#5283 「解雇規制の撤廃」⇒「大企業に限定」⇒昭和型の終身雇用の破壊が目的… Sep.13, 2024 [8. 時事評論]
リコーが昨日(9/12)2000人のリストラを発表した。そのうち1000人は希望退職者の募集である。
自民党総裁選挙真っただ中、小泉進次郎氏は「聖域なき規制改革」を銀座の街頭演説でも繰り返し、「解雇規制の撤廃を叫んでいた。解雇規制には「整理解雇の四条件」があるが、そちらは前回#5282で採りあげたのでご覧いただきたい。
出馬会見のときに「解雇規制の撤廃」を言い出した小泉氏は、批判を浴びるや「大手企業」の話だと矛先をかわした。大手企業の社員の解雇規制を撤廃することで、優良な労働力が労働市場へ流出し、スタートアップ企業が人材を確保しやすくなるのだという。ほんとうだろうか?
そういう人たちがリスキリングによって、給料の高い企業へ転職すれば、給与が高くなるとものたまわった。賃金水準が正規雇用の半分以下の非正規雇用の人たちが、リスキリングで高い給料をもらえる企業へ転職しやすくなると言ったのは、河野太郎氏も同じである。ぼんぼんお二人が同意見なのはとっても興味深い現象である。
4世議員で民間企業への勤務経験がない小泉進次郎氏が民間企業の実態を知らないのは理解できるが、河野太郎氏は日本ゼロックスや日本端子への勤務経験があるのに、どうして大企業の社員をリストラすれば、非正規雇用の年収がアップするようなことを主張するのだろう?不可解である。
非正規雇用の年収をアップするために、「解雇規制の撤廃」と、小泉進次郎氏は出馬表明のときに明言し、9名勢揃いの討論会では、「大企業の話であって、中小企業のことは言っていない」と軌道修正、今日(9/13)のNHKでの9名の討論会や番組「エブリー」での討論会では、「規制緩和の話ではなく、昭和の時代に行われていた新卒⇒定年までの終身雇用を壊して、時代にあった流動性の高い労働市場を創ること」へ話がズレまくっている。
終身雇用制はもう30年以上も前に有名無実化しているし、非正規雇用が低賃金であることは企業規模の大小を問わないし、民間も官も同じ問題を抱えている。そんな現状認識すらないらしい。
新卒で卒業して定年まで勤める終身型雇用なんてとっくにない。大手企業は業績が悪くなると、リストラを断行するのが普通になっている。大手繊維メーカーだった帝人は業績不振から、200名余りを本社のあるビルの隣にフロアを借りて、仕事をさせずに辞めていくのを待ったなんてことは、ワンマン経営の大屋晋三氏が社長を退いた後だったから、40年以上も前だろう。過酷なリストラを経て今がある。日産自動車が村山工場など5工場を処分して、2.1万人の社員をリストラ、カルロス・ゴーンはそんなことを1999年から3年間でやっている。日産はその後も数千人単位のリストラを繰り返している。
東芝も4月に5000人規模のリストラ案を公表している。
国鉄に勤務し、JR民営化でJR北海道となり、中学同期の友人は50歳前後で月収が20万円程度になったと嘆いていた。国鉄民営化は1987年、昭和62年のことである。
だから昭和型の終身雇用制は昭和でジ・エンドになっている。いまごろ昭和型の終身雇用制度が労働市場の流動性を阻害しているなんて認識がどこから出てくるのだろう?
とっくにないものを、あるかのように言う。そして、「解雇規制の撤廃」を出馬会見で1年間で成し遂げるいくつかの政策とともに挙げて、都合が悪くなると、「大企業の話」とすり替え、そして今日は「昭和型の終身雇用を壊すと労働市場の流動性が高まり、大企業がリストラ社員のリスキリングを支援することで、給与の高いスタートアップへ転職が可能になる」なんてありもしない絵空事を述べていた。社員のリストラやリスキリング支援と、非正規雇用の給与アップは何の関係もない。
リコーの2000名のリストラを例にとってみよう。
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利益率の悪い、そして将来性のないオフィス向け事務機の製造・販売保守業務から撤退するので、その部門の社員がリストラ対象になる。その対象者をリスキリングによって、DX事業へ投入するのは不可能だから、リストラするのだ。人間を丸で消耗品=コモディティのごとくに扱っている。あなたたちにスキルは不要になったから、切り捨てるというのだ。リスキリングが可能なら、リコーはオフィスDX事業に投入するだろう。
リコーだけではない。コピー機を扱っているのはキャノンや富士ゼロックスも同じだろう。業界全体で、リストラ旋風が見舞うから、同じ職種で転職は不可能、つまり大多数のリストラ対象者は、今まで経験のない業種で経験のない職種につかざるを得ないだろう。もちろん、年収は半分以下になる。
つまり、小泉進次郎氏や河野太郎氏の言う、リスキリングによる、転職で給与アップはありそうもない話である。
希望退職者を1000名募集しているが、そのうちの10名程度は給与をアップして転職できるかもしれない。そんな程度ですよ。
こういう時に大企業は、子会社への再就職を斡旋する。子会社は親会社よりもずっと規模が小さいし給与も、半額程度である。親会社から転籍して給与が下がらないのは子会社の役員クラスのみである。
学校を卒業した後に、10年でも民間企業で働いたことがあれば、こんな非常識な人材にはならなかっただろう。つまり、4世議員はこういうところの経験がないので、庶民から見るととんでもない常識外のことを口走る。
テレビ番組evryの調査では、自民党支持者の支持率は、1位が石破茂氏、2位が高市早苗、3位が小泉進次郎氏、河野氏は3%で番外。
渡欧論界の会を重ねるごとに、小泉進次郎氏の支持率が落ちつつあるようだ。喋れば喋るほど下がるのかもしれない。質問を理解できずに、自説にこだわってメモを見ながら頓珍漢な答え方が目立った。大人の討論会に子供が参加しているような感じを受けたのは、わたしだけではないだろう。
<余談:大手銀行や自衛隊からの転籍役員>
臨床検査最大手のSRLへ1984年2月に転職した。最初は経理部経理課所属で、経理部長は大手銀行からの出向者で松山商業卒の人だった。彼はそののち監査役になったが、銀行の同僚たちが小さな病院の事務長や、居酒屋の店長へ出向⇒転籍して、年収が500万円前後に下がっていることを知って悩んでいました。「ebisu、飲み会があって年収の話が出ると、身が縮まる思いがする、言えないよ」、彼の年収は銀行の元同僚たちの4倍ほどでした。「出向がたった3年早かっただけで俺はついていた」、そうしみじみ語っていました。
大手都市銀行は、1980年代半ばには50歳前後で取引先企業へ出向し、2~3年後に転籍が普通でしたね。定年まで勤めあげるのは取締役への出世が見込める人たちくらいなものでした。
自衛隊も同じです。防衛調達品の取引先企業の役員クラスや部長職へ転職(もちろん防衛庁が斡旋してました)、輸入業務をしている企業は仕入れ価格を操作して、高い利益率が確保できるという仕組みになっていました。米国へ防衛庁が価格調査に行きますが、それに天下りした防衛庁のOBが同行して、「問題が起きないように」対応していました。
上場直前の企業には、信託銀行や保険会社からの天下りも多いのです。50歳前後が目安でしたね。
大企業のリストラはもう40年以上、続いていることなのです。「昭和型の終身雇用」なんてほとんどありません。40代以上の社員はいつリストラされるか怯えています。
自民党総裁選挙真っただ中、小泉進次郎氏は「聖域なき規制改革」を銀座の街頭演説でも繰り返し、「解雇規制の撤廃を叫んでいた。解雇規制には「整理解雇の四条件」があるが、そちらは前回#5282で採りあげたのでご覧いただきたい。
出馬会見のときに「解雇規制の撤廃」を言い出した小泉氏は、批判を浴びるや「大手企業」の話だと矛先をかわした。大手企業の社員の解雇規制を撤廃することで、優良な労働力が労働市場へ流出し、スタートアップ企業が人材を確保しやすくなるのだという。ほんとうだろうか?
そういう人たちがリスキリングによって、給料の高い企業へ転職すれば、給与が高くなるとものたまわった。賃金水準が正規雇用の半分以下の非正規雇用の人たちが、リスキリングで高い給料をもらえる企業へ転職しやすくなると言ったのは、河野太郎氏も同じである。ぼんぼんお二人が同意見なのはとっても興味深い現象である。
4世議員で民間企業への勤務経験がない小泉進次郎氏が民間企業の実態を知らないのは理解できるが、河野太郎氏は日本ゼロックスや日本端子への勤務経験があるのに、どうして大企業の社員をリストラすれば、非正規雇用の年収がアップするようなことを主張するのだろう?不可解である。
非正規雇用の年収をアップするために、「解雇規制の撤廃」と、小泉進次郎氏は出馬表明のときに明言し、9名勢揃いの討論会では、「大企業の話であって、中小企業のことは言っていない」と軌道修正、今日(9/13)のNHKでの9名の討論会や番組「エブリー」での討論会では、「規制緩和の話ではなく、昭和の時代に行われていた新卒⇒定年までの終身雇用を壊して、時代にあった流動性の高い労働市場を創ること」へ話がズレまくっている。
終身雇用制はもう30年以上も前に有名無実化しているし、非正規雇用が低賃金であることは企業規模の大小を問わないし、民間も官も同じ問題を抱えている。そんな現状認識すらないらしい。
新卒で卒業して定年まで勤める終身型雇用なんてとっくにない。大手企業は業績が悪くなると、リストラを断行するのが普通になっている。大手繊維メーカーだった帝人は業績不振から、200名余りを本社のあるビルの隣にフロアを借りて、仕事をさせずに辞めていくのを待ったなんてことは、ワンマン経営の大屋晋三氏が社長を退いた後だったから、40年以上も前だろう。過酷なリストラを経て今がある。日産自動車が村山工場など5工場を処分して、2.1万人の社員をリストラ、カルロス・ゴーンはそんなことを1999年から3年間でやっている。日産はその後も数千人単位のリストラを繰り返している。
東芝も4月に5000人規模のリストラ案を公表している。
国鉄に勤務し、JR民営化でJR北海道となり、中学同期の友人は50歳前後で月収が20万円程度になったと嘆いていた。国鉄民営化は1987年、昭和62年のことである。
だから昭和型の終身雇用制は昭和でジ・エンドになっている。いまごろ昭和型の終身雇用制度が労働市場の流動性を阻害しているなんて認識がどこから出てくるのだろう?
とっくにないものを、あるかのように言う。そして、「解雇規制の撤廃」を出馬会見で1年間で成し遂げるいくつかの政策とともに挙げて、都合が悪くなると、「大企業の話」とすり替え、そして今日は「昭和型の終身雇用を壊すと労働市場の流動性が高まり、大企業がリストラ社員のリスキリングを支援することで、給与の高いスタートアップへ転職が可能になる」なんてありもしない絵空事を述べていた。社員のリストラやリスキリング支援と、非正規雇用の給与アップは何の関係もない。
リコーの2000名のリストラを例にとってみよう。
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リコーは(9月)12日、2025年3月までに国内外で2000人の人員を削減すると発表した。連結従業員の3%に相当する。オフィス向け事務機の営業部門や保守メンテナンス、管理など幅広い部門が対象となる。事務機市場がペーパーレス化で縮小するのをにらみ、オフィス業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援に経営資源を集中する。
24年3月末時点の連結従業員数(7万9544人)の3%程度を減らす。
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リコーだけではない。コピー機を扱っているのはキャノンや富士ゼロックスも同じだろう。業界全体で、リストラ旋風が見舞うから、同じ職種で転職は不可能、つまり大多数のリストラ対象者は、今まで経験のない業種で経験のない職種につかざるを得ないだろう。もちろん、年収は半分以下になる。
つまり、小泉進次郎氏や河野太郎氏の言う、リスキリングによる、転職で給与アップはありそうもない話である。
希望退職者を1000名募集しているが、そのうちの10名程度は給与をアップして転職できるかもしれない。そんな程度ですよ。
こういう時に大企業は、子会社への再就職を斡旋する。子会社は親会社よりもずっと規模が小さいし給与も、半額程度である。親会社から転籍して給与が下がらないのは子会社の役員クラスのみである。
学校を卒業した後に、10年でも民間企業で働いたことがあれば、こんな非常識な人材にはならなかっただろう。つまり、4世議員はこういうところの経験がないので、庶民から見るととんでもない常識外のことを口走る。
テレビ番組evryの調査では、自民党支持者の支持率は、1位が石破茂氏、2位が高市早苗、3位が小泉進次郎氏、河野氏は3%で番外。
渡欧論界の会を重ねるごとに、小泉進次郎氏の支持率が落ちつつあるようだ。喋れば喋るほど下がるのかもしれない。質問を理解できずに、自説にこだわってメモを見ながら頓珍漢な答え方が目立った。大人の討論会に子供が参加しているような感じを受けたのは、わたしだけではないだろう。
<余談:大手銀行や自衛隊からの転籍役員>
臨床検査最大手のSRLへ1984年2月に転職した。最初は経理部経理課所属で、経理部長は大手銀行からの出向者で松山商業卒の人だった。彼はそののち監査役になったが、銀行の同僚たちが小さな病院の事務長や、居酒屋の店長へ出向⇒転籍して、年収が500万円前後に下がっていることを知って悩んでいました。「ebisu、飲み会があって年収の話が出ると、身が縮まる思いがする、言えないよ」、彼の年収は銀行の元同僚たちの4倍ほどでした。「出向がたった3年早かっただけで俺はついていた」、そうしみじみ語っていました。
大手都市銀行は、1980年代半ばには50歳前後で取引先企業へ出向し、2~3年後に転籍が普通でしたね。定年まで勤めあげるのは取締役への出世が見込める人たちくらいなものでした。
自衛隊も同じです。防衛調達品の取引先企業の役員クラスや部長職へ転職(もちろん防衛庁が斡旋してました)、輸入業務をしている企業は仕入れ価格を操作して、高い利益率が確保できるという仕組みになっていました。米国へ防衛庁が価格調査に行きますが、それに天下りした防衛庁のOBが同行して、「問題が起きないように」対応していました。
上場直前の企業には、信託銀行や保険会社からの天下りも多いのです。50歳前後が目安でしたね。
大企業のリストラはもう40年以上、続いていることなのです。「昭和型の終身雇用」なんてほとんどありません。40代以上の社員はいつリストラされるか怯えています。