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#5296 経済ブレーンの不在①:健全な保守主義とは? Oct. 04, 2024 [8. 時事評論]

 石破茂総理には経済ブレーンがいないようです。

 小泉純一郎元総理の経済ブレーンだった竹中平蔵氏は、労働規制を緩和して、非正規雇用を増やし、派遣業界4位であるパソナの会長に収まっています。
 安倍政権の経済ブレーンだった浜田宏一東大名誉教授は黒田氏を日銀総裁にしたら、物価はすぐに3%アップすると発言、黒田氏による「異次元の金融緩和」が始まりましたが、10年経ってもデフレ経済から脱却できませんでした。アベノミクス3本の矢の「経済成長」は絵に描いた餅に終わりました。
 お二人とも、自我本能(自他弁別智)の強いタイプです。
 こういう類の経済ブレーンなら、国民にとっては百害あって一利なしです。

 株価の動きに一喜一憂して、株価が続けて下がると、石破新総理は日銀植田総裁と会談して、「利上げの状況にはない」と言い出す始末。途端に、円ドル相場は142円/$から146.64円/$と円安に振れました。
 円は高い方が好いのです。100円/$になれば、エネルギーや食糧、穀物、肥料価格が激下がりします。だから、円高でよろしい。

 経済成長を担うのは民間企業ですから、政府ができることは限られています。半導体産業に補助金を出して何度か失敗しています。政府が経済成長を言い出したら、できもしないしありえない幻想を追いかけているのですから要注意です。アベノミクス三本の矢でわたしたちは嫌というほど学んだはずです。

 1989年にバブル経済が崩壊しましたが、そのときの上場企業の時価総額は、ドル換算で4.260兆ドルでした。2022年の日本の上場企業時価総額はドル換算で5.380兆ドルですから、33年間でわずか26.3%しかアップしていないのです。それもGPIF(年金機構)が61兆円日銀は70兆円、上場株式の保有をして、株価を政策的に高い水準に吊り上げ続けているという状況を併せ考えねばなりません。つまり現在の株価は高い下駄を履いているということです。GPIFと日銀が保有株式を半分売り払ったら、日経平均は2万円を維持できるでしょうか?2万円になったとしたら、ドル時価総額は、半減します。下駄が外れて35年間で40%のマイナス成長であることがはっきりします。政府がNISAを国民に進める理由は明らかです。GPIF保有の国内企業株式はこれから売却処分して、年金支払いに充てないとならないのです。日銀が購入した上場株式も売却処分の必要があります。だから、その売却分を買い続ける需要が欲しい。そうしないと株価は長期低落傾向を免れません。政府も日銀も一体となって危ない橋を渡っています。投資信託であるNISAを通じて、国民に上場株を買い続けさせる必要があります。経済成長ができないとすれば、株価は長期的に下がるのです。こんな当たり前のことが、理解できない
 人口減と高齢化社会に突入してしまっているので、経済成長が絵に描いた餅であることは明白です。日経平均が半分以下になる現実的な可能性が、データから言えます。

 そこで、健全な保守主義という視点から、経済の在り方を考えてみます株価と金利と企業経営の三点を俎板(まないた)に載せてみましょう。

(1)株式は下がってよい
 株価が高いのは、人件費を削って非正規雇用を増やし、蓄積した内部留保で自社株を購入・消却しているからです。株価上昇は本来企業成長の結果のことのはずですが、日本の現実は違っていますね。先ほどデータを示したように、33年間で26.3%しか日本企業の株式時価総額は増えていませんから、ほとんど成長してませんよ。上場企業の株式時価総額をドルベースで眺めたらいいだけ。
 上場企業が揃って自社株買いをして株価をアップさせるというのは、これは日本の伝統的なビジネス倫理である「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」に反しています。株主と役員だけが得をして、そこで働く人たちへの支払い分を減らしているからです。特に非正規雇用増大にょる人件費ダウンがいけません。この20年間、消費マインドが下がり続けています。

(2)金利は適正水準にアップするのが自然です
 債券市場は、実質日銀の国債引き受けによって、異次元の低金利(10年物国債0.820%)が維持されています。債券市場で金利が調節機能をはたしていません。金利アップによって債券市場の金利調節機能を取り戻すべきです。金利をアップすれば、放漫財政が続けられなくなります。それでいいのです。金利が米国並み(3.784%)に上がれば、株価は下がりますが、大幅に円高になります。米国との金利差は2%以下にしたらいい。
 極端な仮説例を出すと、言っていることの意味が鮮明になります。ドル円相場が200円/$で日経平均株価が50,000円を超えたとしましょう(ドルベースでは日経平均は横ばいです)。誰が得をするのでしょう?エネルギー、食糧、飼料、肥料などを中心に価格が暴騰します。物価が暴騰するということですよ。低所得層と中間所得層の暮らしが大打撃を被ります。物価が1.5倍になれば年収1200万円あっても楽な暮らしはできません。

(3)企業経営の在り方
 この30年間で、役員報酬は平均で3倍くらいにはなっているでしょうが、社員や非正規雇用者の給与は横ばいです。「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」にもう一つ「そこで仕事をする者よし」を付け加えたいと思います。
「売り手よし、買い手よし、そこで仕事をする者たちよしの四方よし」
 非正規雇用の給与を1.5倍にしましょう。さてどれをどのように実現するかですが、企業経営者たちが自主的にやるのがベストですが、やらないでしょうね。経営能力が高くない経営者が多いので、人件費を削ることでしか利益を増大できないというのが実態かもしれません。本業の生産性アップも利益率の高い新規事業分野開拓もできない。内部留保はひたすら、自社株買いに使って、新規事業への投資ができないのです。そういう上場企業が多い。なぜそうなったのでしょう?
 受験エリートたちが上場企業経営者に多いことが原因だろうと思います。これは日本の大企業に巣食う癌組織です。石橋を叩いて、橋を渡らずに叩き壊してしまう、頭が固いのです。人間の思考の鋳型は20歳までにできてしまいます。その期間に受験勉強に過度に集中していたのでは、「正解のある問題を素早く解けるという効率性の高い受験勉強専用脳」ができあがります。旬の時期なのにマネジメント能力の発達が阻害されてしまいます。生徒会や部活やさまざまなイベントを通じて、何かの「変革」を成し遂げることで自然発生的にリーダーが生まれていきます。これらはマネジメント能力を成長させるチャンスなのです。受験勉強時間を削ぐことになるので、得にならぬことはしないという態度を貫く受験生が少なくないのです。「物事を目先の損得で判断し、行動する」というタイプの人間を育ててしまいます。こういうことを教育村では「隠れたカリキュラム」と言いますが、図らずも自我本位の動物本能の強いタイプの人間を製造する装置になっています。他人も自分も同じと考える、平等性智や無差別智の働く人間が少なくなるのです。大企業の取締役や官僚に多く見られる脳のタイプです。わたしたちは兵庫県知事の齊藤氏にその典型例を見ています。
 動物脳の自我本能や、世間知の働く平等性智、真我の働いている無差別智という脳のタイプ分けは、大数学者の岡潔先生の分類を参考にしています。

 「上場企業の役員報酬の上限は、新入社員の年収の20倍とする」というようなガイドラインを政府が出したら効果があるかもしれませんね。役員報酬をアップしたかったら、社員の給料をアップしろということ。非正規雇用割合もガイドラインをだしたらいい。そして、実際の数値の公表を義務付けたらいい。ガイドラインですから、罰則はナシでいいでしょう。
 実際には役員報酬の制限は国内法ではできないでしょうね。企業も株式市場もとっくに国際化しています。でも、日本の本社を置く企業に限定するなら可能です。
 日本企業が先鞭を切って、役員報酬を制限し、従業員の給与を大幅にアップしたらいい。人件費を低いままにして、自社株購入による株価操作はビジネス倫理に反することだ、それくらいの経営倫理を大企業経営者たちが持つべきです。欲望を制御するということ。"Greed Capitalism(強欲資本主義)"からの「卒業」です。

 ようするに、保守主義に基づく経済政策の根本は、日本人が四百年間育んできたビジネス倫理「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」で考え、行動したらいいだけ。他にも日本固有のビジネス倫理がありますので追加しておきます。
●「信用を第一とする」
●「浮利は追わない」
●「足るを知る」

 日本人はあらゆる仕事を職人仕事化してしまいます。誠実に仕事をして、決して手を抜かないのです。それは労働ではないからですよ。自分の仕事を通じて、社会に貢献したらいい。労働というのは近代以降の概念でして、江戸時代には労働なんて言葉はありません。「仕事する」って言ってました。「職人仕事」がベースだからです。農業も同じ。その地域で一番品質の高い作物を作ることのできる人が尊敬されていました。もちろん漁業もそうです。腕の良い人が尊敬されます。取引される価格も品質に応じて差がつきます。


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