合弁会社で素晴らしい仕事をしてくれた。当初は一緒に役員出向したO部さん(営業担当常務)の部下だったが、データ管理グループを丸ごと管理系役員のわたしの下にもってきた。M君、「SASが必要なんですが…」とさっそく言ってきた。SASは慶応大学病院とのプロジェクトで研究部のF川が使っていたソフトで、仕事に必須のものだった。「SASは生物統計にはなくてはならないソフトだ、いくらするんだ?」、50万円だった、すぐに買ってやった。よろこんでいました。NTサーバを使うつもりだったから、若いほうのシステムエンジニアK谷とM君をパッケージ開発でタッグを組ませた。治験データ管理実務は若手だがベテランの優秀な三宅をメンバーに加えた。プロトタイプは武田薬品向けのデータ管理システムでできていたので、治験検査データ分野の仕事は初めてのかれらでも新しいツールを使ってできた。チャレンジャブルな仕事だった。ラックにマウントしたNTサーバーはかっこよかった。それまで、三菱電機製のオフコンとプリンターをつかっていた。プリンターだけで1000万円を超えていた。もうオフコンの時代ではなかった。わたしは前職の産業用エレクトロニクス輸入商社で1978年から4年間三菱電機製のオフコン2台を使ってシステム開発していたことがあった。NECの汎用小型機への乗り換えと統合システム開発を1983年に経験していた。14年もたっているのに、いまさらオフコンは選択肢になかった。古手のシステムエンジニアのW辺はNTサーバーへの切り替えに反対だったが押し切った。歳を食うと新技術への対応ができなくなる、不安なのだ。プログラミング言語もC++に切り換えている。1997年だったかな。方針を明確に打ち出すことが大事、そして何をやるのかビジョンを具体的に説明して納得してもらう。こうすれば、赤字のこの会社は黒字になり、転籍したときに、親会社以上の給料と賞与を払える、払うよと約束して、がんばってもらった。じっさいに、備品類やパソコンは親会社よりもグレードの上の製品でそろえたから説得力があった。口先だけの約束では人は動かない。決め手は言っている人物が信用できるか否かだろう。
 帝人との合弁会社は赤字部門の治験検査受託だったので、資金繰りが厳しい会社だったが、黒字にすればお金はいくらでも使える。机やいす、パソコン、書架などSRL本社よりもいいものを揃えた。非常勤取締役でSRL本社営業部門担当役員とラボ部門担当役員が月に一度取締役会にきており、備品を見て文句を言ったことがある。「なんだ、ebisuこれ本社よりもいい」、「赤字の会社を黒字にしてくれる社員に使わせるんだから、最高のものを揃えた」といったら黙った。黒字にできなかったら騒ぎ立てるが、それまでの仕事を見ているからぐうの音も出ない。1992年にできた関係会社管理部は営業本部に属していたから、その時代の2年間は、臨床検査会社の経営分析と買収や資本提携交渉がわたしの仕事だったので、親会社の営業担当役員といえどもわたしのすることにあまり口出しできない。営業本部で取引検査センターの経営改善を5件ほどやってあげたし、買収や資本提携もほとんど単独でやって成果を上げていたのである。会社内では相手が誰であろうと仕事の実績がモノを言う。そもそも親会社の営業担当役員を合弁会社の非常勤役員に据えたのは、親会社社長の近藤さんが、わたしたちが親会社と調整ごとがしやすいようにと、営業担当のT村さんと、ラボ担当役員のH泉さん一緒に貼り付けてくれたのである。彼らの役割は親会社との調整事項である。お目付け役だと勘違いされては困る。3年間で黒字化と、資本引き取りによる合弁解消、帝人臨床検査子会社の子会社化が近藤社長からわたしに課せられた課題だった。全部、期限内に片づけた。
 帝人との
合弁会社では社内の人材がそれぞれの持ち場でしっかり仕事してくれたので、3年足らずで黒字になった。M君に指示してやらせたデータ解析用のパッケージシステム開発が成功して、営業がやりやすくなったためだ。彼とその(データ管理)グループで、利益で2億円貢献してくれた。社員60人ほどの小さな会社だったから、経営への影響は大きかった。赤字部門の切り離しで成立した合弁会社は黒字になった。
 民間企業では東大卒は有能な上司が使ってこそその力が発揮できる。順調に課長そして部長職になって、マネジメント比率が上がるにしたがって、スポイルされてしまうケースが多いのではないか、もったいない。使い方次第でいい仕事してくれる。
 M君に見るように、東大卒は一定の品質の仕事を約束してくれる。具体的な目標を設定し、必要なツールと時間を与えてやれば、いい仕事をしてくれる、速度も大きい、受験エリートの力は侮れないのである
 しかしだ、マネジメントだけはセンスがモノを言う。この面では受験エリートはからっきしである。一ツ橋卒の人5人ほど、京都大学の理系学部の課長とも仕事したが、たまたまなのだろうが、マネジメントのセンスのいい人は一人もいなかった。ズタボロだった人も二人いる。受験エリートは中高の時代に受験勉強に専念する代わりに、その時期にしか身につかない大事ななにかを失っているように見える。慶応・早稲田は一部上場企業ではそれだけでは社内エリートの物の数には入らない。

 わたしが手掛けた産学協同プロジェクト二つには、どちらも東大出身者がいなかったが、プロジェクトはいい仕事をした。これら二つのプロジェクトには東大卒が必要なかった。
 「東大村」だけでやっているのではもう時代遅れで、やれない仕事、プロジェクト、事業が増えている。そういう日本政府の、そして各省庁の政策決定の弱点が、今回の新型コロナウィルス感染症で露呈したのである

 


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#4191 新型コロナウィルス感染症対策:冷静な議論が必要 Feb. 28, 2020 [35. 感染症および自己免疫疾患]

 安倍総理が全国の小中高の1か月休校措置要請を昨日発表した。なんだかずいぶん慌てて、前後のことも考えずに指示を出しているように見える。
 その一方で、公的機関だけで検査する体制を崩さないのはなぜだろう。民間検査センターで検査可能にすれば、医者が必要と判断した患者全員の検査がすぐにもできる。そうすれば感染者数が10倍くらいになるだろうから、東京オリンピックへの影響を気にしているのか?
 もう、オリンピック中止を視野に入れて、手を打つべきだ。

 ちょっと想像力を働かせたら「総理大臣の全国の小中高への休校要請」影響の甚大さがわかる。世の中の働く人の4割は非正規雇用である学校が休校になり、子どもがいるので片方が休むと、収入も途絶える。非正規雇用で働いている人は元々余裕がない、たいへんなことなのだ。
 帯広の厚生病院では看護師の2割、170人休むという、学齢期の子どもを抱えて働いている看護師さんは多い、ご亭主のいる人は亭主も働いているからどちらかが休まざるを得ない場合がある、そんなこんなで地域医療が崩壊しかねない事態が起きている。
*北海道新聞ニュース:http://www.hokkaido-nl.jp/article/16229
 他の職業だって共稼ぎなら事情は一緒である。首都圏はもっと深刻だ、田舎なら預けられるジジババがいるが、故郷が遠くにある夫婦は困り果てているに違いない。働き方改革なんてこうしたことが起きない前提で語られていたのではないか?専業主婦なら対処できる。
 テレワークですむような仕事なんて、世の中の仕事のごく一部にすぎない。
 33年前のある台風のときに、SRL八王子ラボ購買課へ取引会社の担当から電話があった、「台風がひどいので明日納品でいいですか?」、「いいよ、SRLの営業は今日もお客様のところへ検体を受け取りに走り回っている、休止した営業所なんて一つもない、ラボもずっと稼働している。うちはそういう仕事をしている、それが理解できてないようだ、休んでいいよ」、そう伝えると飛んできた。検査試薬や検査消耗品の在庫がなくなれば、止まってしまう検査が出てくる。病院に対して、試薬や消耗品が台風で入荷しなかったので検査できませんでしたなんて、言い訳が通用するはずもない。その電話を受けたときに、切らなきゃいけないかなという考えが頭をかすめた。その担当者は1年半後に退職して家業を継いだ。そこそこの会社の社長の息子だった。いい勉強になっただろう。台風があり、飛行機が飛ばなければ、社員が新幹線で集荷した検体を運ぶ。そういうときはお金も人手にも糸目はつけない。非常時におカネに糸目をつけずに対応可能なようにふだんは高収益を維持しなければならない。貧すれば鈍するでは情けない。いま日本政府がそういう状態(「貧すれば鈍す」)のようだ。
 1か月間学校が休みでも、SRL釧路営業所長は病院へ検体集荷の人を確保し、通常通り八王子ラボへ搬送する。地域医療の一角を担うというのはそういうことだ。釧路市立病院や市立根室病院とも取引しているはずだが、たとえ政府から「要請」があっても、業務の縮小なんてするはずもない。法律で縛られない限り、やるべきことをやる。それが仕事だから
 道知事や各市町村長、そして学校長はどうするのだろう?

 それぞれの事業にはそれぞれ異なる取引先があり、複雑なネットワークの中で仕事している。自分のところが機能マヒになれば、全体に甚大な影響のある業種はいくつもあるだろう
 粗々(あらあら)の影響もチェックしないで唐突な「要請」はやめてもらいたい。そして唐突な政策の説明責任をちゃんと果たしてほしい。
 世襲議員が多すぎて、庶民の生活がさっぱり理解できないのかも。こういうことはとっても言いづらいが、安倍総理に子どもがいて子育て経験あれば、あるいは判断が違っていたのではないか。世襲議員だけではない、国民を代表しているはずの国会議員のほとんどが、庶民の生活の実態を知らないのでは困る。

 さて、ここからがいよいよ本題である、仮定の話をしよう。小学校で習った算数は役に立つ。

①人口1億2600万人の1%が新型コロナウィルスに感染するとしよう⇒126万人の感染者
②そのうちの10%が肺炎を起こすとする⇒肺炎患者12.6万人
③重症肺炎を起こして死ぬ人が②の30%とすると⇒死亡者数3.8万人

(3/1追記 WHOのレポートによれば、1/1-10までの武漢での発症患者致死率は17.3%2/1以降は0.7%に激減してます。p.12に記載があります。
*https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf?fbclid=IwAR2ZXSqAucIdIwc6AkdRbBenx1MGoNL5BA9VZu7ffojYWN6hw3nrawTjWr8

 中国の実際の感染率は、感染者8万人に対して人口が13億人だから、ここで仮定した感染率は中国の百倍を超えている。それほど途方もない極端な仮定であることに注意
 パンデミックが起きて、このような事態になることを前提に対策を打つ段階に来ているのだろうか。日本では実際の罹患率がどうなるかは、全国の医療機関を受診した患者で新型コロナウィルス検査希望で医師が認めた場合は全数を検査しないとわからない。わかったら、その罹患率で計算しなおせばいい。肺炎を起こす人の割合も、さらに重篤な肺炎へと症状が悪化する患者の割合も、そしてそのうち死亡する人の割合も、実態に合わせてその都度計算しなおせば、推計誤差はドンドン小さくなる。

 パンデミックによる3.8万人の死亡と1か月の休校あるいは休業の影響の深刻さを秤にかける冷徹さが政治になければならない。いや、休校措置ぐらいでパンデミックは防げないとしたら、意味はあるのか?
 上記の仮定では死亡率は0.03%であるから、人口2.5万人の根室市では肺炎患者が25人、そのうちの7.5人が亡くなるだけ。肺炎患者発生率が2倍なら、根室市では15人が亡くなる。それも9割はわたしたち老人である。そんなに大きいことか?
 なのに、なぜこんなに大騒ぎするのか?たんたんと検査して、治療に当り、データを公表して心配しなくていいと言えばいいだけ。ふだんのインフルエンザと似たような対応で十分ではないのか?
 

 パンデミックが起きたとして、12.6万人の肺炎患者には人工呼吸器が必要だが、その用意はあるのか、なければどのように調達するのか、具体策とスケジュールが必要になる。そしてそれまで優先順位を決めて手を打って行かなければならない(中国の10倍でおさまるとすれば、1.2万人にすぎない)。
 医師や看護師が感染して地域医療が崩壊しそうなところはどういう応援体制が可能なのかも事前検討し、不備があれば、それを補う方策も用意しなければならない。厚生労働省だけの問題ではないというのは至言である。医療機器メーカは経産省の所管だろう。国際的な人の移動制限、あるいは鎖国政策は外務省の所管になる。国の安全にかかわる問題だから防衛省もかかわってくる。地方自治体との細かい政策調整が必要になるから総務省がやらなければならない仕事だろう。

 小中高の休校がパンデミックをどれだけ減らすことができるのか、これも小学校で習った算数で簡単に理解できる
 具体的な数字を挙げると、小中高生の人口割合は根室市では9.0%、全国平均値では11.2%に過ぎないから、効果がどれほどあるのかはなはだ疑問だ。残りの91.0%がいままで通りの生活スタイルでは、どれほどの罹患率低下を期待をしているのか数値を挙げて説明してもらいたい。
 そうした効果目標値に関する説明のないまま、総理大臣から「要請」が発せられた。いつまで待っても、説明はないだろう。自分たちで手元にあるデータを使ってやってみるしかない。
 本当は、政府のやることだから、大規模なコンピュータシミュレーションをして、政策の影響がどの分野にどの程度あるのか事前に検証してから「要請」してもらいたい。効果がほとんどないなら、考え直し、もっと効果的な方法を考えたらいい。
 こうした過剰な規制によるマイナスが大きすぎれば、検査を民間検査センターへ拡大して、患者の治療を優先し、パンデミックを放置するという選択肢の方が、被害が小さくて済むかもしれぬ。いや、そういう政策が一番よくパンデミックを小さくできる可能性すらある。だから、大雑把な前提で、パンデミックをデータでシミュレーションしてみることが大事なのである。

 パンデミックが起きれば、先の計算では国民の1%が新型コロナ感染症への抗体を獲得することになる。不顕性感染者を入れたら数倍になるだろう。来年再流行しても、一度罹った人を中心に仕事を回すことが可能になるかもしれない。民間検査センターへの検査開放は来年の流行のときの対処に重要な示唆を与えてくれるだろう。

住民基本台帳
根室市 2018/5/1
  人数
小学校 1110
中学校 619
高校根室 560
高校西 34
合計 2323
根室市人口 25827
  9.0%

階層 人数 係数 学齢期人口
5-9歳 5103 0.80 4,082
10-14歳 5355 1.00 5,355
15-19歳 5835 0.80 4,668
  16293   14,105
総人口 126131   126131
学齢期/総人口     11.2%
単位:万人

<発熱専用外来診察時間設定>
 主治医が運営する岡田医院は「発熱専用外来」の診療時間を午後に設定したそうだ。院内感染防止のために一般の患者と分けるためだ。時間については電話で問い合わせたらいい。根室市内の他の病院も同様の措置をとるだろう。

<余談:休んでいる間の勉強教材:NHK>
https://www.nhk.or.jp/school/?fbclid=IwAR05gWjG5sLpsCW1WIOgI4_CFgl6APETzXjRGaNcI6DkHDkMfqeNYawRLUM


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#4190 PCR検査への加藤大臣の誤解:日本国の信用にかかわる問題 Feb. 27, 2020 [35. 感染症および自己免疫疾患]

 NHKのお昼のニュースで加藤厚労大臣が新型コロナウィルス検査の社会保険適用の検討を始めると明言した。遅すぎますね。そして「検査能力を高める」とはどういうことなのだろう?
 業界トップの民間検査センターの技術水準をまるでご存じないようです。

 SRLでPCR検査を導入したのは87年ころだったかな、そのころ世界で一番厳しい米国品質管理基準CAPライセンス取得をしています。日本の精度管理基準では飽き足らなくて、創業社長である藤田さんの提案で、チャレンジしました。3000種類の検査の標準作業手順書を整備して、それを英訳したのです。2年後には標準作業手順書は電子ファイル化されて、メンテナンスが楽になりました。それ以来、2年ごとに米国からCAPライセンス更新のために、査察を受け入れています。SRLは品質管理でも、設備面でも、技術面でも、大学病院よりもずっと先を走っています。

 そういうわけでPCR検査は30年以上の技術的な蓄積があり、SRLではごく普通の検査です。
 新型コロナ遺伝子の遺伝子情報が公開されているでしょうから、PCR検査に必要なプライマーの提供があれば、いまからでも検査可能です。海外メーカの市販品もあるようです。
 いまどれくらいの人数がいるのかわかりませんが、SRL八王子ラボには30年には800人ほどの臨床検査技師が働いていました。93年ころに調剤薬局分野の事業展開のために薬剤師が何人いるか人事部へ問い合わせたら70人いました。ルーチン検査をしている社員の中には大学院卒もいます。検査に携わっているのは、業界でも圧倒的に有資格者が多いのです。

 あれから30年がたつので、プライマーも研究部か特殊検査部で製作できるのかもしれません。韓国は外国メーカの「検査キット」を使って数万人の検査をしています。先ほどのテレビ(恵俊彰さんがMCの番組)の説明では直近の最大値は13000/日です。日本では今までの合計値でも6000前後にすぎません。直近の1週間の平均値は900/日です。国立感染症センターや都道府県の衛生研究所にはそれぐらいの処理能力しかないということでしょう。PCR検査機器も検査技術者も足りない。民間検査センターのPCR検査処理能力は機器の数も検査員の数もケタが違います。

 日本で開発している「簡易検査キット」は機器と検査専用消耗品がセットです。値段が高そうです。国が「簡易キット」配置に関与しているようですが、関与する必要はありません。利権と思われます。国が関与すると価格が高くなる。民間検査センターはシビア―ですから、仕入価格はメーカーのいいなりにはなりません。

 日本の民間検査センターでトップレベルの企業は「簡易検査キット」なんかなくても新型コロナウィルスのPCR検査はいくらでもできます。SRLではPCR検査は30年間もルーチン検査に使われていますPCR検査に特別なスキルは必要ないのです。加藤大臣は何か勘違いされているように見えます。周りのスタッフ(厚生官僚)に問題がありそうです。いつまで騙されてるのでしょう。

 日本臨床検査学会が公表している日本標準臨床検査項目コードはSRLに管理事務局があります。そこで新型コロナウィルスPCR検査を新規登録すれば、ただちに全国の病院の医療システムへ配信・登録できますから、検査はすぐに始められます。25年も前に、産学協同プロジェクトを組織して毎月1回、5-6年の作業部会のすえにつくりあげたコードです。全国の病院と民間検査センターがこの標準臨床検査項目コードで接続されています。こういう非常時に、このコードは絶大な威力を発揮します。コードの標準化は1986年8月に提案した「臨床診断システムと専門医育成のためのCAIエキスパートシステム事業化案」がベースになっています。臨床検査項目コードを標準化しなければ、疾患群ごと臨床診断支援エキスパート・システムはつくれないし、そもそも世界市場を視野に入れたビジネス提案だったから、日本標準は世界標準臨床検査項目コード制定のたたき台のつもりでした。この分野では十数兆円の市場規模があるし、先に走った者の勝ちになります。20年前に通信速度もコンピュータの性能もこのビジネスが可能な域に達していますが、米国にもEU諸国にも標準臨床検査項目コードはないからら、いまでもこの分野では日本が圧倒的に有利です。
  厚生省は当時わたしたちが何をやっているのかすら興味がなかった。意味すらまるでわかっていなかったし、25年たったいまもそのようです。世界中で、臨床検査項目コードの標準化に成功した国は日本以外にありません。厚労省はその使い方もわからないのでしょう。国内のことだけ考えているから、グローバルな視点がもてないし、視野も狭くなります。
 検体の搬送ルートも通常のルートを使うだけですから、温度管理もトレースできるようになっており、公的機関への搬送よりもよほどしっかりしてます。
 加藤大臣の周りには、どうやら仕事のできる参謀がいない、そして官邸には大坪審議官のような人がいて、ダイアモンド・プリンセス号にも乗り込んで引っ掻き回しているだけのように見えます。官邸に集めた「お友達スタッフ」とそのまたごく親しい「お友達」では非常時にはまったく対処できないことがはっきりしました。

 官邸と厚生労働大臣が検査体制の整備にもたもたしている間に、新型コロナウィルスは感染拡大を続けています。非常時にこれではほんとうに危うい。

<余談-1>
 SRL八王子ラボで学術開発本部にいたのは89-91年ころのことです。PCR検査が始まってましたから、プライマー製作を自社でやれば、材料費が削減できるので、事業化ターゲットの一つに考えていました。あと2年いたら、暇を持て余して、研究部課長のT梨さん、特殊検査部長のH地さんと相談して始めたでしょう。学術担当取締役のI神さんは、わたしの提案にはなんでもOKだしてくれましたから。わたしも彼に頼まれた仕事は全部クリアしてあげました。win-winの関係でした。必要な予算は本社の管理担当副社長のY口さんへ電話すればいいだけ、経理担当役員は元上司、いくらでも自由。採算の合わないことは言わないし、帳尻合わすのは簡単。本社へ戻って予算編成や長期経営計画の担当になる可能性がありましたから、よく言うこと聞いてくれました。(笑) 八王子ラボ学術開発本部での2年余りの間の仕事は、沖縄米軍向けの出生前診断検査の開発や慶応大学産婦人科医との出生前診断検査基準値に関するプロジェクトのマネジメント、開発部業務(製薬メーカとの検査試薬開発)のPERTチャートを使った標準化、海外製薬メーカからのラボ見学要請への対応(3時間ほどのラボツアー)、米国の染色体検査会社V社の買収案件など。ナスダック上場で100億円の話でした。当時の国際金融機関が作成した買収交渉の資料がどういうレベルかよくわかりました、10年ほど前に他の会社で米国のその方面の尖端の専門書を原書で読んでましたから、よくわかった、面白かった。3日間でぶ厚い資料を読み切り、稟議書を書き上げました。自分で買収評価額の計算ができたので速かった。妥当な金額を算出してましたね。ベルトハイムシュローダーという当時世界有数の金融資本でした。
 業界ナンバーワンのSRL八王子ラボには面白い話、事業化可能なネタがごろごろしてました。業界トップの起業で仕事するというのは愉しいものです。

<余談-2>午後2時半追記
 いまやっているBS1チャンネルの韓国のニュースでは、韓国の新型コロナウィルスのPCR検体処理能力は7500/day、6時間で検査結果が出るそうです。必要な処理能力は20,000/dayだがまだ追いついていない状況。韓国政府に比べて日本は実に手際が悪いと言えます。
 韓国に民間臨床検査センターは32年前には存在しなませんでした。32年前に韓国人の臨床検査技師の技術研修を受け入れたのはSRLです。その後合弁会社設立の話をいただいたが、お断りししました。ブランドに瑕がつくことを恐れたからです。
 同じ体制が日本でとれたら、患者数は現在の数倍あることがはっきりするでしょうね。通勤電車が最大の感染源になるのではないですか?首都圏では1時間半程度の通勤は普通です。閉鎖空間に毎日罐詰ですから。

 東京オリンピックへの影響も大きいが、正直にやるべきです。盲点になっているのは開催時期の7月は南半球では冬だということ。南半球からも選手団や見物客が大挙してやってくるから、とうぜん、新型コロナウィルス感染者もいるでしょう。取り返しのつかぬ大失敗をやってしまったのです、不手際を認め、ギブアップ宣言して、オリンピックはロンドンでやってもらったらいかが?決断は早い方がいい。

 日本人としての誇りがあるなら、感染症でごまかすことがあってはならない、ここまで来たら日本という国の信用問題です。

 日本の公的機関80施設のPCR検査処理能力は1500/day。これではお話にならぬ。非常事態だというのに1か月以上も時間をロスしてしまった。これが戦争だったら、初動作戦の過ちで部隊は全滅です。
*https://tennismania1.com/new-coronavirus-simple-test-kit/



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#4189 新型コロナウィルス感染症について:根室市役所 Feb. 26, 2020 [35. 感染症および自己免疫疾患]

 萩生田文科大臣から、公立学校休校要請がでた。
*https://news.livedoor.com/article/detail/17868305/
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文部科学省は同じ市町村内の学校などで新型コロナウイルスへの感染が確認された場合、感染者がいない学校でも休校などを検討するよう全国の教育委員会などに要請する方針を明らかにしました。
萩生田文科大臣:「例えば、A学校では感染者がいないけれどもB学校という隣の学校で(感染が)ある場合、思い切ってその一つの市あるいは町を学校ごとお休みにするということも一つの選択肢に入れてほしい」
-------------------------------------

 影響大きいよ、来週予定されている道立高校入試は中止にするのだろうか?延期だろうか?休んだ分の穴埋め授業はいつやるのか?中1と中2の学年末テストはどうなるのか?休んでいる間は塾やお稽古事へ通ってもいいのか?等々。

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 ニムオロ塾の塾生は、来る直前に手を洗い、できたらマスク着用で来てね。マスクはとっくにお店の棚から消えてしまったから、買えないね。わたしはキッチンペーパーをペーパーマスクのように折りたたんでマスクの下に入れて使ってます。これならしょっちゅう取り替えられます。輪ゴムでつくったら、きつくて耳が30分で痛くなりました。自覚症状がなくても感染しているケースの方が多い、不顕性感染*といいます。帰ったらすぐにまた手洗い励行、感染防止に努めてください。
 文科省からも根室市役所からも休塾要請は来ていません。休業補償が法的問題となるから、要請はないでしょう、厚生労働省が判断できることではありません。菅官房長官や安倍総理の判断です。高校生は学年末テストが金曜日で終了してますが、中学生はこれから学年末テスト、もちろん延期になりますが、いつやるのか学校からアナウンスがあるでしょう。家でしっかり勉強しましょう。中学生は毎日8時間、高校生は10時間、徹底的にやってください。時間を無駄にしないように。事態の推移を観察していて問題ありと感じたら、1か月ほど休塾する場合があり得ます。その時は全員へ電話連絡します。(いまのところ3/14から2週間休塾予定、例年通りの春休みです)
 メール配信方式の英作文問題は何があってもだいじょうぶです、せっかくの臨時長期休暇ですから、しっかりべんきょうしましょう。
*不顕性感染…wikiより
不顕性感染(ふけんせいかんせん: inapparent infection)とは、感染が成立していながら臨床的に確認しうる症状を示さない感染様式のことを示す 。 不顕性感染と顕性感染は連続的であり、病原体により不顕性感染の方が一般的であり、発症に至ることの方が稀であるものも少なくない。

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 根室市役所のホームページには根室市内で感染者が出たことは載っているが、人数や年齢などは一切載っていない。道の保健福祉部のホームページには、道内の感染者35名の個別情報が載っているその中に根室の1例もある
「2/22検査陽性、50代女性、周囲の患者の発生は現在調査中。23名濃厚接触者特定・現在健康観察中」
*新型コロナウィルス感染症の道内の発生状況。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kth/kak/hasseijoukyou.htm

 市役所ホームページには患者発生とあるだけで、特段の情報なし、北海道新聞報道の方が詳しい。
*新型コロナウィルス感染症について:根室市役所ホームページ
https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/lifeinfo/kakuka/shiminfukushibu/hokenka/kenkou/7362.html

 いま、公立学校を休校にすることで、どういう効果があり、どういう弊害が起きるかについてはさっぱり情報がない。追って出てくるのだろう。

 医療機関がパンクするので、流行のピークをずらしたいだけなのだろう。それでもオーバフローは起きる。
 根室市立病院には人工呼吸器が何台あるのか、そういう情報も大事だ。
 たとえば、10台しかなければ、肺炎を起こして呼吸困難になっても、同時に10人しか治療できない。11人目は人工呼吸器がないし、すでに手遅れでアビガンも効かないから、死ぬしかないという深刻な状況が生まれる。
 流行のピークをずらしたいというなら、学校休校だけでいいのだろうか?
 いまのところ、感染者10人に一人ぐらいが肺炎を起こし、そのうちの1割が重篤な症状を起こすと言われている。感染者の中でリスクの高いのは、基礎疾患を抱えている老人や肺機能に問題のある老人である。子どもたちはそんなに心配いらないのだろう。

 子どもたちは不顕性感染が多いのではないか。子どもたちにとってはほとんどがただの風邪とそれほど変わらない。キャリアとなってウィルスを運ぶ。感染しているかどうかの判別がつかないので、休校なのだろうか。
 そういう事情は大人も同じである。職場から感染が広がるのは止めようがない。効果があるのだろうか?
 じきに詳しい情報が市役所ホームページに載るだろう。それを見てから判断したい。

<臨床試験中の治療薬アビガン
 RNAウィルス増殖阻害剤であるアビガンは、早期でないと効かないことがわかっている。検査で早期発見そしてただちに投薬しないといけない。重症化して肺炎を起こしてから、投薬しても効かないのだ。このままでは、熱が出ても数日間自宅待機して、重症化して病院へ搬送されるときには手遅れというケースが続出しそうである。支離滅裂の厚労省。
 厚生労働省が民間検査センターでのPCR検査ができるようにすれば、検査のキャパシティの問題はなくなる。非常時だから、新型コロナウィルスPCR検査の保険収載もすぐしたらいい。

<人工呼吸器画像>
https://www.bing.com/images/search?view=detailV2&ccid=rBCAhP%2bO&id=18475107FBAD90AD14E0B9E659D4C0C45DF6C8BF&thid=OIP.rBCAhP-OWeMaVBSB5fJyRgHaFj&mediaurl=http%3a%2f%2fimage.space.rakuten.co.jp%2fd%2fstrg%2fctrl%2f9%2f533ae114d07404c5632f48bb216b581c36686d4e.91.2.9.2.jpeg&exph=300&expw=400&q=%e4%ba%ba%e5%b7%a5%e5%91%bc%e5%90%b8%e5%99%a8%e7%94%bb%e5%83%8f&simid=608000414649289530&selectedIndex=7

<道教委は公立小中学校へ休校要請>…14:00追記 お昼のニュース
 高校は休校しないのかな?道立高校入試はなにもアナウンスがないので予定通り?
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020022600354&g=soc


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#4188 韓国と日本の検査済みの人数の差はなぜ? Feb. 25, 2020 [35. 感染症および自己免疫疾患]

 「羽鳥モーニングショー」でコメンテーターの玉川徹氏が次のような意見を述べた。
https://news.livedoor.com/article/detail/17865326/
----------------------------------------
 テレビ朝日解説委員の玉川徹氏(57)が24日、コメンテーターを務めるテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」(月~金曜前8・0)に生出演。新型コロナウイルスについて、韓国と日本の検査済みの人数の差に疑問を呈し「やってないだけのことがここからもわかります」と言い切った。
 この日、番組は新型コロナウイルスを高精度で検出できるPCR検査について取り上げた。韓国のPCR検査の検査能力は1日で約5000件とし、
検査済みの人数は2万6179人と伝えた
 MCを務めるフリーアナウンサーの羽鳥慎一(48)は「日本は人口は1億何千万。韓国は5000万くらい。日本は検査済みは千数百人です。なんで、こんなに違うのか?」と問うと、玉川氏は「人口比でいえば、日本ですでに1万件以上の検査ができてるのと同じことなんですね、韓国は。日本が韓国以下の医療体制なわけがないんですよ」と言い切り、「だからそういうことなんです。日本でもできるはずなんです。それをやってないだけのことがここからもわかりますね」と怒りを押し殺した表情。

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 玉川さんが憤るのは無理もない。日本の臨床検査センターのキャパは韓国の数倍あるよ、しかも技術水準はずっと高い。そもそも、30年ほど前に韓国の民間検査センター誕生に技術協力したのはSRLです。後ほど<余談>で述べます。
 なぜ、韓国の1/10以下しか日本は検査できないのか、理由は簡単、公的機関だけで検査しているから。民間検査センターに流せばいいだけだが、厚生労働大臣にはなぜかそれが決断できない。だから、ダイアモンドプリンセス号から下船時のPCR検査ができなかった。やりたくても、公的機関にキャパがなかったからでしょう。検査できなかったことで、感染拡大してます。感染のピークを後ろ倒しにすると昨日テレビで厚生労働大臣が言ってましたが、やっていることはそれとは真逆です。大臣の加藤さん、しっかりしてください。官僚は政治家が使わなくてはいけないはず。裸の王様を絵に描いたようなものです。

 新型コロナウィルスPCR検査に保険点数を付けたら、翌日からでも民間検査センターも病院も受託が可能です。保険点数をつけなくても、民間検査センターで受託することを厚生労働省がOKすればすぐにやれます。なぜなら、日本検査医学会が制定している、日本標準臨床検査標準コードがあるから。
 これは大手6社と日本病理学会(当時、いま日本検査医学会)項目コード検討委員会委員長の櫻林郁之助自治医大教授(当時)が産学協同プロジェクトとして5-6年間ほど作業部会での検討の末に1995年ころに出来上がったもの。大手6社がそれぞれ自社で使っているコードをオープンにし、重複しているモノを削って、学術的な分類検討を重ねて、臨床病理学会から公表しました。このワークショップには大手6社のシステム部門と学術部門がそれぞれ参加してます。公表して以来、日本中の病院やクリニックのコンピュータはこの標準コードで動いています。このプロジェクトを提案して、大手六社の2回目のミーティングに櫻林教授を引っ張り出したのは、わたしです。1986年に臨床診断システム開発とその事業化案を作って、創業社長の藤田さんにとりあえず200億円の予算でフィジビリティスタディをやることを稟議承認してもらいました。項目コードが統一されていないとコンピュータでデータ分析ができない、それで日本標準臨床検査項目コード制定を働きかけたのです。産学協同プロジェクト、日本の医療にとって、こんなに大事なプロジェクトなのに、厚生労働省は一切かかわっていません。そういう視点が厚生労働省にはなかった、いまだにないのでしょう。このコードをたたき台にして、世界標準コードをつくればいい。欧米のどの国も臨床検査にかかわる標準コードをもっていないのです。それは、その仕事がとっても困難であることを示しています。それを日本は25年も前に、産学協同プロジェクトでちゃんと整備完了しています。えらいでしょ。(笑) 産業界と学会をつないで、プロジェクトをマネジメントできる人間が一人いれば、こういう壮大な仕事も可能になります。
(いま、市立根室病院は3階(?)を閉鎖病棟にして新型コロナ肺炎患者(50歳代・女性)の治療に当たっている、空調用ダクトを通じて空気感染はしないので一般病棟を関係者以外立ち入り禁止の閉鎖病棟にすればOK. 市立病院の院内システムの臨床検査コードはもちろん日本標準臨床検査項目コードで動いています。)

 コードの管理事務局はSRL学術開発部がやっているはず。そこで登録すれば、ネットを通じて全国の病院やクリニックへ自動配信される。あとは検査依頼書を印刷すればいいだけで、全国の医療機関から通常の搬送ルートで検体を受け入れられる。流れに載せてしまえばいいだけ。
 SRL八王子ラボには1990年ころで臨床検査技師が800人ほどいました、いまはもっと多いでしょう。その技術水準は大学病院検査室よりも高い。SRL学術開発本部スタッフをして仕事した2年間の間に、大学病院検査室のドクターたちを何度かラボツアーでご案内したことがあります。海外製薬メーカからのラボツアーだけがわたしの担当だったが、学術情報部の3人の担当者の手が足りないときは、国内のユーザーからのラボツアーもたまには担当しました。購買課で2年半、製薬メーカと検査試薬の価格交渉や検査機器の自社開発や共同開発に何度もかかわってましたから、ラボ内の検査機器や検査方法に一番詳しかった。八王子ラボでやっている臨床検査は当時で3000項目もありました。原価計算システムや購買在庫管理システムにも社内で一番詳しい。購買在庫管理システムは半分くらい帳票設計とプログラミング仕様書を入社した年の1984年に書いてます。会計及び支払い管理システムと投資・固定資産管理システムの外部設計仕様書を書いて、本稼働させた年です。統合システムでしたから、各システムとのインターフェイス仕様書もわたしの「作品」、当時、日本最先端の統合システムでした。

<余談:幻の韓国SRL>
 1990年ころ、韓国人の臨床検査技師が、トレーニング希望で数か月来たことがある。当時は韓国には民間検査センターがなかった。
 その後、韓国で臨床検査会社を立ち上げるので、SRLの名前を貸してほしいという申し入れがあった。韓国SRLという名前の合弁会社をつくるかどうか、検討した。国内市場の伸びが大きかったので、韓国市場に魅力を感じなかったことと、他にいくつか理由があってお断りした経緯がある。韓国SRLでなにかあれば、SRLというブランドに瑕がつくことを恐れた。SRLは臨床検査の品質に関して、日本全国の大学病院から絶大な信頼をいただいているから、ブランド価値をたいせつにしていた。SRLという名称を韓国で使用することもご遠慮いただいた。
 その後、研修に来た人は韓国で臨床検査会社を立ち上げたようだった。かれの会社も新型コロナウィルスPCR検査を受託しているのだろう。韓国に臨床検査会社が育っていることは喜ばしい。

 本題に戻ると、日本の厚生労働省、一体だれのために仕事してるの?


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#4186 根室でコロナウィルス肺炎患者がでた Feb. 23, 2020 [35. 感染症および自己免疫疾患]

 武漢新型コロナウィルスによる風邪が全国に広がりつつある。根室でも患者が出たと昨日テレビ報道があった。今朝の北海道新聞を見ると、患者は50歳代の女性、経緯は次のようになっている。
①15日から倦怠感あり
②16日に市立根室病院で外来診察受診
③19日に他の医療機関で受診
④20日再度、市立根室病院で受診し、X線検査で肺炎症状アリと診断、新型コロナウィルス検査依頼
⑤22日陽性と判明
⑥22日夕、市役所で緊急の庁内連絡会議を開催

 患者は海外渡航歴なし(後述するが、じつはそこが大きな問題)、行動歴は調査中というのが北海道新聞根室版の情報。
 連休中の処中学校の部活動休止、連休明け25日は児童生徒にマスク着用を呼びかけ。
 マスクはとっくに品切れです、どうするのかな?ああ、キッチンペーパーと輪ゴム2個使って、ホッチキスでとめたら、簡易マスクが作れます。一枚のキッチンペーパーをいくつかに折り重ねたらいい、テレビでやってました。

 病的な状態を生じていない不顕性感染軽い症状の感染があるから、武漢コロナウィルス肺炎患者が1人出たということは、感染者は10人はいると考えたほうがいいのだろう。確認された感染者のおよそ2割が肺炎患者である。
 問題は19日の他の医療機関での受診である。倦怠感に異常を感じたのだろうか、市立病院で再診せずに他の医療機関を19日に受診。容体が悪化したのか20日に再度市立根室病院で外来受診、レントゲン検査で肺炎の診断、すぐに新型コロナウィルス検査、そして22日に検査結果が出て確定診断あり。札幌の道立衛生研究所で検査しているのだろうか?
*北海道立衛生研究所:http://www.iph.pref.hokkaido.jp/

 感染経路に関する情報がない。札幌雪祭りに行ったのか行かなかったのかさえ情報がない。受診した市内の医療機関名についても公表されていない。19日に受診した医療機関へは季節柄、たくさんの患者が通院していたはずだから、その日の受診者になにか異常があれば、武漢コロナウィルスへの感染を疑って検査しなくてはならない。19日に来院した患者たちへ電話で異常がないか確認すればうわさは広がる。
 さっさと情報開示したほうがいいのではないか。16日の市立根室病院の外来受診、19日の他の医療機関での受診、20日に市立根室病院での受診、これらの時間が分かれば、その時間に当該病院で外来受診をした患者に熱が出たり肺炎症状が出れば、武漢コロナウィルス感染を疑い、すぐに検査や隔離対応可能だ。こういうときは、そのような体制づくりが感染拡大を防ぐことになる。
 市役所は昨日夕方の会議では開示の結論を出していないようだが、こういうときは素早い対応が求められる。

 先週日曜日(2/16)、根室市はふるさと納税へのお礼ということで、東京新宿京王プラザホテルで大規模なパーティを開催している。こんな時期に開催するなんて、非常識の誹りをまぬがれぬ。根室でコロナウィルス感染者が出なければいいと、市民は戦々恐々としていた。そこへ、感染者第一号がでた。感染経路は不明であるから、あのパーティと関連があるかどうかはわからぬ。
 いま感染経路として有力視されているのは、1/31~2/11まで開催された札幌雪祭りと東京西新宿で行われた「根室市ふるさと納税大感謝祭」の二つ。


 もうすぐ春休み、高校生は好きなバンドの東京公演チケットをネットの抽選で手に入れ、東京まで出かける生徒もいる。これだけ、東京や札幌へアクセスが増えているから、武漢コロナウィルスの蔓延は止めようがない。不顕性感染や軽い風邪の症状だけですんでいる人たちが10倍以上いるだろう。そして「新型」だから、だれも抗体をもっておらず、広がるのは自然の成り行き。人類がいままでそうしてきたように、多数が罹患することで新しい病原体に対する抗体を獲得し、免疫が働くようになる。病原体も次第に弱毒化していく。

 わたしも用事があって、来月東京まで出かける。自分の身体を点検すると、慢性気管支炎の気があり呼吸機能は弱い、そしてスキルス胃癌と巨大胃癌で胃の全摘、胆嚢切除、リンパ節切除、大腸一部切除しているから、健常人に比べて免疫が低いのはどうしようもない。感染して肺炎を発症したら、命がないだろう。ああ、おまけに高齢(70歳)だった。(笑)
 中3の生徒がメンコイこと言ってくれた。
 「先生、まだ死なないで!」

 スキルス胃癌で死ななかったのは、外科医の腕がよかったのと、内視鏡で癌の診断をし、その後の治療を担当してくれた主治医のお陰です、ついていました。
 まだ、とうぶん死ぬつもりはありませんが、人はいつか死にます、わたしも例外ではありません。それまでいまやっている仕事を続けられたら幸せです。

*#4182 武漢新型コロナウィルス:生物学分類 Feb.15, 2020
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2020-02-15

 #4181 武漢新型コロナウィルスの正体:HIV遺伝子が組み込まれている Feb. 14, 2020
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2020-02-14





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#4182 武漢新型コロナウィルス:生物学分類 Feb.15, 2020 [35. 感染症および自己免疫疾患]

<最終更新情報>
2/16朝8:45

 武漢新型ウィルスはエンベロープのあるタイプのウィルスであり、エンベロープは脂質でできているからアルコール消毒が有効とされている。アルコールに晒されると、ウィルスのエンベロープが破壊され、機能を失う。

 wikiでウィルスの生物学分類を参照したら、第Ⅳ群に「コロナウィルス科」があった。科とはfamilyである。その下の分類は属(genus)となっている。ちなみに人間は「サル目ヒト科Homo属ヒト種」である。チンパンジーと人間は科(family)を異にしている。目(order)は科(family)を束ねる分類、上位概念である。「生物分類」というキーで検索すれば、出てくる。最初に挙げたアドレスでは出てきません。
*https://ja.wikipedia.org/wiki/生物の分類
**https://ja.wikipedia.org/wiki/ウイルスの分類

 SARSとMERSは「ベータコロナウィルス属」にある。同じ属のコロナウィルスに蝙蝠由来のものが二つある。「アルファコロナウィルス属」にも蝙蝠由来のものが二つある。新型コロナウィルスは果たしてどちらに属すのか?どちらでもない新しい属であるというのがいまのところの結論だ。

 さて、ここから面白い、前回とりあげた記事から引用する。

Most papers reported that the 2019-nCoV is only 88 percent related to the closest bat coronavirus, only 79 percent to SARS, and just 50 percent to MERS.

 新型コロナウィルス(遺伝子)の88%がもっとも近接している蝙蝠由来のものであり、79%がSARS、50%がMERSであるということが大方の学術論文の示すところ。
 同じfamily(科)でもこんなに違いがあるということに驚く。人間とチンパンジーは違うfamilyだが、その遺伝子の相違はわずか1.5%といままで言われてきた。それに比べて、たとえば、50%しか同じではないというのは同じ属ではないどころか同じfamilyでもないということを示しているようにすら感じる。「新種」というよりも「新属」、それも「新科」というほどかけ離れているということ。生物学者ならずとも「なにかおかしい」という感覚が生ずるのはあたりまえ。
(最新のDNA解析チップを使用した研究によると、チンパンジーとヒトの遺伝子にはもっと大きな隔たりがあることが判明しているようだ。その違いの部分に、ヒトがヒトである理由がコーディングされているのだろう。こちらも研究が急速に進みだしている。技術の進歩がいままではできなかった新しい知見を生み出す。)

 5人のギリシア人の科学者は次のように述べている。
A Jan. 27 2020, study by 5 Greek scientists analyzed the genetic relationships of 2019-nCoV and found that “the new coronavirus provides a new lineage for almost half of its genome, with no close genetic relationships to other viruses within the subgenus of sarbecovirus,” and has an unusual middle segment never seen before in any coronavirus. All this indicates that 2019-nCoV is a brand new type of coronavirus. The study’s authors rejected the original hypothesis that 2019-nCoV originated from random natural mutations between different coronaviruses. (Paraskevis et al 2020 BioRxiv) The article is a preprint made available through bioRxiv and has not been peer-reviewed.

 これらの研究者たちが遺伝子解析した結果によれば、新型コロナウィルスのゲノムの半分が新しい系統のものだということ。同じ属内の他のウィルスとの遺伝子上の近接関係はないということ。これらのことから、新型コロナウィルスは既存の属とはかけ離れた新しい品種である。たとえて言うと、「親の見つからない孤児」のような存在である。2019新型コロナウィルスが種類の異なるコロナウィルスとの間でランダムな突然変異から生まれたという仮説をこれらのギリシア人科学者たちはあり得ないことだとしている。ただしこの論文はプレプリントであり、査読されていない。科学論文は査読がすまないと掲載されない。
 話の要点は、新型はいままでのコロナウィルスとはまったく違っているということ。

 インド工科大学の研究者によれば、短期間で蝙蝠由来のコロナウィルスにHIVウィルスの一部が組み込まれるようなことはありえないのです。

Pradhan et al. added, “To our surprise, these sequence insertions were not only absent in S-protein of SARS but were also not observed in any other member of the Coronaviridae family. This is startling as it is quite unlikely for a virus to have acquired such unique insertions naturally in a short duration of time.”

 "Pradhan et al."とあるので、プラダハンだけでなく、彼を含むその他の共著者が主語です。

 新型コロナウィルスによる重篤の肺炎症状にはエイズ治療薬が効く。
 新型コロナウィルスはHIVの遺伝子を取り込んでいるようなのだが、HIVとどれくらい近接しているか、その%は書かれていない。いまの段階では特定の部位にHIV遺伝子が混ざっているということが言えるだけで、定量的な分析は今後の研究待ちということか。


 中国の国立ウィルス感染症予防研究所のRoujian Lu教授とその共著者は次のように述べている。「“recombination is probably not the reason for emergence of this virus.”」(遺伝子組み換えはおそらくこのウィルス出現の理由ではない)
 これは中国政府の言い訳でもあるのだろう、自分のところで生物兵器として開発していたウィルスが流出したものではないよというメッセージ。
 時間をかけて研究が進むだろうから、自然の突然変異でどうしてこんなに短期間で組み換えが起きたかはいずれ理由が判明するだろう。ここで注意しておきたいのは、中国人科学者は"probably(おそらく)"と副詞をつけて表現しているところ。やっていないことを証明するのは困難だから、こういう表現になる。


 すでに経路のわからない市中感染が広まりはじめたから、検査体制、隔離体制の整備・拡充が必要になる。公的機関だけではやれないのだから、官と民との協力体制が対策の鍵だろう。
●新型コロナウィルスのPCR検査を保険収載する⇒標準臨床検査項目コードがあるので民間検査センターと全国の病院はすぐに対応可能になっている。SRLが標準コードの事務局になっているので対応の段取りをすぐに話し合うべき。
●標準治療手順を公開する
●治療情報を収集・分析して、効果的な治療法に関する情報を厚労省のホープページ上で告知・更新する
●隔離施設の建設
 騒ぎがおさまるのは、梅雨入りするころになるのだろうか?東京オリンピックはいまのところ、ギリギリセーフのようにみえる。
 日本政府はダイアモンド・プリンセス号の乗客と乗員を船内に閉じ込めて、新型コロナウィルスの蔓延になすすべがないことを証明してしまった。感染症対策は低レベルで劣悪であることを世界中に知らしめてしまったのである。これから、万全の対策を構築して、具体的な感染症対策のある国であることを証明すればいい。


*#4181 武漢新型コロナウィルスの正体:HIV遺伝子が組み込まれている Feb. 14, 2020
https://nimuorojyuku.blog.ss-blog.jp/2020-02-14




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#4181 武漢新型コロナウィルスの正体:HIV遺伝子が組み込まれている Feb. 14, 2020 [35. 感染症および自己免疫疾患]

 新型の病原性ウィルスの致死率が高ければ、宿主を殺してしまい、次の宿主に移れない。だから、新たな感染症は時間をかけて弱毒化して、人類と共存する戦略を選んできた。武漢新型コロナウィルスも数百年をかけてそのような経緯をたどるのかもしれない。
 いまのところ若い人の重症化の例は日本国内ではないようだ。免疫が低下しているお年寄りのリスクが若い人たちに比べて数十倍高いようだが、流行が終わればそれがどれほどか調査研究がなされるだろう。

 ところで、ショッキングなニュースがある。この新型コロナウィルスで肺炎を起こし、白血球数が減少して、免疫不全で死亡する症例が報告されている。このウィルスは免疫細胞を攻撃する能力をもつ。
 免疫不全症状を起こすことですぐに頭に浮かぶのはエイズである。AIDS(Acquired immune deficiency syndrome)は「後天性免疫不全症候群」の頭文字をとった病名である。原因ウィルスはHIV(Human Immunodeficiency Virus)である。新型コロナウィルスも似たような機序で免疫システムを破壊するということ。三番目に取り上げられているインド人科学者によれば、新型ウィルスにはエイズ由来の蛋白質があるという。免疫不全を起こすのはそのあたりに原因があるのだろう。
 まるで、コロナウィルスにエイズ由来の蛋白質を組み込んだような構造をもっている。その点が、いままでのコロナウィルスと決定的な相違なのである。そういうコロナウィルスは他には一つもないと書いてある。コロナウィルス・ファミリからまるで孤児のように距離がある。どうして短期間にこのような特異的ともいえるinsertion(遺伝子組み込み)が生じたのか謎である。
 it is quite unlikely for a virus to have acquired such unique insertions naturally in a short duration of time.

 中国の医師が「武漢肺炎はSARS+エイズのようなものだ」と解剖学的所見を述べている。
*https://www.epochtimes.jp/p/2020/03/52988.html

 蝙蝠由来のコロナウィルスにHIV遺伝子の中の免疫不全を起こす部分を組み込めば、「短期間」でこういうことが起きるが、それは生物兵器の研究である、まさか、中国が武漢でそのような研究をしていたわけではあるまい。
 今後の調査研究がどういうメカニズムで、蝙蝠由来のコロナウィルス遺伝子にHIV遺伝子が混ざってしまうという突然変異が生じたのかが、明らかにされるだろう。
 遺伝子モデリング解析の結果、武漢の食肉市場由来とは思えない特異な遺伝子構造を新型コロナウィルスは有している。この論文の共著者はランセットに、「遺伝子組み換えはおそらくはこのウィルスの出現の理由ではありえない」と寄稿している。だが、最初の太字部分に見るように、「武漢新型ウィルスは、自然界で生ずる遺伝子組み換えとは考えられない」とも指摘しているのだ。それは、コロナウィルスの中で今回の騒動の原因になっているウィルスだけが、HIVの遺伝子が組み込まれているからだ。自然界で起きた現象なら、その周辺に間をつなぐコロナウィルスが見つかるはずというのが根拠なのだろう。そういう意味で、武漢新型コロナウィルスは、コロナウィルス・ファミリーから孤絶しているのである。
 問題は、どれくらいの確率で肺炎重症患者が免疫不全症候群を呈するのかということだろう

 そしていま考えうる標準治療手順を全国の病院へ公開することと、各地で患者の治療に当たったドクターから治療方法と効果に関する情報を収集して分析し、治療に当たっているドクターたちへ速やかに伝える体制をつくることが大事なのだろう。

 エイズは体液の接触がないと感染しないが、武漢新型ウィルスはインフルエンザと同程度の飛沫感染力やエアロゾル感染力をもっており、それに感染したら、肺炎を起こして急激に免疫不全状態に陥るのでは、ずいぶん物騒なウィルスである。中国から毎年数百万人の規模で観光客が来るから、感染症からみたら日本と中国は「一蓮托生の地域」になっている。

 観光立国、いま一度考え直した方がいいのではないか?
 札幌冬季オリンピックは新型感染症対策を点検すべき、やるなら数千人規模の隔離施設を用意しておきたい。インフルエンザの流行期の開催なのだから。今回のようにいったん市中感染が広がりだしたら、施設がなければ対処の使用がなくなる。


 タイトルはそのものずばり、Scientific Puzzles Surrounding the Wuhan Novel Coronavirus(武漢新型コロナウィルスをめぐる科学的な謎)」です。

--------------------------------------- 
 最初の段落で、中国のウィルス感染症予防国立研究所の教授が、遺伝子組み換えがこのウィルス出現の理由ではないと言っていることに注意。
 ギリシアの5人の研究者の主張を紹介した後で、インド工科大学のPrashant Pradhanの「自然状態で短期間のウィルスがこのような組み換えを獲得することはありえない」とする説が紹介されている。かれも「HIV遺伝子組み込みが人為的に行われたとは言ってない、しかし、そう示唆しているとも読めることは事実

 ネット上で、「人為的に組み替えられた」という風に読みかえられて、拡散したので、このインド人研究者は原論文を急遽撤回している。自分の意図したところとは違うというのが理由である。武漢新型コロナウィルスをめぐる六つの謎は、以下の正六角形の図にまとめられている。(2/15朝11時追記)
https://img.theepochtimes.com/assets/uploads/2020/02/04/Puzzles-of-nCoV-1-1200x696.jpg

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*read:https://www.theepochtimes.com/scientific-puzzles-surrounding-the-wuhan-novel-coronavirus_3225405.html

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Lancet Article Reports Wuhan Virus Not Likely Caused by Natural Recombination

 

 Most papers reported that the 2019-nCoV is only 88 percent related to the closest bat coronavirus, only 79 percent to SARS, and just 50 percent to MERS. Professor Roujian Lu from the China Key Laboratory of Biosafety, National Institute for Viral Disease Control and Prevention, Chinese Center for Disease Control and Prevention, and his co-authors commented in a Jan. 30 paper in Lancet that “recombination is probably not the reason for emergence of this virus.”

A Jan. 27 2020, study by 5 Greek scientists analyzed the genetic relationships of 2019-nCoV and found that “the new coronavirus provides a new lineage for almost half of its genome, with no close genetic relationships to other viruses within the subgenus of sarbecovirus,” and has an unusual middle segment never seen before in any coronavirus. All this indicates that 2019-nCoV is a brand new type of coronavirus. The study’s authors rejected the original hypothesis that 2019-nCoV originated from random natural mutations between different coronaviruses. (Paraskevis et al 2020 BioRxiv) The article is a preprint made available through bioRxiv and has not been peer-reviewed.

.....

 

Stunning Finding: S-Protein Insertions From HIV

On Jan. 27, 2020, Prashant Pradhan et. al. from the Indian institute of Technology published a paper entitled “Uncanny similarity of unique inserts in the 2019-nCoV spike protein to HIV-1 gp120 and Gag,” which is currently being revised. The corresponding author of this paper, Professor Bishwajit Kundu, is specialized in protein genetic and genetic engineering and has published about 41 papers during the past 17 years on PubMed, including high-impact biomedical journals.

The authors found 4 insertions in the spike glycoprotein (S) which are unique to the 2019-nCoV and are not present in other coronaviruses. “Importantly, amino acid residues in all 4 inserts have identity or similarity to those of HIV-1 gp120 or HIV-1 Gag. Interestingly, despite the inserts being discontinuous on the primary amino acid sequence, 3D-modelling of the 2019-nCoV suggests that they converge to constitute the receptor binding site. The finding of 4 unique inserts in the 2019-nCoV, all of which have identity/similarity to amino acid residues in key structural proteins of HIV-1 is unlikely to be fortuitous in nature.” (emphasis added) author.

Pradhan et al. added, “To our surprise, these sequence insertions were not only absent in S-protein of SARS but were also not observed in any other member of the Coronaviridae family. This is startling as it is quite unlikely for a virus to have acquired such unique insertions naturally in a short duration of time.”

“Unexpectedly, all the insertions got aligned with Human immunodeficiency Virus-1 (HIV-1). Further analysis revealed that aligned sequences of HIV-1 with 2019-nCoV were derived from surface glycoprotein gp120 (amino acid sequence positions: 404-409, 462-467, 136-150) and from Gag protein (366-384 amino acid). Gag protein of HIV is involved in host membrane binding, packaging of the virus and for the formation of virus-like particles. Gp120 plays crucial role in recognizing the host cell by binding to the primary receptor CD4. This binding induces structural rearrangements in GP120, creating a high affinity binding site for a chemokine co-receptor like CXCR4 and/or CCR5.”


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 時事英語教材に使いたい記事だ。

*CD4: ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/CD4

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分子生物学において、CD4cluster of differentiation 4)とはいわゆるヘルパーT細胞単球マクロファージ樹状細胞などの免疫系細胞が細胞表面に発現している糖タンパク細胞表面抗原の1つである。1970年代後半に発見されたこの分子は、1984年にCD4と名付けられるまではleu-3、T4として知られていた。[5]ヒトの場合、CD4遺伝子にコードされている。[6][7]

CD4陽性T細胞はヒトの免疫系において必要不可欠な白血球である。しばしばCD4細胞、Th細胞、T4細胞と呼ばれることもある(以下CD4細胞)。この細胞の主要な役割はCD8陽性T細胞(いわゆるキラーT細胞、もしくは細胞傷害性T細胞、以下CD8細胞)などの他の免疫系細胞にシグナルを送ることであり、このことからCD4細胞はヘルパー細胞と呼ばれる。CD4細胞がシグナルを送ると、CD8細胞はそれを受けて感染細胞を破壊しこれを殺す。無治療のHIV-1感染患者や臓器移植前の免疫抑制状態のようにCD4細胞が枯渇してしまうと、健康な人では感染症を起こさないような様々な病原体に対して感染を起こしやすい状態になってしまう(日和見感染)。

HIVの感染[編集]

ヒト免疫不全ウイルス-1 (HIV-1) は宿主のT細胞へ侵入する際にCD4を利用する。これはgp120として知られるエンベロープタンパク質を結合させることによる。このCD4への結合は、宿主細胞が発現している供受容体へ結合するようにgp120の形態を変化させる[8]ケモカインレセプターであるCCR5やCXCR4がこの共受容体にあたる。さらに他のウイルスタンパク質 (gp41) が構造を変化させると、HIVはウイルスの外膜を細胞膜に融合させるために、融合ペプチドを宿主細胞に挿入する。



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<厚労省はSRLに協力要請したらいい>
 臨床検査項目コードは25年前に標準化して、全国の病院と臨床検査センターがそのコードで連動して動けるようになっている。武漢新型コロナウィルスのPCR検査の保険点数をつければ、SRLが日本標準臨床検査項目コード管理事務局になっているから、即日ネットを通じて全国に配信できる。そうすれば、翌日から全国の病院からの検査を臨床検査センターが受けられる。
 (日本標準コード制定産学協同プロジェクトの発案と作業部会発足時のマネージメントをやったのはebisu、「臨床診断システム事業化案」の10個のプロジェクトのうちに一つでしたが、まさかこんな形で役に立つとは思っていませんでした。)





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#4180 武漢新型コロナウィルスと臨床検査センターの役割 Feb. 12, 2020
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#3062 韓国のMERS騒ぎで思い出したこと:日本の役割があるのでは?  Jun. 16, 2015 [35. 感染症および自己免疫疾患]

<更新情情報>
6/16 朝8時10分 1988年ころ世界一厳しい精度管理基準であるCAPライセンスを取得 
    1990年当時の韓国の臨床検査技師たちは学卒ではなかったか?
6/16 11時30分 ウィキペディアより引用、他数箇所追記
6/17 9時 <余談-2:1988年ころエイズ検査室は遺伝子組み換えのできるp3仕様>
6/17 10時 <エボラ出血熱とBSL4>:ジャパンタイムズ記事解説の弊ブログURLを追記 ⇒高校生や大学生は英語の勉強と感染症の勉強が同時にできるから、リストした弊ブログ記事を丹念に読んでみたらよい。
6/17 10時半追記 <HIV関連弊ブログ記事のURL>
6/18 0時15分 <facts>追記 死亡者数20名、感染者数162名、隔離者数6500人
6/18 23時 死亡者数は23人になった。
6/19 9時 日本の貢献⇒京都府大グループがダチョウを使ってMERS抗体の大量精製に成功した。これで予防薬がつくれる。

 MERS(Middle East respiratory syndrome「中東呼吸器症候群」)が韓国でいっこうに終息しない。韓国内では空気感染の可能性まで言われだしている。飛沫感染と空気感染ではまるで対応が異なる。そんな基本的なことすらハッキリしていないのでは医療水準を疑わざるを得ない。
 病原ウィルスはSARSコロナウィルスに似たコロナウィルス(β型)で2012年に発見されたとウィキペディアに載っている。
*https://ja.wikipedia.org/wiki/MERS%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9
「2015年5月30日現在の合計では、1149人感染(韓国12人を含む)、431人死亡[3]。感染地域は2015年5月に韓国、中国に広がった

<facts>
 17日現在のデータを並べておく。
○死亡者数20人 
○感染者数162人
○自宅や医療機関での隔離者数6500人
○致死率は12.3%(SARS重症呼吸器症候群の致死率は9.6%(774死亡数/8098症例数))*データは国立感染症センター
○有効な治療法はまだ公表されていないし、特効薬もない。
○潜伏期間は2~14日間。
○感染者の半数80人は(サムスン電子グループの)サムスンソウル病院で感染
 サムスンソウル病院は韓国最高レベルの医療専門家と設備を備えているが、そこで80人もの2次感染者をだした事実は、韓国の医療レベルがどの程度のものなのかを如実に現しているのではないか?

*国立感染症情報センター SARS致死率
http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/QA/QAver2-01b.html
 
<韓国の臨床検査業のレベル>
 もうずいぶん昔のことになる、1990年ころだったから25年ほど前のこと、わたしは国内最大手の臨床検査センターの八王子ラボの学術開発本部で仕事をしていた。そのころ韓国から臨床検査の研修に来ていた人がいた。研修が終わり、帰国してから連絡があった、臨床検査業を立ち上げるので、私のいた会社の名前に「韓国×××」という文字を足して企業名にしてよいかという打診である。まったく資本関係も技術提携もないのに、韓国子会社のような印象を与えるので返事はノー。
 東南アジア諸国でも臨床検査業を立ち上げたいという人はいた。当時はこれらの諸国では平均所得水準が引く過ぎて大衆相手の臨床検査業は成り立たない。数十年間は高所得層に限定した臨床検査業になると予想していた。それゆえ、海外市場は打って出るほどの魅力のあるマーケットではなかったから、現地で臨床検査業をやろうという志の人たちのために研修受け入れをした。

 私企業でも業界ナンバーワン企業はアジア全域を考えて、何をなすべきかという視点で仕事をしているから、昭和初期にも大東亜共栄圏という視点から行動していた経済人や企業がすくなくなかったのではないだろうか。否、業界のリーダ企業の多くがそういう視点から対アジア政策を考えていたのではないかと思う。長期戦略として教育・訓練ということを重視したからこそ、韓国と台湾に帝国大学を設置し、厳しい日本の財政からインフラ整備のために莫大な予算を投じたのだろう。韓国を併合し、韓国を近代化することがロシアの南下を止める術(すべ)だった。韓国自身が独力で近代化を果たすことは当時は不可能だった。

 韓国の臨床検査業は日本よりも20年(特殊検査のSRLは1970年創業)遅れてスタートした。今回のMERS騒ぎを見て、患者が3箇所病院を替わるも、MERSの診断がつかなかった背景には、臨床検査業の未成熟さが関係していたのではないかと、そういう印象を受けた。あれから25年たったが、韓国は1990年の日本の臨床検査業の水準にまだ追いついていないのかもしれない。
 日本では1990年ころ、業界ナンバーワンのSRLが世界で一番厳しい品質管理基準である米国臨床病理学会CAPライセンスを取得した。3000検査項目の標準作業手順書を日本語と英文の両方で作成して審査を受けた。学術開発本部内に精度管理部があって、そこが担当したのだが、手が足りず、学術情報部も本部スタッフの東さん(米国で20年間の臨床検査関係の仕事の経験があった女性で、一回りくらい年上だったのでebisuにとっては「お姉さん」、いろいろ仕事を教えていただいた)とわたしも手伝った。開発部だけこのプロジェクトには参加していなかった。3000項目もあれば、新規項目の追加や検査試薬や機器の変更などに応じて標準作業手順書が頻繁に更新されるから、翌年にすべて電子ファイル化した。こういうところは人材の投入もお金の投入も糸目をつけないハッピーな会社だった。1億円以内ならすぐにOKが出たから、会社は儲けないと嘘だ。高収益会社でないと業界のリーダとして社会貢献できる仕事すら不可能になる。その後、業界の2番目3番目の会社が追随して、CAPライセンスを取得している。トップ企業が走り出したら、2番手3番手はその後を追いかけざるをえないのである。だまっていたら水がどんどんあいてしまう。
 日本の精度管理基準をクリアしていれば何の問題もないのに、SRLはあえて世界一厳しい基準で仕事をしようとした。そういう「蛮勇」に業界2位と3位の会社が追随するというのも楽しい。この辺りにも日本人の職人魂を見る思いがする。仕事をするなら全身全霊、渾身の力でやりきるという職人魂があらゆる分野の職人に宿っている。職人魂は日本人が受け継いできた重要な伝統文化や精神のよりどころのひとつである。日本人はそういうことを当たり前のことだと思っているが、そうではない。世界にまれな文化なのである。韓国や中国は形は真似るが、精神をコピーできない。そこに彼らの仕事の陥穽がある。
 韓国にはもう一つの懸念材料がある。韓国で流行っているのは美容整形である。感染症分野の臨床医が少ないのではないだろうか。だとしたら、韓国のMERS騒ぎはしばらく収まらないのかもしれない。

 しっかりした病院があり、感染症の知識のあるドクターや人工呼吸器を扱える技能の高い看護師が多数いて、診断を助ける精度の高い臨床検査業が存在すること、これら三つが揃って国民の医療を支えうるのである。医療のインフラともいうべきこういう基本的なところが成熟している日本ではあれほどの混乱は起きないのだろう。でも油断は禁物だ。SARS騒ぎのときにも問題になったが、爆発感染した場合に治療に必要な人工呼吸器が日本の病院には十分なだけ揃っていない。しかし、数千人規模の感染拡大なら対応できるだけの設備はある。

 韓国は困っている、日本は韓国に何かしてあげられることがないのだろうか?
 韓国と日本は人の交流が多いから、韓国のMERSの沈静化を助けることは、日本人への感染拡大というリスクを小さくする。「情けは人のためならず」という言葉があるではないか。ギクシャクした関係も、こういうときの対応次第でいくらかは改善できる。

<京都府大グループ MERS抗体大量精製に成功!>19日9時追記
 グッドニュースだ。ダチョウを使ってMERS抗体の大量精製に成功したというニュースが流れている。これで予防薬がつくれる。
*産経ニュース
http://www.sankei.com/life/news/150619/lif1506190009-n1.html

「韓国で感染が拡大している中東呼吸器症候群(MERS(マーズ))コロナウイルスに強く結合する抗体を、京都府立大大学院の塚本康浩教授(動物衛生学)のグループが、ダチョウの卵を使って大量精製することに成功した。共同で研究を進めている米国陸軍感染症医学研究所で検証中だが、すでに韓国、米国に配布、スプレー剤として大量生産を開始した。抗体によって覆われたウイルスは人の細胞に侵入できなくなり、感染予防に大きな効果があるという。・・・
 抗体はMERSの感染が拡大している韓国のほか、米国にも配布治療薬として認可されていないため人体へ直接投与することはできないが、抗体を使ったスプレー剤はマスクやドアノブ、手などに噴射すれば感染予防になるすでに大量生産しており、医療従事者や韓国と日本の空港への配布を考えているという。」


<余談:韓国の病院検査技師さんたちのラボツアー>
 八王子ラボの学術開発本部には開発部、学術情報部、精度管理部で構成されていた。わたしは本部スタッフとして開発部の仕事である製薬メーカとの検査試薬の共同開発案件を2つとPERTを利用した共同開発業務の標準化、米軍から要望のあった出生前診断検査(MoM値)に関するシステム開発案件などを担当していた。それらに加えて学術情報部の仕事であるラボツアーの内、海外からの見学者希望者を担当をしていた。学術情報部は国内顧客のラボツアーを担当し、海外からのラボツアー要請には本部スタッフのわたしが対応するという仕分けになっていた。見学ご案内の後報告書を書くことになっているが、保存している報告書ファイルを見たら、国内の大学病院からの見学希望者も同じくらいの数を消化している。

 そういう行きがかり上韓国からの見学希望者5名のラボツアーをしたことがある。いらっしゃった韓国の臨床検査技師の中で一番年配の人は日本語が堪能だった。ほかにも日本語が話せる人がいた。彼らはラボに着いたとたんに中央線から見た日本の住宅の狭さを日本語で話題にしていた。そんなに狭いかと問うと、韓国の彼らの住居(マンション)は150~200平米あり、それが普通だというのである。普通の水準がずいぶん違う、韓国の臨床検査技師はずいぶんと社会的地位が高く、高給取りなのだと驚いた。
 韓国は儒教社会であり学歴を重視する。中国同様にこの点では欧米の考え方に近い。あのときの印象では一人は院卒、あとは学卒の臨床検査技師ではなかっただろうか。専門学校出では、韓国社会であれほどのプライドはもてない。当時の韓国では民間臨床検査センターはまだ存在せず、臨床検査技師に対する需要も病院内に限定されており臨床検査需要が小さいから、専門学校がなかったのかもしれない。
 このラボツアーには免疫血清部のH山部長が一緒に対応してくれた、韓国語が堪能だったからである。H山さんがアンニョンハシムニカと挨拶したら、とたんに表情が変わった。堅苦しい感じが取れて笑顔になり、日本人の住宅が狭いというような否定的な話題がなくなり、空気ががらりと変わった。そのあとなごやかなラボツアーになったのはありがたかった。2時間半ほど時間をかけて各検査部・課の検査項目や検査機器の説明をしながらラボ内をご案内した。
 初めてお会いする人には、その人の母国語で挨拶するのがいい。

<余談-2:p3レベル実験室仕様のエイズ検査室>
 SRLでは1988年ころに、エイズ検査が急増したので、検査員の安全を考えてp3実験室仕様に改造した。p3実験室とは遺伝子組み換え実験が可能なレベルのもので、当時民間の臨床検査会社では最高の仕様の設備だった。外部に空気を排出しない陰圧仕様の部屋で、定期的に交換するヘパフィルターもハイレベルの高額のものだった。
 p3仕様の検査室は法的な義務があってやったものではなく、検査に従事する社員の安全を考えて自主的に導入を決めたものである。こういう決定は実にすばやい会社だった。検査室ではたらく社員たちの話だが、
「ラボ内でここが一番安全、だって他の検査室にもエイズ患者の検体が混じっている可能性があるから危険だ、ここは全部の検体がその可能性があるという前提で扱っている」
 エイズ(HIV)検査ではない検査に、感染検体が混じる恐れがある、そっちのほうが怖い。当時、毎日1~2例ほど陽性がでていた。厚生省(当時)の公表データと大きく異なる。1988年の厚生省公表データでは、HIV感染者数はたった23人*だけ、AIDS発症新規患者14人とあわせても37人。厚生省のデータは医師からの報告だから、HIVキャリアとAIDS(後天性免疫不全症候群)発症患者を分けて集計している。すでに報告済みのHIVキャリアがAIDSを発症した場合は二重にならないようにカウントから取り除かれている。表の解説を読むと、凝固因子製剤による感染者もこの統計から除外されている。
 わたしが知る限りで、厚生省が国内ナンバーワンの企業にエイズ検査陽性が年間何件あるのかを問い合わせてきたことは一度もない。HIVキャリアとAIDS患者を分けるとか血液凝固製剤を統計から除外するなどさまざまな理由があり、現場の医師からの報告データから集計するという基本方針だったようだから、検査センターに問い合わせを行わなかったのだろう。集計は医師からの報告のものと民間検査センターのものと二本立てでやるべきではなかったのか?医師からの報告ではキャリアの数が実際の数十分の一に過小評価されてしまい、初期対応を誤ることになった。
 SRLではスクリーニング検査で要請となった検体は、すべてウエスタンブロット法で確認検査をしていた。当時ですら陽性検体は年間500件ほどあった。厚生省のHIV対策は著しく遅れ、他の諸国が新規感染者を減らしたのに、日本は感染者を増やし続けた、データを見ていただくとそのことがよく分かる。2008年までHIV感染者が増え続けてしまったのは、塩川委員会が実際のキャリア数とは大きく異なる医師からの報告データのみを公表し続けたからで、初期対策が何年も遅れてしまった、重大な失政であったとわたしは思う。
*厚生省公表データ
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2250.html

 なお、現在はp3レベル仕様とは呼ばない、(バイオセーフティレベル)BSLという用語を使う。
 BSL-4レベルの実験室は国立感染症研究所にあるだけ。もちろん自衛隊がそうした施設をもっているのは常識だが、軍事機密なのであるともないともいわない。エボラ出血熱のような病気が国内でアウトブレイクしたら対応できないということは前に#2848に書いた。
 BSL-3とBSL-4の説明をウィキペディアから以下に引用する。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%99%E3%83%AB
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グループ3
ヒトあるいは動物に生死に関わる程度の重篤な病気を起こすが、普通ヒトからヒトへの伝染はない。有効な治療法・予防法がある。黄熱ウイルス狂犬病ウイルスなど。

グループ4
ヒトあるいは動物に生死に関わる程度の重篤な病気を起こし、容易にヒトからヒトへ直接・間接の感染を起こす。有効な治療法・予防法は確立されていない。多数存在する病原体の中でも毒性や感染性が最強クラスである。エボラウイルスマールブルグウイルス天然痘ウイルスなど。
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<エボラ出血熱とBSL4>
 BSL4問題はエボラ出血熱のところで以前とりあげている。高校生や大学生は弊ブログで感染症と英字新聞記事読解の勉強をしたらいかが?

*#2842 エボラ出血熱1-1: 'The worsening ebola crisis' Oct. 18, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-10-17-1

 #2843 エボラ出血熱1-2 :'The worsening ebola crisis' Oct.19, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-10-18

 #2844 エボラ出血熱2-1 :'Spain case shows holes in plans to treat Ebola' Oct.19, 2014  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-10-19

 #2846 エボラ出血熱2-2 :'Spain case shows holes in plans to treat Ebola' Oct.19, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-10-19-2

 #2847 エボラ出血熱2-3 :'Spain case shows holes in plans to treat Ebola' Oct.21, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-10-20

 #2848 エボラ出血熱2-4 :国内の体制はどうなっている? Oct.22, 2014  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-10-22-1

<HIV関連弊ブログ記事>
*#769HIVイベント「高校生の、高校生のための、高校生による」 Oct.25, 2009 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-10-25

 #2024 高校生のためのホットな性感染症知識:HIV感染の実態と新薬  July 23, 2012 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-07-23

 #2026 高校生のためのホットな性感染症知識(2):国際エイズ会議 July 25, 2012 
 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-07-25
 
 #2584 北海道の高校生や大学生のためだけの(?)HIV知識 Feb. 6, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-02-06




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