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#4106 Sapiens: p.8 The Cost of Thinking Oct. 18, 2019 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]


Mommals weighting sixty kilograms have an average brain size of 200 cubic centimetres.  The earliest men and women, 2.5 million years ago, had brains of about 600 cubic centimetres.  Modern Sapiens sport a brain were  averaging 1,200-1,400 cubic centimetres. Neanderthal brains were even bigger.  
  That evolution should select for larger brains may seem to us like, well, a no-brainer. 

 体重60㎏の哺乳類の平均的な脳の容積は200㏄、250万年前の人類は600㏄、これらに対して現生人類はⅠ200-1400ccもの巨大な脳をもっているのである。このデータには驚きだ。そしてネアンデルタールのほうがわたしたち現生人類よりも大きいのである。体格もよかった。ネアンデルタールは絶滅したのではなくて、わたしたちの中に溶けてしまったのかもしれない。日本人にはネアンデルタールのDNAが多く混ざっていることが化石のDNA解析でわかっている。
 sportが動詞で使われているが、これは辞書引かないと意味が分からないから、引いた。文脈からも意味の判断のつかない単語に出くわしたら、素直に辞書に訊く。目的語を伴っているから他動詞の項を見よう。
 sport:vt …をみせびらかす (ジーニアス4版) 
 sport: to wear or be decorated with something 
  …(Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
 なるほど、何かで着飾って見せびらかすということなんだ。
 脳をひけらかすホモ・サピエンスの脳は平均で1200-1400ccあった。10万年前に6種のヒト属が地球上に暮らしていた時から、わたしたちと同じ脳容積を有していたのである。ネアンデルタールはそれより少し大きい、身体も脳も大きかったようだが、性質が平和的でおとなしかったのかもしれない。だから、ホモサピエンスに絶滅させられたのかも。でも、そんなことはSapiensには書かれていない。
 生徒から質問の出たのは一箇所だけ。一番最後の文である。


 こういうときは飾りを全部外してしまうとわかりやすい文になる。
  That evolution should select for larger brains may seem like a no-brainer. 
            S            V
 飾りの句を外した文を黒板に書いたら、生徒から、「[to us] がどうして飾りの句だとわかるのですか?」という質問があった。「経験の差だよ」と言っては身もふたもない。辞書の用例を見たらだれにでも判断がつく、[seem to be] [seem to do]  [seem like a 名詞句]はあっても[seem to us] はない。マドンナの名曲「Like a virgin」を知ってたらOKだ、知らない?そうか。
 では、ユーチューブのURLを紹介しておこう。2009年の収録、あのころはまだ若いね、世界一のセクシー・シンガーだった。
*https://www.youtube.com/watch?v=s__rX_WL100
 
マドンナ役にピッタリの女子高生がいても、学校祭のパフォーマンスでこの曲はけっしてやらないように、先生たちが卒倒する。(笑) 
 ジーニアスには「It seems like a good idea.それはいい考えのようだ」が載っている。そのまんまの用例だ。それよりは「She seems like a virgin.」「He seems like a cherry boy. 」のほうが覚えやすいだろう。(笑)

 主語が長いから、itで置き換えて、助動詞mayも取り払ってもっと簡単にすると、
 It seems like a no-brainer. (それは「脳なし」のようなもの=だれにでもわかることのようだ)

 ほら、そっくりになった、とっても簡単。


 高校英文法に戻って補足解説しよう。主語がthat節構造になっている。
 if evolution should select for larger brains のifがとれてthat節になったのではないか。should select のshouldは仮定法過去、条件節で用いられるshouldで、ほとんど可能性のないことを表す。進化が意志をもってより大きな脳を選択するわけはないので、shouldを使ったのだろう。[to us] は付加語で、「現生人類であるわたしたちはパスカルの言うように「考える葦」、そのわたしたちにとっては」くらいな意味合い。[,well,] も付け足しで、「えーっと」「うーんとね」という話を切り出すときに使う間投詞だろう。「どんなものかというと、えーっと、「脳なし人間」、要するに脳がなくてもわかるほど単純なことなんだな」ってな具合です。

 「(ありえないことですが、)進化がより大きな脳を選択しているということは、われわれ現生人類にとっては、自明のことのように思えます」


 no-brainer:(考える必要もないほど)明白なもの。(ジーニアス4版)
 something that very simple to do or understand (Cambridge Advanced Learner's Dictionary)
 if...should: Michael Swan 'Practical English Usage' p.237, No.261-1

 翻訳文は、原文と同等程度の量に収めたいというのが出版する側の事情だ。原文の2倍もあるようなわかりやすい翻訳にすると紙代や印刷代も2倍になる。売れないということ。売れる価格帯を想定して、翻訳文の量が決まり、翻訳者に注文が出る。21世紀の出版事情、なかなかたいへんなのだ。そういう目で、翻訳者である柴田氏の訳文をお読みいただきたい。訳文を短縮するために、[to us] も [,well,]も端折っています。(笑)

「進化が大きな脳を選択するというのは、わざわざ脳を働かせなくてもわかることに思えるかもしれない。」柴田訳
  That evolution should select for larger brains may seem to us like, well, a no-brainer.


 こうして原文と並べ、長さを比較してみたら翻訳者の苦労がわかろうというもの。進化は大脳の大きさにこだわるようなものではないことを前提に置きながら、ハラリは現生人類の脳が大きいという事実を述べている。この訳文では進化が大きな大脳を選択しているかのようになっている。こうして意味がまるで違っているのを承知で仕事しなくっちゃいけない、プロってたいへんだな。


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わたしは版を継いで、かれこれもう40年間このスワンのこの本とお付き合いしていますが、また新しい版がでたようです。3版は'fully revised'でしたが、今回も全面改訂のようです。110頁増えて、768頁になっています。書かれている英文はとっても平易で読みやすいので、英語が好きな高校生と大学生そして社会人にお勧めします。わたしの示したページ数は第3版のものですので、悪しからずご容赦ください。
Practical English Usage, 4th edition: (Paperback with online access): Michael Swan's guide to problems in English

Practical English Usage, 4th edition: (Paperback with online access): Michael Swan's guide to problems in English

  • 作者: Michael Swan
  • 出版社/メーカー: Oxford University Press
  • 発売日: 2017/01/05
  • メディア: ペーパーバック

これも改訂版、4版です。わたしの持っているのはこれよりも古い「new edition」、引きやすくて便利です。ページ数は一緒です。書かれている英文はわたしにもわかる平易なものです。wellの用法はこの辞書と次にあげる辞書で確認しました。
Collins Cobuild English Usage: B1-C2

Collins Cobuild English Usage: B1-C2

  • 作者: Collins Uk
  • 出版社/メーカー: Collins Cobuild
  • 発売日: 2019/12/01
  • メディア: ペーパーバック







    この辞書と次の辞書は、翻訳家の柳瀬尚紀(根室高校の先輩)さんから、弊ブログ投稿欄で教えていただきました。英語に不案内なわたしはとっても重宝してます、宝物です。高校生や大学生には不要な辞書です。名辞典ですが、買い手が少ないので再版も増刷もされないでしょう。このシリーズで名詞辞典があることをいま検索していて知りました。
英語基本形容詞・副詞辞典

英語基本形容詞・副詞辞典

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 研究社出版
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英語基本動詞辞典

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  • 出版社/メーカー: 研究社出版
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#4105 英語が苦手の高2生のための短期特訓9th Oct. 17, 2019 [78-1Vivid 3短期特訓補習]

 早いもので、英語が苦手の高校2年生のための10回の特訓も来週で終わりである。毎週水曜日、2時間の補習授業を飽きもせずによくがんばった。来週こそは辞書を引いて予習してきてもらいたい。(笑)
 釧路の病院へ通院して休んだ生徒が一人いるので、少し丁寧に書いておく。

 使用しているテクストは、3年生用のVividⅢ、Lesson4、part3と4である。先週やったところpart2の受動態が関係があるのでそちらの解説からはじめたい。

(1) The cellphone recycling program at the zoos is run by Eco-Cell, a company that designs a program of encourageing organizations to collect old electronic products.


 普通なら、次のように能動態で書いたほうが主語が重くなくていいから、そう書くべきだが、なぜ受動態を使って書いているのか考えてもらいたい。
  Eco-Cell runs the cellphone recycling program at the Zoos.

 Eco-Cellという会社の説明を続く文でしたいから、受動態を選んだのである。このほうがつなぎのよいことは能動文を先頭に置いてみたら、一目瞭然である。
 一般に受動態は、動作の主体に興味がないか、あえて言う必要がない場合に用いられるが、そのほかに文の前後関係から、この場合のようにつなぎが自然になる場合に採用される。江川泰一郎『改訂三版・英文法解説』にしっかり載っていたので驚いた。高校英文法解説書でもこういうことに言及しているものがある。英作文上、必要な知識であることは言うまでもない。

 この文に続く、次の文も、同じ理由で受動態が選択された。
(2) The collected phones are sold to refurbishing companies.
  Then these companies resell the phones in developing markets, such as Africa and Latin America.


 すべての文、そしてすべての節構造は文型を生徒たちに問う。3番目に挙げる文の文型はまぎらわしい。

(3) Eco-Cell sets up a collection point at the front gates of the zoos, and invites people to bring their old cellphones.

  [set up]は句動詞だから、これはⅢ文型である。[a collection point]が目的語になっている。前置詞句ではない。

 さて昨日の授業は、part3からである。

(4) And there is still another serious problem: the illegal miners kill animals, including gorillas, for food.

  [there is ~]は新情報の提示である。「別の問題がある」と述べて、具体的に[:]以下で補足説明している。

 その次の文のthat節の文型を生徒たちに訊いてみた。
(5)  It is said that  the conflict, the illegal mining, and the growing "bush-meat trade" have all led to a dramatic decline in the eastern lowland gorilla population.


 正解者なしだった。主語がやたら長いのである。[the conflict]は第2段落に書いてあった[the civil war内戦]の言い換えである。key wordはこの語のように、言い換えるのがあたりまえの作法だ。haveの前までが主語である。
 populationは「人口」とは訳さないでもらいたい。ゴリラなのだから「生息数」がふさわしい。「生息数」よりも「棲息数」を選びたい。生きている数ではなくて棲んでいる数と思うからだ。微妙にニュアンスが違う。
 次の文も文型を間違えやすい。
(6) The cellphone recycling program at zoos is effective because many people visit there.

  主節は2文型で誰も間違えないが、because以下の従属節は間違えやすい。there=at zoos と取ったらアウトである。there=zoosなのだ。だから、ここは3文型。
 I visit my aunt every summer. 
 I went to Kusiro last week. I bought some cloths there.

  「go+to+行先」であるのに対して「visit+目的語(行くところ)」である。visitは他動詞なのである。

(7)  Acutually, there is something more about the program.

 新情報提供の「there is ~」の肯定文だが、次のような文もある。

 Tell me if there is anyone who can speaks Spanish well.
  (だれかスペイン語を上手に話せる人がいたら教えて)

  anyは開いている、この文例では「誰でも構わないから、スペイン語上手に話せる人いたら教えて」
 この文例でsomeoneを使うと、「誰かいるでしょ、スペイン語上手に話せる人教えて」というニュアンスになる。
 「肯定文ではsome、疑問文ではany」というのは中学校まで。ニュアンスの違いをしっかり押さえよう。
 

 この文のあとに倒置文が出ている。

(8) "The objective is coservation education," says Sharon Dewar, a spokesperson for the San Diego Zoo, one of the Zoos carrying out this program.


 Sharon Dewar に関する補足説明を付け加えたいので、倒置している。文のつなぎへの配慮である。受動態の文例で示したことと同じである。
 「one of the Zoos carrying out this program」は直前の[the San Diego Zoo]の補足説明。

(9) Many people have old cellphones at home, and they don't know what to do with them.

 生徒たちはこの文が訳しにくかったようだ。中学生のときに習った「疑問詞+to不定詞」は覚えていた。
 I don't know what to do.(何をしていいのかわからない)
       〃            where to go.
       〃            when to go.
       〃            how to do.

 (家に古い携帯電話をそのまま家に置いている人多いいが、それをどう処分してよいのかわかっていない)

 知っていることと、使えることには距離があるから、さっそく埋める努力をしてもらいたい。

(10) Dewar says that the users should know this: cellphones contain dangerous elements, so they mustn't be thrown into a landfill.


 elementsは辞書を引かせた。「要素」と誰かが言った。もう少し考えてもらいたい。ここでは「元素」なのだ。theyは直前の「dangerous elements」と「cellphones」の両方の可能性があるが、わたしたちが捨てるのはcellphonesである。面白いのは、捨てるというのを、英語でも「投げるthrow」という語を使うということ。北海道弁と一緒だ。(笑)

(11) Now it's your turn to take action.  Cellphone campanies have also started programs to collect old phones, so it is easy to have yours recycled.


  「it's your turn:あなたの番です」は決まり文句だから、とっさに出るように30回口ずさんで覚えてしまおう。ここで大事なのは使役のhave。使役は「Oに~させる、Oに~してもらう」、受け身・被害は「Oを~される」(同書P.200、284)
 I had my bicycle repaired/stolen.  ⇒ My bicycle was repaired/stolen.


<受動態の文の補足>
 受動態の文はすべて1文型であったが、実際には3文型のものもあるので、簡単に説明しておく。
 4文型動詞の場合には受動態が3文型になることがある。
1.My aunt gave me this watch. (叔母がこの時計を私にくれました)
   (a) This watch was given to me by my aunt. Ⅰ文型
   (b) I was given this watch by my aunt. Ⅲ文型


2. She bought Jill a new sweater. (シルに新しいセータを買ってやった)
   (a) A new sweater was bought for Jill. Ⅰ文型
   (b) Jill was bought a new sweater.  Ⅲ文型

      …同書p.267 

 
 なお、Ⅴ文型の文は受動態にするとⅡ文型になるから、やって確認してみたらいい。


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