#3114 年金機構に数兆円規模の評価損がでるのか? Aug. 25, 2015 [91.経済]
この一週間で株価がどれくらい下がったのか日経平均で見ると、1679円である。比較のためにNYダウも並べておく。
日経225銘柄平均 ニューヨーク・ダウ工業30種
8月17日 20,554.47円 17,511.34$
8月25日 18,874.83円 15,871.35$
差し引き 1,679.64円 1,639.99$
ドル・ベースで5年間の日経平均の推移をみると次のようになっている。
2011年8月25日 8,772.36円/77.58円/$=113.08$
2012年8月24日 9,070.76円/78.86円/$=115.02$
2013年8月25日 13,636.28円/98.23円/$=138.82$
2014年8月25日 15,613.25円/104.07円/$=150.03$
2015年8月25日 17,874.83円/119.08円/$=150.08$
*2012年12月26日第二次安倍政権発足
日経平均は1週間で2,000円低下したが、昨年8月と比べるとドル・ベースでは動いていないことがわかる。
150.03$⇒150.08$
ドル・ベースの推移では2013年に23$、2014年に12ドル値上がりしただけである。最近1週間で1679.64円下がってドル・ベースで同じ水準に落ち着いたということ。
こうしてみると日経平均は為替レートの影響を受けていることがわかる。東証1部上場株の外人投資家比率が1/3を超えているから、外人投資家の売買と為替変動が日経平均の変動幅を大きくしている。
要するに、国力を弱めて円安誘導すれば日経平均株価は上がるのである。アベノミクスによる異次元の金融緩和策が異常な円安を引き起こしたことは2011年からの為替レートの年次推移をみれば一目瞭然である。
2011 2012 2013 2014 2015年
77.58⇒78.86⇒98.23⇒104.07⇒118.38円/$
日銀が大量の株式買い入れを行い、そしてGPIF(年金基金管理運用独立行政法人)が130兆円の資産のうち、国内株式に従来12%を投資していたのを政府の圧力で25%に上げた。これで16.9兆円が日本株式取得へと向かった。公務員共済年金基金の残高は80兆円だが、これもGPIFと同様に国内株式比率を上げたとすると10.4兆円である。27兆円もの資金が株式相場を吊り上げるために国内株式市場に投下されつつある。
GPIFが買い入れられる国内株式は残るところ1~2兆円といわれているから、一時的な問題を別にすれば、もういままでのように株価を高い水準に誘導できる力にはなり得ない。あとは日銀が買い支えるだけ。その日銀も国債保有残高が300兆円を超えて、財務省が発行し日銀が買い入れるという、ウロボロス化している。財政の健全性を担保するために、日銀には独立性が求められるが、中学公民で教えられるのとは真逆のことが安倍政権の下で実際に行われている。
ざっくり見るとなにが起きたのかよくわかる、9000円から20000円への日経平均の上昇の半分は、二重の意味でアベノミクスによる自作自演だった。
GPIFや共済年金基金は米国株式にも同規模の買いを入れているから、今年度末には巨額の評価損失を出す恐れが出てきた。
リスクが大きいので、米国は年金基金の株式運用を禁じている。日本政府は政権維持のために日経平均を過大に見せようとして、自作自演の円安・株高をやり、巨額の損失を出しつつある。この損失は年金受給額を減らすことによってあがなわれる。
<試算>
日経平均がNYダウと同様にドル・ベースで10%下げたとして、そのときに為替レートが110円としたら、日経平均はおおよそどれくらいになるか?
150$*0.9*(110円/$)=14,850円
これぐらいまで下がっても外人投資家から見た日経平均は、底値ではなく適正な株価変動の範囲内に見える。
株価上昇分のうちの半分がアベノミクスによる自作自演と考えると、15,000~18,000円の間の16,500円ぐらいが日経平均の現在のところの実力相応の相場だろう。
<余談-1>
2011年8月のドル・ベース日経平均で現在の為替レートで日経平均を逆算すると、次のようになる。
113$*119円/$=13,447円
もちろん、2011年3月の東北大地震やそのときの福島第一原発メルトダウンなどの影響があったし、現在の株価は株価収益率でみたら適正だということはできる。しかし、東証Ⅰ部上場企業の税引き後利益自体が、内需や景気しだい、原油価格しだい、貿易収支や経常収支尻の赤字幅しだい、為替レートの変動しだいで、大きく動いてしまうから、株価収益率(ROE)だけを尺度にして日経平均株価の水準を論じるのは危険であることはいうまでもない。株価は多角的に考察すべきものなのである。
著しく偏った経済政策であるアベノミクス三本の矢は、そういう意味で一方向からだけの危うい視点でなされているといえる。こんなにバランス感覚を欠いた経済運営は稀である。
<余談-2:預金封鎖>
戦後まもなく預金封鎖が行われた。戦前から赤字国債を膨らまし続けたから、それを国民の預金で帳消しにするために政府が行った。政府と地方自治体の借金の総額は1200兆円に近づいている。いつまた、同じことが起きるかわからぬ。
年金も怪しくなってきた、3割減るのは時間の問題だ。個人にとっては預金を半分くらい不動産に替えておくことくらいしか対策はなさそうである。まあ、ハチャメチャなひどいことになりそうだから、覚悟だけはしておかねばなるまい。民主党の不甲斐なさに懲りて、自民党へ票を預けたのが間違いだった。いやどちらに預けても似たような結果だったのだろう。わたしたちには選択肢がなかったのだ。
自民党政治家の全員が安倍氏と同じではあるまい、国をつぶしてしまう前に健全な保守主義に戻ろうではないか、それが良識というものだとわたしは思う。
健全な保守主義を支える21世紀の経済学についてはカテゴリー『資本論と21世紀の経済学第2版』ですでに明らかにしている。四百字詰め原稿用紙で450枚ほどの分量がある。
*#2715 GPIFの株購入と銀行保有リスク資産に関わるBIS規制変更 June 25, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
*#3097 資本論と21世紀の経済学(改訂第2版) <目次> Aug. 2, 20
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-15
70% 20% 10%
#3103 やはり三日連続の切り下げ 人民元 Aug. 13, 2015 [91.経済]
今日も小刻みな切り下げをやるのではないかと思っていたら、お昼のNHKニュースが人民元が1.1%切り下げられて、三日連続4.6%の切り下げとなったと告げていた。
国内の景気が低迷して、輸出を増やしたい事情があるならこんな程度の切り下げではすまない。たとえば、日本は安倍政権誕生前に比べて80円⇒120円台/$への5割の円安である。30%は元安を演出しないと輸出ドライブがかからないだろうから、様子を見ながら小刻みな元安がしばらく続くと読むべきなのだろう。その一方で輸入物価を押し上げることになり、「不景気+物価高」に陥りかねないので、おっかなびっくり小刻みの切り下げとなったのだろう。中国政府は通貨政策に不慣れなのである。
上海株が暴落してあわてて取引をストップしたり、株の売却を制限したりと、なりふり構わない露骨な介入が続いていた。言論の自由や人権を求める動きに対しても強権発動という対応をしているが、どちらをみても中国政府の対応は幼い。
世界の工場は割高になった中国を逃げ出し、インドやミャンマーやベトナや、タイへ移りつつあるから、小刻みな元安では輸出は増えない。元安はこれらの国々に影響があるだろうから、対抗して自国通貨の切り下げ競争が起きかねない。
中国はサイズが大きいのだから、大人の振る舞いを身につけなければならないのだが、無理な注文である。わが国の政府はこの数年間アベノミクスという「異次元ゼロ金利」で臨み5割もの円安誘導を実現し子どもじみた振る舞いをしている。じっと見ていた中国が真似しはじめたのかもしれない。
自分たちのグループさえよければいいというのがTPPだ、自分さえよければいいという国が増えていき、弱肉強食が当たり前になればどういう経済社会が現出するのか考えなくてもわかるだろう。
「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」に基づいた経済運営のお手本を日本が示さなければならないのだが、安倍政権はそれとは真逆の経済政策を狂ったように推し進めている。美しい日本を目指していたはずだったが、まっとうな道を歩くのはむずかしいのだろう、「近道反応」的な経済政策選択が多い。わたしにはかれの経済政策も国会での野党議員との議論も幼児性の表れにみえる。
国内の景気対策に他に打つ手がないために、中国はこのまま小刻みな元安を続ける可能性が強く、周辺諸国への影響があるから、かの国の通貨政策をしばらく見守ったほうがよさそうだ。もちろんわが国の経済政策も同列である。
(GPIF(年金機構)の株保有はすでに限度いっぱいに近づいており、あと1.5兆円ほどしか買い入れ余力がなく、株高の演出が限界にきている。公共投資も前年比で大きなマイナスである、財政出動という第一の矢も、失速しつつある。財政出動と異次元のゼロ利政策で自動的に成長できると考えていた節がある、トリクルダウンでの内需拡大を信じていたのだろう。成長戦略はいまだに姿が見えない。)
<8/11 ポイント配分割合変更>
70% 20% 10%
#3019 株価と経済:立教大山口義行教授の論 Apr. 8, 2015 [91.経済]
日経平均(日経225)とは東証1部上場企業1700社の内の225社の平均株価であるが、この指標に経済の実態が映し出されているだろうか?山口教授は三つの論点を挙げた。
(1)日経平均はきわめて少数の企業の株価の動きを反映している。
上場企業株3500社の内の225社の平均であり、株価の高い上位20社の構成率が50%を超える。わずか上位4社で構成率20%である。
論より証拠、二つ事例を挙げていた。
3月8日に315円アップしたが、1/3の112円はファーストリテイリングの値上がりによる。
3月15日に263円アップしたが、約半分はファナックの値上がりによる。
このように1社の株価の動向で日経平均が大きく動く。
(2)最近の日経平均は官制相場ではないかとの声が多い。
売買の7割は外人投資家だったが、1月と2月は売り込んでいるのに株価が上がっている。買い手は信託銀行であるが、GPIF(年金機構)が信託銀行に買い注文を出している。公的なお金が入ると日経平均は上がるが、これでは経済の実態を反映しているとは言いがたい。
(3)日経平均は輸出関連企業が多いから円安メリットが大きい。ところが多くの企業は円安による原料高、仕入コスト高で業績が悪化している。
マスコミは日経平均が上がっていると経済が良くなっていると報道しがちだが、それは事実と違っている。多くの企業が仕入コストアップや電気料金、ガス料金、ガソリン価格の上昇で採算を悪化させている。
マスコミは経済の現場を取材すべきだし、政府は経済政策が事実上の株価対策みたいにならないように実態を見据えた政策運営をすべきだというのが、山口教授の主張である。
<ebisuの辛口コメント:株価暴落リスク増大>
わたしは山口教授の論点にもう一つ付け加えたい。基金140兆円の半分70兆円が内外の株式市場に投じられつつある、GPIFは保有国債を売却して株式を購入する。売られた国債は結果として日銀が購入しているから、実質的にはGPIFを介して日銀が株式買い付けをしているようなものだ。株式も国債も市場機能が麻痺して官制相場になっている、市場の調節作用は失われているから市場で突然に何が起きても不思議ではない。
基本的なことが忘れられている、GPIFが年金支払いのために保有株式を売却するときが数年後に来る。数兆円単位で保有株式の売却を始めたときに株式市場は暴落することになる。相場はピーク時の1/3~1/5になるのが通例であるから、年金基金に大きな毀損が生ずる。これはほとんど避けようがない。原資が減るから年金支払いへも大きな影響が出る。
国民の皆さん、そして保守政治家を自称する諸君、このままでは年金基金に大きな穴が開いてしまうが、御身大事とこのまま見過ごしていいのかね。
大部分の企業が円安によるコストアップで業績が悪化している。アベノミクスが何を引き起こしつつあるかはすでに明らか。経済音痴の首相、そして無責任な発言を繰り返した経済政策ブレーン(浜田宏一東大名誉教授)のコンビによるアベノミクスがこれからさらにどれほどの災厄を引き起こすのか、しっかり目を開いて結果をみたらいい。
人口減少時代に経済成長をいつまでも唱え、公的資金と投入してまでも株価を吊り上げて政権延命を図る浅ましさには、あきれてものが言えぬ。
内部から強い批判が出てきて当然だと思うが、出てこないところをみると、自民党は昔とちっとも変わっていないのか?少子高齢化で人口減少時代に突入し、経済成長ではなく経済縮小へと大きく変わてしまっている。時代と経済政策のギャップが安倍政権になって急拡大しているから、どこかでカタストロフィーが起きるが、それがいつかはだれにもわからない。東北大震災のように突然日本を襲う、それは自然災害ではなく、現政権によって人為的に引き起こされる災害である。日本経済と国民の生活は致命的なダメージを受け、どん底から再生することになる。智慧と決断があれば人為的な災害は防ぐことができる。
地方選挙が始まったが、中標津も根室も道会議員は現職が告示と同時に無投票当選が決定、地方は人材が枯渇してしまって対立候補すら出現せず、まったく変わりようがない。選挙制度はあっても選挙民は選びようがない。国債や株式相場と同じで、ここでも市場原理(競争原理)が失われている。
*#2935 『資本論』と経済学(1):「目次」 Jan. 25, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-25
#2936 『資本論』と経済学(2):「1.経済現象と日本の国益」 Jan. 26, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-26
#2937 『資本論』と経済学(3):「円安はいいことか?80⇒120円/$の威力」 Jan. 27, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27
#2938 『資本論』と経済学(4) : 「経済学とは?」 Jan. 27, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27-1
#2939 『資本論』と経済学(5) : 「『資本論』の章別編成」 Jan. 27, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-27-2
#2941 『資本論』と経済学(6) : 「マルクス著作の出版年表」 Jan. 29, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-28-1
#2942 『資本論』と経済学(7) : 「デカルト/科学の方法四つの規則」 Jan. 29, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-28-2
#2943 『資本論』と経済学(8) : 「ユークリッド『原論」 Jan. 29, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29
#2944 『資本論』と経済学(9) : 「何をやりつつあったかは残された文献に聞け」 Jan. 29, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29-1
#2945 『資本論』と経済学(10) : 「プルードン「系列の弁証法」 Jan. 29, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29-2
#2947 『資本論』と経済学(11) : 「労働観を時間座標系においてみる」 Jan. 29, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-29-4
#2948 『資本論』と経済学(12) : 「公理書き換えによる21世紀の経済学創造」 Jan. 29, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-30
#2950 『資本論』と経済学(13) : マルクス経済学の体系構成法 Jan. 31, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31-1
#2951 『資本論』と経済学(14) : 「マルクスの労働観と日本人の仕事観」 Jan. 31, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31-2
#2952 『資本論』と経済学(15) : 「ヨーロッパ労働観⇔と日本の仕事観」 Feb.1, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31-3
#2953 『資本論』と経済学(16):「仕事がキツイ!に潜む心(仕事観)の問題」 Feb.1, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01
#2955 『資本論』と経済学(17):「要領の悪いものほど忙しいとぼやく」 Feb.3, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-03
#2958 『資本論』と経済学(18):「教育の職人」 Feb. 5, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-04-2
#2960 『資本論』と経済学(19):「日本経済の未来」 Feb. 6, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-05-1
#2961 『資本論』と経済学(20):「経済成長の天井 山田久氏の論」 Feb. 7, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-07
#2964 『資本論』と経済学(21):「過剰富裕化論」 Feb. 8, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-07-3
#2966 『資本論』と経済学(22):「相対的貧困率上昇と富裕層増大」 Feb. 9, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-08-1
#2967 『資本論』と経済学(23):「ピケティの空想的所得再分配論」 Feb. 10, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-09
#2968 『資本論』と経済学(24):「浜矩子 予算案と公共性について」 Feb. 11, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-10
#2971 『資本論』と経済学(25):「村落共同体と税:自由民と農奴について」 Feb. 12, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-12
#2972 『資本論』と経済学(26):「文部科学大臣下村博文「教育再生案」について」 Feb. 13, 2015
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#2973 『資本論』と経済学(27):「注-1~5」 Feb. 13, 2015
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#2974 『資本論』と経済学(28):「注ー6」と主要文献リスト Feb. 14, 2015 http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-02-13-1
#3015 人工知能の開発が人類滅亡をもたらす:ホーキング博士(資本論と経済学-補遺1) Apr. 2, 2015
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#2880 ネットで検索してもわからぬ日本の外貨準備高 Nov. 24, 2014 [91.経済]
日本の外貨準備金の大半は米国財務省証券一本で運用されているようだが、その金額は財務省の「外国為替特別会計」を検索してもさっぱりわからない。公表の仕方が変わっていくら保有しているのかわからない。
*http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/26/pdf/tokukai_h260131.pdf
仕方がないのでネットで検索したら5月の時点での米国財務省証券保有高のランキングリストが出てきた。ロイターが配信したニュースである。
*「米財務省証券3月はベルギーが保有世界3位に浮上、ロシアは売り」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0DV1NP20140515
情けない話だ。日本人が自国の外貨準備保有高を知りたくて財務省のホームページを検索しても、その残高がわからない。しかたなくロイターの配信したニュースで知るというていたらく、情けないったらありゃしない。
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「 [ニューヨーク 15日 ロイター] - 米財務省が15日に発表した3月の海外投資家による対米証券投資統計では、米財務省証券投資の買い越し額は前月から大きく減少したものの、ベルギーが継続的に買い進め、中国と日本に次ぐ3位の保有国に浮上したことが分かった。
一方、ロシアは短期証券を中心に258億ドル売却。統計に含まれる国のなかで最大となった。
3月の米財務省証券投資の買い越し額は259億ドルとなり、2月の925億ドルから大きく減少した。ただベルギーは402億ドルの買い越し。同国の過去5カ月間の買い越し額は約2011億ドルに達している。
3月時点のベルギーの米財務省証券保有高は3814億ドル。中国(1兆2721億ドル)、日本(1兆2002億ドル)に次ぐ3位に浮上した。」
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1兆2002億ドルだそうだ。118円/$だと141.6兆円になる。過剰なドル買い支えによる円安があるから、トヨタは膨大な利益を手にすることができる。政府によるドル買い支えがなければ80円/ドルを超える円高となり、ガソリンや食料品などの輸入品の物価が下がり、トヨタの利益は数千億円減るのではないか。
アベノミクスはGDPの12%を占めるに過ぎない輸出産業の擁護のために141兆円もの資金を投じて米国財務省証券を保有して、円安を演出しているということができる。米国財務省証券を売るということはドル売り円買いだから、円高になる。
貿易収支尻はすでに年額十兆円を超える赤字で、まもなく経常収支尻も赤字になるが、そうすれば日本は米国財務省証券の買い手から売り手に替わる。大口の買い手を失った米国財務省証券の金利が上がることになる。
日銀もいつかは国際の大量買入れをストップしなければならないが、そのときに市場で国債を売るためには日本の国債金利も上がることになる。金利が上がれば日本政府財政はアウト。
(2014年上期の貿易収支赤字額は7兆5984億円)
*http://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_eco_trade-balance
#2838 円安評価をめぐる経済界と日銀のズレ:山口義行教授 Oct. 14, 2014 [91.経済]
10月13日NHKラジオ「ビジネス展望」で立教大学経済学部山口義行教授が「円安評価をめぐる経済界と日銀のズレ」と題して、以下のように日本経済の見通しを述べている。
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山口教授は8~9月に行われたロイターの調査結果を紹介した。資本金10億円以上の大企業に対してなされたものだ。5円刻みで円$相場がどれくらいがよいのかという問に対する回答は次のようになっている。、
100~105円/$・・・47%
95~100円/$・・・・21%
95円/$以下 ・・・・ 7%
合計 75%
為替相場は105円/$以下が望ましいという大企業が75%もある、これ以上の量的緩和による円安は歓迎できないというのが資本金10億円以上の大企業の75%を占めている。これ以上日銀が「異次元の量的緩和策」を取り続けることに大企業ですら75%も反対なのである。中小企業の台所は大企業以上に厳しい。
内需型企業では円安によるコストアップで採算が悪化し困っている。大企業の57%が価格転嫁できないと回答している。たとえば、紙パルプ業界は電力コストアップと円安による為替変動分で利益が出ない。化学業界は需要がゆるんでおりコストアップ分の値上げができない。消費者に近い業界では値上げすると数量が減少してしまう。9月29日に経団連会長が「これ以上の円安は日本経済にマイナス」と発言した。
ところが日銀の黒田総裁は、10月7日の参議院予算会議で「日本経済全体に円安はマイナスになっていることはない」「景気が下振れすれば量的緩和策を追加する」と言明している。大企業の判断とは正反対、経済の現実が認識できていない。
バーナンキからジャネット・イエレンに米国FRB議長が変ったが、10月に量的緩和策QE3(月額7~8兆円)をやめることを公表ずみ、世界中にばら撒いたドルを回収し始めている。ゼロ金利も停止し、金利引き上げに走ることになる。米国はなぜこのタイミングでなぜ量的緩和策を転換するのだろう、それなりの理由がなければならないが山口教授はこの点への言及がない。
日米はまったく反対方向の金融政策をとっているから、円安ドル高の流れは当分の間加速するだろう。
山口教授は、日銀が金融政策を転換できない理由として、アベノミクスを挙げている。アベノミクスは金融緩和によって景気をよくするというものだった。
金融緩和⇒景気浮揚
だから、量的緩和をやめたらアベノミクスは失敗だったということになるし、日銀が株式市場から大量の株式買い入れを行って株価を支えていることも停止しなくてはならなくなる。株価が暴落するからこの点でも安倍総理のイエスマンである黒田日銀は量的緩和をやめられない。
だが、実体経済はすでにスタグフレーションの様相を呈し始めている、日銀には打つ手が無くなってしまった。
以上が山口教授の主張である。
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《ebisuの捕捉と解説》
<起>
経済界はどれくらいの為替相場が妥当だと見ているのかという調査をなぜ国内のマスコミがやらないのだろう?山口教授が挙げたのはロイターの調査データである。日本のマスコミは政権批判となるような調査を避けてはいないだろうか?とくにNHKがひどい。
まともな経済ブレーンのいない安倍総理が声高に唱えたアベノミクスは、成長戦略というナカミを欠いてボロが出始めた。経済音痴も困ったもので、簡単にだまされ、そして自分の弁舌に酔いしれる。
ところで金融の量的緩和⇒景気浮揚というわかりやすいシェーマは浜田宏一とかいう経済学者が描いたのではなかったか?東大名誉教授だって、ピンもいりゃあキリもいる、なにもキリをつかまなくったってよさそうなものだ。2年ほど前に亡くなったが過剰富裕化論の馬場宏二先生も東大経済学部教授だった。安倍総理は欲にくらんで人を観る目がないということ。
失われた20年、デフレをインフレに変え経済成長を成し遂げて歴史に名を残したい、そういう欲望に操られているから、モノゴトの本質や学説の誤りを見逃してしまう。少子高齢化、縄文以来1万2千年ではじめての人口減少時代という認識を視野の外においてしまう。
目の前の現象をよく観察すればわかること、欲を棄て去ればよく見えるのだが、安倍総理にはそれができない。よほどしっかりしていないと、人間は見たくないものは見ないもののようだ、そうして重要なところで決定的に判断を間違え致命傷になる。
<承>
景気浮揚どころか結果は真反対。
円安と消費税増税によるインフレで、日本経済は深刻なスタブ不レーションに突入しつつあるが、金融緩和をやめるわけにはいかない。やめたら金利は上がりすでの1000兆円を超えた国債が暴落するし、国の財政も金利支払で破綻が明白になる。
量的緩和策をやめると日銀の株式の買い入れも中止することになるから株価が下がる。80円/$のころ日経平均は8000円ほどだったから、110円/$、40%の円安を考慮すると日経平均は1.1万円が妥当な水準。下がりだしたらとまらないのが相場だから、1万円を切ることも考えられる。年金基金を運用しているGPIFは巨額損失を出すことになる。量的緩和をやめるという選択肢がすでになくなっていたのである。
いずれ均衡財政に戻らなくてはいけない事態に追い込まれる。夕張市で起きたことが、日本全体で起きる。残念だが回避の手段はすでにない。手を打たなければいけなかったのは20年も前だ。日本は一度苦難の時期を通過しなければならない。痛い思いをして健全な経済システムを創りあげるしかない。
<転-1>
米国FRBの前議長バーナンキはQE3(3回目の量的緩和策)で月額400億ドルものサブプライムローンを買い入れ続け米国はバブルに踊っていた。市場に任せていたらサブプライムローン証券は売れずバブルは生じなかった。FRBは量的緩和策とゼロ金利でサププライムローンへ「燃料」を送り続けただけではない、サブプライムローン証券を大量に買い入れることでFRBがリスクを抱え込んでしまった。
証券をリーマンショックであれだけ実害を出したのに、舌の根も乾かぬうちにまた同じ轍を踏んでいる。売れないものだから政府が買い込んでしまったのは、景気浮揚をしたいという欲望に勝てなかったからで、米国経済はまたぞろ巨額の不良債権を隠している。だから金融を引き締め世界中からドルをあるめる必要があったという見方もありうる。FRBの政策転換の裏にはそういう事情が隠されているのではないか。量的緩和策に踊ったのは民間よりも米国政府、それもこれも政権維持のために景気浮揚をしたいから。
米国は最大の石油産出国になったと喧伝しているが、そのことがドル高の大きな要因となっている。しかしシェールオイルは水平ドリリングで粘頁岩を砕きながら高圧の水を大量に消費しての採掘になるから、コストが高い。垂直ドリリングに比べてコストはずっと高くなるから、原油高が続かないと採算が合わなくなる。ずっと100$/バーレルを超えていた原油相場は80$/バーレルに落ちている。シェール・ガスも従来の垂直ドリリングに比べて圧力の弱まるのが速く、採掘開始10年で産出量が初年度の1%に落ち、あっというまに採算が悪化する。両方ともに大きな投資リスクをはらんでいるから、原油の価格次第で破綻が表面化するのではないだろうか。
米国の動きを見ているとなにやらきな臭い、リーマンショック以上のことが起きそうな気配が漂い始めている。
*「シェールガス革命という幻想・・・急激に産出量が減るガス田」
http://green.ap.teacup.com/pekepon/1055.html
*「米国におけるシェールガスの生産量は10年後には減少に転じる可能性」
http://www.sciencenewsline.jp/articles/2013102819010003.html
*国別埋蔵量チャート
http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1045_01_02.pdf
<転-2>
日銀は量的緩和策をやめられない、やめたら日銀は国債直接買い入れを縮小しなければならず、国債は買い手を失い金利が上がって暴落する。日本の財政破綻が世界中に知れ渡り、国際通貨としての円の信任が土台から揺らぐ。世界中のヘッジファンドが好機とばかりに円を売り浴びせるだろう。
日銀が量的緩和策をやめたら、株式を買い入れているから株価も暴落しかねない。それはアベノミクスの失敗を認めることでもある。イエスマンの黒田日銀総裁にはそういう選択肢がない。だからだらだらと金融緩和が続き、円安がとまらず、コストプッシュ型のインフレがひどくなる。
日銀黒田総裁の量的緩和策には出口戦略がない。ついに袋小路に行き当たってしまった。
<転-3>
根室市のように地方交付税交付金を当てにして借金を膨らませてしまった地方自治体はこれからたいへんなことになる。冬の時代が来るのに、夏の服装のままで何の準備もない。3期目の市長さんと部長職の面々、船が沈みかかっているのに欲張りすぎてなんと能天気なことよ。
<結>
少子高齢化社会に突入し、縄文時代以来はじめて日本は人口減少時代を迎えている。経済成長は幻想、鎖国(強い管理貿易)をして職人仕事を中心に経済システムを作り直す好機である。自分たちの食べ物は原則として国内で生産する。工業製品は高くついても品質がよく長持ちする国産品を使い、雇用を国内に確保する。国内で生産できないものだけを輸入しよう。ほとんどの工業製品を国産でカバーできるのは日本だけ、いまならまだやり直しができる。団塊世代の技術者がまだいろいろな技術をもっているから、生産の場があればその技術を若い人たちに伝えることができる。だから鎖国(強い管理貿易・人の入出国はもちろん自由)で生産の場を国内に確保する。世代間で技術伝承ができれば、若い人たちには安定した職場が確保できるし、団塊世代が受け継ぎ磨いた技術が絶滅せずにすむ。
苦難の時代ではあっても技術伝承を世代間で受け継げるいい時代でもあり、それを超えたところに格差の小さい落ち着いた社会がまっている。2世代60年はかかるが、悪いことばかりではない。
■仕事は正直に誠実にやる
■売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし
■小欲知足
*#2775 内閣府「国民経済計算4-6月期」データ解説 Aug. 13, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-13
#2774 'Bad inflation' shadows Japan (悪性インフレの陰りあり) Aug. 13, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-12
#2770 「経済成長の天井」:日本総研山田久調査部長の論 Aug. 11, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-11
#2766 疑問符がついた景気回復の先行き Aug. 9, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-09
#2759 有効求人倍率1.1倍、19ヶ月連続上昇 Aug. 5, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-05
#2753 上海福喜食品対米国産牛肉:どっちもどっち? july 30, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-30
#2742 藤原直哉(前編):物価と景気動向⇒二番底が来る July 21, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-20-1
#2731 10年間で33%農業人口が減少している日本の農業 July 11, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-11
#2729 年金基金の運用資産が130兆円から210兆円に増える:危うい株式投資 July 9, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08
#2715 GPIFの株購入と銀行保有リスク資産に関わるBIS規制変更 June 25, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
#2702 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"③:公務員は別扱い June 10, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-10
#2701 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"② June 9, 2014
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#2699 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"① June 6, 2014
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*#2693 鎖国をして国内雇用を確保しよう May 31, 2014
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#2669 成長戦略:規制緩和を考える May 7, 2014
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#2660 庶民の物価感覚 : 消費は落ち込む Apr. 27, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-27
#2643 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(3) Apr. 13, 2014
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#2634 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(2) Apr.7, 2014
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#2631 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(1) Mar. 31, 2014
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#2561 物価上昇なんて経済政策はありえない話だ:経済アナリスト藤原直哉 Jan. 10, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-10
#2245 円安はそんなにいいことか? Mar. 17, 2013
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#2627 消費税引き上げ+物価上昇>所得増加:三番目の矢はない Mar. 22, 2014
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#2565 人口減少社会を問ふ(2) Jan. 17, 2014
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#2564 人口減少社会を問ふ(1) Jan. 16, 2014
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#2561 物価上昇なんて経済政策はありえない話だ:経済アナリスト藤原直哉 Jan. 10, 2014
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#2554 「日本の経常収支と円を考える」 東洋大教授・中北徹の論 Jan. 3, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-03
#2549 アベノミクス批判 (2):内橋克人 Dec.31, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-31
#2543 インフレと自己責任:リスク増大へ対処の方法はあるか? Dec. 27, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-27
#2540 アベノミクス批判(1):『世界8月号』伊藤光晴論文 Dec. 23, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-23
*#2523 アベノミクスの行く末: 日本総研調査部長の論点 Dec. 9, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
#2502 アベノミクスと企業経営 Nov. 18, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17-3
#2430 手詰まりの安倍首相 ついに消費税引き上げ決意表明 Oct. 2, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-02
#2401 消費税値上げ延期なら国債価格は下落 Failure to raise sales tax 'could hurt bond prices' Sep. 9, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-09-09
#2388 アベノミクス:雇用規制改革の正体 Aug. 30, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-08-30
#2385 TPPは再び植民地化を招く:マハティール元首相 Aug. 28, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-08-28
#2376 貿易赤字13ヶ月連続 7月最大の1兆240億円 Aug. 20, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-08-20
#2329 アベノミクス:ナカミがないのに財政健全化を約束 Jun. 12, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-13
#2321 株価暴落はどこまで続くのか?:とりあえずの目安は11,250円 Jun. 4, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-04-1
#2311 どうにも解せぬこと ミャンマーへ債務免除 : プライマリーバランスの回復はするつもりがない? May 26, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-26-1
#2309 Nikkei dives 7%, ends below 14,500 : May 25, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-25
#2298 アベノミクスの罪:日経平均15,096.03円 May 16, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-16
#2270 人口減少の衝撃: 2040年の日本の人口は1億727万人:"Japan's depopulation time bomb" : Apr. 21, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-22
#2256 マネタリーベース270兆円へ拡大:亡国の決断 Apr. 6, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-06
#2245 円安はそんなにいいことか? Mar. 17, 2013
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#2185 各論(3):'Abenomics' Jan. 24, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-01-24
#2170 各論(2):貿易収支赤字転落⇒? Jan. 3, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-01-04
#2169 各論(1):国債暴落の可能性とその影響 Jan.2, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-01-02
2168 歴史認識を欠いた安倍新政権の歴史的役割(2):蔵相高橋是清暗殺 Dec. 31, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-31-1
#2164 歴史認識を欠いた安倍新政権の歴史的役割は何?
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-28
#2158 自民党圧勝294されど第2の危機:民主党惨敗 Dec.17, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-18
#2144 成長路線と金融緩和の罠 : 衆院選挙でナイトメアがはじまる
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-11-30
#1828 ゼロ金利の罠: Fed targets and transparency Feb. 3, 2012
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-02-03
#829 国家財政破綻の瀬戸際 Dec.12, 2009
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2009-12-12
#346 これから10年間の日本経済のシナリオ
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-10
#2786 歓迎すべき人口減少と経済縮小:広島土砂災害 Aug. 24, 2014 [91.経済]
日本の総人口が減少し始めている。社会保障・人口問題研究所が地域別の推計値を公表しているので、全国の市町村は人口減少を前提に予算や人員規模を計画的に縮小しなければならない。
もちろん国も予算規模を年々逓減していかなければならないから、国債残高を増やしてはいけないのである。国債残高を増やすとその償還という後年時負担が負担が増大して、予算規模縮小ができなくなる。
少子化と高齢化と総人口減少そして1000兆円に膨らんだ政府の借金の返済という四重苦を乗り越えた先には、禍福はあざなえる縄のごとしという諺(ことわざ)通りに、食糧や電力の飛躍的な自給率アップ、そして危険地域に住宅を建てなくてすむという世界が広がっている。
広島市安佐南区と安佐北区で20日午前3時半ころ土砂災害が発生、すでに50人死亡が確認され、38人が行方不明である。事故発生から5日目、3500人が二次災害のリスクを回避しながらいまも懸命の救助作業中だ。安佐南区と安佐北区だけでダンプカー8万台分の土砂が堆積しているという。これを取り除いても十数年後にはまた同じような規模の土砂災害に見舞われる、崩落を繰り返しながら次第になだらかになるそういう地質と地形の場所なのである。崩れてなだらかになったところを削り取って傾斜角度の急な山際を復活すれば、また集中豪雨で土砂崩れを起こすのは必定、復旧工事が土砂崩れの原因となってしまうというジレンマを抱えている。せっかく家を建て直してもまた災害に見舞われる。そういう意味で本来家を建ててはいけない場所なのだろう。
こういうところでも代々続く旧家は災害に見舞われない地の利のよいところを選んで建てられている、昔の人の智慧ははかりしれない。根室でいうと、お役所関係施設が建てられた場所がそういうところだ。地震があっても揺れの少ない地盤の固いところが数箇所ある。保健所や市立病院、警察と合同庁舎、支庁や市役所の辺りがそうだ。そこから海側に下がったところは2~4mも掘ると良質の粘土層とその下に帯水層が現れる。だから合同庁舎の地震計で測った震度が5なら、それらの軟弱地盤では震度6以上となる。
(市立病院は固い地盤そのものが強固な耐震構造の一部なのである。揺れが小さくなるそこに免震構造の建物を建てても意味がない。免震構造は揺れを増幅するような軟弱地盤で最大の効果を発揮するものだ。)
事故当日、安倍総理は山梨県鳴沢町の別荘で6時半災害発生の報告を受け、被害状況の確認を関係省庁に指示。その後、別荘近くのゴルフ場で茂木経産大臣、森元総理、加藤勝信官房副長官らとプレーを始めた。総理は午後9時頃ゴルフを中断(茂木経産大臣ら一部はプレーを続行)して帰京、自衛隊の「数百人規模」での出動を命じて、もう一度別荘へ。21日も別荘に滞在して報告を受け、午後官邸へ戻った。
「大雨の対応で身一つで来てしまったため」別荘に物を取りに戻ったと釈明していた。着の身着のままというのは家が壊れ、九死に一生の思いで脱出してきた被災者のほう、無神経すぎた。
広島市郊外は山際に住宅地が迫っており、アサ土という土質で集中豪雨になると崩れやすいのだそうだ。テレビ映像の伝えるところに拠れば、木槌で叩いただけでばらばらと崩れるし、岩塊に見えても手でにぎっても崩れる物すらある。そして集中豪雨で大量の水を含むと泥状になりぬかるみに変るから、傾斜面は重さに耐えかねて崩れることになる。
こういう土質の山際はもともと住宅地としては開発してはいけない場所だが、人口増加で危険を承知で開発を進めたのだろう。後から来た住民はそうした危険地帯に家を建てざるを得ない。こういう条件の住宅地は人口の急増した地方の比較的大きな都市に多い。経済成長の負の側面だ。
人口が半分になれば、危険なところには住宅を建てなくてすむから、人口減少は歓迎すべきことだろう。2080年には人口は半減、6587万人になるから、危ないところに家を建てる必要がなくなる。日本列島の地形を考慮すると、国民全員が比較的安全な場所に住むには、人口は三分の一くらいが理想的なのではないだろうか。広い裏庭で自家食用の野菜も栽培できるだろう、どなたか専門家が公開資料を駆使して計算してほしい。
人口推計資料を10年ごとの数字にまとめてみたので、ご覧戴きたい。
社会保障・人口問題研究所推計 | ||||
年 | 総人口 | 減少数 | ||
(2010) | 128,057 | 100.0% | ||
(2020) | 124,100 | 3,957 | 96.9% | |
(2030) | 116,618 | 7,482 | 91.1% | |
(2040) | 107,276 | 9,342 | 83.8% | |
(2050) | 97,076 | 10,200 | 75.8% | |
(2060) | 86,737 | 10,339 | 67.7% | |
(2070) | 75,904 | 10,833 | 59.3% | |
(2080) | 65,875 | 10,029 | 51.4% | |
(2090) | 57,269 | 8,606 | 44.7% | |
(2100) | 49,591 | 7,678 | 38.7% | |
(2110) | 42,860 | 6,731 | 33.5% |
2010年1億2805万人の人口が、26年後の2040年には1億727万人に減少、30年間で16.2%減少する。
(2048年には現在の高校1年生が49歳になっているが、その年に日本の人口は1億人を割る。)
一人当たり国民所得が同じなら、GDPも16%減少する。2010年のGDPは512兆円だから、おおよそ429兆円に83兆円縮小する計算になる。日本はすでに百年間続く経済縮小時代へ突入しているのである。
百年後の2110年には4286万人、2010年の33.5%にまで人口が減少して現在の1/3になる。GDPは171兆円だ。一人当たり国民所得がどうなっているかが問題だが、非正規雇用を増やして利益をだすような劣悪な経営者達がうごめく経済社会のままなら、日本経済の未来は国民にとって悲惨なことになってしまう。経営者のマインドと実際の経営のやり方を変えなければならない。
なぜ人口減少と経済縮小がよいかというと、戦後の人口増加で山を削って無理な宅地開発をした結果、危険地帯に住宅がたくさんできてしまった。人口が2/3に減れば本来建ててはいけない所に建てなくてすむ。2060年には人口はおおよそ現在の2/3になる。
もう一つよいことはエネルギーだ。一人当たり消費エネルギーを現在と同じだと前提すると、百年後には33.5%でいいことになる。表を見てもらいたい、原子力発電の必要はない。
96年後の2110年には、人口は4286万人で2010年の33.5%で間に合う計算になる。
エネルギー事情を電力のエネルギー別構成割合表にまとめてみた。
電力<エネルギー別構成割合> | ||||
現在 | 百年後 | |||
LNG | 48% | 2% | ||
石炭 | 28% | 2% | ||
石油 | 13% | 2% | ||
水力 | 9% | 9% | ||
再生可能 | 2% | 10% | ||
原子力 | 0% | 0% | ||
メタンハイドレート | 0% | 9% | ||
100% | 34% |
LNGの輸入は1/24に減らせる、石炭は1/14に、石油は1/6に減らせる。輸入に見合う安心安全な農水産物と長持ちする工業製品を少量輸出すれば貿易収支はバランスできる。
いまは2%しかない再生エネルギーを5倍に増やせば、水力とあわせて19%が賄える。全体で33.5%でいいのだから、これだけで電力需要全体の57%が自給できるのである。
これに農業用水路や中小河川でで稼動できる小型水力発電などを組み合わせたらいい。さらに排他的経済水域に眠るメタンハイドレートを追加すれば、エネルギーは自給可能になるだろう。日本はどの国に対してもエネルギー依存をしなくて良い国へと生まれ変わることができる。
1941年8月1日米国大統領フランクリン・ルーズベルトは日本への石油禁輸強化を発令、米国からの石油輸入は完全に止まった。この措置で日本との戦争になることは米国海軍の専門家が指摘していたことで、対日経済制裁措置を延期すべきだという意見も米議会内にはあった。
日本が太平洋戦争をせざるを得なかったのは米国やオランダなどの原油輸出禁止によるエネルギー封鎖が大きな原因のひとつ。原油を輸入できなければ国内の工場が稼動できなくなるという事態に追い込まれた、軍への航空機燃料も途絶えることになる。国家存亡のリスクを犯してインドネシアなどへ出ざるを得なくなった。
同じ目に遭わないためには、エネルギーの海外依存度を低くし、経済構造を変えてしまえばいい。そのためには人口減少が効果的だ。
人口を減らせばエネルギー自給率をアップできるだけでなく食糧自給率もアップできる。そして強い管理貿易(鎖国)によって国内に生産拠点を取り戻し、値段は高くとも安心安全な国産品を購入するように消費行動を変えれば、若者たちに安定した職を与えることができる。スキルは仕事がなければ磨くことができない。正規雇用の職がなければ十年単位で特定の仕事のスキルを磨くことはいちじるしく困難だ。スキルを磨くことのできない20代の若者たちは10年後には30代となり、20年後には40代となり、親達は退職している。社会に出てから特定の仕事のスキルを磨かなければ食べて行くことができない。仕事がないことそれ自体がストレスであり、心を病む者が増える。このような状態は国民経済的に見ると大きな損失である。「経済鎖国」をして国内に生産拠点を増やして若者たちに手仕事を確保しよう、安心安全な食べ物や長持ちする工業製品をつくろう。
発展途上国には手仕事をベースにした日本型自立経済システムをまるごと輸出すればいい。正直で誠実をモットーにした、手仕事の職人経済社会を世界中に広めよう。日本人と人類の未来のために率先して経済構造の転換をやり遂げて見せよう。
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#2775 内閣府「国民経済計算4-6月期」データ解説 Aug. 13, 2014 [91.経済]
標記データを今朝9時に内閣府が発表した。これからテレビや新聞がにぎやかにとりあげて解説するだろうが、若い人たちは元データをみて自分で考える習慣をつけてもらいたい。
*http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf
本来は四半期データは前年同月比で見た方がわかりやすいので民間企業は前年同四半期比較の変化率表を作成するが、政府はなぜか前四半期に対する変化率を公表している。n四半期の変化率は(n-1)四半期を基準とする変化率表となっている。だから、前四半期が大幅に+となれば、次の四半期は大きい前四半期を基準に変化率が算出されるので-(マイナス)の幅が大きくなるのは当たり前だ。両方通して変化無しの場合でもそれぞれプラスとマイナスが大きく出ることがあるから要注意だ。
前年同期比比較は同じ季節を比較することになるので季節変動も無視できて便利がいいのである。何か理由があるのだろうが、前四半期基準での変化率算出は民間企業で予算管理や経営管理を担当した経験のある私には疑問のある方法である。
前四半期がイレギュラーデータであっても大丈夫なように、第2四半期(4-6月期)データは第1四半期(1-3月期)とあわせてみる必要がある。(データは全部「実質」データをピックアップした)
<GDP>
第1四半期 +1.5 ・・・ A
第2四半期 -1.7 ・・・ B
B-A -3.2 ・・・ C
変動幅-3.2、これが典型的なパタンである。3月の駆け込み需要に対応するための生産増があり、その膨らんだ1-3月期を基準にして4-6月期の反動減を測ればマイナスの数字は実態よりも大きく出てしまう。
前年度の第4四半期を100として計算して見るとよくわかる。
100*(1+0.015)*(1-0.017)=99.775
上期を通してみたら、ほとんど変化のないことがわかる。年換算値-6.8%(-1.7×4=-6.8%)を見て騒ぐことはないのである。年間通してみたら、出っ張ったりへこんだりしただけで変化は大きくない。第1四半期と第2四半期を通してみると変化率は-0.2%である。
しかし、分析はこれでは終わらぬ。例えば、自動車は3月末には在庫払底で、売るものがなくなってしまっていたから、4-6月のうち4月と5月は在庫を積むためにフル生産状態が続いていただろう。在庫の積み増しはすでに完了しただろうから生産にブレーキがかかり、7-9月期はGDPが減る。年間通してみたら、2014年下期にGDPは落ち込むことになる。つまり、GDPはこれから問題が顕在化すると判断できる。
ところで、GDPはサプライ・サイドの指標である。デマンド・サイドはどうなっているのだろう。
2ページ目には「民間最終消費支出」の棒グラフがある。これも典型的な「+⇒-」の変化であるが、GDPとは異なり、合算するとマイナスの方が大きい。
<民間最終消費支出>
第1四半 +2.0
第2四半期 -5.0
-7.0
半期で通して見ると、年換算値で消費支出が6%減少することになる。景気への影響大だ。「家計最終諸費支出」もほぼ同じ数字である。デマンド・サイドには問題がくっきり出ている。
3ページ目にある「民間住宅」が年換算値で-41%なのが気になる。住宅は全国平均値で14%も空き家があるから、一次的な現象ではなくて、長期的な傾向の変化を表しているのかもしれない。住宅建設業界は深刻な不況に陥るだろう。新築住宅が半分程度の規模になれば住宅ローンも半減するから、金融機関には打撃が小さくない。東北震災復興需要と東京オリンピック需要で資材や人件費が高騰している、民間住宅まで手が回らないということもあるだろう。2014年度は対前年度比で3割くらい民間住宅建設需要がダウンする可能性がある。
<民間住宅>
第1四半期 +2.0
第2四半期 -10.3
-12.3
<民間在庫品増加>
第1四半期 -0.5
第2四半期 +1.0
+1.5
1-3月期で在庫が払底し、4-6月期に積みました姿がはっきりと数字になって現れている。でも、変化の幅が小さい。ほとんどのメーカで原材料在庫管理システムや製品在庫管理システム、納期管理システムをもってコントロールしているから在庫の変化率は小さい。全体で見ると±1%の範囲で推移しているようだ。
8ページにGNI(国民所得)統計が載っている。
第1四半期 +0.8
第2四半期 -1.3
-2.1
第2四半期の落ち込みが大きいのは4月消費税引き上げと円安誘導で物価が上がったからだ。
9ページの「雇用者報酬」は、
第1四半期 -0.1
第2四半期 -1.8
-1.7
半期で1.9%(100*0.999*0.982=98.10)ほど減少しているから、年換算値では3.8%になる。正社員雇用が減って非正規雇用があいかわらず増え続けて、平均給与が下がっているようだ。これでは少子化に歯止めがかからぬ。
つまり、2014年度はサラリーマンの実質平均所得が4%ほど減少して、消費需要が減退し不景気になるということだ。経営者が自分達の報酬は引き上げて、社員を減らし非正規雇用を増やすことで利益を確保するという、自分勝手なマインドには変化がないということ。
----------------------------
「小欲知足」
「仕事は正直に誠実に渾身の力でやろう」
「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」
----------------------------
Scheme-2:
日銀のゼロ金利と異次元の量的緩和⇒円安誘導⇒コストプッシュ型インフレ⇒企業所得とサラリーマン所得の減少(実質)⇒消費減退⇒不景気
こういう線路を走っていることがデータからハッキリした。政府が目指していたschemeはデマンドプル型のインフレである。給与が上がり、需要が増大して物価が上がる、そして設備投資が増えて景気がよくなるという図式だったが、完全に外してしまった。第2四半期データは悪性インフレパターンに陥ってしまっていることを示している。
*#2774 'Bad inflation' shadows Japan (悪性インフレの陰りあり) Aug. 13, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-12
#2770 「経済成長の天井」:日本総研山田久調査部長の論 Aug. 11, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-11
#2766 疑問符がついた景気回復の先行き Aug. 9, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-09
#2759 有効求人倍率1.1倍、19ヶ月連続上昇 Aug. 5, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-08-05
#2753 上海福喜食品対米国産牛肉:どっちもどっち? july 30, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-30
#2742 藤原直哉(前編):物価と景気動向⇒二番底が来る July 21, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-20-1
#2731 10年間で33%農業人口が減少している日本の農業 July 11, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-11
#2729 年金基金の運用資産が130兆円から210兆円に増える:危うい株式投資 July 9, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08
#2715 GPIFの株購入と銀行保有リスク資産に関わるBIS規制変更 June 25, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25
#2702 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"③:公務員は別扱い June 10, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-10
#2701 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"② June 9, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-08
#2699 残業代をゼロにする"ホワイトカラーエグゼンプション"① June 6, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
*#2693 鎖国をして国内雇用を確保しよう May 31, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-31
#2669 成長戦略:規制緩和を考える May 7, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-05-05
#2660 庶民の物価感覚 : 消費は落ち込む Apr. 27, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-27
#2643 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(3) Apr. 13, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-13
#2634 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(2) Apr.7, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-06
#2631 職人仕事を中心に据えた経済学の創造(1) Mar. 31, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-30-1
#2561 物価上昇なんて経済政策はありえない話だ:経済アナリスト藤原直哉 Jan. 10, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-10
#2245 円安はそんなにいいことか? Mar. 17, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-17
#2627 消費税引き上げ+物価上昇>所得増加:三番目の矢はない Mar. 22, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-03-21-2
#2565 人口減少社会を問ふ(2) Jan. 17, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-17
#2564 人口減少社会を問ふ(1) Jan. 16, 2014
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#2561 物価上昇なんて経済政策はありえない話だ:経済アナリスト藤原直哉 Jan. 10, 2014
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#2554 「日本の経常収支と円を考える」 東洋大教授・中北徹の論 Jan. 3, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-01-03
#2549 アベノミクス批判 (2):内橋克人 Dec.31, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-31
#2543 インフレと自己責任:リスク増大へ対処の方法はあるか? Dec. 27, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-27
#2540 アベノミクス批判(1):『世界8月号』伊藤光晴論文 Dec. 23, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-23
*#2523 アベノミクスの行く末: 日本総研調査部長の論点 Dec. 9, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-12-09
#2502 アベノミクスと企業経営 Nov. 18, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-11-17-3
#2430 手詰まりの安倍首相 ついに消費税引き上げ決意表明 Oct. 2, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-10-02
#2401 消費税値上げ延期なら国債価格は下落 Failure to raise sales tax 'could hurt bond prices' Sep. 9, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-09-09
#2388 アベノミクス:雇用規制改革の正体 Aug. 30, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-08-30
#2385 TPPは再び植民地化を招く:マハティール元首相 Aug. 28, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-08-28
#2376 貿易赤字13ヶ月連続 7月最大の1兆240億円 Aug. 20, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-08-20
#2329 アベノミクス:ナカミがないのに財政健全化を約束 Jun. 12, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-13
#2321 株価暴落はどこまで続くのか?:とりあえずの目安は11,250円 Jun. 4, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-06-04-1
#2311 どうにも解せぬこと ミャンマーへ債務免除 : プライマリーバランスの回復はするつもりがない? May 26, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-26-1
#2309 Nikkei dives 7%, ends below 14,500 : May 25, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-25
#2298 アベノミクスの罪:日経平均15,096.03円 May 16, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-05-16
#2270 人口減少の衝撃: 2040年の日本の人口は1億727万人:"Japan's depopulation time bomb" : Apr. 21, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-22
#2256 マネタリーベース270兆円へ拡大:亡国の決断 Apr. 6, 2013
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-04-06
#2245 円安はそんなにいいことか? Mar. 17, 2013
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#2185 各論(3):'Abenomics' Jan. 24, 2013
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#2170 各論(2):貿易収支赤字転落⇒? Jan. 3, 2013
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#2169 各論(1):国債暴落の可能性とその影響 Jan.2, 2012
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2168 歴史認識を欠いた安倍新政権の歴史的役割(2):蔵相高橋是清暗殺 Dec. 31, 2012
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#2164 歴史認識を欠いた安倍新政権の歴史的役割は何?
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2012-12-28
#2158 自民党圧勝294されど第2の危機:民主党惨敗 Dec.17, 2012
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#2144 成長路線と金融緩和の罠 : 衆院選挙でナイトメアがはじまる
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#1828 ゼロ金利の罠: Fed targets and transparency Feb. 3, 2012
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#829 国家財政破綻の瀬戸際 Dec.12, 2009
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#346 これから10年間の日本経済のシナリオ
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-10-10
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#2770 「経済成長の天井」:日本総研山田久調査部長の論 Aug. 11, 2014 [91.経済]
1.彼の景況感は、「消費税引き上げによる反動減が徐々に回復してきた」というもの。4-6月期の内閣府「国民経済計算」が13日に公表予定だが、民間シンクタンクは軒並み大幅な悪化予想(-6~-9%)を公表しておりはっきり悪化しつつあるという内橋克人氏の意見とは正反対である。
山田は貿易収支が赤字になっていることと、人手不足を「新たなハードル」と名づけている。貿易収支の赤字には供給サイドの問題が隠れており、6月の有効求人倍率1.1は22年ぶりで建設・小売・外食産業に人手不足が現れている。とくに外食産業ではアルバイトを確保できずに閉店が相次いでいる。山田はこれら二つの問題を個別に論じている。
(1)供給サイドの要因
「国内生産設備の圧縮+人口減少」の影響を挙げている。
彼の論によれば、外国人労働者の受け入れ増大は根本的な処方箋にはなりえない。外国人労働者を増やして設備投資を拡大しても、将来設備過剰になることが目に見えている。人手が足りなければ生産性を上げることを考えるが、人手が足りてしまえば、そうした圧力がなくなり、生産性向上にブレーキがかかるというのである。では外国人労働者が増えなければ生産性向上が実現できるのか、そんなに単純な図式ではないだろうとebisuは思う。理由は後で書く。
(2)需要が不足するというリスク
消費拡大には賃金上昇が必要なのだが、賃金上昇のテンポに懸念がある。知的労働者の多い外食産業のアルバイトの時間給は上昇しているが、大手企業と製造業では人余りのままである。したがって、これらの分野ではボーナスの上昇はあっても、基本給アップは限定的となる。つまるところ消費拡大はないという結論である。いまごろこんなことを言い出すのだからよほどのんびりした性格に違いない。
2.供給不足経済が広がり始めている
<山田の処方箋>
生産性と賃金が同時に上がればいい、それには二つのポイントがある。
①物的生産性向上
②付加価値生産性向上
GDPよりはGNI(国民所得)を増加していくことを考えるべきだ。海外投資からの利益を増やし、その結果賃金が上がるというルールをつくっていく。物づくりは海外でやり、商品開発は日本でやる。これは政労使会議での決定事項と同じだ。日本総研は三井住友フィナンシャルグループが大株主だから、そういう意見になるのだろうか?
日本経済の先行きを考えるときに、縄文時代以来1.2万年の日本列島で、はじめての人口縮小と高齢化と少子化のトリプル同時進行という時代に突入したいう時代認識が不可欠であることは論を俟たないだろう。山田の論にはそういう大局観が希薄に見える。
二つ、論点を指摘しておきたい。
一つは、海外に生産拠点を移したまま、国内は商品開発をするという分業体制を考えているが、これは一部の企業の特殊な例に幻惑されて、現実を見ていない雑な論である。
ある有名な繊維メーカでは海外に生産拠点を移したため、国内に30年以上工場をつくっていないという。海外子会社には工場新設の技術があるが、国内で工場新設の技術者はとっくに退職して、技術自体が失われてしまったという。もう17年も前の話だ。国内に工場がないのだから、生産技術の伝承もできない。物の生産という面では国内の技術が急速に失われつつある。裾野がどんどん小さくなっていることが、新商品がでてこない理由の一つに数え上げられるが、山田はそれをさらに促進しようというのだ。
伊勢神宮の式年遷宮を考えてみたらいい、建築技術伝承のために20年に一度建て替えを繰り返している。1400年もそうしたことを連綿と続けているからこそ、技術伝承がある。仕事があれば技術伝承ができるが、国内に仕事がなくなれば生産技術の伝承は途切れてしまう。
それゆえ、海外に生産拠点を移して、国内で商品開発という分業体制は国内に生産技術が失われてしまうことを意味している。
日本が上手だったのは生産現場でのさまざまな工夫・アイデアが生まれて、製品の改良や新商品のアイデアが出続けたということ。生産性向上は製造現場で仕事をするさまざまな職種の職人たちが担ってきたのである。新商品も開発チームには思いつかぬ工夫が生産現場で次々となされる。そうして高品質の新製品ができあがっていく。生産現場で工夫がなされることで高品質の製品が市場に出せる、松下産業が典型的な企業だろうし、トヨタだってそうだ。米国型の生産と商品開発のような分業体制は日本ではじつに稀だったし、これからもそうだ。
生産拠点を海外に移し、国内では商品開発を行うというのは、日本的な商品開発のやりかたを不可能にしたり、生産工程改善の芽を摘む愚かな政策にみえる。
二つ目の論点だが、山田の処方箋「海外投資家らの利益を増やし、その結果賃金が上がるというルールをつくる」ということだが、これも幻想に過ぎない。これは現場を知らぬ学者の論と同じだ。
日産のカルロス・ゴーンが最悪のお手本をみせてしまった。リストラと非正規雇用増大による利益拡大、そして役員報酬相場を跳ね上げてしまった。この20年間で役員報酬は2倍になったが、サラリーマンの平均年収は下がっている。
無能で度量の小さい経営者達がこぞって社員をリストラし、非正規雇用を増やすことで利益を確保することに慣れきってしまった。
「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」
これを実際の経営でやるのは実に厳しい。経営者に高い能力と大きな度量が要求される。そういう経営者は次々にこの世を去った。その結果、役員報酬は2倍になったが、正規雇用の社員も、非正規雇用も年収が増えないどころか減少している。強欲な資本主義が日本中に蔓延してしまったのが、この20年間だ、山田は牧歌的すぎる。
私の処方箋は、生産拠点を国内に築き、国内雇用を確保することだ。強い管理貿易(=経済鎖国)をして、日本国内で生産できない商品のみ輸入すればいい。安全で高品質なものだけ国内生産を行い輸出すればいい。
強欲な資本主義から小欲知足の職人主義経済へ移行しよう。
工場だけでなく生産の仕組みや生産技術そして資材調達の仕方も含めて輸出したらいい。
<余談>
10時50分だが、台風11号崩れの雨は1時間ほど前にあがって霧が出ている。金刀比羅神社例大祭は今日が最終日だが、お昼からの神輿渡御がやれそうだ。時折強い風が吹く。
*#2645 生産年齢人口の長期的な減少は何をもたらすか Apr. 16, 2014
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-04-16
#2564 人口減少社会を問ふ(1) Jan. 16, 2014
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#2565 人口減少社会を問ふ(2) Jan. 17, 2014
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#2748 女性登用と日本の文化 July 26, 2014
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#2753 上海福喜食品対米国産牛肉:どっちもどっち? july 30, 2014
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#2759 有効求人倍率1.1倍、19ヶ月連続上昇 Aug. 5, 2014
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#2766 疑問符がついた景気回復の先行き Aug. 9, 2014
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#2766 疑問符がついた景気回復の先行き Aug. 9, 2014 [91.経済]
8月5日のNHKラジオ番組ビジネス展望で経済評論家の内橋克人氏が標記の解説をしている。10分弱の番組かた要点を紹介しよう。
8月13日に内閣府から第一四半期(4-6月期)の「国民経済計算」が公表予定になっている。
*http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/publicPlanListView.do?method=init
(1) 民間シンクタンクは軒並み数値ダウン
予測数値の大幅な下方修正を行っている。GDP成長率は年換算値で-9.3~-6.0%
(2) 第二四半期の国民経済計算の数値を確認して消費税値上げ決定の予定
(3) 実質賃金ダウン
① 5月前年同月比でみた名目賃金と実質賃金の乖離
名目賃金+0.8%
実質賃金-3.9%
実質賃金がこんなに下がったのでは、消費は急速に落ち込むことになる。
② CPI(消費者物価指数)は32年1ヵ月ぶりの上昇
デフレ脱却どころではない、実質賃金が下がり物価は4%も上がるという悪性インフレの様相を呈しているというのが実態である。円安によるコストプッシュインフレが起きている。
③ 鉱工業生産指標 前月比-3.3%
④ 機械受注5月比13.5%ダウン
前年同月比14.3%ダウンでリーマンショックを超える大幅ダウン。
政府統計の「国民経済計算」は関係者が多いから、いろんなところから情報が漏れているのだろう。今週末日経平均は-454.00下げて、15000円を割った。
有効求人倍率は1.1だが、#2759に書いたように、正社員は0.68倍、女子事務職は0.19倍であり、建設関係や介護関係が人手不足なだけ。震災復興予算のバラマキや、東京オリンピックがらみで土木建設に巨額の財政支出が行われているため。
アベノミクスだ成長路線だなんて叫び続けているが、政府の演出による「上げ底」分を差し引くと、経済は急激に悪化し始めている。
国内の自動車生産は来年は20%ダウンを予測している。車を買う余裕のある若い人が少なくなっている。それと車の所有にスタータスを感じない人が増えている。消費傾向が変化しつつあるのだろう。この1年間わが世の春を謳ってきた自動車メーカも来年の業績は厳しいものになるから、浮かれていられぬ。
縄文以来1.2万年の歴史をもつ日本列島ではじめて人口減少期を迎える。そういう時代にふさわしい国家経済戦略は、人口減少を前提としたものでなかればならぬ。成長路線は人口増加時代のもの、そんなものにいつまでもしがみついていれば、財政支出が膨張して政府財政が破綻するだけ。
貿易を制限・管理し国内で使うものは国内で生産すればよい。幸い日本にはさまざまな分野の職人技術の蓄積があり、ほとんどの工業製品を自前で生産できる。自国で生産できないものだけ輸入すればいい。鎖国(強い管理貿易、しかし人の出入りは自由)を国家経済戦略の選択肢として検討すべきだ。
*#2645 生産年齢人口の長期的な減少は何をもたらすか Apr. 16, 2014
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#2564 人口減少社会を問ふ(1) Jan. 16, 2014
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#2565 人口減少社会を問ふ(2) Jan. 17, 2014
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#2748 女性登用と日本の文化 July 26, 2014
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#2753 上海福喜食品対米国産牛肉:どっちもどっち? july 30, 2014
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#2759 有効求人倍率1.1倍、19ヶ月連続上昇 Aug. 5, 2014
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<2016年1月30日追記>
物価上昇は原油の大幅な値下がりで1~2%の範囲になっている。100ドル/バーレルしていた原油は34ドルにまで低下している。円は安倍政権前に比べると50%も低下して120円/ドル前後となっている。
#2759 有効求人倍率1.1倍、19ヶ月連続上昇 Aug. 5, 2014 [91.経済]
人手不足がマスコミで騒がれだしているのだが、どの分野で人手不足となり、どの分野の求職がむずかしいのか、頭を冷やしてよくみる必要がある。
今朝(8/5)のNHKビジネス展望で経済評論家の内橋克人氏が、「疑問符がついた経済の先行き」というタイトルで、有効求人倍率の内訳に言及していたので、彼の解説を紹介する。
■ 前月に続き6月は0.01アップで1.10倍
■ 正社員は0.68倍
■ 女子事務職は0.19倍
正社員の職は三人に二人の割合、女子事務職は5人に一人の割合でしか職がない。実に厳しい。大学を出ても、女子事務職は5倍の激戦だ。相変わらず非正規雇用割合が求人全体の38%を占めている。
ではどの分野の正規雇用が人が足りないのかというと、土木建設業の現場作業である、ベテランの技術職が不足している。それも東北震災復興需要や東京オリンピック需要が主体なので、それらが一巡すると仕事がなくなりまた大リストラをすることがみえみえだから、ベテランの技術職も見習いの若い人も集まらぬ。
なんてことはない、借金を増やして大盤振る舞いの公共事業が有効求人倍率を見かけ上高くしているだけなのだ。やたら工事費が値上がりしている。公共事業のやりすぎだ。公共事業を除いたら有効求人倍率はどれくらい下がってしまうのだろう?
女子事務職に関する限りはいまだ就職氷河期まっただ中、正社員の職もなかなか見つからないというのが実情のようだ。
人手不足で困り抜いているのは、何年も前に公共事業の削減でベテラン社員を大リストラした土木建設業業界そして若い人たちの間で評判を下げているブラック企業だろう。他にもある、高齢者が増えて需要が増大しているが、給与条件がよくなくて定着率の悪い介護関連事業も人手不足の業界である。給与条件を改善するためには介護保険制度をいじらなければならない。それは巨額の財政支出を伴う。こういうところにはさっぱり政策の見直しがなされていない。
5~6年したら建設ラッシュはしぼんでしまうから、土木建設業界で人員整理が始まる。東北震災復興の大事なときに東京オリンピックをもってくる無神経さ、これでは建設需要が大きすぎて予算規模が膨らんでしまう。6年後には建設ラッシュは終わる、そんな希望のない分野の仕事を増やしてどうするのだろう?数年間人手不足で賃金が上がっても働く人が増えるはずがない。
少子高齢化が同時に進行する人口減少社会に突入してしまったから、生産年齢人口は加速的に減少していく。
国内に不足しているのは将来にわたって安定した正規雇用職である。どういう種類の正規雇用職足りないのだろう?求人と求職が「構造的になミスマッチ」を起こしているようだ。
有効求人倍率1.1倍は見せ掛けで、中身を分析すると甘い就職状況ではない、就活中の大学4年生がその厳しさを身をもって体験しているだろう。
なんてことはない、有効求人倍率1.1は上げ底だったのである。大学生や専門学校生は有効求人倍率などの数字に一喜一憂せず、在学中に基礎学力を固めてしっかり就職活動をしよう。
景気は急速に悪化しだしている。その点についての内橋克人氏の説明を次回取り上げたい。
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