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#4689 コロナPCR検査保険点数が半分に Jan. 5, 2022 [35.1 COVID-19]

 COVID-19のPCR検査名は、SARS-CoV-2PCR検査であるが、いままで委託検査だと1800点(18000円)、病院内でやると1350点(13500円)だった。それが4月から700点に下げられる方向で検討されている。
 1年半以上前にSARS-CoV-2PCR検査は、検査センターの原価から考えて、500点が妥当だと弊ブログに書いた。下げないのは感染研と都道府県の衛生研究所で独占的に検査して、データを独占すると同時に法外な収入をあげようという「二重の利権」にかかわる問題であった。

 経緯は2020年5月5日の弊ブログ#4241「COVID-19検査:保険点数は500点でいい」拡大へ方針転換に書いてある。

#4241より転載
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 東京都医師会センターが都内で40か所以上のPCR検査センターを立ち上げ、大手民間検査センター3社と契約済み。京都大学等からも保健所の縛りをなくしてPCR検査ができるようすべきと要望を突き付けられていた。国民からの批判が大きいので、専門家会議はPCR検査についての方針転換を表明せざるを得なくなった。人口10万人当たりでの数字を見たら一目瞭然。

(写真:読売新聞)

* https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%ef%bd%90%ef%bd%83%ef%bd%92検査数「他国より明らかに少ない」…政府の専門家会議、センター増設求める/ar-BB13zRTy?ocid=spartandhp#image=1

 保険点数の公表は3/5である。同日付で最大手臨床検査センターSRLは同日付で処理能力が1100テスト/dayであることを公表している。47都道府県の衛生研究所全部を合わせた実際の処理件数が3000-6000テスト程度である。
*道立衛生研究所
http://www.iph.pref.hokkaido.jp/profile/about.html

 公表されたCOVID-19PCR検査の保険点数は1350点だから13500円、臨床検査名称はSARS-CoV-2PCR検査となったようだ。これは臨床検査学会が名称を管理し、SRLが事務局をしている日本標準臨床検査項目コードに付された正式名称なのだろう。すぐにネット配信されただろうから、全国の病院やクリニックのシステムはこのコードで動いている。準備は2か月も前に整っている。必要なプライマーの自家製造も2月初旬に体制を整えている。

<1350点の保険点数は異例、500点に切り下げるべき>
 ところで1350点というのは異例に高い点数になっている。衛生研究所の原価ベースに厚生労働省が設定したのだろう。従来の保険点数の価格帯からは500点くらいが「相場」である。大手民間検査センター3社はこの点数で十分に採算がとれる。老人を除き患者負担は3割だから1500円で検査できることになる。
 13500円のものがなぜ大手民間検査センターならどうして4割になるのかは簡単な話だ。1日当たり10テストと100テスト、1000テストではコストがまるで違う
 実際にそういうシミュレーションをして、新規導入項目の受託価格を決めていたことがある。研究部や特殊検査部の検査担当者がそれぞれ計算して、それをオーソライズするようないい加減な体制だった。研究部や特殊検査部の課長さんたちの相談に乗っていたことがある。会社の利益に大きな影響があるので、原価計算システムや予算システムと連動させた、新規導入項目や既存項目の販売価格決めのために利益シミュレーションシステムを1988年ころに構想していた。そんなシステムをもっている会社はいまでもないだろう。
 変動費は検査試薬代のみ。固定費はPCR検査機器の減価償却費そして人件費である。テスト数の桁が上がるにつれて、固定費負担は急減する。生産性が悪く、国内基準での精度管理体制である衛生研究所の検査コストは高くついて当然である。道立衛生研究所の感染症部のウィルス・グループは数人だろう。だから、検査数増大には耐えられない。実務上検査を制限せざるを得ないのである。各地の保健所とのやり取りが目に見えるようだ。まことに気の毒である。

<大手臨床検査センターの規模はケタ違い>
 大手臨床検査センターのSRLを例に挙げると、八王子ラボには800人前後の臨床検査技師がいるのではないか。1994年ころに調剤薬局事業をスタートさせるために調べたら70人を超える薬剤師がいた。PCR検査の導入は1988年ころにさかのぼる。製薬メーカー・ロッシュとPCR検査に関わるロイヤルティ契約をしたのは1990年ころのことである。わたしは学術開発本部スタッフで製薬メーカとの試薬の共同開発案件2個とPERT法による共同開発業務の標準化、学術情報部のラボ見学案内のうち海外メーカからの部分と異動する前から学術情報部長のKさんと臨床検査項目コードの産学協同プロジェクトにかかわっていた、私の提案で大手6社と臨床病理学会の産学協同プロジェクトとして始まった仕事だったからだ。忘れてた、沖縄米軍からの依頼で出生前診断検査の導入調整、慶応大学病院との出生前診断検査MoM値の日本標準値決定のための産学協同プロジェクトもこの時期にやってしまった。SRL側のマネジメントを担当していた。精度保証部のほうはCAPライセンス査察へ向けての準備作業の応援くらいなもの。大きな仕事はなかった。ああ、学術開発本部内の3部の業務3割カットなんてプロジェクトもわたしの担当だった。各人の業務の棚卸をして、優先順位付けした3割カットしました。特別忙しいという感じはなかった。多い時にはプロジェクトを5つ抱えていたこともあったから。毎週行われていた開発部の会議で担当者から報告があったのでロッシュのPCR検査ロイヤルティの話は記憶にある。ロッシュと契約する前にPCR検査が導入されており、その時には購買課で検査試薬の価格交渉とSRLの固定資産購入全部を担当していたので、最初のPCR検査機器はわたしが購入している。SRLにはかれこれ30年を超えるPCR検査の実績がある。研究部と特殊検査部への導入が早かった。わたしが八王子ラボの機器購入を担当したのは2年余だったが、それからあとでウィルス検査部でもPCR検査導入がされただろう。量が増えれば特殊検査部から、ウィルス部へ検査が移管される。だから、PCR検査経験者は少なくない。

<保険点数は半分以下に下げるべき>
 医療費はそれでなくても年々増大の一途をだどっており、減らすためにこの20年間で療養型病床数を20万ベッド減らしている。さらに採算の悪い地方の病院の統廃合によって20万ベッド減らす計画が持ち上がっている。
 患者負担は小さい方がいい、検査拡大に伴って、保険点数は500点に引き下げられるべきだと思う。心配なら、厚労省は大手3社に問い合わせてみたらいい。下げれば都道府県の衛生研究所は採算割れするから、やればやるほど赤字になり、都道府県の一般会計から繰入金を増やさざるを得なくなるだろう。生産性が悪いのだからやめたらいいのである。官から民へである。各地の衛生緩急所はパンディミックの初期だけ対応できたらいい。

<処理能力アップの必要日数>
 例えば、1000テスト/日から10000テスト/日への処理能力のアップには、SRLなら3週間程度かかる。PCR検査室増設用のスペース検討に2日、BSEL-3へ改造するのに発注から工事完了まで10日間、その間に必要な人数の人事異動発令とトレーニングをしたらいい。トレーニングには標準作業手順書を使えばいいだけ。RNAウィルスだから前処理に手間がかかる。異動で来る人たちはみなさん日ごろからルーチン検査をしていて検体の取り扱いには慣れているプロの職人であるから、およそ3日間のトレーニングでやれます。RNAウィルスPCR検査のベテランがすぐそばにいるのですから、問題が生じても対応できるでしょう。

<世界最高レベルの精度保証:CAPライセンスラボ>
 SRLは1988年ころ世界で一番厳しい精度管理基準CAPライセンスを取得している。国内基準ではなくて、一番厳しいCAPライセンスを基準としてやっている。2年ごとの更新・査察を受け入れているので、標準作業手順書は新規導入検査や既存項目の手順変更のさいには必ず提出されている。日本語と英文で精度管理部門が厳格に管理している。他の大手2社もあとから続いてCAPライセンスを取得しているので精度管理体制は同じだ。だから、国内基準の都道府県の衛生研究所よりもかなりレベルの高い精度管理体制になっている。

<検査を担当する人材確保も専用機器も制限なし>
 もちろん、機器の増設も必要だから、発注したらいい。PCR検査装置は単に温度を上げたり下げたりして増幅するだけの装置だからそれほど高額ではない。検査結果データを読み取るところがコンピュータ処理になっているだけ。
 大手臨床検査センター3社には検査要員に関する制限や機器の制限はない。

<余談:生徒たちがめんこい>

 ebisuはニムオロ塾で週に4日授業している。看護専門学校への進学を勧めた生徒たちはもう戻ってきて市立根室で働いている者もいるし、全道各地で看護師として働いている。いまニムオロ塾で看護学校への進学を目指して勉強中のものも数人いる。
 それぞれの病院で感染症患者を受け入れたときに、体調に異変を感じたら、すぐに新型コロナPCR検査を受けられるようにしてあげたい。
 大手民間検査センターはニーズが大きくなってもいくらでも処理能力を拡張できる。わたしは、知りうることをここに記して、大人の責任の一端を担いたい。そして状況が改善できるように祈る。


<msnニュースより抜粋>
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PCR検査数「他国より明らかに少ない」…
 政府の専門家会議、センター増設求める

 専門家会議は、日本の人口10万人当たりの検査数が187・8件で、イタリア(3159件)、米国(1752・3件)、韓国(1198件)など他国と比べると「明らかに少ない」と指摘。検査の陽性率は5・8%で他国と比べて低いことから、「潜在的な感染者を捕捉できていないわけではない」としつつも、都市部を中心に「検査待ち」が多く報告されたことなどに注目した。

 検査が進まなかった理由としては、▽発熱などの症状を訴える人からの相談を受け付ける保健所が業務過多である▽検査を担う地方衛生研究所の体制が十分でない――ことなどを挙げた。感染者の中には急激に重症化する人もいることから、検査を拡充し、早期診断と適切な治療につなげることが必要だと訴えた。

 その上で専門家会議は、医師が必要と考える患者を迅速に検査できるよう、保健所を介さずに検査ができる「地域外来・検査センター」の増設や、防護具の確実な調達、検体採取をする人へのトレーニングなどを求めた。
 厚生労働省によると、国内のPCR検査の実施可能件数は現在、1日約1万6000件。政府が目標に掲げる「1日2万件」には達しておらず、実施件数も1日最大で9000件程度にとどまっている。


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 こちらも是非お読みください
*新型コロナウイルス「最前線の医師」が語った本音

デイリー新潮2020年05月02日06時32分
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/dailyshincho/nation/dailyshincho-625938
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 新型コロナウイルス関連の報道では、数多くの医師がメディアに登場して、自身の知見を述べている。しかし、最前線で感染者たちと接している医師の話をじっくりと聞く機会は意外と少ない。実際にはその患者を診たことがない「専門家」(中には医師ではない者もいる)のオピニオンのほうが多く流布されている。現場からの声として紹介される多くは、治療現場の苦境といったところに限定されているようにもある。

 そこで今回、ある総合病院で新型コロナウイルスを実際に診察し、また現場の統括もしているベテラン医師に匿名を条件で本音を語ってもらった。匿名にした理由は「特におかしなことを言ったつもりはありません。同じように考えている医師も多いと思います。でも、ただでさえ忙しいのに、病院あてに抗議などが来るとたまらないから勘弁してください」というものである。

――お勤めの病院はどんな感じですか?

 現状をお話しする前に、平時の病院、医療がどうだったかを少しご説明させてください。 もともと日本は国民皆保険ですし、東京は医療へのアクセスが極めてイージーになっていました。中学生までは医療費ゼロですし、救急車を呼んでもお金は請求されません。欧米なら数万円は確実に取られます。それゆえ、子供を昼間病院に連れて来られないというだけの理由で、救急外来を夜間に普段使いするような親までいたのです。

 だからいつも病院が混雑していることが問題になっていました。一方で、開業医の先生を含めて医療機関側もそれで儲けていた、という面もあったことは否定できません。「どんどん来てください」とやって、医療費は国に負担してもらえばいいのですから。 ただ、新型コロナウイルスの影響で、普段は安易に病院に来ていた方が減ったので、全体としての患者数は減っています。 感染症や救急を担当していない病棟や医師はむしろ時間に余裕ができているようです。不要不急の手術も延期にしていますから。 1、2月に比べて3月の病院全体の収入は3割減というところでしょうか。病床の稼働率も10%ほど下がっています。 おそらくこれは開業医などでも同様でしょう。「売り上げ」が落ちて困っているところもあるだろうと思います。

 一方で、私たち新型コロナの担当医たちだけは忙しくなっています。うちの病院では新型コロナの診察を救急医が受け持つようにしています。その担当医らの仕事は、大雑把にいって1.5倍になっているという感じです。ただでさえ忙しかったところに、仕事が急増しました。
 私が若い頃は救急を専門とする医師は月15日くらい当直というのが当たり前でしたが、さすがに今はそうはいかないので、当直は月6〜8日くらい。週休2日は確保できるようにして、休日出勤の際には代休も取るように、という方針でした。
 これがさっき言ったように仕事量が増えているため、「当分、代休は取れません」という感じになっていて、実感としてかなりキツい日々が続いているのは事実です。
 私自身は現場の診療の他に、病院全体の感染症対策等々の仕事が増えました。省力化できたことといえば、テレビ会議が増えたので結果として会議の時短などが進んだことでしょうか。

――新型コロナに関しては、膨大な情報量が発信されています。この状況をどう見ますか?

 SNSで誰もが発信できるようになったことで、不安をかきたてる情報が溢れすぎている、という印象はあります。
 また地上波のテレビ、ワイドショーがセンセーショナルに伝える傾向があるのは良くないと思っています。たしかに政府の言う通りのことを流すのでは政府広報になってしまうので、良いことだとは言えません。 しかし、恐怖を煽って,今の対応が危険だと強調しすぎているように思います。
 現政権が嫌いなのかもしれませんが、それと医学の問題は別です。
 現在の政府方針、専門家委員会の方針は、専門的な知見のある人たちが議論して打ち出したものであり、相応の合理的な判断だと現場の医師から見ても思います。
 ですから煽られておかしな行動をとるのではなく、とにかく今の対策を守ってもらわないと,収束できるものもできなくなると思います.
 にわか専門家のコメントが全部間違っているとは言いませんが、大事なことをうまく伝えられていないと感じます。自称専門家はもちろん、芸能人の方などの不用意な発言でも、視聴者は扇動されます。
 外国の例を簡単に紹介するのも問題です。「海外ではこうだ」というのですが、それぞれの国によって医療レベル、保険制度、国民性、文化など異なる背景があります。だから安易に「あそこがいい」「ここがいい」という話ではありません。
「アフリカの〇〇ではこうだ」と言われても、その国は常に様々な感染症の脅威が存在する国かもしれません。その国の政策を参考にする、といっても無理があるのではないでしょうか。

――「何もしないと42万人が死ぬ」というシミュレーションも恐怖を煽っていたのではないでしょうか?

 あれはあくまでも「何も対策を講じなければ」という前提で、最悪の事態を示したのですから、「ステイホーム」を訴えるという点では良いのではないでしょうか。
「エアロゾル」感染といった言葉が独り歩きしたせいで、ちょっと勘違いがあるように思うのですが、基本的には空気感染ではなく接触・飛沫感染です。だからちょっと話をした程度であれば、問題はない。
 空気感染だと思うと「じゃあ空気がいいところなら大丈夫」という勘違いが生まれます。ここが心配です。
 たとえば「空気がいい」ゴルフ場に行く、公園でジョギングをする、というのは問題ないように思っている方もいるでしょう。
 たしかにゴルフ場でプレーするだけなら感染はしないでしょう。しかし、その前後に外食をしないでしょうか。ジョギングの最中に無意識にガードレールを触って、その手で顔を触り……となっていないでしょうか。
そういうリスクがあるからこそ、「ステイホーム」と呼び掛けているわけです。あくまでも個人的な、そしていささか楽観的な見方ですが、きちんと自粛をしていれば、あと1、2カ月のうちには良い状態が来るのではないか、と思っています。

――そうした報道に煽られて、検査や診察を求める患者さんが殺到していて、かえって病院が困っているとも聞きますが、どうなんでしょう? 

 確かに、必要とは思えない患者さんが検査を求めてくる事例はあります。直接こちらの病院には来なくても、かかりつけ医から紹介状をもらってきて、検査を求めるケースです。そういう人の中で検査を断られた人が、SNSやテレビで「検査も受けられない」と主張することもあるのでしょう。
 ただ、この間、数多くの新型コロナウイルス感染者を診てきた者として言えるのは、「この人は陽性だな」と思う人は検査に回さなくても、ほぼわかる、ということです。あくまでもその診断を確定させるために回すのです。病歴を聞き、問診をして、CTを撮り……といった診察の過程でかなりの確率でわかります。
 ところが、そうした経験のないお医者さんが、患者さんに強く言われたとか、あるいは患者さんサービスの一環で検査を求めるとどうなるか。結果として、本当に早く確定して欲しい人の検査スピードが遅くなります。
これが問題です。

――テレビに出ている「専門家」の強い主張の一つが、「とにかくPCR検査を増やすべき」というものでした。これはどうなのでしょう? 

 これは絶対に間違いです。少しでも専門知識がある人は、全くこれを望んでいません
 他国と日本が違うのはこの点で,本当に医師が疑った例にのみ検査をやっている点で感染の広がりをコントロールできていることは確実です。
 とはいえ確かに検査のスピードは遅かったから、そこは今改善を進めています。 ただし、誰彼構わず検査をオーダーできるような状況を作らなかったことは100%正しかったと考えています。
 日本のように国民皆保険の国で、なおかつ感染症に詳しくない町のクリニックのようなところまでもが、自由にPCR検査をできるような環境を作っていたら、間違いなく院内感染が多発していたでしょう。おそらくニューヨークやイタリアの比でない状況になったと思います。
「かかりつけ医」に相談することは否定しません。しかし、そこに多くの人が押し寄せたら結局クラスターを発生させかねません。そういう状況を作らなかった点では、当初、検査を絞ったことは決して批判されるようなことではないのです。
 現在報告されている院内感染にしても、慣れてない人が普段使わないような感染防御具を適切でない使用をしたがために他の人や患者に感染させる例があとを絶ちません。
 ドライブスルーでのPCR検査を増やせ、という意見についても、乱暴に思います。病院外での検査体制は進めたほうがいいでしょうが、やり方を間違えるとかえって感染者を増やすことにもなりかねません。

 別の観点から補足させてください。
 毎年のインフルエンザの流行の仕組みをご存じでしょうか。
 PCR検査が注目されることで「偽陽性」「偽陰性」といった言葉もよく目にされるようになったと思います。前者は「本当は陰性なのに陽性と出ること」で後者は「本当は陽性なのに陰性と出ること」ですね。
 実はインフルエンザの検査でも「偽陽性」「偽陰性」は一定の確率で発生します。日本では「インフルエンザかな?」となったらまず病院に行って、検査をしてもらって、タミフルを飲んで、ということが当たり前に思われている方が多いかと思います。
 でも実は、こんなことをしている国はそんなに多くありません。一つには先ほどから言っているように、医療費が高い国では、そのたびに大変な料金が発生するので、いちいち検査しない、という人が多いのです。また、タミフルは病気を治す薬というよりは、よくなるまでの期間を短くする(7日が5日半になる)という性質のものです。
 アメリカならば、この検査とタミフルだけで下手をすると500ドルはかかるでしょう。だから多くの人は「家で寝て回復を待つ」のです。私もそうしています。
 ところが日本は医療費が安いことに加えて、「休むなら証明書を出せ」という習わしが学校や企業にあるので、こぞって病院に来て検査を求めるわけです。
 問題は、インフルエンザの簡易キットの感度は7割から8割なので、2〜3割の人は本当は陽性なのに「陰性」という結果になります。
 その人たちは、病院のお墨付きをもらったということで、自由に動き回りますから、コミュニティの中で感染を広げます。実は、これが毎年のインフルエンザの流行の大きな原因なのです。今回のことを教訓に、「インフルの証明書がないと休めない」といったおかしな慣習はなくしてほしいものです。何にせよ具合の悪い人は休むべきです。結果としてそのほうが学校や職場のためにもなります。
 そして、今年、インフルエンザがあまり流行していないのは、多くの人が手洗い、うがいをして、なおかつちょっとでも具合が悪ければ、自ら行動を抑えるようにしたからです。その結果、「実はインフル」の人が感染を広めなかったわけです。
 話をPCR検査に戻せば、検査の無闇な拡充に反対している人たちが怖れているのは、インフル同様に、「お墨付きを得た、でも本当は陽性です」という人が感染を広めることにつながりかねないからです。
 よく韓国やイタリアのほうが日本よりも検査数が多い、といって日本を批判する人がいるのですが、これは話がまったく逆です。韓国やイタリアは最初に検査数を増やし過ぎたために、感染を広めてしまったのです。
「医療資源が無限にあり」「偽陽性の人でも全員どこかにちゃんと収容できて」「(偽)陰性の人が行動を慎んで他人にうつさないようにする」という前提がすべてそろっていれば、検査数をどんどん増やすのもいいでしょう。
 しかし、そもそも検査はそんなに簡単なものではありません。検査というのは少なくとも検体を取る人と、検体を検査する人の両者がいてはじめて検査ができるのです。仮に医師会の先生たちが頑張って検体をたくさん出しても、検査する人が増えなければ結果が出るのがより遅くなってしまいます。本当に必要な検査が滞るのです。
 もしも「やる気になればできる」と言い張る方がいるのなら、ぜひそういう人材がどこにまだ眠っているのかを教えていただきたいものです
 検査の技術の習得は一朝一夕にはできません。だから長期的な観点では、もっと日本はこういう検査もスピーディにできるようになればいい、と言われれば「その通りです」と答えます
 しかし、今まさに感染爆発を防ごうとしている時期に実現不可能なことを言っても仕方がありません
 テレビに出ている中でも、自称「専門家」ではなくて、本物の専門家の先生方もいらっしゃいます。そうした方に、「日本のPCR検査数は少ないのでは」とか「より検査体制を充実させられるといいのでは」と問えば、「そうですね」と答えるでしょう。それ以外の答えをしようがありません。

 しかし、それで「それみろ、やっぱりPCR検査が足りないんだ」と言い張るのはやめてください。
 繰り返しますが、現場で本当にこの病気を診ている医者で、もっと検査数を増やせ、などと言っている人はいないはずです。 

――ではなぜお医者さんの中で「PCR検査を増やせ」という声が根強いのでしょうか? 

 例年、この時期はインフルエンザの患者さんで病院、特に開業医さんは混み合うのです。経営のことを考えると患者さんがたくさん来るのは悪いことではないと考える先生もいるでしょう。今年はインフルエンザ自体が流行していませんし、万が一新型コロナウィルスに感染している患者に検査をすれば、感染のリスクがあるためほとんど行われていません。現在、新型コロナの診察はあまりやっていないでしょうが、一部の人にとっては「検査は怖いから検査センターにお願いするとして、診察は引き受けたい」といったモチベーションがあるかもしれません。
 そういう人にとっては、かりに「PCR検査センター」のようなものが出来れば、都合が良いかも……というのは穿った見方でしょうか。 

――「WHO」の関係者と名乗る方、ノーベル賞受賞者の方もPCR検査を増やすように主張していますが。 

 海外にいて、どのくらい日本の事情をご存じなのかわかりません。また、たとえノーベル賞を受賞された素晴らしい先生方であっても、必ずしも感染症やこの病気の専門家ではないので、仰ることがすべて正しいとはいえないと思っています。
 医学はそれぞれの科や専攻の専門性が高い分野なので、たとえノーベル賞受賞者であっても、専門外のことには確証を持って発言していないのではと感じることもあります
 なお、「検査、検査、検査」というWHOの事務局長の発言もいまだに曲解されている方がいます。あれはあくまでも発展途上国などで検査を軽視している国に対してのメッセージであって、日本などを念頭に置いているわけではありません。

――ただ、検査をまったくしないと不安だという気持ちもよくわかります。「37.5度が4日間続くまで様子を見る」と言われても、その間に急激に悪化したら……と不安になるのでは。

 気持ちはよくわかるのですが、熱だけが兆候とは限りませんし、本当に具合が悪くなったら救急車を呼ぶほうがいいと思います。新型コロナ以外でも、いろいろな病気がありえるのですから、本当に具合が悪い時はそうするべきでしょう。...


 続きはURLをクリックしてお読みください。これもご意見の一つではあると思います。現場で診療している医師や看護師さんたちにもいろいろな意見があると思います。

 

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<ebisuの感想>投稿欄の内容に少しつけ足しました
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通りがかりさん

現場で新型コロナ感染症治療にあたっている医師の方のご意見ですね。ありがとうございます。
本文へ追記転載しました。

わたしにはうなずけるところもあるし、そうではないところもあります。

全体を通してみると、話に飛躍がありすぎます。当たり前のことですが、お医者さんにも視野の広い方と狭い方がいらっしゃるというだけ。
次の点は、私の書いたものをお読みいただけたら、納得頂けるでしょう。診療現場の医師とは言ってもすべてをご存じなわけではないのです。
以下は、PCR検査について言及してある部分を抜粋しました。大きな事実誤認です。
PCR検査をやる人材がどこに眠っているかについてですが、大手民間臨床検査センターにニーズに応えられるだけ十分な人材がいます。
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 もしも「やる気になればできる」と言い張る方がいるのなら、ぜひそういう人材がどこにまだ眠っているのかを教えていただきたいものです。
 検査の技術の習得は一朝一夕にはできません。だから長期的な観点では、もっと日本はこういう検査もスピーディにできるようになればいい、と言われれば「その通りです」と答えます。
 しかし、今まさに感染爆発を防ごうとしている時期に実現不可能なことを言っても仕方がありません
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自分が知らないということすらご存じないご意見です。実現不可能な話ではありません、大手臨床検査センター3社にはPCR検査がどれほど増えようとも、それに対応できるだけの人材がいます。現実にとっくに用意されているという話です。診療に当たられている感染症の一専門医の方が知らないのはしかたがないでしょう。しかし、専門家会議の面々はずっとこんなことも知らずに、2か月以上も時間を浪費してしまったのです。

ものごとは複雑、だからいろいろな人が意見を言うことが大事なのです。北大の西浦さんのシミュレーションについても言うべきことはあります。データを独占していることと、シミュレーションの前提条件が概要すら説明されていません。変わり目の実績データを20個ほどからy=a×1.115^xという計算式が導けます。途中までの計算値は西浦さんの複雑なモデルとそう違わないはずですが、90日を入れたら、東京都の人口をオーバーしてしまいます。だから、せいぜい30日か40日程度しか蓋然性がなさそうにみえます。モデル計算なんて前提条件の塊ででき上がっています。国内に感染症数値モデルの専門家は彼だけではないでしょう。追試できるような体制が好ましい。データの独占ではなくて公開が必要です。ネットの時代ですから、オープンな議論をしたらいい。

そしてもっと大きな問題があります。ことは感染症にとどまらない。1929年の世界大恐慌以来の「大恐慌」が始まっている可能性が大きいのです。とっくに医療人だけで議論できる問題ではないというのがわたしの意見です。グローバリズムの行き過ぎに対する反動であり、リカードの比較生産費説による国際分業体制の破綻です。経済の枠組みが、ポスト・コロナでは大きく変わります。外側に向かっていたベクトルが、一斉に内側に向かって収縮し始めます。

現場で感染症の治療に当たっておられる医師や看護師、そのほかさまざまな医療スタッフが働いています。そういう皆さんには敬意を表します。だからと言って、感染症の医師以外はこの問題を取り上げるなという意見には賛成しかねます。看護師さんも現在の過酷な臨床現場の状況を告発して医療がすでに崩壊していることを具体的に発信している方もおられます。
新しい事態に直面すれば誰だって間違えることはあります。専門家委員会だって判断を何度も間違えているのです。「37.5度、4日間の発熱が続いた場合」という条件を、批判をずっと浴び続けて、ようやく5/6から外すことになったようです。

感染症と言えば大きなトピックスは1988年ころのエイズ(HIV)騒ぎです。あのときも「エイズサーベイランス委員会」を当時の厚生省が組織しました。委員は感染症の専門家でした。医師からの報告書だけで感染数を把握してましたが。当初の数年間は全国で陽性者は100人未満。1988年かその翌年だったと思いますが、SRLではHIV陽性が毎日1-2件出てました。年間およそ500件です。他にも検査している用の多い検査センターがありました。当時は江東微研の検査数が多いという噂を聞いてました。陽性検体はウェスタンブロット法での確認検査をしてました。厚生労働省はSRLに問い合わせすら行っていません。エイズサーベイランス委員会が把握していたのは、実際の感染者の1/10以下でした。その数字をもとに判断して対策が遅れ、先進国で唯一日本だけがHIVが感染拡大するという情けない事態を招いたのです。専門家会議は32年前の大失敗に学んでいません。検査数を制限することでパンディミックを後押ししてしまったとわたしは見ています
HIVのときはネット環境も今とは違うし、現職だったから声もあげにくかった。いまは外側から知りうることを発言できます。新型コロナは経済にも甚大な影響を及ぼしつつある。1929年の世界大恐慌を上回る景気後退が進行しているかもしれないのです。感染症専門医という小さな村の中の議論だけではとっくに対処できない現実があります。

いろんな方の意見があっていい、読んだ方の判断にゆだねます。
この問題に関しては独断と偏見は避けたいのですよ。現場の医師の発言でも、ダメなものはダメ、事実誤認があれば指摘します。国民の健康と安全、そして経済がだいじですから。


by ebisu (2020-05-05 22:55) 

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 2月下旬だったかな、感染症研究所OBの根路銘国昭という方への取材記事を読んだ記憶があります。「3月にも新型コロナのパンディミックが続いているなんてことを主張する人がいるが、ばかげた話だ。消えてなくなっている」と断言しておられた。新型であるにもかかわらず、内容を検討もせずに季節性インフルエンザと同じだと思っていたのでしょう。軽率な発言でした。この方、国際的にも著名な感染症学者だそうです。どんな専門家も、専門家だからこその間違いがでることがあるのです。それが小さなものなら無視していいが、被害を拡大させるような誤謬は見過ごせないのです。2/14のインタビュー記事です。わからないものを分からないとは専門家ほど言いにくいのではないでしょうか。
https://ja.wikipedia.org/wiki/根路銘国昭


**「コロナウイルス感染拡大は「3月までに終結」と大御所が断言する理由
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70375?media=bb

根路銘 テレビで4月、5月にさらに感染が広がるおそれがあると発言している人がいて唖然としました。コロナウイルスは気温が上がると生きていけないんです。もともと冬の寒い季節に活発になる風邪のウイルスなので、2月末から3月に入れば自然に終息すると私は見ています。


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