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#3403 平成28年夏 日本経済を見る:内橋克人  Aug.30, 2016 [91.経済]

 8/30朝のNHKラジオ番組「社会の見方・わたしの意見」での内橋克人氏の標記意見を解説を交えて紹介したい。

 リオ・オリンピックが終わったばかりだが、史上最高のメダル数というような明るいニュースばかりではない。神奈川県の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人殺害事件、4月14日から余震が2ヶ月余も続いた熊本地震は復興がなかなか進まない。他には参院選挙や都知事選挙もあったが、国民生活にとって深刻なリスクが増大していることから目を背けてはならない。

 アベノミクスの三本の矢の最重要な成長戦略は3年経っても経済成長はゼロで効果なし。ゼロ金利政策も破綻し、今年2月からマイナス金利という異常なゾーンに突入しているが、やはり効果はでていない。
 金融政策によるデフレ脱却戦略が行き詰まりを見せ始め、リスクが増大し、経済政策には秋風が吹き始めた、近い将来への負の遺産が積み上がっていく。
 内橋氏は3点挙げてリスク増大を具体的に解説している。

(1)日銀資産の量的膨張
(2)家計から企業への所得移転
(3)GPIFが赤字の現実、将来への不安

 日銀資産は大量の国債購入とEPF買入で448兆円に膨れ上がった。1年間で91兆円の膨張である。中身を見ると国債買入の増分が90兆円、ETF増分が6兆円である。ETFの保有残高はすでに40兆円にも達している。内橋氏はこれを「池の中の鯨」にたとえた。国内の一部上場株の時価総額は500兆円だからその8%がすでに日銀の所有になっている。米国では公的資金での株の買入はゼロであるから、日銀政策の異常さがわかる。
 日銀純資産はわずか3.5兆円である。株価が1割低下しただけで日銀は債務超過に陥るリスクがある。金利上昇が起きれば国債暴落はもっと影響が大きい。
*#3381 28兆円の経済対策:日銀B/Sから何が見えてくるのか? July 30. 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-07-30
 つまり、3.5兆円しか純資産がないのだから、国債や株式というリスク資産を日銀が長期(1年を超えて)にわたって保有してはいけないのである。リスクを考慮すると、保有限度額はどんなに大きくても純資産のせいぜい10倍まで、限りなくゼロが望ましい。

 2番目の論点は家計から企業への所得移転である。ゼロ金利とそれに続くマイナス金利政策によって、家計から企業への大規模な所得移転が行われ続けている。内橋によれば、その金額は年間20兆円である。アベノミクスが始まってからでも3年半で70兆円の所得移転が行われた計算である。ゼロ金利とマイナス金利によって、国民が利息として受け取るべき所得が毎年20兆円失われては景気がよくなるはずがない。

 たった10分ほどの番組だから内橋は計算根拠について解説していないので、ネットで調べて大まかに計算してみたい。
 国民の金融資産が1700兆円と言われている。実績ベースで2013年度で約1600兆円、その内訳は、預貯金55.2%、株式4.1%、投信4.0%、債権2.3%、出資金2.4%となっている。
*日本の個人金融資産
http://www.best-investor.com/invest/invest_word4.html

 2016年度の個人金融資産を1700兆円として、その55.2%の預貯金金利を3%として計算すると、
 1700兆円×0.03×0.552=28.15兆円

 おおよそ年間28兆円の利息を国民が受け取りそこなっている。その分借り入れを行っている企業が得をしている。そういう状態を内橋は「家計から企業への所得移転」と言っているのである。これだけの利息収入があれば、消費はずいぶん増えるし、景気もよくなる。
 内橋は2005年に日銀総裁だった福井俊彦がゼロ金利政策に言及したときのことを回想している。福井は次のようなことを述べたのである。
 「日銀のゼロ金利政策によって多くの国民がほとんど利息を受け取れない。日銀のゼロ金利政策はそういう国民負担によって支えられている
 福井はゼロ金利政策から脱却すべく金利を0.25%上げた。ゼロ金利政策は国民に負担を強いるものであり、一時的な金融政策であるという自覚があったのだ。
 日銀総裁が白川から黒田に替わって、日銀の金融政策はゼロ金利をはみ出し、マイナス金利というゾーンに踏み込んだ。国民負担はさらに大きくなったが、日銀黒田総裁には日銀の金融政策が毎年20兆円を越す規模で国民負担を強いるものであるという意識や反省がまったくない

 3番目の論点はGPIFの四半期赤字が5兆円にもなっているという現実である。これでは国民が将来の生活に不安をもつのは当然であるという。
 政府(安倍総理と菅官房長官)は「長期的に見れば問題なし」と繰り返し述べているが、GPIF資産は年金支払いで取り崩しが始まっている。これからは長期にわたってGPIF保有の株式が市場で売却されるから、恒常的な売り圧力となり株安の要因となる。日本の株式市場が長期にわたり下落することは高校生でも理解できる理屈だが、安倍総理と菅官房長官のお二人にはわからないようだ。

 内橋は日銀金融政策と財政政策が行き詰まりをみせ、リスクが高くなっていることを3つのポイントを挙げて指摘した。
 オリンピックのメダルの数や、スマップ解散などのどうでもよい話題に目を奪われている陰で、国民生活へのリスクがいつ破裂してもおかしくないぐらいに膨れ上がっていることから目を背けてはいけないのだろう。

< 増大するリスクとは何か >
 増大するリスクの中身について内橋は言及していない、それがいつ・どういう形で現れるのかは誰にもわからない。でも起こりそうなことはすこしは見当がつく。結局は深刻な国民負担となる。

 ■ 日銀が債務超過になる⇒国際通貨としての円の信認消失と円投売りによる急激な円安進行⇒輸入物価の急騰⇒コストプッシュによる物価急騰
 ■ 金利上昇⇒政府財政破綻
 ■ 日銀の国債購入停止⇒財政破綻
 ■ 日本史上三度目の預金封鎖が起きる
 
 問題なのは、これら四項目のどれかが起きてしまえば、不可避的に他の項目も起きてしまうことである。脱出戦略のない隘路にすでに入り込んでいる。
 公務員のリストラ、補助金打ち切りによる自治体病院の一斉経営破綻、年金支給額の4割カット、為替レートが一時的に極端な円安になることで物価が急騰、日本では三度目の預金封鎖、企業の連鎖的な倒産、大量の失業者、消費の急激な落ち込み、・・・これらがいつ、どのような形で起きるのか誰もわからない。
 政府は自分に都合のよいことばかりを言い、都合の悪いことや将来起こりうるリスクについては一切口をつぐんでいる。国会議員はどう考えているのだろう?
 リスクが現実化しても誰も責任を取らないことは、福島第一原発のメルトダウン事故でも証明された。リスクは全部国民に転化されるのである。そのうちの一つは日本史上3度目の預金封鎖、それだけではもちろん終わらない、公務員4割リストラと給与4割カット、補助金給付停止による全国の自治体病院の経営破綻と職員の失業、民間企業の連鎖倒産、年金大幅減額・・・。

 日本はそういうドン底を一度はくぐらなければ再生できないようだ。財政規模を拡大し続けた民主党政権と自公政権によるアベノミクスの罪は重い。先に来ることを慮りもせずに、公的機関の株式購入による株価上昇を歓んでいた国民も愚かだ。
 日本は「騙されるほうが悪い」西欧&中国型社会に替わってしまっているのである。
 騙され続けることからさようなら。


*#3382 日銀B/S : 発行銀行券勘定を負債区分に計上するのは間違い July 31, 2016 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-07-31


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#3303 G7サミット:お互いに不都合なことは言わない May 27, 2016   [91.経済]

<更新情報>
5/29 1時 余談「海外メディアが「リーマン級」に批判相次ぐ」追記

 G8のロシアを外してG7でサミットを開催している。BRICsとは、ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国だが、これらの国を除いて先進国だけで首脳会議を開くことに大きな意味があるだろうか?

 我田引水、なにが三本の矢かと思う。
 ゼロ金利では効果が出なかったので、マイナス金利導入による異次元の金融緩和で円安誘導と株高を演出。GPIFの資金も株式市場に投じて株高の演出。3年間に渡って毎年新規国債40兆円発行による財政出動すれども、消費は伸びず、インフレターゲット2%も達成できなかったのだから、経済政策としてアベノミクスは失敗というのが定着した国際的な評価である。
 ゼロ金利による円安誘導で株価を上げ、さらに財政出動もしたが、肝心の経済成長がない。少子高齢化による人口縮小時代に突入した日本で、金融政策では経済成長が実現できないことがはっきりした。
 それは数字にも表れている。リーマンショック後に日本のGDPは低下しているが、米国は増大している。潜在経済成長率は日本が1%~マイナス、米国は1~2%である。
*図表13 潜在成長率の推移 (左:日本、右:米国)
http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1045_01_01.pdf

  米国も日本も所得格差の拡大が大問題となっているが、それが議題にない。米国に遠慮したのか、自分に都合が悪いのか、肝心要の問題を議題にあげない。
 所得格差緩和のためには、資産課税制度の導入による所得再分配(ピケティ)や相続税率や法人税率の引き上げによる所得再分配を検討すべきであるがそうした議論もなかった。

 三本の矢、金融緩和をすれば景気がよくなるなんてばかげた話はとっくに破綻している。一部大手企業の業績はよくなっているが、非正規雇用割合が増え続けて国民の一人当たり所得は依然として下がり続けている。そういう中で、金融緩和により物価が上がりだしたら、国民生活が困窮の度を増し、消費がさらに冷え込み、景気が悪くなる。
 そんなことを経済政策の目標に掲げているのである。

 もうひとつの大きな国際問題は、タックスヘイブンである。課税逃れが合法なら、国際法で禁止するか、国境を越える資金移動に金融取引税を課すべきだ。そういう問題を議題にあげるのが当然だろう。これも議題になかった。

 タックスヘイブンは、その多くが英国連邦諸国に存在し、あろうことかキャメロン英国首相がその一つに資産を保有していたことがパナマ文書で明らかになっている。英国に遠慮して大事な議題が消えたのなら、議長国の器量が問われる。ダメなことはダメとはっきり言うべきだ。

 各国の利害は複雑である。
 我が国はエネルギーのロシア依存が高まっている。すでに8.7%がロシア産原油やガスである。サハリン天然ガスやシベリア・パイプラインでエネルギーのロシア依存は近い将来20%を超えることになる。ロシアへのエネルギー依存が高まれば、北方領土問題への負の影響がいや増すだろう。北方領土を返せと言いながら、他方でエネルギー依存を高める、これでは日本政府の外交戦略はちぐはぐに見える。北方領土問題が解決しない限り、経済協力はしかねるというのが、本筋ではないのか?
 米国やEUと対ロシア政策でいつまでも協調できない状況が生まれているから、対ロ政策でスタンスの違いが大きくなっている。
 英国はEU離脱国民投票が来月に迫っているから、EU諸国とは温度差がある。ドイツとフランスもEU内で立場の違いが鮮明になってきている。
 それぞれの利害を抱えてG7各国は協調して動きづらくなっているというのが本音だ。

 安倍総理が声高に叫んだ「リーマンショック並みの経済危機」に対しても、あまりにエキセントリックな主張と感じたのか、サミット後の記者会見で、オランド仏大統領のように「現在は経済危機ではない」とはっきり異論を言う人もいた。
 リーマンショックではリーマンブラザースのほかにも金融機関がいくつもつぶれたし、サブプライムローン返済不能で自己破産した者も多かった。リスクの大きな金融証券を買っていた日本の大手銀行は10.4兆円の不良債権処理をせざるをえなかった。そうした類似の症状はどこにもないのに商品価格の低下(マイルドなデフレ)現象をグラフで示して「リーマンショック並みの経済危機」とぶち上げたのだから、すこし頭がおかしいと思われたのかもしれない。いくら7月に参院選挙が控えているからといって、牽強付会なグラフを掲げて経済危機を叫ぶ姿は、「殿、ご乱心」である。経済ブレーンは何を血迷ったのだろう。
 現行の経済状況判断において、各国首脳と安倍総理との温度差が大きいことがはっきりしてしまった。
 ドイツのメルケル首相は緊縮財政を維持する方針だから、財政出動には反対である。財政出動のできる国はEUではドイツくらいなものだろう。EU諸国は国債発行が度を越せば金利が上がるから、ストップがかかる。ギリシアがその好例である。主要国債通貨の発行国である国以外は、国債発行による財政出動は金利上昇を招いてブレーキがかかるのである。
 日本のような野放図な財政出動はリスクが大きくてできない。財政出動で協調できるのは主要通貨国である米国だけだろうが、その米国経済は成長を続けており、そもそも財政出動する必要がない。
 安倍総理の演説は、参院選を意識しすぎたもので国内向け、G7を消費税増税延期の理由付けと成長戦略が出てこないアベノミクス失敗を糊塗するために大風呂敷を広げただけ、という選挙対策が露骨過ぎた。各国の経済情勢や場の空気が読めずに見当はずれの強引な自己主張、G7サミットを選挙対策に利用するのはセコ過ぎた。
 国際的に注目されている会議だから、自分の利害をひとまず棚上げにして、もっと堂々と正論をぶってほしかった。「さすが日本」とG7以外の国々の首脳から言われたい。

 どこかの国の首都の知事が記者会見で、独りよがりな説明をしている姿が脳裏に浮かんで消えていった。

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*「焦点:サミットで経済認識一致せず、危機強調の裏に増税延期模索の声」MSNニュースより
http://www.msn.com/ja-jp/news/national/%e7%84%a6%e7%82%b9%e3%82%b5%e3%83%9f%e3%83%83%e3%83%88%e3%81%a7%e7%b5%8c%e6%b8%88%e8%aa%8d%e8%ad%98%e4%b8%80%e8%87%b4%e3%81%9b%e3%81%9a%e3%80%81%e5%8d%b1%e6%a9%9f%e5%bc%b7%e8%aa%bf%e3%81%ae%e8%a3%8f%e3%81%ab%e5%a2%97%e7%a8%8e%e5%bb%b6%e6%9c%9f%e6%a8%a1%e7%b4%a2%e3%81%ae%e5%a3%b0/ar-BBtygPS?ocid=iefvrt

焦点:サミットで経済認識一致せず、危機強調の裏に増税延期模索の声

[伊勢/志摩 27日 ロイター] - 今年の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、世界経済の将来的な下方リスクを踏まえ、柔軟な財政政策や構造改革を進めるとの首脳宣言採択にこぎつけた。ただ、他の参加国からは、議長国・日本が提示した「世界経済が直面する危機」との認識に対し、異論も表明され、その溝は埋めきれなかった印象だ。日本の議事進行の裏には、消費増税延期の思惑があったのではないかとの疑念もくすぶっている。

<危機共有で増税延期>

安倍晋三首相は27日午後、閉幕に当たって記者会見し、主要7カ国(G7)が世界経済について「強い危機感を共有した」と表明した。冒頭発言では「リーマン・ショック」との言葉を繰り返し使ったうえで「最も懸念されることは世界経済の収縮」と強調し、世界経済がはらむリスクについて力説した。

しかし、首脳宣言では「新たな危機に陥ることを回避する」との認識にとどまり、現在は危機的状況ではないとの見方で一致。オランド仏大統領も、サミット終了後の記者会見で「現在は経済危機ではない」と明言した。

日本との温度差が鮮明になり、最大のテーマだったはずの世界経済で、G7の結束が揺らいだ格好だ。

経済の認識をめぐる差は、安倍首相が26日の討議で各国首脳に提示した資料に端を発する。

資料は、コモディティ価格の下落幅がリーマン・ショック級などと指摘したが、ある首脳からは「クライシスとまで言うのはいかがなものか」との異論も浮上。首脳の補佐役を務めるシェルパ間での協議に決着が持ち越された経緯がある。

あるG7外交筋は、匿名でロイターの取材に応じ、安倍首相がことさら経済の弱さを指摘するのは、消費増税を延期したい思惑があるからだと指摘した。危機感を世界で共有することで、安倍政権が増税延期の大義を得ようとしているのではないかとの見方だ。
・・・・・(以下省略)

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 案の定、海外メディア(英国:フィナンシャルタイムズ、BBC)(フランス:ルモンド)(米国:CNBC)(中国:新華社通信)が安倍首相の「リーマン・ショック級」という表現に噛み付いている。自国内でもアベノミクスは破綻しているのに、G7であんなたわいもない表をだして「リーマン・ショック級」と演説するようでは、首相も内閣参与の経済ブレーンも頭がおかしいのではないかと海外から疑われてしまったようです。まことに残念なことに、わたしが懸念した通りになりました。

毎日新聞 http://www.msn.com/ja-jp/news/world/%e4%bc%8a%e5%8b%a2%e5%bf%97%e6%91%a9%e3%82%b5%e3%83%9f%e3%83%83%e3%83%88%e3%80%8c%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%9e%e3%83%b3%e7%b4%9a%e3%80%8d%e3%81%ab%e6%89%b9%e5%88%a4%e7%9b%b8%e6%ac%a1%e3%81%90/ar-BBtAhQM?ocid=iefvrt#page=2
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伊勢志摩サミット:「リーマン級」に批判相次ぐ

  27日閉幕した主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で、安倍晋三首相が「世界経済はリーマン・ショック前に似ている」との景気認識をもとに財政政策などの強化を呼びかけたことに対し、批判的な論調で報じる海外メディアが相次いだ。景気認識の判断材料となった統計の扱いに疑問を投げかけ、首相の悲観論を「消費増税延期の口実」と見透かす識者の見方を交えて伝えている。

 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「世界経済が着実に成長する中、安倍氏が説得力のない(リーマン・ショックが起きた)2008年との比較を持ち出したのは、安倍氏の増税延期計画を意味している」と指摘した。首相はサミット初日の26日、商品価格の下落や新興国経済の低調ぶりを示す統計などを示し、自らの景気認識に根拠を持たせようとした。しかし、年明けに急落した原油価格がやや持ち直すなど、金融市場の動揺は一服している。米国は追加利上げを探る段階だ。英国のキャメロン首相は26日の討議で「危機とは言えない」と反論。FTは英政府幹部の話として「キャメロン氏は安倍氏と同じ意見ではない」と指摘した。

 英BBCは27日付のコラムで「G7での安倍氏の使命は、一段の財政出動に賛成するよう各国首脳を説得することだったが、失敗した」と断じた。そのうえで「安倍氏はG7首脳を納得させられなかった。今度は(日本の)有権者が安倍氏に賛同するか見守ろう」と結んだ。

 仏ルモンド紙は「安倍氏は『深刻なリスク』の存在を訴え、悲観主義で驚かせた」と報じた。首相が、リーマン・ショックのような事態が起こらない限り消費税増税に踏み切ると繰り返し述べてきたことを説明し、「自国経済への不安を国民に訴える手段にG7を利用した」との専門家の分析を紹介した。首相が提唱した財政出動での協調については、「メンバー国全ての同意は得られなかった」と総括した。

 米経済メディアCNBCは「増税延期計画の一環」「あまりに芝居がかっている」などとする市場関係者らのコメントを伝えた。

 一方、中国国営新華社通信は「巨額の財政赤字を抱える日本が、他国に財政出動を求める資格があるのか?」と皮肉った。首相が新興国経済の減速を世界経済のリスクに挙げたことへの反発とみられ、「日本の巨額債務は巨大なリスクで、世界経済をかく乱しかねない」とも指摘した。【清水憲司、宮川裕章、井出晋平】
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#3263 羽田空港 小荷物預けの自動化 Apr. 3, 2016 [91.経済]

 毎日散歩をして、2週間で60kmほども歩いた。桜の花が1分咲きから満開になる過程を眺めながらの散歩は楽しいものだった。

 暇だったので、昭和57年に出版された安井稔『英文法総覧』に30年ぶりに眼を通した。もともと英語の先生用にかかれたものだから学校文法の範囲を出るところが散見されるが、難しくはない。変形性生成文法に基づいた解説はすこしあるが、学習上の参考程度にとどめてある。江川泰一郎の『英文法解説』と読み比べたらそのよさがよくわかって楽しい。英文解釈や英作文の観点から眺めたら、なかなかすばらしい英文法書であるから、高校生や大学生に読んでもらいたい。ナマの英文の精読に生成変形英文法は有力な武器となりうるから、英字新聞やさまざまな専門書を読む必要のある人に向いている。
 生成変形英文法そのものを演習形式でトレーニングしたい人は、別途専門書があるからそちらでやるといい。少し古いが1冊だけ挙げておく。
 大学院入試には精読のスキルが必要になるので、生成変形文法を知っておいたほうがよい。amazonで「変形生成英文法」をキーにして検索すると何冊も出てくるから、自分の好みに合うものを選べばよい。

 4月3日に羽田から根室へ戻った。羽田空港で機内へは持ち込まない小荷物はカウンターでレントゲン検査をして手渡しになっていたが、これがずらりと十数台も自動小荷物受付機が並んでいて人がいない。
 あの人たちはどこに行ったのだろう。配置転換や退職勧奨が行われたのだろうか?小荷物受付カウンター業務が自動受付機導入によってなくなったのである。

 このようにシステムが機械と結びつくことで、人間がしていたさまざまな仕事がなくなっていく。ディープラーニング(深層学習)でつくられた人工知能が、囲碁の世界で人間をしのいでしまった。さまざまな領域で集積されつつあるビッグデータや図書館(書籍)データを利用してディープラーニングさせると、人間が持つさまざまな悪徳も人工知能が学習し身に付けてしまう。実験中の人工知能がナチスの人種差別発言同様のネット上に書き込みをしたことで、実験が中止になった。リスクは実験段階で現実になっている。

 暇だからもう一冊、『ロボットの脅威 人の仕事がなくなる日』という本を半分ほど読んだ。過去30年間は2年ごとにコンピュータの性能が2倍(ムーアの法則)になっているが、この指数関数的な性能向上は、近未来に人類に重大な脅威となることが書かれている。
 3年ごとに2倍になっても90年後には現在のパソコンの10億倍の性能を持つコンピュータ(人工知能)が出現する。旧式の「知能」である人類は存在理由を失うだろう。
 羽田空港の小荷物自動受付カウンターを見てドキッとしたのはおそらくわたしだけではない。二次元バーコードの印刷された紙「eチケットお客様控え」を機械にかざし、小荷物を所定の台の上におくと、印刷された小荷物タグが出てくる。それを自分の小荷物にまきつけると、受付機のカバーが閉じられ1/4回転して運ばれていく。控えのタグが機械からプリントアウトされ、それを受け取って終了である。

 人工知能はプログラミングすら不要になってきている。ディープラーニングで勝手に学習するのである。これにビッグデータが結びつき、全世界の図書館の書籍がインターネットで結びつけば、人工知能は人間から高度な知的な仕事を奪うだけではない、人間のコントロールを離れた存在になって、独自に思考し、判断し、何事かを実行する存在となる。唯一絶対神のような存在になるのである。

 人類は便利さもさまざまな欲望も棄てられないから、百年しないうちに仕事を失って縮小再生産に追い込まれる。先進国で人口が減少しつつあるのはそういう未来への予感が作用しているのかも知れぬ。

 昨年1月に「資本論と21世紀の経済学」で人工知能の脅威に言及したが、同じ趣旨の本が、昨年から今年にかけて、何冊も出版されている。
 いくつか手にして、自分の行く末と子どもたちや孫たちの未来を想像し、いま何をすべきかお考え戴きたい。人類は滅亡の瀬戸際にいるのである。


*3年ごとにコンピュータの性能が2倍になると仮定すると、百年後には「2^33=85億8999万」倍の人工知能が出現することになります。指数関数は高校数学Ⅱの学習事項ですがその意味するところを現実の世界に移して理解するのはなかなかむずかしい。

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#2784 百年後のコンピュータの性能と人類への脅威 Aug. 22, 2014 ">

#3215 ライフワークに手をつけた2015年を振り返る:『資本論』を超えて  Dec. 31, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-12-31

#3097 資本論と21世紀の経済学(改訂第2版) <目次>  Aug. 2, 2015 


       3097-1 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-02-2

Ⅰ. 学の体系としての経済学      6

1. <デカルト/科学の方法四つの規則とユークリッド『原論』> …6
2.<体系構成法の視点から見たユークリッド『原論』> …8
3.<マルクスが『資本論』で何をやりつつあったかを読み解く> …10
4.<資本論体系構成の特異性とプルードン「系列の弁証法」> …11
5. <労働観と仕事観:過去⇒現在⇒未来> …13
 


  3097-7 ↓
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-04-1

24. <文部科学大臣下村博文「教育再生案」について> …67
25.<人工知能の開発が人類滅亡をもたらす:ホーキング博士> 
69


 赤い文字の章をお読みください、データを挙げて人工知能の未来に言及しています。


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わたしが読んだのはこちらの旧版のほうですが、改訂版が出ているので、そちらも紹介します。

英文法総覧 (1982年)

英文法総覧 (1982年)

  • 作者: 安井 稔
  • 出版社/メーカー: 開拓社
  • 発売日: 1982/04
  • メディア: -

英文法総覧

英文法総覧

ロボットの脅威 ―人の仕事がなくなる日

  • 作者: マーティン・フォード
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2015/10/22
  • メディア: 単行本


#3240 2月17日 金融緊急措置令を公布・施行  [91.経済]

 本日2月17日、政府が金融緊急措置令を公布した、内容は以下の通り。
 ①現行通貨の流通停止
 ②金融機関の預金封鎖
 ③流通中の日銀券を強制的に銀行預金させ、新円へ切り換え
 ④新円の引き出し制限
 
*公文書に見る日本史
http://www.archives.go.jp/ayumi/kobetsu/s21_1946_02.html

 それまで蓄えた預貯金はチャラ、政府の借金(発行済国債)もチャラとなりました。70年前の昭和21年2月17日のことです。

 このような事態を引き起こしたのは、戦争準備と戦時の軍事費をまかなうために出口戦略のない赤字財政をやり続けたからです。
 当時の政府は、新円切り替えでインフレが抑えられると考えましたが、一度暴走しだしたインフレは結局止まることがありませんでした。貨幣価値は1/100以下に落ちたのです。
 日銀券ばかりでなく、軍票という紙幣もありました。兄が満州で国境警備に当たっていたので、母はお国の政策に協力したくて、働いてためたお金で国債や軍票を購入していました。
 戦後十数年目のある朝のことです、裏庭にしゃがみこんで母が何か紙を燃やしています。
 「それ、変わったお金だね」
 「これはね、軍票ですよ、みんなお金だった、一所懸命に働いてためたお金で買いました」
 そういいながら、それを買った事情を話してくれました。母の兄は、ソ連が昭和20年4月5日に日ソ中立条約の更新延長をしない旨日本政府へ通告、8月9日に満州国へソ連軍がなだれ込んだときに戦って戦死、満州の荒野に立つ一本の木の根方に葬られています。
 戦後十数年間、母は思いの詰まった軍票やら国債を棄て切れなかったのです。束になった軍票を一枚ずつくべて終わると煙を見つめてすっきりした表情をしていました。その母も4年前に逝きました。生まれ故郷の択捉島蕊取村にあるお墓参りがしたかったようでした。

 赤字財政を続けるとどういうことになるのか知っている世代はすでに90歳代です。そういうことを経験したほとんどの人がもうあちらの世界へ逝ってしまいました。安倍総理-黒田日銀総裁の金融政策はブレーキを失った車の暴走を彷彿とさせます。

 日本ではいま悪性インフレは起きていません。100ドル/バーレルだった原油が30ドルを割っており、人口が縮小して消費需要も不動産需要も長期にわたって減っていくのでインフレが起きていません。
 しかし、あのときと同じように、政府は狂ったように日銀券と国債を増刷し、財務省が国債を発行して日銀が年間80兆円も買い取るような最悪の事態が続いています。日銀総裁だった高橋是清が日露戦争の戦費調達のために同盟国である英国で外債を公募したのが始まりです。当時の国家予算の60年分の外債公募で日露戦争を経済面から勝利へ導きました。
(今後10年間の歳入の平均値を40兆円とすると、政府の借金の総額は歳入60年分に限りなく近づいています。)
 戦費調達のための外債は一時の方便のはずでしたが、そうはできませんでした。赤字国債をはじめたときにその出口は決まっていたのです。第1次世界大戦戦、第2次世界大戦と戦争が起きます。先のことは誰にも予測できない、赤字国債のツケは結局は国民が支払うのです。財務省と日銀はまるで自分の尾を噛むウロボロスです。
 基礎的財政収支を均衡させるという目標は、小泉内閣の時には2011年と言い、安倍改革は2020年とその達成目標年を掲げています。蜃気楼や真夏の逃げ水のように、プライマリーバランスの回復は近づいたと思うと、その都度逃げてしまいます。

 公共事業費は半分以下、公務員給与は3割減、国会議員は半減し給与や経費も半減、年金は3割減、強い管理貿易による国内への生産拠点の確保、それくらい強い痛みをともなう財政や制度改革をしない限り、否応なしに歴史は繰り返されます。
 日本は縄文時代以来経験のない人口減少時代に突入していますから、とめどのないインフレが起きることは考えにくい。当時と違って人口が6000万人へ向かって縮小を続ければ、土地の価格も長期的に下がり続けるでしょう。そして経済成長もありえません。
 このまま赤字財政を続けたら何が起きるのか、誰にも経験がないのです。経済学は経験科学ですから、起きてみないとわからない。不可逆な重大事が起きてしまえば誰にも止めることはできないのです。いま自制しなければ経済学者の誰もが予想もしないことが起きてしまいます。


*1946年2月17日の毎日新聞
http://showa.mainichi.jp/news/1946/02/post-1961.html

**新円切り替え(ウィキペディア) 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%86%86%E5%88%87%E6%9B%BF

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  #3216 諸悪莫作(しょあくまくさ)  Jan. 3, 2016

 #3217 日本の商道徳と原始仏教経典 

 #3236 株価暴落で日銀総裁と安倍総理が会談 Feb. 12, 2016
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#3236 株価暴落で日銀総裁と安倍総理が会談 Feb. 12, 2016 [91.経済]

 株価が暴落しているのであわてて、日銀黒田総裁と安倍総理が1時間の緊急会談をしたニュースが流れています。よほど慌てたようです。
 日経平均は760.78円下落して、14,952.61円でした。バブルがはじけただけのことです。安倍政権が始まったときが1.5万円台でした。それがGPIFの資金投下でバブルの現出となったのですが、はじけました。これでいいのです。

読売オンラインニュース
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160212-OYT1T50100.html
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安倍首相は12日昼、日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁と首相官邸で約1時間会談した。
 黒田総裁は会談後、急速な円高・株安など市場の混乱について記者団に「為替を含め、国際的な金融市場の動きについてはしっかり注視していきたい」と述べた。
 マイナス金利政策の導入については「物価に関するリスクが高まっていると見て実施した」と説明・・・
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 日銀政策決定委員会は4対5でマイナス金利導入を決めましたが、なにを目的としてマイナス金利を導入したのでしょう?ぜひ、政策決定の過程でどなたがどのような意見を出されたのか、公表してほしいと思います。でたらめな意見を吐いた委員と、真実を語った委員の仕分けができます。
 大方が考えるマイナス金利導入の狙いは、次の五項目でしょう。

 ①ドル金利と円金利の差を拡大することにより、円安促進を狙った
 ②日銀にブタ積みされている250兆円に順次マイナス金利を適用していくことで、株式市場へお金の流れを誘導しようとした
 ③金利を低くすることで民間企業の設備投資を増やそうとした
 ④2%のインフレターゲットを何とか実現したかった
 ⑤政府財政破綻を回避するためにマイナス金利を導入した
 
 FRBが米国景気の先行き不安から、金利上げを延期したので、米国FRBの利上げを前提に導入された日銀のマイナス金利は、効果がありませんでした。円安どころか4円ほど円高に走っています。この点は専門家の予測が完全に外れました。金利裁定機能が働いて、円高になるというのが外国為替と金利の関係についてのよく知られた理屈ですが、現実は逆になりました。
 現実の変数をすべて網羅したモデルは理屈上は不可能ですから、常に予測の外へ現実が転がってしまいます。

 GPIFはすでに株式市場へ50兆円近くも投下済みで、あらたに株を買う資金がありません。株価を上げるブースターがすでに燃料切れを起こしています。
 もうひとつあらたなブースターを確保したくて、政府は農林中金の資金を株式投資にまわす細工をしはじめています。
 このまま3月の年度末を迎えたら、国内株式投資だけでGPIFは10兆円ほどの評価損を出します。年金支給額を減らさざるをえなくなるのでしょう。
 外国株式も同じだけ購入しているので、米国株式市場の下落と円高進行でダブルパンチが襲います。弱り目に祟り目とはこういうことを言うのでしょう。無理に無理を重ねた結果です。

 WTI原油が26ドル/バーレルの安値をつけました。サウジアラビアをはじめ、産油国は歳入不足を補うために、いままで買いためた株式を市場で大量に売却しています。それで、世界的に株の下落が進んでいます。サウジとイランが喧嘩状態ですから、オペックも生産調整の話をまとめることができません。イランもサウジも増産しています。どちらもお金がほしいのです。
 シェールオイルは30ドルを下回ると、赤字になるといわれています。設備投資はジャンク債でまかなわれていますから、このまま原油が安値を続けると、銀行や証券会社に巨額の損失が生じます。
 投下資金を回収するためにシェールオイル企業はますます産出量を減らせません。安値になればなるほど、個別企業は単価の下落を量で穴埋めせざるをえないのです。したがって、中東の産油国の株売り圧力は当分おさまりそうもありません。そして、シェールオイル採掘企業の破綻リスクが拡大していきます。

 金利を下げても、消費拡大がないので、企業は積極的な設備投資をしません。供給過剰になるだけです。市中の流通資金量は増えていないのです。

 アベノミクスの指南役である内閣参与浜田宏一氏(元東大教授)は白(川総裁)を黒(田総裁)に変えれば3ヶ月で2%のインフレを実現できると言明しましたが、3年経ってもその気配すらありません。マイナス金利が意図に反して円高を招いているので、原油安と円高で2%インフレはますます遠のいたようにみえます。50年も前にトービンに師事してマクロ経済学を学んだご老体の浜田先生を内閣参与にしたことが間違いのもとです。米国の50年も前の経済理論が、少子高齢化で人口縮小時代に突入した日本に合うわけがないことぐらい、経済学部の学生にだって理解できますが、そういう簡単なことが欲に目がくらんだ政治家にはわからない。

 ご覧の通り、①②③④のどれも狙いを外しています。

 政府の債務はすでに1000兆円を超えています。借り換え国債と新規国債をマイナス金利で発行できたら、国債の金利負担をゼロにできます。そういうことを考えたとしたら、日銀は財務省の一部局で、独立性などかけらもありません。金利の調節作用というブレーキを失った放漫財政は暴走する機関車で、破綻に向かってまっしぐら。

 EUの優等生であるドイツ銀行が2015年度決算で8000億円の赤字を計上しています。ECBがマイナス金利を導入して、金融機関の収益が圧迫されています。この事情は日本でも同じで、銀行株が軒並み下落しています。

 ヨーロッパ(ECB)はマイナス金利導入、米国(FRB)も超低金利で量的緩和を継続、日銀がマイナス金利導入と、世界中の主要な中央銀行が揃って過剰な量的緩和をやりすぎたために、バブルがはじけたのでしょう。「みんなでわたれば怖くない」とでも思ったのでしょうか、思考停止、お粗末過ぎます。
 中央銀行の役割は、通貨の安定だったはずです。それが金利の調節作用を破壊するほどの量的緩和を続けたために、市場機能が麻痺して、不安定の度合いを増しています。異常気象の世界が各国の経済に現れています。

 10年もの国債が今週ついにマイナス金利をつけました。長期金利は10年国債に連動していますから、住宅金利が下がり始めました。貸出金利がマイナスになったら、銀行は利益の源泉を失います。銀行は預金者に金利を支払い、それを貸し付けて金利を稼ぐのが本来業務です。マイナス金利で利ざやが無くなれば、巨額の固定費をまかないきれなくなります。大手都市銀行の人件費は高いのです。20年ほど前の話ですが、30歳代半ばで1000万円を超えていました。銀行もご他聞にもれず非正規雇用の拡大で一人当たり平均人件費を切り下げることでしのいでいます。
 出口戦略のない量的緩和をこのまま続けたら日本の銀行がつぶれかねません。そのまえに取り付け騒ぎが起きます。ギリシアでは預金の海外流出で、取り付け騒ぎと預金封鎖が起きました。日本でそういうことが起きれば、預金の流出はドル買い・円売りとなるので、円が暴落し、輸入物価が暴騰することになります。預金は下ろせない、物価は暴騰する、つまりギリシアと同じことが起きます。
 異次元の金融緩和やマイナス金利は異常気象のようなもの、日本経済が安定性を失い、世界経済に大きな影響が出ます。ECBのマイナス金利と日銀のマイナス金利はどちらの方が世界経済への影響が大きいのでしょう。ECBのマイナス金利は局部的なものでしたが、日銀のマイナス金利導入は局部的だったものを、拡大する引き金になった可能性が大きい。

 金利を上げようにも、政府財政破綻リスクがあるので、日銀はとっくに身動きがとれないのです。

 TPPに背を向け、強力な管理貿易によって、国内に生産拠点を再構築して若者に安定した職を保障し、年金支給額と公務員給与を3割削減し、法人税を40%に上げ、公共事業は半減、そして金利を徐々に上げて歳出抑制を図り、国債残高を減らす。借金を返すという当たり前のことをするだけです。
 40年前の米国の経済理論を今頃振りかざすおバカな経済学者や政治家の甘言に乗ってはなりません。世界で初めて少子高齢化が急速に進む日本の現実に合うはずがありません。いまは苦しくとも、子どもたちや孫の世代が楽になればいいではありませんか。
 
先の大戦では、自分たちの親兄弟、子どもたちを白人国家の奴隷にしないために戦い、死んでいったたくさんの兵士たちがいます。
 「加藤隼戦闘隊」という戦時宣伝映画の撮影の際に降下訓練撮影で右腕複雑骨折の怪我を負ったオヤジだけを残して落下傘部隊の戦友たちのほとんどが戦死しています。「命のいらない者集まれ!」という募集の文言に、「どうせ散るなら、ぱっと散りましょう」と応じたそうです。隊員に長男は一人もいませんでした。死ぬのがあたりまえの落下傘部隊員は、家を継がねばならない長男の採用はありませんでした。
 白人の植民地から次々と独立を果たした東アジアの国々も、そうした日本兵の尊い犠牲なくしてはいまでも白人国家の植民地だったでしょう。
 臥薪嘗胆の思いをあえてしても、何かをなさねばならぬときというのはあるものです。少子高齢化に最初に突入した日本が世界に先駆けてやって見せなければならないことがあるはずです。やって見せさえすれば、後に続く国が現れます。


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 #3217 日本の商道徳と原始仏教経典 


<余談:ブログ開始3000日目>
 11月27日にebisuビールを飲みながら書き始めたブログもなんとか3000日目を迎えました。時に偏見と独断の論を吐き、ながながとキレの悪い文を並べる弊ブログを忍耐強くお読みいただきありがとうございます。
 ページビュー数は累計3,890,050、すいぶんたくさんの回数を読んでいただいたことに驚いています。
 頻度は落ちますが、まだ当分書き続けますので、よろしくお付き合いください。

 なお、独断と偏見へのご叱正があれば、耳を傾けてその都度考えたいと思います。ふざけたものやめちゃくちゃな論でない限り、これからもご返事は書きます。



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#3229 マイナス金利の行方 Feb. 5, 2016 [91.経済]

 マイナス金利の行方に何がまっているのかさっぱりわからないというのがほとんどの人の感想ではないだろうか。

 経済評論家の田中直毅氏(国際公共政策センター理事長)がNHKラジオ今朝の「社会の見方・私の視点」でマイナス金利を採り上げていたので、論点をかいつまんで紹介する。

 日銀はマイナス金利へ踏み切ることで、マイナス金利の幅を皿さらに拡大する余地を確保したが、銀行に対して使わないお金がなぜ必要なのかという日銀の問いかけでもある。
 いまのところは日銀と銀行との取引に限定されているが、これが銀行間短期取引に拡大されるのか、そしてさらに銀行と企業間取引にまで拡大していくのかは、だれにもわからない。
 日銀がマイナス金利の幅を拡大していけば、いずれ銀行間短期取引がマイナス金利となり、銀行と企業間取引にもマイナス金利が及ぶ可能性がある。10年国債は金利がプラスだが、8年物はすでにマイナス金利になっている。
 現在の銀行システムがどの範囲のマイナス金利に対応できるのかという問題も発生しそうだ。マイナス金利を想定した仕組みにはなっていない。

 ここまでが田中氏の解説である。マイナス金利を歓迎するのは政府、とくに財務省で、日本国債をマイナス金利で発行できれば、財政破綻を避けていくらでも増発可能になる。現在の超低金利でも年間10兆円ある財政負担も理屈の上ではいずれゼロになる。
 だが、借金はいずれ返済されることになる。モラルハザードを起こしてさらに国債を積み上げたら、負担は次の世代へ先送りされる。

 日銀黒田総裁はまたしても出口戦略をもたぬまま新しい政策に踏み切ったように見える。財務省と結託して日本経済をぶっ壊してしまうことになりそうだ。市場の評価はわずか1週間で株価を戻していることに現れている。株価アップ策としてはマイナス金利は効果がない、しかし、今後株式市場や金融市場にどのような影響を及ぼすのかまるで見当がつかない。
 重症の患者の治療をせずに次々に強い麻薬を射っているようなものだ。


<余談>
 円への信頼が失われれば、預金量の多い大金持ちや企業はリスク回避のために円を売り払って外貨預金に換えることになる。実際にギリシアやロシアでおきている現象だ。いったんこうした流れができたらとめられない。
 国債償還ができなくなれば、保有している個人・企業・銀行そして300兆円を超えて買い入れを続けている日銀に損害が及ぶ。
 じつに危うい金融政策そして経済運営なのである。
 縄文時代以来1.2万年の日本列島の歴史で初めて人口減少時代を迎えた日本が金融政策で経済成長ができるなら、「異次元の金融緩和」でとっくに経済成長が成し遂げられているはずだが、そうはなっていない。少子高齢化が同時に進行する日本で、金融政策によって経済成長が成し遂げられると考えることに無理がある。
 人口減少と経済規模縮小を受け入れればいい。強い管理貿易の下で、海外へ移転した工場を国内に再建して、正規雇用の職を確保し、安定した経済運営をすれば経済格差も縮小できるのである。


*#3227 毒を食らわば皿までも 日銀マイナス金利導入 Jan.30, 2017 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-01-30


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#3199 GPIFの運用資金が210兆円に膨れ上がった Dec. 9, 2015 [91.経済]

 一時は2万円を超えた日経平均も昨日は19,492.60円で205.55円値下がりしている。株価に一喜一憂してもしょうがない、長期的にどうなるのかということを年金基金とからめて考えたい。

 公務員の共済年金(運用資金30兆円)や独立行政法人の年金基金(運用資金50兆円)が10月にGPIFに統合されたようだ。
 昨年7月の弊ブログ#2729でとりあげていたのを忘れていた。

#2729より抜粋
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2.<基金が来年度80兆円増え、42兆円が市場に投下される>
 7月8日NHKラジオ番組「ビジネス展望」で内橋克人氏が次のように警告している。
 来年(2015年)10月に公務員の年金基金(30兆円)と百を越える独立行政法人の年金基金(50兆円)が厚生年金に統合され、GPIFの保有資産が210兆円になるから、そのうちの20%となると政府機関保有の上場株式は3倍弱に増えることになる
・・・
------------------------------------------------

 統合される80兆円の年金基金がGPIFと同じように運用変更されていれば、株式市場に投入できる余力は数兆円しかないが、それが以前のままの運用形態なら、FPIFが国内株式市場に投じることのできる資金は、10兆円増えることになる。

   80兆円×12.5%=10兆円

 国内株への運用資金は総額52.5兆円で、東証1部株式時価総額(5/22終値ベース、591兆円)の約10%にもなる。日銀買い入れ分も含めたらどれくらいになるのだろう。株式市場が政府によって操作されており、正常な市場機能が麻痺している。

*東証1部の時価総額が過去最高を更新
http://thepage.jp/detail/20150527-00000005-wordleaf?utm_expid=90592221-48.hwO5r5EoTSCBuGKgIeW2Fg.0&utm_referrer=http%3A%2F%2Fwww.google.co.jp%2Furl%3Furl%3Dhttp%3A%2F%2Fthepage.jp%2Fdetail%2F20150527-00000005-wordleaf%26rct%3Dj%26frm%3D1%26q%3D%26esrc%3Ds%26sa%3DU%26ved%3D0ahUKEwil2o6EyM3JAhWE26YKHW45DpMQFggfMAI%26usg%3DAFQjCNEt7W_xTxXfaJK1MkiIvxwxddbvJw

 まだ数兆円残しているから、10兆円の追加があれば、しばらく株の買い支えができる、1年間ほどは株価維持が可能だろう。
 しかし、この資金はいずれ取り崩して年金支給に使われるから、株式市場へ恒常的な売り圧力となり、株価暴落の運命はまぬがれない。運用資金が毀損すれば支給額を下げざるをえなくなるが、そのときには安倍政権はないのだ。
 普通の人はこういうことをやらない、自分の私利私欲のために公金に手をつけるようなことはためらうのが庶民の感覚、GPIFの独立性が担保されていないからこういうことがおきる。
 ツケは100%年金受給者に支給額減となってまわってくる。

 「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」

 『大辞林』によれば公徳心とは、「社会生活における道徳を重んじる心」とある。近江商人の「三方よし」は江戸時代から普遍的な商道徳として受け継がれてきたものである。民主党もそうだったが、政権を握ると、自分に都合のよいことばかり考え、公徳心をなくすものらしい。
 数年間の一時的な存在である時の政権が、自らの政権維持に年金基金を利用してはならない。基金運用は50年単位で運用しなければならないから、慎重の上にも慎重でなければならないのだが、日銀もGPIFも時の政権からの独立性がいつのまにかなくなってしまった。ブレーキのない車が暴走しているようなもので、長期的にはクラッシュは免れない。
 国民が民主的な手続きである選挙を通じて安倍政権を選択した、その結果だから受け入れるしかないが、見方を変えれば民主主義の危機でもある。現行制度の下では、わずか1/4の得票率で過半数を大きく超える議席を制することができる。そしてこのように大概のことがやれる。

 年金支払いのためにGPIFが基金を取り崩し始めるまで何年あるのだろう。そのときに大きな人為的災害となってツケが国民にまわってくる。

 私利私欲を脇において考え・判断し、果断に行動できる健全な保守主義を標榜する政治勢力が台頭してもらいたい。


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【GPIFの株式運用増額とそのリスクに関連する弊ブログ・トピックス】

*#3193 こんなものではすまない GPIF損失7.9兆円  Dec. 1, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-12-01

 #3114 年金機構に数兆円規模の評価損がでるのか? Aug. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-25

 #3087 外国人持ち株比率3割の意味するもの:金子勝慶応大教授 July 21, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-07-20

 #3019 株価と経済:立教大山口義行教授の論 Apr. 8, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-04-07-1

 #2729 年金基金の運用資産が130兆円から210兆円に増える:危うい株式投資 July 9, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08

 #2715 GPIFの株購入と銀行保有リスク資産に関わるBIS規制変更 June 25, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25

 #2245  円安はそんなにいいことか? Mar. 17, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-17


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#3193 こんなものではすまない GPIF損失7.9兆円  Dec. 1, 2015 [91.経済]

 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が7.9兆円もの損失を出しました。安倍総理のごり押しで、株式運用の割合を2倍に増やした結果です。自民党内ではあのときも異論が出てきませんでした。総理の言うことに異論を唱えたら、選挙での公認の保証がなくなるから国会議員たちは異論がいえません。健全な保守主義が失われて、独裁政治がはじまっています。
 独立性が失われたのは、GPIFだけではありません、日銀もその独立性が失われ、異次元の超低金利政策で政権に迎合しています。じつにあさましい姿です。
 年金積立金は年金支払いで取り崩されるから、GPIFが買い込んだ株式も国債も長期にわたって売り続けられ、値崩れを起こすことになりますから、もうこれはどうにもなりません。
 株式は都市銀行がBIS規制強化で持ち合い株9兆円を市場で処分するさいに値崩れを防ぐためにGPIFで買い支えた経緯があります。
 円安誘導による株高は日銀の「異次元のゼロ金利政策」で演出されました。円は安倍政権直前の80円/ドルから50%も円安になったままでです。そういうバイアスを除けば、日経平均はまだ5000円以上高いので、日銀の金融政策に破綻が来れば株価は一気に半分程度に落ち込むリスクを抱えています。予想される損失額が最終的にどれくらいの大きさになるか、日経新聞記事の一番下に書かれた運用割合を見てください。リスクの大きい国内株式と外国株式は9月末積立金残高135.1兆円にそれぞれの割合を乗じて、金額を付け加えて起きました。

11/30 日経新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL30HTU_Q5A131C1000000/
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GPIF、運用赤字7兆8899億円 7~9月期、足元は改善か


 公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が30日発表した2015年7~9月期の運用実績は、7兆8899億円の赤字だった。期間収益率はマイナス5.59%(4~6月期はプラス1.92%)となり、14年1~3月期以来、6四半期ぶりのマイナス運用となった。世界的な株安が進んだのに加え、円相場の上昇で海外資産の評価損が出た。10月以降は株式相場の持ち直しで運用収益は改善しているとみられる。

 GPIFは国民年金と厚生年金の積立金を国内外の株式や債券に分散投資している。運用資産額は9月末時点で135兆1087億円。自主運用を始めた01年度以降で最高だった6月末時点(141兆1209億円)から減少した。

 資産構成別の収益の内訳(市場運用分)は、国内株式が4兆3154億円、外国株式が3兆6552億円、外国債券が2408億円の赤字だった。一方、国内債券は3022億円の黒字だった。

 9月末時点の積立金全体の資産構成は、外債の比率が13.60%と6月末時点(13.08%)から上昇し、これまでの最高(14年12月末、13.14%)を更新した。GPIFが目安の中心値とする15%にやや近づいた。国内債は38.95%と6月末(37.95%)から上昇し、目安の中心値である35%を上回っている。一方、国内株式は21.35%(6月末23.39%)、外国株式は21.64%(同22.32%)と、いずれも前四半期から低下。それぞれ目安中心値の25%には達しなかった。

 7~9月期の収益率(市場運用分)は、リーマン・ショック後の2008年10~12月期(マイナス6.09%)以来の下落幅となった。もっとも10月以降は株式相場が持ち直し、GPIFの運用収益は改善しているとみられる。野村証券の西川昌宏チーフ財政アナリストは11月27日時点で、昨年度末と比べ約1.9兆円の運用黒字が出ていると試算。SMBC日興証券の末沢豪謙金融財政アナリストは四半期別にみると、4~6月期の落ち込みが足元までに一巡し、今のところ収益はほぼ均衡したとみている。

【GPIFの資産構成】

      9月末(6月末)

国内債券  38.95%(37.95%)
国内株式  21.35%(23.39%) ⇒28.8兆円
外国債券  13.60%(13.08%)
外国株式  21.64%(22.32%) ⇒29.2兆円
短期資産  4.46%(3.27%)

〔日経QUICKニュース(NQN)〕
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 日経新聞記事によれば、GPIFは7.9兆円の損失を出し、運用資金を141兆円から135兆円に減らしてしまった。公務員共済年金基金の残高は80兆円ほどあったはず、これがどれくらいの損失を出したのかニュースに流れていません。運用は右へ習いでしょうから、5兆円近い損失が出ているのはないでしょうか?
 仮にGPIFが140兆円、公務員共済年金基金が80兆円、それぞれの原資をの21%を昨年10月以降、日本の株式市場に投じたとすると、
   220兆円×21%=46.2兆円
 42兆円もの資金が日本の株式市場に投じられたことになります。これと日銀の異次元のゼロ金利政策による円安演出がなければ、BIS規制強化で都市銀行が9兆円もの持ち株を売りに出したときに、日経平均は12000円割れをしていたでしょう。
 今日(12/1)の日経平均終値は20,012.40ですが、安倍総理は政権維持のための株高演出がお上手です。

 GPIFは「長い目で見てもらいたい」と言い訳をしていますがとんでもありません、長い目で見たら、年金積立金を取り崩して年金支払いに充当しなければならないから、株式市場にとっては恒常的な売り圧力となり、日経平均株価は1万円以下に値崩れを起こすことになります。最大で、株式運用した分のおおよそ半額程度が毀損してしまうリスクがあります。そのリスクは時間の経過と共に現実に転化します。すべては自公の政権維持のためですが、自民党も公明党も支持者たちの大半はそのようなことを望んでいないでしょう。
(でも、そういう人を結果として選んでしまったのです。同じことを繰り返さぬためにはここはよく考える必要があります。)
 買い入れた株式の売却の時期が来れば、さらに巨額の損失が生じて、その分だけで2割程度の年金支給額減となりそうです。
 安倍政権は自分の経済政策(アベノミクス)を正当化するために、国民の年金積立金を博打に投じたと言ってよいでしょう、そのツケは国民に回ってきます。
 後の人たちの負担を小さくするために、わたしたち団塊世代はあまり長生きしてはいけません、お迎えのときがきたらじたばたせずにさっさとおさらばしましょう。食べられなくなったらそのまま死ぬのが自然です、苦しくありません、幸せな死です。家族の誰かが看取ってくれればそれだけで十分ではありませんか。延命治療はいらぬと書いて、わたしは妻と子どもに預けておきます。

 自民党内部からでも外部からでも構いません、世のため人のために健全な保守主義を標榜する勢力が台頭してきてくれることを期待しています。


*GPIFのポートフォリオ方針変更
http://fis.nri.co.jp/ja-JP/service/keyword/2015/201501.html

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【GPIFの株式運用増額とそのリスクに関連する弊ブログ・トピックス】

*#3114 年金機構に数兆円規模の評価損がでるのか? Aug. 25, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-25

 #3087 外国人持ち株比率3割の意味するもの:金子勝慶応大教授 July 21, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-07-20

 #3019 株価と経済:立教大山口義行教授の論 Apr. 8, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-04-07-1

 #2729 年金基金の運用資産が130兆円から210兆円に増える:危うい株式投資 July 9, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-07-08

 #2715 GPIFの株購入と銀行保有リスク資産に関わるBIS規制変更 June 25, 2014 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2014-06-25

 #2245  円安はそんなにいいことか? Mar. 17, 2013 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2013-03-17


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#3169 軽減税率を考える:同志社大教授浜矩子 Nov. 2, 2015 [91.経済]

 NHKに「マイあさラジオ」という番組があり、その中に「社会の見方・私の視点」というコーナがある。6時43分から10分間前後の短いものだが、大学教授やアナリスト、研究所のシニア研究員や代表者などが入れ替わり、時事問題を解説してくれている。
 慶応大の金子勝、アナリストの森永卓郎、日本総研の寺島実郎、経済評論家の内橋克人など多彩な顔ぶれのコーナ。
 わたしは朝、微睡(まどろみ)ながらこのコーナを聴くのを楽しみにしている。

 今朝(11/2)は「軽減税率を考える」というタイトルで、同志社大教授の浜矩子が快刀乱麻を断ってみせてくれたので紹介したい。

 消費税で低所得者層が生活困難に陥るのは本末転倒であるというのが、浜さんの基本的なスタンス。税は本来所得の再分配機能を担うものであるのだから、消費税課税強化によって、救われるべき低所得者層が生活困難に陥るのは本末転倒ということなのだろう。それを是正するのが、軽減税率であるから、セットで実施するのが当たり前。
 ここで浜さんは貧困率データを挙げた。貧困率とは所得110万未満の層の割合だが、日本は16%を越えている(2010年のOECD調査では17.3%)。世界で一番貧困率の低いデンマークは5-6%であるから、日本はその3倍もある。税制は貧困率改善の方向に作用するように仕組まれなければならないということ。

 消費税アップは是か非かというコメンテータの質問に、浜さんは政府財政が破綻すれば、国民は大迷惑をこうむるので致し方なしというスタンス。軽減税率は逆進性の解消にならないという一部の意見に対しては、軽減税率導入をしたくない者たちの屁理屈に過ぎぬとばっさり切って棄てる。消費税の導入で貧乏人が生活困難に追いやられることが、そもそもおかしい、ちゃんとした補完措置をとるべきで、それが軽減税率の役割。軽減税率と同時に金持ちが贅沢品を買う場合には重税を課すべきだと主張。
 経済学の生みの親であると巷間言われている『諸国民の富』の著者A.Smithは、贅沢品には標準税率よりも思い加重税率を適用すべきとはっきり書いている。
 給付金方式についてのコメンテータの質問に、やるなとは言わぬが、それで軽減税率をやめるのはとんでもない話で、貧乏人いじめにならないようにすべきだと答えている。

 ヨーロッパは標準税率を高く設定して、基礎的生活物資への軽減税率と贅沢品への加重税率でバランスをとっている。
 インボイス方式が面倒だという意見に対しては、もともと消費税を導入するときにそうすべきだったのであり、それをサボタージュしたのがそもそも間違い。ヨーロッパはインボイス方式でやっているし、日本人はヨーロッパの国々の国民よりも計算能力が高いのだからやれないはずがないとばっさり。

 いま一番重要なことは、消費税率を上げることで貧乏人が生活破綻しないようにすること。以上が浜矩子さんの意見である。

 加重税率についてはさまざまな方法が考えられる。
 たとえば、500万円以上の車には価格の30%の取得税を適用、1億円を超える住宅には30%の取得税を課す、高級レストランには30%の消費税を課す、資本金10億円を超える企業の法人税を50%にするというように、所得再分配を考慮した増税の方法はいくらでもあるのだが、政府はそうしたことを検討していないようだ。
 ノブリス・オブリージュ(高貴なる者の義務)というのは英国の伝統であるが、ヨーロッパでは一部の富裕層から自分たちの税金を上げろという声が上がっている。
 日本の大企業の経営者たちは自分たちの役員報酬ばかり上げていないで、国の借金が1200兆円にもなっているのだから、大企業に増税して借金を減らせと声を上げたらいかが?経団連が率先してやればいい。
 そういうことをしたくない大企業と企業経営者は、さっさと日本から他の国へ本社を移して出て行けばよい。日本の一部上場企業株の3割以上を外国人投資家がもっている。



 
< 余談:貧困率とマルクス資本論を超えた「21世紀の経済学」 >
 貧困率ランキングデータを探してみたら、次のものがヒットした。
*「世界・貧困層の人口割合ランキング(CIA版)」
http://top10.sakura.ne.jp/CIA-RANK2046R.html

 このデータは米国CIAのワールドファクトブックに基づいている。
「日本の貧困層の人口割合は、16.0%で、世界ランキングの順位は120位です。ランキングの1位はチャドの80.0%、2位はリベリアの80.0%、3位はハイチの80.0%です。ランキングの最下位は台湾の1.5%です。」

 面白いのは偏差値表示のあることで、日本42.6、ドイツ42.3、米国42.1、デンマーク41.1、カナダ38.9、中国37.1、台湾34.5となっている。受験偏差値と異なり、偏差値が低いほうが貧困率が低い、つまり偏差値の低いほうがよい状態だということ。100から引いてみたら日本人にはなじみやすい。そうした変換をすると、日本は57.4だから、道内の大学だと小樽商大よりも少し上、北大には届かない。
 浜さんが世界一貧困率の低い国として挙げたデンマークはここでは162か国中133位だから、貧困率の低いほうから順に並べると30番目ということになる。調査年度がばらばらであることに注意。

 同じ年度で並べたOECDの最新(2010年度)の調査データがウィキペディアに載っていたので、こちらも紹介しておく。
**貧困線 ウィキペデアより
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B2%A7%E5%9B%B0%E7%B7%9A
「日本の貧困率について表した最新のデータであるOECD2010年の統計によれば、日本の相対的貧困率は16.0%で、この年に調査された国の中では、イスラエルの20.9%、メキシコの20.4%、トルコの19.3%、チリの18%アメリカ合衆国の17.4%に次いで6番目に相対的貧困が高い。次いでスペインの15.4%、韓国の14.9%、オーストラリアの14.4%、ギリシャの14.3%、イタリアの13%と続く[10][11]

これは、日本の貧困率が先進国の中でもかなり高い部類に入っていることが示されている。OECDの調査した35か国の相対的貧困率平均は11.3%。日本より貧困率が高いメキシコトルコチリはいずれもOECDには加盟しているが、先進国とはっきり言える経済力ではないため、その点を踏まえると、日本は先進国の中でイスラエル、アメリカに次いで3番目に貧困率が高い国という見方もできる。逆に、西欧諸国は大半が10%以下であり、全調査国中もっとも低いチェコの5.8%とデンマークの6%を筆頭に、北欧諸国の貧困率が低い

厚生労働省の調査では、日本の相対的貧困は2012年の時点で16.1%であり、データが存在する1985年以降、1991年1994年1997年2000年2003年2006年2009年2012年という3年ごとの調査の中で最も高い数値となっている[12]

2013年国民生活基礎調査では、日本の2012年の等価可処分所得の中央値(名目値244万円、1985年基準実質値221万円)の半分(名目値122万円、1985年基準実質値111万円)未満が、相対的貧困率の対象となる。各名目値で単身者では手取り所得が約122万円、2人世帯では約173万円、3人世帯では約211万円、4人世帯では約244万円に相当する。

1年の総労働時間を法定労働時間2096時間~2080時間とすれば、名目値122万円の年収に達する時給は約583円~587円以上となり最低賃金水準を下回る、2人世帯では時給約826円~832円、3人世帯では時給約1,007円~1,015円、4人世帯では時給約1,165円~1,174円で名目値の年収に達する。

子どもの貧困率は16.3%、子どもがいる現役世帯の貧困率が15.1%で2項目ともデータが存在する1985年以降で最も高い数値となっている。子どもがいる現役世帯のうち大人の貧困率が一人54.6%、大人が二人以上の貧困率が12.4%となっている。※大人とは18歳以上の者、子どもとは17歳以下の者をいい、現役世帯とは世帯主が18歳以上65歳未満の世帯をいう。」

 面白いのは、日本の植民地であった台湾が貧困率が世界で一番低いことだ。台湾は古き良き時代の日本文化や倫理観を受け継いでいるのではないだろうか。一億総中流社会と言われたのは30年ほど前のこと、日本が変わりすぎた。
 この30年間で、日本の経済格差が欧米並みに拡大したことが貧困率の上昇に現れている。小泉政権も安倍政権も欧米型の格差経済社会を目指して労働に関する規制緩和を行ってきた。その結果がこれである、日本が模範とすべきは欧米型の経済社会ではない。職人仕事中心の格差の小さい高度経済社会を目指すべきだ。A.Smith、D.Ricard、Marx『資本論』を超えた21世紀の経済学がここにある

 #3097-6は相対的貧困率を論じた
 #3097-6 資本論と21世紀の経済学(改訂第2版)-6  Aug. 4, 2015  
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-04

 #3097 資本論と21世紀の経済学(改訂第2版) <目次>  Aug. 2, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-15

 #3121 既成経済理論での経済政策論議の限界 Sep. 1, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-09-01-1

 #3148 日本の安全保障と経済学  Oct. 1, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-01

 #3162 絵空事の介護離職ゼロ:健全な保守主義はどこへ? Oct, 24, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-10-23

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#3129 中国株式市場に異変:市場が酸欠状態に! Sep. 10, 2015 [91.経済]

 中国の取引所が指数の変動を抑える「サーキットブレーカ」方式を提案、中国政府が長期投資に有利な配当課税への優遇策を打ち出し、株価の下落がとまった。
 ところが、売買量が激減し、株式市場が窒息しそうな状況を呈し始めている。

 東京市場は昨日日経平均が1343.43円も上がったが、その後を受けたNYダウは239.11ドル下げている。
 中国市場で売買量が激減し、国際投資ファンドが中国株式市場の異変を理解したからだろう。国際金融資本や市場原理主義たちから眺めたら、中国株式市場の窒息は株価下落よりもずっと大きな問題なのである。

  48年前に読んだ『誰がために鐘はなる』の序に掲げられたジョン・ダンの詩を思い出した。「何人」を中国、「汝」を市場原理主義者たちと国際金融資本と読み替えてみたら、昨日と今日の事情がよくわかる。
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何人(なんぴと)も一島嶼(いちとうしょ)にては非(あら)ず
何人も自らにして全(すべ)きは無し
人は皆大陸(くが)の一塊(ひとくれ)
本土の一片(ひとひら)
その一片の土塊(つちくれ)を波の来たりて洗いゆけば
洗われしだけ欧州の土の失せるは
さながらに岬の失せる也(なり)
汝(な)が友や汝(なれ)自らの荘園(その)の失せる也(なり)
何人の身罷(みまか)り逝(ゆ)くも是(これ)に似て自らを殺(そ)ぐに等し
其(そ)は我も又人類の一部なれば
故に問う勿(なか)れ、
誰(た)が為に鐘は鳴る也(や)と、
其(そ)は汝(な)が為に鳴るなれば
(ジョン・ダン/大久保泰雄訳)
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 経済学は経験科学であるから、まったく新しい政策を導入したら何が起こるか予測することができない。ましてや新手の二つドラスティックな株価下落対策を打ち出したのだから、その副作用を注視せざるをえない。
 理論は新しい現実を見て組み立てられる。

 今朝の東京市場の反応に注目したい。

  (追記: 9/10日経平均終値 18,299.02円  ▲470.89 )


*#3121 既成経済理論での経済政策論議の限界 Sep. 1, 2015 
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-09-01-1

**#3097 資本論と21世紀の経済学(改訂第2版) <目次>  Aug. 2, 2015
http://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2015-08-15



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