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#5292 自民党新総裁選挙で石破茂氏が逆転勝利:彼の思考回路 Sep. 27, 2024 [8. 時事評論]

 9人の候補が乱立した自民党総裁選挙で石破茂氏が勝利しました。
 白を黒と言ったり、記録がないと嘘をついたり、ありもしない「経済成長路線」を声高に叫んだり、2012年の安倍政権以来のわが国の政治のありように飽き飽きしていたので、言葉に真実味の感じられる石破氏の勝利を喜んでいます。
(安全保障問題では、具体的で現実的な戦略思考のできる人のようです。<余談-2>で採りあげます。)

 統一教会問題や裏金問題の議員を公認するかしないか、要するに安倍政治の総括をしなければいけないので、これから石破氏の手腕が試されますが、そんなにドラステックなことはできないでしょう。さまざまな調整を伴なうので、実務はとってもむずかしいのです。少しずつ自分の地歩を固めてもらいたい。

 決選投票での5分間の演説がすばらしかった。あれを聴いて、勝負があったと確信しました。
 国民に嘘をつかぬ正直で健全な保守主義が我が国に根付きますように


 ところで、言葉に端々に心がこもっていた名演説でしたね。石破氏の次に演説した高市早苗さんは時間オーバー、論点が定まらない、何を言いたいのかよくわからないものになっていただけでなく、心に言葉が響かない演説でした。少しお気の毒、不勉強でしたね。
 決選投票の演説全文が次のサイトに掲載されています。
「あれで石破さんに決めた議員は多いと思う」



<余談-1:為替市場が反応>

 最初の投票結果が発表され、高市早苗氏がトップだと判明すると、ドル円相場は146.44円/$へ円安に走りました。決選投票で石破氏が勝利すると、円高へ戻しています。
 高市氏は安倍政権の政策を受け継ぐと公言していました。とくに経済成長路線を強調していましたね。為替市場はありもしない経済成長を叫び、赤字国債をさらに増発して、日本の国力が加速的に低下すると慌てたのかもしれません。決選投票の結果を受けて142.75円/$へ戻しました。円安は日本の経済成長力や国力の衰えを表します。

 経済成長が見込めなければ、防衛費の増大や防災省の創設、社会保障費の増大、医療費の増大で、赤字国債の発行額が膨らみます。
 誰が総理大臣をやっても経済と財政運営はたいへんです。経済縮小を前提に、堅実な財政運営をして国債発行残高を減らして、巨大災害(東南海巨大地震・津波、首都直下型地震、富士山噴火、原子力発電所災害など)に備えて、復興資金を積み立てる必要があります。
 具体的な処方箋の書ける経済学者はいません、そして魔法の杖なんてありませんから、国民に対して、誠実に、正直にやるのはとっても困難な仕事です。逃げずに叡智を結集して取り組んでもらいたい。

<余談-2:池上彰氏との日米地位協定見直しに関する対話>
 午後11時すぎに、テレビを見たら、石破氏が出演してニュースキャスターの質問に応えていました。そこへ他の番組でニューヨークで取材中の池上彰氏と中継がつながりました。池上彰氏は「日米地位協定を見直すと石破さんが発言したので、米国はこんな反応をしています」とウォールストリートジャーナル(WSJ)最新の電子版の見出しを示しました。WSJは否定的な反応を一面トップの見出しに使っていました。見直しは問題があるのではと問いかけた池上氏に、石破氏は「沖縄に70%の基地が集まっていて、現実に問題が起きています。沖縄の声を聴かないといけません。そしてわたしは、米国に自衛隊の訓練基地を創ることを考えています。日本国内では自衛隊の訓練が十分にはできません。だから米国内に自衛隊の訓練基地を作れば、そういう面が改善できます。わたしの地位協定の見直しというのは、日米安全保障の強化という側面も有しています」。そう答えたら、池上氏は言葉を飲み込みました。そこまで考えているのかと、驚いた様子。総裁選のレースに参加した他の8人で米国に日本の自衛隊の訓練基地を創るなんて具体的な安全保障強化策を考えていた人は他にはいないでしょう。池上氏は、自分の考えの浅さをすぐに了解したように見えました。思い込みで石破氏を判断する愚を反省したのでしょう。石破氏には「防衛オタク」という評価も広く流布しています。レッテルで判断してはいけないこともあるのです。安全保障では、石破氏は戦略的そして具体的に思考してることが、図らずも明らかになりました「日米保障を強化するために、日本の自衛隊の訓練基地を米国に作ったらどうか?」なんてことを具体的に考え・提案した米国の政治家も軍人もいません。そういうレベルの政治家が日本にいたということにたいへん驚いています。日米の安全保障環境が日本の総理大臣主導でこれから大きく変わるかもしれません

 第一次安倍政権末期に閣僚でありながら安倍氏に退陣を迫り、麻生政権のときにも同様に退陣を諫言しました。二度もそんなことをした政治家はいませんよ。とっても損なことですから、損得勘定が思考を支配している政治家にはできぬ行動でした。こうした行動を起こせば冷や飯を食らうことは自然なことです。それを恐れて誰も言えない。言いにくいことでも、それを正しいと思ったら、自分の任命権者でも苦言を言える稀有な人ですから、日米交渉でもハリスが大統領になろうと、トランプが大統領になろうと、日米にとって良かれと思うことを主張するのに躊躇はない人に見えます。利害の対立する国家間の交渉事でも、相手の立場になって、両方が妥協可能な具体案を探索・思考できる人に見えます。この点でも驚いています。

<余談-3:石破氏のステージの変化>
 閣僚や幹事長などの党役員と総理大臣・総裁はステージが異なります。正論を言うだけではすまないのです。戦略目標を措定して、目標を達成する戦略を描きます。その上で3年の実行計画を作らなければなりません。実行計画策定はその分野を担当する閣僚に任せなければいけません。
 果たして、任せて実行計画を作り、部下である官僚を縦横無尽に使って計画を実現できる、マネジメントに秀でた人材が何人自民党にいるのか、いなければ外部からそういう仕事を担当できる人材を見つけ出し、仕事を任せる必要があります。
 人材を見出せなければ、どんな戦略も3年の実行計画も実現できないのです。民間企業ではしばしばそういうことが起きます。
 そうしたマネジメント経験のない人しかいなければ、仕事をしながら育てるしかありません。それは石破氏が今までまったくやってこなかったことです。ステージがアップした今、チャレンジするしかありませんよ。5回チャレンジして、私利私欲や退路を断ってようやく射止めたステージですからね。
 mRNAワクチンの輸入、マイナンバーで大失敗した河野太郎氏を使うことはないでしょう。自我が強すぎて、マネジメントのできない人ですから。
 石破氏ご本人はもっと胸襟を開いて、一緒に食事をするとか、お酒を飲んで本音で話すとか、一緒にゴルフをして池ポチャしたら大きな声で笑うとか、仕事を任せる人たちとコミュニケーションをよくする必要がありますね(笑)
 民間企業では、社長や取締役の仕事の25~30%ぐらいは部下とのコミュニケーションに費やされます。戦略策定だけでなく、適材適所で仕事を任せて、管理職や社員の成長を促すことも重要な仕事になります。要は人材を発掘して、任せるに足る仕事を創るということ。


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