SSブログ

#5098 職人の仕事「千年の和釘に挑む」:NHKBS番組 Nov. 1, 2023 [A3. 職人仕事観に基く経済学の展望]

 午後6時10分からのNHKBS放送人間ドキュメント「千年の釘に挑む」の後ろの方だけ見た。
 白鷹(しらたか)さんという鍛冶職人が、薬師寺の五重塔の建設に使う3000本の和釘を鍛造するところを見た。先端から一寸ばかりのところのわずかばかりのふくらみが釘の命を左右するという。出荷の3日前に、完成して段ボール箱に入れてあった釘を取り出し、もう一度火入れしてふくらみを調整するために打ち直しをしていた。
 当日、くぎを打ち込むのを見に薬師寺の工事現場へ出向いて、一本一本釘が金槌で撃ち込まれるのを確認していた。
 「千年もつかどうかは誰にもわ からない、だが、満足している。こういう仕事をした職人がいたと思ってくれる人がいたら幸いだ」
 そんなようなことを言っていた。
 白鷹さんには法隆寺宮大工最後の棟梁西岡岡常一さんとの出会いがあった。尊敬する西岡棟梁の写真が額に入って鴨居に掲げられていた。
 「人間怠惰になる。西岡棟梁が上から見ていると思うと怠惰な心が引き締まる」
 
 材料に米国産の硬い木材も使われるので、それに合うのはカタイ釘がいいのか、それとも今まで通りのものがいいのか、ふくらみはそのままでいいのか、やってみなけりゃわからないので、太さを変えて3種類作り、宮大工に節のある木材に打ち込んでもらって確認していた。カタイ釘は節を貫き、節を割ってしまう。節を割ると木材も割れてしまう。従来のやわらかい和釘を打ち込むと節を回り込むようにぐにゃりと90度くらいも曲がって回り込んでいた。これなら割れないし、釘がしっかり利いている。
 江戸時代に使われた和釘をたくさん調べているうちに、ずいぶんできの良いものが見つかった。「姿かたちがいい」、大量生産が始まって仕事が粗くなった時期に、これだけ質の良い釘を作った鍛冶職人がいたのだと、その出来栄えに感心していた。

 西岡さんから職人の心構えを書いた長文の手紙をいただいて、大切に保管していた。その中に「名利を求めず、ただただ精進すべし」と書いた文が載っていた。これが職人の心意気だろう。

 薬師寺の五重塔は小川三夫さんが西岡常一棟梁に任された仕事ではなかったか。小川三夫さんの書いた本の中に出てきた。記憶が少し曖昧です。

<余談:新しい経済社会の創造>
 職人仕事とマネジメントが鍵です。マルクスは『資本論第1巻』を出した後、続巻の草稿を書き貯めましたが、市場論で行き詰まりました。体系の前提条件であった労働価値説が誤謬だったことに気がついたからです。彼は続巻の出版をあきらめました。1866年に『資本論第1巻』を出版して亡くなる1883年までの17年間沈黙してます。研究方向は新しい経済社会のデザインの方へ傾いていったようです。
 ところで、資本主義経済社会の分析と新しい経済社会のデザインはまったく別の仕事です。
 市場関係論というフィールドで考えると、マネジメントの巧拙が製品の品質とコストを決めています。ニーズの大きい商品ほど市場では高く売れます。マネジメントが下手で生産性が悪く、品質が芳しくない製品は安値でなければ売れません。雇っている社員や非正規雇用の人々にたくさんの給与を支払うためには、生産性が高く、高品質の製品を低い生産費で生産できれば有利です。そこにマネジメント・スキルと職人仕事の重要性があります。
 ビジネスには「売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よし」や「浮利を追わない」「足るを知る」などの倫理が必要です。新し経済社会はそのビジョンを創り、実現のための具体的な長期戦略を策定し、実行することで手に入れられます
 たとえば、自然条件の制限のない工業製品は、それぞれの国で作られ消費されたらいい。自然条件の制限のあるものを貿易で贖えばいい。日本のようなほとんどの工業製品を自国で生産可能な国は、生産システムや職人の技術を発展途上国へ移転したらいい。コマツが中国企業に対して製造技術や職人魂を無償で指導したように。
 人類は欲望を制御して、拡大再生産をやめて持続可能な生産システムを手に入れるべきです。大きな社会実験になるので、やってみて不都合が出たら、修正していけばいい。
 どんな経済社会がいいのか、具体的なビジョンを議論できるといいですね。ビジョンができれば、次はそれを実現する長期戦略立案です。そして実行。
*「#5088資本論の論理と背理法:労働価値説の破綻を証明」

*和釘解説及び画像


にほんブログ村
 

木のいのち木のこころ―天・地・人 (新潮文庫)

木のいのち木のこころ―天・地・人 (新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/07/28
  • メディア: 文庫
木に学べ 法隆寺・薬師寺の美(小学館文庫)

木に学べ 法隆寺・薬師寺の美(小学館文庫)

  • 作者: 西岡常一
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2018/07/01
  • メディア: Kindle版

nice!(0)  コメント(0) 

#5097 ドル買い円売り・為替介入資金は1361億ドル Nov. 1, 2023 [95.増え続ける国債残高]

 植田日銀総裁が長期金利1%超を許容する発言(1%を上限とする⇒1%をめどに)を昨日(10/31)しました。とたんに、金利は0.95%へ上昇し、円の対ドル相場は151円/$を超えています。
 神田財務官は、為替介入の準備は万端整っていると発言してますが、その資金はわずか1361億ドルにすぎませんから、5回介入したらすっからかんとなり、打つ手がなくなります。つまり、「張り子の虎」なわけです。もちろん財務官はそんなことは百も承知だし、金融業界の関係者たちも承知していますよ。つまり、専門家には通用しないブラフ、そして蚊帳の外にいる国民への虚偽に近い説明です。アカウンタビリティ(説明責任)はどこへ行ったのでしょう?本当のことを言ったらクビになります、財務官僚の倫理レベルは地に落ちてますが、反骨精神の持ち主はいつでもどこでも稀ですから、しかたのないことなのでしょう。
 安倍元総理のモリカケ事件をきっかけに、財務官僚の倫理レベルが地に落ちてしまったことは承知の事実です。国会で嘘をついた財務官僚たちはお咎めなしでした。それどころか出世してましたね。財務官僚の地に落ちた倫理レベルは回復の兆しすら見えませんから、統一教会との癒着も含めてまことに罪の深い総理大臣でした。国会で108回も嘘をついた、稀代の総理大臣でしたから、官僚だけでなく政治家の倫理レベルも地に落ちてしまいました。
 健全な保守主義の立場から見ると、政治家と官僚の倫理レベルの低下は由々しき事態です。皆さん自分の利害や、所属している政党の利害が最優先になっているように見えます。国民や国のためなんて考え・行動する政治家や官僚は絶滅危惧種になったのでしょうか?

 外貨準備は1.29兆ドルありますが、そのほとんどは米国財務省証券(=米国債)で、売却には米国政府の同意が必要です。日本政府が大量に米国債を売りだしたら、米国債の金利が暴騰して、米国銀行や証券会社が経営危機に陥ります。日本が引き金を引くことになるので、やれるはずがないのです。
 米国債の金利は5%に近づいています。金利がさらに上がれば、米国債を保有している金融機関は、債券の評価損で債務超過となり、金融が大混乱に陥るリスクをはらんでいます。
 神田財務官が「準備は万端整っている」というのはわずか5~6回分の為替介入しかできないという、非常に脆弱なものです。国際的な投機筋はそんな事情を見透かして動きます。

 日銀は長期金利をアップして、日銀が日本国債を買えなくなった時に備えて、債券市場の正常な機能を取り戻す責任があります。金利が2%になったあたりからとっても危険なゾーンへ突入することになるのでしょう。物価上昇はすでに歯止めが利きません。

 植田日銀総裁、昨日の記者会見の時に震えていました。失礼とは存じますが、パーキンソン病などの病気によるものか、危機が迫っていることに身体が耐え切れずストレスによるものか、いずれにしろ危うい兆候に見えます。これでは実際の危機突入の局面で身体が持つとは思えません。
 財務省OBたちは、540兆円もの国債を抱えて日銀が戦後最大の危機にあることを承知しているので、だれも日銀総裁を引き受けたがらないようです。

 国が困難な局面へ突入してしまえば、ひょっとして大きな仕事を引き受ける人材が若い人たちの中から出てくるのかもしれませんね。出てこなくても、30年間ほど苦しい状態が続くだけで、そのうちに人口が4割も減少しますから、縮小均衡で住みよくできます。それには、縮小ビジョンを練り上げて、望ましい経済社会を実現するために具体的な長期戦略を立案して、坦々と実行することです。成長戦略なんて幻影を追い続けてはいけません。人口縮小、経済縮小の中に幸せを見つけましょう。

*「#5095茹でガエルの日本 150円/ドル 円の信認が崩れてしまっている」


にほんブログ村


nice!(0)  コメント(0)