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#4072 「先生、土日やってないんですか?」 Aug. 31, 2019 [62. 授業風景]

<最終更新日時>
9/1 正午

 8/19から中3、8/22から高1の新しい生徒が来て勉強している。数学の基礎を固めるのと、勉強のしかたを身に着けてもらうために、最初の1か月は毎日来てもらうことにした。そろそろ手一杯である。生徒の学力レベルにもよるが、一クラス7人、生徒総数20-24人くらいが、わたしの個別指導の限界である。健康上の理由で、週4日体制は崩したくない。高校統廃合の影響で、中学生が勉強しなくなったのと、高校生が増えたので中高の比率が4:6、高校生が6割になった。来年は高校生が8割になる。高校生を教えている私塾は根室に二つだけ。中学生の塾と高校生の塾で棲み分けが進みつつある、ケセラッセラ。

 高1の新入生は苦手の集合と数Aの場合の数や確率の章をやっていた。個別指導だから生徒たちからは質問が次々に飛んでくる。昨日のB帯(7時半から9時まで)の授業は、中2、高1×2、高2×3、高3が勉強していた。それぞれ英語があきれば数学にチェンジ、やっているモノは教科書あり、学校の宿題プリントあり、教科書準拠問題集あり、難易度の高い塾用問題集『SIRIUSシリーズ』ありと、学力と興味に合わせてバラバラ。
 高2男子二人は4時半ころから9時まで奥の大きな座卓で化学の勉強をしていた。教えあいをしているときは、声が授業の妨げになるので、奥の座卓が便利だ。そこでやる分には、声が邪魔にならない。1階にも3人分の自習スペースがある。他にも部屋と座卓があるから、生徒の7割が一度に来ても大丈夫だ。
 来週火曜日(9/3)から根室高校は前期期末テストがはじまるから、生徒たちはテスト範囲の消化に大わらわ。

 ふだんちゃんとやっている生徒は、テスト前1週間になってから慌てることがない。昨日もハラリのSapiensをやろうとしたから、「来週定期テストだから、今日はテスト勉強していいよ」と告げたが、いくぶん不満顔だった。(笑) ふだんちゃんとやっているから、塾では難易度の高いテクストをいつも通り読みたいということなのだろう。進研模試やZ会の模試の偏差値アップを目標にしているから、学校の定期テストは眼中にない。目標の医学部がもうすぐB判定に入りそうだ。ハラリのSapiensが100頁ほど消化し終われば、その領域に到達するだろう。
 難易度の高い問題集で勉強しているから、教科書準拠問題集レベルは「お子様ランチ」になっている。でも、なかにはシビアな問題もある。群数列の最後の問題でてこずったと言っていた。「この問題、答えを見たら負けだと思った」、チャレンジ精神というべきか負けん気が強いというべきか、自力で解いたのだそうだ。時々意地になるから、観察していて面白い。

 漸化式の問題は昨年は学校では扱わなかったが、今年はテスト範囲に入っている。基本タイプの2つのほかは、教科書には解説のないタイプの問題が載っていたから、ほとんどの生徒が理解できていないだろう。教科書には ①an+1=pan+q 型の漸化式しか解説が載っていない。
 漸化式には数Bの範囲内に限定しても、他にもタイプがある。②qの部分がnの一次式になっているタイプ、③2次式になっているタイプ、④q^nになっているタイプ、⑤分数式になっているタイプ(an+1=pan/ran+s)、 ⑥S=(anの式)、⑦連立漸化式、⑧隣接三項間漸化式、⑨対数の漸化式等がある。準拠問題集の72番には②の一次式のタイプと③の2次式のタイプと④累乗のタイプが載っている。

(高校で扱うのは有限数列だが、無限数列の世界はもっとたのしくなる。πだって、eだって、さまざまな無限級数であらわすことができる。オイラーの公式()では、指数関数が三角関数の和で書ける、実数の世界では見えてない数の調和が表層に浮き出てくる。オイラーの等式()では虚数単位とπとeが一つの等式のなかに調和しており、二つの無限小数が虚数単位の助けを借りて、-1に化ける。数の世界の美がここに現れている。シンプル、じつに美しい。高校生は受験なんか気にせず、高校の範囲を超えて興味の赴くままにどんどん勉強したらいい。)

 昨年の根室高校2年生は、数Bはベクトルをやってから数列だったので、数列は後期期末テストの範囲になっており、時間が足りなくなって漸化式の章を端折り、群数列までだった。
 数Bの教科書を見ると、テスト範囲は38頁までだ。あと半年あるが、「第3章確率分布と統計的な推測」はやらないのだろうから、空間ベクトルと平面ベクトルが108頁まで残りは70頁、ほぼ2倍の速度でやらないと教科書が終わらない計算になる。とても無理な速度だ。ここまで追い込まれたら、残り半年でカバーできる量ではない。さて、根室高校の数学担当の先生たち、どうするのだろう?

 「第1章第3節漸化式と数学的帰納法」の最後の項目である数学的帰納法もテスト範囲から除外されてる。現代数学にとって数学的帰納法は証明の柱だから、ここは外してほしくない。むしろ、メインテーマの一つに据えたいくらいだ。数理論理学の自然数の定義ではゼロを含むんだ。ペアノの自然数の公理というのが5つあるのだが、数学的帰納法と密接に関係している。
 ついでだから書いておく。

①公理1:ゼロは自然数である
②公理2:任意の自然数の後者は、また自然数である。
③公理3:0はどの自然数の後者でもない。
④公理4:自然数xの後者と自然数yの後者が一致しているなら、x=yである。
公理5ある性質が0に対して成立し、その上、その性質をもつ任意の自然数の、その後者に対しても成立するなら、その性質はすべての自然数について成立する
 『証明と論理に強くなる~論理式の読み方から、ゲーデルの門前まで』小島寛之著 技術評論社2017年刊

 公理5は数学的帰納法そのもの。
 教科書や受験参考書だけでは高校数学の意味は理解できそうもないね。
  経済学部へ進学して、将来ノーベル経済学賞をとりたい人は、ユークリッド『原論』とこの小島さんの『証明と論理に強くなる』の2冊は必読書です。まったく新しい経済学が、ここから生まれます。ebisuが言うのですから、ほんとうです。(笑)

 1年生のほうをみると、数Aは条件付確率をテスト範囲から除いた。昨年はテスト範囲になっていたが、今年は昨日までのところだが、教えていない。条件付確率は生徒たちの理解がとっても悪い。意味がつかめたら、条件付確率の公式なんて不要なのだが、そこらあたりを理解できる生徒は普通科では5%、120人中5~6人くらいなもの。

 なんだか、昨年よりも授業速度が落ちているように感じる。生徒たちの学力低下が著しいのでしかたがないと言えば、どこまでも後退することになりかねない。難易度の低い問題と緩慢な授業、イージーな方へ流れたら、30年後に根室を担う30歳代の層の学力、知力はどうなるのだろう?すでに市政も民間企業も問題山積みだが崩せる人材がいない。現実を直視していないだけで、根室市の人材の枯渇はずっと以前からはじまっている。
 
 8/22から来ている生徒が、金曜日の授業が終わった後で、「先生、土日はやっていないのですか?」と微笑みながら訊いた、やる気満々、めんこいね、この生徒は、毎日12時ころまでしっかり勉強しているから、毎回質問がたくさんある。1か月もしたら、勉強の仕方がわかってくるし、理解が進むので、質問の回数はどんどん減っていく。最初は手間を一杯掛けなきゃいけない。この次のテストのときは、期待に応えて土曜日はやらなきゃいけないかな。(笑)

 ニムオロ塾は水・土・日がお休み、体力の関係で週4日がいまのわたしにはちょうどいい。
 水曜日はテーマを設けて、補講に充てることもある。いま、英語が苦手な高2対象に、高3の英語教科書を使った短期集中特訓を10回やっている。無料の特訓だから、参加はやる気のある希望者だけ。これが終われば、英作文の特訓を数回やることになる。苦手な科目は背中を押してやらないと、自力では歩き出せない。しばらく押してやれば、自力で歩くようになる。塾先生はなんだか理学療法士に似ている仕事だ。
 英語の短期トレーニング授業は今週と来週はテスト期間なのでお休み。

<余談:群数列の問題>
 学力トップの生徒がてこずったと言っていた教科書準拠問題集「WIDE数ⅡB」の問題を紹介する。数学が得意だった人は、久しぶりにやってみたらいい。

[69]数列1/1, 1/2, 3/2, 1/3, 3/3, 5/3, 1/4, 3/4, 5/4, 7/4, 1/5,・・・について、次の問いに答えよ。
①15/16は、この数列の第何項か。
②この数列の52項は何か。
③初項から第200項までの和を求めよ。

 高2の生徒二人、HとRからこの群数列の問題で質問があったので解説した。わかったようでも1時間後にすらすらできるとは限らない、家に帰ってから、2回やっておけば試験は大丈夫だろう。数列の基本要素が詰まった良問である。
 内容をちゃんと理解したら、①16/18、②60項、③初項から230項までの和、という風に数字を変えてやってみたらいい。こうしておけば数字を変えて問題が出題されても時間内に対応できる。
 そういう勉強のしかたをしてもらいたい。ふだんの勉強にほんのちょっと工夫して手間暇かけたら、内容の理解がまるで違ってくる。そういうことを生徒たちの疑問に応えながら伝えたい
。こういうことをわたしは「拡張」と名付けている。新しい概念や概念の拡張も高校数学ではだいじことだ。具体例を挙げると、微分・積分、実数⇒複素数、直交座標⇒斜向座標(ベクトル)など。

 答え、①第128項 ②13/10 ③195


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証明と論理に強くなる  ~論理式の読み方から、ゲーデルの門前まで~ (知の扉)

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  • 作者: 小島 寛之
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2017/01/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




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#4072 人口もGDPも縮小でいい Aug. 28, 2019 [A4. 経済学ノート]

 拡大再生産が善とされているが、ほんとうにそうなのだろうか?
 政府は経済統計の基準を変えて如何にも増えたように見せているが、旧基準で作り直せば、GDPはすでに飽和限界を迎え、下り坂に差し掛かっているように見えないか?

 学術論文なら、ここでさまざまなデータを引用するところだが、煩わしいのでそういう手続きは一切省く。

 原子力発電所は、1950年代の経済高度成長期に、増大する電力事情に対応するために考えられた手段の一つだった。経済成長が続けば、電力需要も増大するから、電力供給もそれに対応する必要があった。
 原発稼働に伴って排出される使用済み核燃料は十万年以上も保管しなければならないが、東京電力や私の住む地域にある北海道電力が会社として10万年後にあると思う人は一人もいないだろう。日本政府だって明治から数えてもわずか150年にすぎぬ。原子力発電所から出る使用済み核燃料の処分と保管に、実際にはだれも責任がもてないのである。
 深い地下に埋設しても、どうやってもいずれ、環境中に流出してしまう。日本列島は環太平洋火山帯の一環をなしており、10万年後に日本列島が現在の形をとどめているとは思えない。地下埋設の適地はない。
 『Sapiens』の著者ハラリによれば、ホモサピエンスが文化を形成し始めたのがわずか7万年前のことだ。こんな短期間で、原子力発電所をもっている。これからさき何を産み出すのだろう?
「10万年前の地球には、少なくとも六つの異なるヒトの種が暮らしていた。『サピエンス全史(上)』20頁
 10万年後に地球上で現在の人類が暮らしているのかどうかわかる人はいない。
*弊ブログ’Sapiens’
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/archive/c2306194255-1


 経済成長がなければ、原子力発電は必要がなくなる。経済成長がとまることは人類の生存にとっては歓迎すべきことなのだ。

 秋刀魚の水揚げ量が減っている。小型船、中型船では水揚げがほとんどゼロに近かった。先週から大型船が解禁になり、一昨日ようやく40隻が戻ってきて道東の各漁港へ水揚げされたのは500t、ようやく昨年の8割に戻し始めた。
 漁具や装置が性能を上げている。衛星で海水面の温度変化を時々刻々計測し、魚種ごとに集まっている海面を予測できるような時代である。データから確率の高そうな場所を選んで、その位置情報入力して船を走らせ、高性能の魚群探知機で群れを見つける。ずいぶん便利になった。秋刀魚を食べなかった中国人や東南アジアの国々の人たちが秋刀魚を食べはじめて、獲れば獲るだけ右から左に売れていく。巨大な中国船や台湾船が北方公海上に出んと居座り、網を入れて秋刀魚をとり続ける。輸送船が母船に来て冷凍した秋刀魚を次々に台湾や中国へ運んでいく。
 公海上での秋刀魚の乱獲の影響はすさまじい。秋刀魚この5年くらいで見る間に小型化してしまった。5年前は180gが主力だったのに、昨年から120gの脂ののっていない小さな秋刀魚ばかりだ。13億人の中国人が日本人と同じくらい秋刀魚を食べるようになったら、北太平洋上から秋刀魚は姿を消すだろう。
 船が大型化し、GPSや魚群探知機や衛星からの情報、そしてそれらを分析するソフトウエアは毎年性能を上げ、秋刀魚の漁獲高は急激に増え続けている。秋刀魚漁の拡大再生産と拡大消費である。各国のGDPが上がり、資源量は枯渇に向かって驀進している。便利になりすぎた。
 鮭鱒流し網漁は、資源の枯渇化を防ぐためにすでに禁止だ。味が蛋白で、身が大きいタラバガニは昭和の乱獲で、とっくに沿岸資源が激減してしまった。無軌道な拡大再生産の果てにまっていたのは、漁業資源の枯渇だった。

 60年前にはなかったペットボトル飲料がコンビニにもスーパーにもずらりと並んでいる。分別収集しても、一部は川へ流れ、海へ出てしまう。レジ袋もそうだ。たしかに、ペットボトルもレジ袋も食品トレーも便利この上ない。棄てられたプラスチックは紫外線に弱いから海を漂いながら、劣化し波の力で分解されて小さくなっていく。それがプランクトンや小魚へ、食物連鎖であらゆる海の生物がマイクロ・プラスチックで汚染されていく。人間が出したゴミは、結局のところ人間の身体へ戻ってくる。
 流通ルートの検査では検知できないほど微小なマイクロ・プラスチックや、プラスチック製造に使われた添加物(化学薬品)が人間の体内の蓄積し始めている。いまや、水道の水にも含まれてしまっており、除去できない。遺伝毒性があるのかないのかもまったく不明だ。マイクロ・プラスチックを体に取り込んだら何が起きるのかという壮大な実験を、人類はいましている。結果が出たときには、たぶん取り返しがつかない。
 レジ袋も、ペットボトルも、生鮮食品を載せる白いトレーも、人類の生存を考慮すると使用をやめなければならない。
 
 人口縮小すればペットボトルの消費量もレジ袋の消費量も減少する。GDPが減れば、あらゆる生産物の絶対数が小さくて済む。

 拡大再生産の行きつく果ては人類滅亡である。人類が生き延びるためには、過剰な便利さを棄て、人口もGDPも縮小すべきだ。そして、生態系の中で、安定的に人類が暮らせるのはどれくらいの数なのか、調査・研究したらいい。
 日本では人口3000万人の江戸時代が参考になるだろう。人類史上まれにみる高度な循環経済型都市だった。現在の技術ではどういう循環型経済社会が築けるのだろう。
 人類の叡智がためされている。



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#4071 根室桂木浜に鯨漂着:20mほどの体長 Aug. 26, 2019 [87.根室の話題]

 桂木の浜に鯨が打ち上げられていたので、写真を撮ってきた。大きい。昨日はなかったから、今日打ち上げられたようだ。皮が正方形に切り取られていますが、漁業関係者か水産試験場の人が、サンプルに切り取ったのかな?鯨の種類がまだわかりません。明日の新聞に載りそう。

<続報>8/27、8時半追記
 今朝の北海道新聞根室地域版によれば、クジラの種類はマッコウ鯨、体長17.8m、推定体重40-50トン。根室市港湾課の調査だそうだ。25日に打ち上げられ、市民から連絡があったと書いてあった。女房殿は3時半ころに桂木海岸まで散歩しているが、25日には気がつかなかったと言っているから、打ち上げられたのは夕方であったのかな。子どもたちが5人ほど砂浜で遊んでいた。札幌ナンバーの車が2台停車していたそうだ。
 羅臼で鯨の観測をしていた長崎大学の調査チームが研究用に皮膚の一部や歯を採取している。死骸から採取する分には問題が起きないから、千載一遇のチャンスだったわけだ。
 どうやら、死んでから桂木海岸に打ち上げられたようだ。腐敗臭がし始めているので、今日中にも埋めてしまう。
 この鯨はなぜ死んだのだろう?埋める前に、せめて胃の内容物を調べておきたかった。レジ袋やペットボトルが見つかったかもしれない。口を開けて餌を捕食するときに、海上に浮いているものが口の中に入るからだ。

 
①食べたらおいしいのに…もったいない
SSCN3086.JPG

②体が腐っていく、だれか食べてくれ…
SSCN3087.JPG

③右側に映っているトラックと大きさを比べてください
SSCN3088.JPG


SSCN3089.JPG

⑤ドラッグすると全画面が出ます。左側が頭部で、右側が尾ひれです。
根室高校の壮行歌の一節に「潮に鯨をゆあみして、あらまーおやまー」があった。昔はもっと鯨がいたのだろう。
SSCN3090.JPG



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#4070 偏差値と千人中の順位対応表 Aug. 25, 2019 [71.データに基づく教育論議]

 6月29日に実施された「ベネッセ学力総合テスト」の「個人成績表」が配布されたので、偏差値と順位の関係を知りたい人がいるだろうから「偏差値と千人中の順位対応表」をアップする。

 標準偏差は次の式で計算できる。
 偏差値=50+{(得点-平均点)/標準偏差}*10
 個人成績表に、偏差値と得点と平均点と偏差値が載っているので、標準偏差の値が逆算できる。

 偏差値50が平均値である。偏差値を40から50にアップするのは、千人中の順位を841位から500位へ341人抜きをすることに等しい。偏差値40から60へのアップは682人ごぼう抜きである。
 めげずに1年間、弱点になっているところを克服すれば、三科目合計偏差値20アップは可能である。もちろん、得意科目の偏差値を下げないことも大事だ。
 塾生には、苦手の科目の勉強法の相談に乗っている。教えていない国語が一番重要だ。国語の能力が低ければ、数学の問題の出題者の意図、条件析出ができない。数学の問題は、特有の書き方がなされているので、慣れたらどうってことはない。2年生は一人を除いて数学の得点が6人とも学年10番以内だが、英語が弱い生徒が多い。業を煮やして3年生の英語の教科書を使って、英文読解の短期トレーニング(授業料はタダ)を始めた。2時間半×10回、毎週水曜日にやっている。英語が苦手な生徒は強制参加である。個別指導なので、生徒の判断に任せていたら、苦手の英語はあまりやらない。得意な数学の問題ばかりやっている生徒が多い。(苦笑)
 学年トップの生徒にはハラリのSapiensを使った原書講読授業をしている。大学3年レベルの内容、あるいは大学院受験用の内容になっている。優秀な生徒がいてこそ成り立つ授業だ。高3英語教科書は「離乳食」程度の読み物だが、Sapiensは固めの肉、大人の食べ物であるから、強い顎と歯が必要だ。1年後には獰猛な肉食獣へと変貌しているだろう。
 英語が苦手の生徒たちも、受験にまだ間に合う、いまを逃せばアウトだ。小さな塾だから、塾長の好きなようにやることにしている。水曜日は基本的に休みだが、こういう補習用に来年も空けておかないといけないようだ。愉しいから、休んでサイクリングしてるのとかわらぬ。

* 英語短期特訓授業 
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/archive/c2306052528-1

*ハラリ Sapiens 原書講読授業
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/archive/c2306194255-1


<偏差値と千人中順位対応表>
偏差値  順位   偏差値  順位
80 1   50 500
79 2   49 540
78 3   48 579
77 4   47 618
76 5   46 655
75 6   45 692
74 8   44 726
73 11   43 758
72 14   42 788
71 18   41 816
70 23   40 841
69 29   39 864
68 36   38 885
67 45   37 903
66 55   36 919
65 67   35 933
64 81   34 945
63 97   33 955
62 115   32 964
61 136   31 971
60 159   30 977
59 184   29 982
58 212   28 986
57 242   27 989
56 274   26 992
55 309   25 994
54 345   24 995
53 382   23 997
52 421   22 997
51 460   21 998
50 500   20 999


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#4069 6/29実施進研模試データ Aug. 25, 2019 [71.データに基づく教育論議]

<最終更新情報>
8/26昼:12:50追記

 根室高校で6月29日に実施された進研模試の個人別成績表が配られたので、平均値と標準偏差等のデータをアップする。
 標準偏差データは個人成績表からの計算値なので、計算精度は整数部分のみ。

2019/6/29実施        
<2年生>        
    平均点      
   根室  全国 標準偏差 偏差値40 偏差値60
 国語 37.0 36.7 14.0 23 51
 数学 33.1 27.9 20.7 7 49
 英語 31.2 37.6 19.6 18 57
 3科目 101.3 103.1 47.3 56 159
           
<1年生>        
    平均点      
   根室  全国 標準偏差 偏差値40 偏差値60
 国語 32.3 43.5 16.7 27 60
 数学 29.9 36.4 21.3 15 58
 英語 25.5 40.3 17.3 23 58
 3科目 87.7 120.2 46.0 74 166



 2年生は、全員受験ではなく、希望者のみ、119名中48名しか受験していない。だから、平均点が高く出ている。根室高校上位40%の平均がほぼ全国平均値ということ。2年生の上位40%層は国語力が全国平均とかわらないと読める。だが、全員受験した1月の進研模試データを見ると、国語は(根室36.4、全道45.0、全国43.8)となっており、全国平均値との差が7.4点ある。あとで見ることになるが、1年生はもっとひどいから、根室高校生は国語力が著しく弱いと言えそうだ。国語がすべての学力の基礎をなしているので問題は深刻である。
 2年生は3科目合計偏差値が70(得点198点超、全国基準で千人中23番)を超えた生徒が2人いたが、1年生はゼロ。
 偏差値40だと千人中841番、偏差値60だと159番である。偏差値50が500番でちょうど真ん中に位置している。
 
 昨年度の根室高校1年生の平均点は、記憶に間違いがなければ、数学20点、英語19点だった。全国平均点も32-33点ほど。今年はずいぶん高いから、問題の難易度が下がっているのではないか。どうして下げたのだろう?
 昨年よりも数学が9.9点、英語は6.5点とお幅にアップしているが、1年生の学力が昨年の1年生(現2年生)より高いのかどうかは問題の難易度に差があるのでわからない。数学は大問1の計算問題がやさしかった。そこが得点源になったのだろう。
 問題の難易度が上がると、根室高校の生徒の平均点と全国平均点の差が大きくなるということは言えそうだ。つまり、基本問題に終始していて、難易度の高い問題をふだんの授業ではやることができないということだ。そういう授業が増えると、進学実績に影響する。2018年度の道外大学への進学者がわずか5名となっていることに象徴的に現れている。15年前には40-50人いたでのはないか。国公立も数が激減しているだけでなく、ランクの悪化が著しい。
 北海道全体の平均点は、(国語43.8、数学36.3、英語39.1、三科目合計119.2)で、全国平均値と変わらないから、根室の生徒たちの平均点(三科目合計平均点87.7点)は北海道の平均点よりもかなり低いと言えそうだ。その中でも国語が(根室32.3、全道43.8)著しく低い。国語はすべての科目の基礎をなしているので、学力全般への影響が大きく、見過ごしてはいけない。普通科の標準的な教科書が理解できない生徒が7割いると考えたほうがいい。基礎の補習をしないと、これではまともな授業が成り立つわけがない。授業で先生たちが使う語彙が著しく制限を受ける。普通のレベルの語彙を使った授業をしたら、理解できる生徒は上位20%層だろう、悲しいね。いちいち用語解説や字義解説をしなきゃいけないレベルだよ。
 具体例:「おんだんしつじゅん」(中1社会科地理)、「けいようしはめいしをしゅうしょくする」(中2国語&英語)
 「就職・修飾・秋色・愁色」、書かせてみたら中2の生徒二人が一番目を挙げたことがあった、もう7~8年前になるだろうか。こうなると「けいようし」や「めいし」も頭の中で正しい漢字に置き換えられているかどうかあやしくなる。この生徒たちは「しゅうしょく」という言葉を正しい漢字に変換できないので、文章全体の意味がつかめていない。
 アニメのノベライズもの程度しか読まない中高生がほとんど、小学生の時に濫読期を迎えた生徒は国語が学年トップになる。小学生の時に濫読期を迎えた子供は、ジャンルを問わず好奇心の赴くところなんでも読んじゃうから、読めるようになってしまう。楽しんで読むので、読み取る深さも、速度も大きく育ってしまう。(笑)
 「これを知る者はこれを好むものに如かず、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」論語
 小学生のうちは、テレビを撤去して、読みたい本を本箱二つ分くらい買ってやったらいい。好きなだけ読ませてあげる、そういう環境がつくれる家庭はめったにない。わかっちゃいるけど、やめられない、ほとんどの家がテレビをつけっぱなしで食事しているし、食事が終わってもテレビが消されることはない、チャンネルが変わるだけだ。部活をやらせて、帰ってきたら家ではテレビつけっぱなし、スマホ使い放題、これでは成績が上がれば不思議だ。悪環境はそれぞれの家庭で、親が創る、そして自分の子どもの脳の発育を妨げている。怖いことに、育てたように子は育つものだ。思考力が弱く、切れやすい、そういう大人にしたかったら、いままで通りでいい。何も変えないのが一番楽。楽あれば苦あり、苦あれば楽ありだが、あなたはどちらをとる?

<教育関係者は課せられた仕事をまっとうしよう>
 13年前だったかな、根室高校普通科がめずらしく定員オーバーして五科目合計点150点付近で合格できなかった生徒が3人出た。同じ基準を適用すると、上位30人程度が13年前の根室高校生と同等の学力を有しているということ。普通科の圧倒的多数の90人は13年前なら、根室高校生ではない。
 歴代根室市長も、教育長も根室市教委も、最近十数年間に起きている根室の子どもたちの学力低下に責任はないのだろうか?ピント外れの教育政策を繰り返すから、こういう結果が生まれたのではないか。根室市議会文教厚生常任委員会のメンバーも、実際のデータをみて議論すべきだ。市の文教政策のチェックはあなたたちの仕事である
 高校生の学力レベルが下がっているのは、小学校や中学校にも見逃すことのできない大きな問題があり、各家庭の家庭学習習慣のしつけや家庭でやるべき就学前教育にも大きな問題があることを示している。
 わたしは、わたしがやるべきこと、ちっちゃな私塾の塾長として自分のできることを坦々とするのみ。微力にめげず、毎日の授業で根室の子どもたちの学力の底上げと学年トップ層の指導に努力する。ニムオロ塾は現在高校生が6割、来年は8割になり、高校生の塾へと変貌を遂げつつある。年金暮らしだから、生徒を増やす必要はないのだが、最近、生徒がわたしのキャパのぎりぎりまで増えてしまったので、慣れるまでこれから数か月間80%くらいの出力でやることになる。体力と相談だから、来年のことは分からない。


<2年生の数学選択問題>
 2年生は数学の習熟度別クラス編成に進研模試のデータを使うので、生徒たちは選択問題は数Aを指定された。理数系への進学予定者は数Bの選択が望ましい。では、数Bを選択したら不都合があるのか?偏差値で足切りをしたら何の問題もない。それが偏差値の便利なところだ。
 2年生の数学受験者439,937名中、数A選択者はわずか71,118名、16.1%である。学年トップは道内でナンバーワンだったが、数Bでの実力を測りたかった。根室高校ではまだやっていないベクトルも終了しているから、そちらで勝負したかったようだ。理系受験者は数Bを選択しているので、数Aで全道2507人中ナンバーワンでも喜べない。道立進学校の理系進学希望者は数Bで受験している。根室高校にいるために進研模試が数Bで受験できないようでは困る。数Bで道内5番くらいの成果を予想していた。
 11月の進研模試の数A・数Bの選択は、生徒が自分の進路を考えてそれのふさわしいものが選択できるようにご配慮いただきたい。得点ではなく偏差値で足切りすれば、数A受験者と数B受験者が混在しても何の問題もない。

<初めて受験した1年生へ>
 進研模試の問題の難易度は、北海道の中学校でやっている学力テストよりも、格段に難易度が高いから、教科書の範囲内あるいは準拠問題集しか使わなかった人たちは、まるで歯が立たなかったはずだ。進研模試は、いままでの勉強スタイルが問われる。入学当初のテストよりも学年順位が20-30番くらい下がっている人が少なくないし、逆に、大幅に順位アップした生徒もいる。
 難易度の高い問題をやらないと進研模試の得点は上がらない、学校で渡された「WIDE」だけでは進研模試は難易度が高くて50点前後しか得点できない。もっと難易度の高い問題集にふだんから取り組むべし。
 たとえば、塾用教材「シリウス(標準編)」のような難易度の問題集がいい。これをやり切ったら、60点以下ということはない。90点台をとった生徒もいる。難易度の低い問題にどれほど時間をつぎ込んでも、70点の得点すら夢のまた夢。(笑)
 「偏差値と千人中順位の対応表」を貼り付けておいたので、そちらも見たらいい。
*https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/



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#4068 Sapiens:page 5 Aug. 23, 2019 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

 <Sapiens:第3回>

 Presumably, everyone reading this book is a Homo sapiens -- the species sapiens (wise) of the genus Homo (man).

  Genera in thier turn are grouped into famillies, such as the cats (lion, cheethas, house cats), the dogs (woves, foses, jackals) and the elephants (elephants, mammorths, mastodons).

 genusの複数形がgenera datumの複数形がdataであるのと同様に。
 classfy ⇔ group 分類 ⇔ 統合
(「分類⇔統合」のように、一方を使うときは他方のあることを前提としている、そういう概念を対概念という。「具体⇔抽象」「善⇔悪」「相対⇔絶対」) 

  アンダーライン部が生徒から質問のあった部分である。どのように訳したらいいのかわからないという。なかなかいい質問だ。こういう質問が出るのは、腕が上がってきた証左だろう。

 turnは回転を表しているから、回転式銃の弾倉を想像してもらいたい。円形上に弾が入っており、一発目を撃つと回転して二発目が撃てるようになる。
 前段の文で、「この本を読んでいる人はホモ・サピエンスーーホモ(ヒト)属のサピエンス(賢い)種である」と書いている。種がまとまって属を形成するということ。「種⇒属」の方向である。「下位概念から上位の類概念へ」である。
 「いくつかの属は科にまとめられる」とあるから、「種⇒属⇒科」、「種」から「属」へ「属」から「科」へ、順送りにということ。「種」から「属」へ、「属」から「科」へと、下位類概念からより高次の類概念への方向での説明が続いている。「種⇔属⇔科⇔目」は4項の対概念であることに注意。
 thier=genera'sである。さまざまな種が属にまとめられ、順に、今度はさまざまな属が科にまとめられるということ。

 エレファントとマンモスは知っているが、その祖先にあたるマストドンを知っている人は少ないだろう。辞書を引きながら、生物系統図上の動物名とその配置を知ることになる。それも楽しみの一つ。
 「目⇒科⇒属⇒種」という分類になっている。

 引用した文章の前から、classfy(分類)の話が始まっている。「Biologists classfy organisms into speces. 生物学者たちは生き物を種に分類する」と書いて、ヒト科、ネコ科、犬科の動物たちを属に分類して見せた。今度は逆の方向だ。classfy(分類)ではなくてgroupe(上位類概念への統合)の「generaの番」である。そこにくるっと方向転換を感じただろう。著者もそう感じたから逆方向の動きを表す「in thier turn」と書いた。turnには順番と論理の回転の二重の意味が込められているのだろう。


(そして、本書の読者はおそらく全員、ホモ(ヒト)属のサピエンス(賢い)という生き物である「ホモ・サピエンス」のはずだ。属が集まると「科」になる。)柴田訳

 柴田訳のように、細部にこだわらずに、端折ってしまうのも翻訳の技術ではあるだろうが、高校生や大学生は、こういう細部にこだわってもらいたい。著者が書いているときに浮かべたイメージを自分の脳に再現して、それを母語で作文することで、英文読解スキルがアップするからだ。



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#4067 英語短期特訓授業 the 4th:Steve Jobs Aug. 21, 2019 [78-1Vivid 3短期特訓補習]

  毎週水曜日、ニムオロ塾はお休み、でも7月から、長文読解の短期特訓(10回を予定)をしている。
 高2対象の長文読解教材として、高3教科書「Vivid Ⅲ」を使っていることは前回も書いた。ハラリSapiensでも出てきた文例と似たものが、教科書にも載っていたので、紹介する。


 And yet his checkered life tells us that Steve Jobs did live his own life, listening to his own inner voice and following his heart and intuition.

  高校生には意味のとりにくい文章だろう。だが、重文が3個連なっただけの簡単な文である。強意のdidを外してシンプル・センテンスに戻してみる。
 Steve Jobs lived his own life.
 Steve Jobs listened to his own inner voice.
 Steve Jobs  followed his heart and intuition.

  主語が同じ場合は後続の文の方の主語は省略され、動詞は~ing形になり、動詞句になる。これが生成変形文法工程の自然な流れだ。
 受験参考書には判で押したように「分詞構文」が文頭の位置を占めている文例が載っている。しかし実際に出てくるのは、こういう風に、分詞句が後置されるものがほとんどである。後置されるから主語が省略され、分詞句となるのに、文頭に置いて主語を省略されたら、後続の文が出てくるまで、意味上の主語が何か不明となる。そういう文は気持ちが悪い。ジャパンタイムズで、たまに典型的な分詞構文の文が出てくるが、決まって日本人スタッフライターの書いたものだった。
 基本は後置であり、文頭にくるのは強調構文だと理解すべき。
 didはその後にくる事実を強調している。「自分の人災を生き抜いたこと」「内的な声に耳を傾けたこと」「自分の心と直感に忠実だったこと」の三つの事実を強調するために添えられた。
  文頭の接続詞 'and yet' の訳について一言。接続詞は文と文をつなぐ役割を果たしているから、前の文Aと後の文Bの意味内容が分かれば、それに適する日本語語彙を選べばいいだけ。思い浮かばぬ時、そして確認するときにのみ辞書を引けばいい。


(それでもなお、スティーブ・ジョブズの波乱に満ちた生涯は、かれが自分の人生を生き抜き、自分の内なる声に耳を傾け、情熱と直感に従ったことをわたしたちに告げている。)


 授業では文章一つ一つ検討し、何文型であるのか生徒とともに考えている。次の文のアンダーライン部がむずかしかったようだ。


 He must have had some regrets, because he had left much unfinished, still in his prime years as a businessperson.

 第五文型SVOCである。muchは名詞だ。「must+have+pp」は英語が苦手の生徒ばかりだから、だれも知らなかったので、解説した。受験英語では大事な項目だ。
 仮定法でもこの形がよく出てくる。たとえば、「shoud+have+pp」や「could+have+pp」の形で。学校で副教材に使っている分厚い文法書で該当箇所を読んでおいたらいい。
*pp:past participle 過去分詞

(スティーブ・ジョブズは依然として(最後の数年間は)事業家として全盛期にあり、幾ばくかの後悔があったに違いない。多くのことを未完のままにして世を去っている。)

 これで、アップルコンピュータの創業者、スティーブ・ジョブズの章を終わった。
 英語が苦手な生徒だけが対象だから、速度はゆっくり、4回かかった。今回は、ここに書いた部分を含めて、文法上説明しておいた方がいい事項がたくさん(おおよそ3倍)あった。

<余談>
  進研模試なら、この程度の英文がこなせたら、楽に偏差値60を超えることができる。Z会のテストは語彙の範囲も、英文の難易度もかなり上だ。だから、高校教科書程度では対策にならない。
 6月末に実施された進研模試の結果が出たようだ。学年トップの生徒はあいかわらず数英は学年トップ、国語だけが2位だった。本人はできが悪かったと反省しきり、数Aが北海道でNo.1だったことがひとつの成果。ベクトルを終わっており、数列も漸化式がほぼ終了しているので、数Bで模試を受けたかったと言っていた。ベクトルは自信があるようだ。難易度の高い問題をたっぷり解いたからだろう。手ごたえを感じている。
  根室高校は7月初旬に学校祭があり、1か月前から準備作業で生徒たちは大わらわだ。だから、ほとんどの生徒が進研模試の準備勉強時間を十分にとることができず、平均点にも影響する。
 11月の進研模試で、短期特訓授業を受けている生徒たちの英語の点数がどれくらい上がるか楽しみだ。

<余談-2>
 FB友が紹介してくれた本に無料ビジネスという項目があった。その目的は、評判や名声を勝ち取るためのものだそうだ。

 英語が苦手な塾生対象に無料の10回の短期特訓授業を始めた動機は、放っておいたらいつまでたっても英語の勉強をしないからだ。個別指導だから、好きな数学ばかりやって、嫌いな英語は数分の一しかやらない。(笑)
 そういう生徒たちに業を煮やしたことと、いま何とかしないと大学受験に間に合わなくなるので、危機感からの強硬手段が10回の英語読解トレーニングなのである。英文を理解できるようになれば、英文を読むのが愉しくなるし、英作文もできるようになる。そして社会人となってから、いつか英語でしか入手できない情報の多さにも気がつく。割のよい仕事にありつこうと思ったら、最先端の英語の文献やネット情報を読む必要がでてくる、そういう時代なのだ。
 わたしは42年前からそういう道を20年間ほど歩んだ。


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#4066 白内障術後初診察 Aug. 20, 2019 [36-1 白内障手術とその後]

 三種類の目薬が今週末くらいに切れそうなので、7/31の白内障手術後初めて外来診察をしてもらった。
 朝7時に診察券を受け付けの機械に通すと、眼科外来受付番号9010の紙がでてきた。頭の9の番号は外来患者に付与される識別番号で、予約患者は別の数字が割り当てられている。眼科外来受付10番目である。
 いったん家に戻って食事、そして8時40分ころ病院へ行った。受付番号を提示したら、もうカルテが用意してあった。それをもって眼科受付へ提出すると、5分もしないうちに名前が呼ばれて、小さな検査機械で眼圧や視力検査を3種類したあと、別の視力検査。手術をした左目は裸眼で0.5、眼鏡使用で1.5であった。よく見える。
 そのあと、瞳孔を拡大する目薬を差してもらって、30分間待機。20分くらいしてトイレで見たらずいぶん瞳孔が大きく開いていた。30分がたち、眼科受付の看護師さんに瞳孔を確認してもらって、大谷先生の診察待ち。
 15分くらいで順番が来て、診察室に受付番号「9010」が表示され、入室。
 眼底検査をしてもらい、異常なし、術後の経過は順調。3種類の目薬のうち、ステロイド剤の一つ「リンデロン点眼液0.1%」を弱い物「フルメトロン点眼液0.1%」に変更、いま点(さ)している目薬がなくなったら、新しいものへ切り換える。
 視力はまだ動く可能性があるので、眼鏡を作るのは時期早尚。10月下旬まで様子見。
 診察が終わると「基本票」を渡されるので、それをもって会計のところへ提出、3分もしないうちにディスプレイに「9010」が表示され、清算、9時55分。
 歩いて「ふじ薬局」まで行って目薬を三種類だしてもらって、説明を聞いた。薬剤師の藤枝さん、いつもにこにこ愛想よく丁寧に説明してくれるのもありがたい。藤枝さんとは年齢が同じだ。なんとなく気が合う。

 白内障手術をしてよかった、とってもよく見える。本を読むときにはメガネは要らない、車の運転をするときには眼鏡使用で左右それぞれ1.5だ。テレビも細部までくっきり見えてます。ありがたい。
 

<目薬の差し方>

 ①ベガモックス点眼液0.5%
 ②フルメトロン点眼液0.1%
 ③ネバナック懸濁性点眼液

 「リンデロン点眼液0.1%」の点眼薬をネットで調べたら、点眼した直後に瞼を閉じたままにして瞬きしないことと書いてあったが、他の点眼液の場合は瞬きしてもいいか、大谷先生に訊いてみた。
 瞬きすると涙が流れてきて薬剤が薄くなるので、1分間は瞬きしないほうが薬の効きがよいとのこと。これは3種類の点眼液すべてに共通して言えることだという。2分間くらいはじっと瞬き我慢だ。
 薬剤師の藤枝さんから、②のフルメトロンは結晶状になって沈殿することがあるので、使用直前によくふってから使うように説明があった。



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#4065 Sapiens: page 4&5 Aug. 18, 2019 [44-3. 原書講読講座 Sapiens]

 高2の生徒と一緒に読む、ハラリの Sapiens. 
 英文をノートに写し、辞書を引いて訳文をノートに書き、それから不明な点や自分の訳に違和感があれば質問するという形式でやっている。福沢諭吉の適塾方式(『福翁自伝』参照)に似ている。手間はかかるが、読む力はつく。
 筆者が英文を書いているときに脳内にイメージしているものを、自分の脳に再現し、それを自分の語彙を使って日本語として違和感のないレベルの文章にしあげる。ときに「大和言葉落とし」を要求している。解説は質問の周辺へも及ぶ。典型的な英文解釈授業であるが、よく読むことはよく書くことに通ずるもので、その辺りへの配慮は解説を読んでいただければわかるだろう。必要最小限の範囲で、生成変形英文法を取り入れた解説になっているので、英文解釈が英作文トレーニングにもなっている。高校で受けた英語授業とは一味違っているはず。
 なお、この授業を受けている生徒は進研模試で、英語の偏差値が75(全国レベルで千人中6位)付近である。目標は進研模試の偏差値を80(千人中1位)オーバーにしたいことと、Z会のテスト問題が進研模試よりも語彙数と英文の難易度が高いので、解けない領域があり何とかしたい。Z会模試英語の偏差値70をコンスタントに超えることを目標にしているようだ。
 480頁あるから、全部やったら高校で英語の教科書30年分くらいの分量がある。塾では半分やったら十分だろう。残りは自分で楽に読めるようになっている。このレベルの本の読解の基礎ができたら、あとは自分で試行錯誤、いつまでも塾に頼っていてはいけない。好奇心の赴くままに、さまざまなジャンルの本を自在に読めるのた理想だ。
 段階的に読み方を変えていくつもりだから、読書速度は徐々にアップしていく。
「はじめちょろちょろなかぱっぱ、赤子泣くとも蓋とるな」…(笑)

 今週、質問のあった個所は四つ、順に取り上げる。

1.Biologists classfy organisms into species. Animals are said to belong to the same species if they tend to mate with each other, giving birth to fertile offsprings.

  アンダーラインを引いた部分について質問があった。
 受験英語では文頭に分詞構文がでてくるが、実際にはこの文のように、あとの方で出てくるのが普通だ。すぐに慣れるよ。

 元々は重文である。句構造を節に書き直すと次のようになる。
 and they give birth to fertile offsprings. 
   ⇒ giving birth to fertile offsprings
(こういう風に1段階で simple sentence から元の文に書き換えられる場合を、'文法工程指数1'と呼ぶ、名前だけ記憶しておいて。文法工程指数が多くなれば、意味がつかみにくい難解な文章になりそうだと思った人は、センスがいい。きっと数学もできる人だろう。「拡張」は数学の学習では頻繁に出てくる。え、知らない、そりゃあいけません。中学と高校の数学の主要テーマは概念の拡張なんです。たとえば、数の概念の拡張、自然数⇒有理数⇒実数⇒複素数、関数概念の拡張、一次関数⇒単純な二次関数⇒一般的な2次関数⇒高次関数⇒さまざまな関数(指数関数や対数関数や三角関数)、斜交座標で定義すれば平面ベクトル、三次元で定義されたら空間ベクトル、多次元になれば線形代数。一連の拡張操作の中で数学が展開されていきます。「拡張」を意識してください。)
 they=animals
 「動物が繁殖力のある子孫を生む」
 主語が同じだから、あとの方の主語が省略され、動詞が分詞に書き換えられて、句構造になるだけ。分詞構文なんて特別なものがあるわけではないのだ。受験参考書にあるような文頭に分詞が来るようなへんてこりんな文章は、新聞や本を読んでいてもほとんど出てこない。新聞ででてくるときは日本人のスタッフ・ライターの書いたもの。受験英語をひきずっている。基本は重文の場合に、あとに出てくる文の主語が前の文の主語と同じなら、あとの方がdeleteされて、動詞が分詞になるだけ。単なる修辞上の、それゆえ統語論上の操作に過ぎないのだ。だから文頭にもって来るというのは、違和感が生じる。主語が不明だからだ。後に続く文を読まないと、主語が何になっているのか判断がつかない。読みにくい文になるということ。本来は後置される分詞句が文頭にくるというのは、倒置であり、強調である。だから受験英語では特殊な例だけやっており、基本の形を教えていないということだ。物事は基本用例を教えてから、それと対比することで例外的な文例を教えるべきだろう。

「生物学者は生き物を「種」に分類する。動物の場合、交尾をする傾向があって、しかも繁殖力のある子孫を残す者どうしが同じ種に属すると言われる。」柴田裕之訳

 冠詞については{a,an,the,Ф}の4つの場合に分けて、だいじなものだけ授業中に確認をしている。Фは無冠詞の場合である。当該名詞句にアンダーラインをつけて例示する。
 Biologists classfy organisms into species. Animals are said to belong to the same species if they tend to mate with each other, giving birth to fertile offsprings.
 複数形の名詞句の場合は複数形でない場合(a,an,the,Ф)はシーンや意味がどのように変化するのか、定冠詞がついている場合は、無冠詞や不定冠詞になるとシーンや意味がどのような影響を受けるのか、重要だと思ったら、生徒に訊ねている。高Ⅲの教科書でトレーニングを積んだから、ずいぶん扱いなれて来た。


2.Horeses and donkeys have a recent common ancestor and share many physical traits.
 trait:(生活・習慣の)特徴
 recentをどのように訳せばいいのかというのが生徒の質問だった。recentはrecentlyで高校生にもなじみのある普通の単語である。O君は文意から「最近」と訳したのでは意味が通らないと思ったのである。だって、辞書に載っているのは、次のような用例だから。
 recent event: 最近の出来事  in recent years: 近年の 
 頭から直訳してかみ砕いてしまおう。
 「馬とロバが共通の近い祖先をもっている、そして(馬とロバは)多くの身体的な特徴を共有している」
 この場合のrecentとは、馬とロバの共通の祖先から、それぞれが分かれた数千万年単位の時間軸で、「最近」と言っているのだ。著者の頭の中のイメージはそういうこと。生徒のイメージは「最近」というのは数日前か、せいぜい数年前のこと。
「馬とロバは比較的最近、共通の祖先から分かれたので、多くの身体的特徴を共有している」柴田訳

  いい質問だった。文意を考えながら、前後関係を考慮に入れて読んでいるからこその質問である。そんなに長いスパンを「最近」とは言わないという語感が、「最近」という訳語を当てはめてしまうことを躊躇(ためら)わせたのだろう。著者のrecentのイメージが、自分の脳内に再現できて、前後関係からも矛盾なければOKだ。

3. But they show little sexual interest in one another.  They will mate if induced to do so -- but their offspring, called mules, are sterile.

  ここでは induced をどう訳せばいいのかわからないということだった。
  mules:ラバ。ウマとロバのあいの子。
  sterile:「繁殖力のない」。
 theyは馬とロバのこと。
 ここでも同一主語だから、あとの方が省略されている。書き直すと。
 They will mate if (they are) induced to mate so.
   induce:する気にさせる
 受け身の文であることとdoがmateだと気がつけばなんてことはなかっただろう。これは高校生にはちょっと難易度が高かった。mateが「番う、交尾する」なんて意味があるの知っている高校生はまずいないだろうね。「友達」しか知らないだろう。たとえば、classmate。動詞で使われているときは、「番う、交尾する」そういう意味になる。文意が通じないときは、辞書を引いて文意にかなう訳語を見つけよう。willのあとにmateが来ているから、動詞だということはすぐにわかるね。mate の動詞の項から訳語を探したらいい。辞書を引く前に、先ず品詞が何か確認すること。
 「馬とロバが番(つが)う気にさせられたら、番うだろう」
 番う気にさせるのは人間である。誰でもいいことだから、わざわざ by someone なんて付け足さない。
 ところで、someone、anyoneなのにno oneだけ間にスペースが入るのはなぜか知っていた?nooneと書いてみたらわかる。oが二つ続いて不細工だろう?美しくないのは嫌なんだよ。somebody、anybody、nobody、こちらはoが重ならないから、切り離す必要がない。比較するとわかるだろう?

「だが、交尾相手として互いに興味を示すことはない。交尾するように仕向けられればそうするが、そこから生まれた子供(ラバ)には繁殖力がない」柴田訳
 
 一箇所気になるところが見つかった。
 their offspring, called mules, are sterile.
 be動詞はareは誤用でisが正しい。mulesと複数形で書いたのでそれに引っ張られたのではないか?
 their offspring, called mules, is sterile.
 では、次のように書いたら、書き手のイメージにどのような違いが生じるのか?
 their offspring
s, called mules, are sterile.

4. Lions, tigers, leopards and jaguars are different spieces within the genus Panthera. Biologists label organisms with two-part Latin name, genus followed by species. Lions, for example , are called Panthera leo, the species leo of the genus Panthera.


  アンダーライン部のところをどう訳せばいいかわからないということだった。こういうときは次の文を読めば、具体的に書いているから、先を読んでから考えろと言っている。後ろは前の文の具体的な説明になっている。高3の英語教科書『Vivid Ⅲ』で何度も出てきて、処理の仕方を教えたはずだが、語彙の難易度が上がっているから、そちらに気をとられて右往左往している。大丈夫、もう少しで慣れる。(笑)
 「例えば、ライオンはパンテラ・レオ、パンテラという属のレオ種」という風にtwo-part Latin nameの具体例がちゃんと書いてある。「二つの部分からなるラテン語の学名」という意味だ。
 高校生物の教科書(東京書籍 Biology)をみても、ラテン語学名の付け方には言及していないから、そういう周辺知識がないと躓くが、それがなくても先を読むだけで何を言っているのか具体的に了解できる。だから、わからない句があったら、読み進むことを勧めたい。
 十数年前に、根室市のほうから野鳥や草花、木の解説資料を作るので、英作文を依頼できないかというような電話依頼があったことがある。和名に関する知識もないし、ラテン語分類学名を記載しなければならないので、専門家でなければできない仕事ですと、お断りしたことがあった。鳥類学、植物学の専門家のお仕事です。

「ライオン、虎、豹、ジャガーそれぞれ種が違うが、みな豹属に入る。生物学者は二つの部分(前の部分が属を表す属名、後ろの部分が主の特徴を表す種小名)からなるラテン語の学名を各生物種につける。たとえば、ライオンは、パンテラ(豹)属のレオ(ライオン)で「パンテラ・レオ」。」柴田訳


  ついでに書いておくけど、ラテン語学名は「科=属=種」というような階層構造になっている。

 ハラリのサピエンスは高3の教科書に比べたら、難易度が高い。語彙と統語法の両方で難易度があがっている。


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Sapiens: A Brief History of Humankind

Sapiens: A Brief History of Humankind

  • 作者: Yuval Noah Harari
  • 出版社/メーカー: Vintage
  • 発売日: 2015/04/30
  • メディア: ペーパーバック
  この本は480頁ある。高3の英語教科書 Vivid Ⅲ は、全部で9章、各章4つのパートで構成されている。本文のページ数は36頁だが、1ページの文字数が半分程度なので、およそ18頁が高校1年間で学ぶ英文量だ。成績上位の生徒にとっては、あまりにもスローでストレスが多い授業になる。
 1・2年生の教科書は文字が大きいので、分量は3年生の教科書よりもずっと少ない。3年間合計してもSapiens 45ページ分に満たない。
 高校の英語授業は分量が少なすぎ、2000語程度の制限された語彙数で難易度を下げてリライトされたものをいくら読んでも、大人の読み物、たとえば英字新聞の一つのジャパンタイムズ記事レベルの読み物ですら独力で読むことはかなわない。このシリーズが、たくさんの文を読みたい高校生や大学生の役に立つことができればうれしい。



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#4064 来年は高校生が8割になる:師事した三人の一流の学者 Aug. 16, 2019 [55. さまざまな視点から教育を考える]

<最終更新情報>
8/17 朝9:50

<少子化と学力低下という時代の流れ>

 根室西高校が今年3月で閉校になった。入試は3年前から根室高校のみ。統合したのはいいが、大幅な定員割れで、全員が根室高校に入学できるので、中学生で塾通いをする生徒が激減した。時代の流れだろう。
 根室高校から、道外私立大学進学者が激減している。平成28年度はたった12名だったが、平成30年度は5名になった。5名の中に岐阜協立大学が一人あるので首都圏の大学進学者は4名、早稲田と法政は推薦枠があるので、一般入試は最大3名ということ。
 10年前、首都圏の大学へ進学する生徒は30人はいた。
*根室高校進路決定状況
http://www.nemuro.hokkaido-c.ed.jp/index.php?page_id=31

<東京の大学へ進学のススメ>
 何か特別の事情がない限り、進学するなら東京の学校を勧めている。理由ははっきりしている、それぞれの学問分野でトップクラスの先生がいるからだ。
 わたしは専修大学商学部会計学科で勉強した。高校時代から公認会計士二次試験の勉強をしていたので、ゼミは小沢先生の原価計算を選ぶつもりだったが、たまたま突発イベントで帰省し、申込期間が過ぎていた。そこへサルトルやヘーゲル研究で当時日本でナンバーワン市倉宏祐教授(哲学)の学部を超えた「一般教養ゼミ」のゼミ生募集要項が掲示板にあった。すぐに小論文を書き応募、拾っていただき、3年間学んだ。哲学科の教授がマルクス『資本論』全巻と『経済学批判要綱』全冊を通読するというのだ、経済学部の本ゼミでもなかなかやれないビックな企画だった。先生は、ほんらい東大に残る予定の人だった。たまたまポストが空いていないので、すぐに戻すことを条件に専修大学へ数年行ってほしいと言われたそうだ。言ったのは、倫理学の泰斗、和辻哲郎先生だったのではないだろうか。何の手違いか、東大へは戻られなかった。それはわたしたちには僥倖だった。本来は東大へ入学しなければ師事できないレベルの先生である、その先生に専修大学で師事できる。同期の哲学科の方の本ゼミ員の一人であった伊吹克己は母校の哲学科の教授である。当時長髪だった彼の顔をいまもはっきり覚えている。
 専修大学には経済学史の内田義彦先生もおられ、1年間講義を聴いた。経済学史では日本で3指に入る学者である。わたしは内田先生がNo.1だと思っている。著書を読めば、どれほど研究を積み重ねたかよくわかる。品のよい先生だった。大学院の学内試験と口頭試問のあとでお世話になった内田先生は大学院経済学研究科の院長だった。商学部会計学科から大学院経済学研究科、それも理論経済学というのは異例、そして大学院学内入試ではトップだった。口頭試問のとき、指導教授になる予定の人の第一声「君は経済学を知らんね」で、カチンときて、議論を挑んだ。「答案を見て仰っているのでしょう、どうぞ該当箇所を挙げてください」、ゆっくり長い呼吸に切り換えて、H教授の言葉をじっと待つ。「貨幣としての貨幣の規定とはなんだね?」、薄笑いしながら言った。言葉を選びながら、原典の当該箇所を明らかにして反論した、「グルントリッセでの貨幣論に貨幣の第三規定として、「貨幣としての貨幣」とマルクスが書いています」手加減できなかった。富の蓄積手段として貨幣をマルクスはグルントリッセで「貨幣の第三規定、貨幣としての貨幣」と書いている。経済学を知らなかったのはNo.2のH教授。商学部会計学科の学生に30人の先生が居並ぶ中で、完敗したのである、周りの教授からは失笑が漏れた。H教授の顔が見る見るうちに真っ赤になった、口頭試問はそれで終了。『資本論』や『経済学批判』は読んでいても、『経済学批判要綱』全冊を読み通している教授はあまりいない、マルクスの思考過程と研究の試行錯誤がそのまま出ていて、難解なのである。まさか、商学部会計学科の学生がそんなものを典拠にあげて反論するとは夢にも思っていなかったのだろう。『経済学批判要綱』を読んでいるということは『資本論』全巻4000頁を通読していることが前提になる。資本論よりもかなり難解なのである。東大経済学部でも、そんな学生はいなかっただろう。(笑)高校時代に公認会計士二次試験受験参考書で勉強していた。当時は経済学も受験科目になっていたから、近代経済学だけでなく、マルクス『資本論』にまで手を伸ばした。100頁ほど読んでちんぷんかんぷんだったので、その構造を理解しようとずっと勉強していた。方法論が問題だったから、哲学にまで手を伸ばさざるを得なかった。市倉先生に師事できたのは、天の配慮としか思えない。
 あいにくとH教授は経済学部では序列No.2、合否判定の権限はあるから、学内入試は合格者無し。「君の後輩は苦手だよ」とH教授がぼやいていたと戸塚先輩。Hさん、気の毒に、No.1のわたしを落とすからには、自分のゼミ員も落とさざるを得なかった。

 前年に同じゼミから戸塚先輩が商学部⇒大学院経済学研究科へ合格していたので、余計に注目を引いたのだろう、口頭試問の夜、市倉先生へ内田先生から電話があり、いくつかサジェッションをいただいた。哲学のゼミ員で、所属は商学部、そして進学先は大学院経済学研究科というコースは、通常あり得ない。市倉ゼミは何をやっているのかと、驚いたようだ。内田先生は好意的だったが、その年の3月の入試も合格者無し、よほど嫌われたらしい。(笑)
 そういうわけで、母校の大学院には縁がなかった。4月に慌てて日経新聞を見て就職、3年間働いてから、やり残しているテーマを片付けたくて、1月末で職を辞して、大学院受験。2校合格して東京経済大学大学院経済学研究科へ。院生わずか6名、開設以来10年間合格者無しで、前年初めて4名の合格者をだした。文部省からクレームが入っていたためだ。開設認可したのに10年間合格者無しとはどういうことだ、合格者無しなら認可取り消しとでも言われたのだろうか。当時の試験問題の難易度は慶応大学大学院経済学研究科と同レベルであり、早稲田よりも難易度は高かった。だから10年間も合格者がいない。50人ほど受験して2人合格、地方の国立大出身者が多かった。倍率が高くてもようするに成績が一番なら合格できるのである、専修大学とは違って一人は必ず採るからね。一番で合格できる勉強はしていたから、この中から何人合格できるのかなとぐるりと周囲を見渡した、平常心だった。予定通りの結果だった

 運のよいことに一橋大学長だった増田四郎先生がちょうど来られたところで、院生3人で特別講義をお願いした。増田先生は快く引き受けてくれた。このとき講義に参加した3人のうちの一人は首都圏の大学で教授をしている。一橋大大学院ではこんなに小人数で増田先生の特別講義を聴くことはできなかっただろう。増田四郎先生が当時、西洋経済史の分野では日本でNo.1の学者であることに異論のある人はいないだろう。
 一橋大が国立市にあり東京経済大学は国分寺市、隣同士である。中央線の駅では西国分寺駅を挟んでいる。井汲学長が直接招聘したのだが、一ツ橋大の隣という立地条件が決め手ではなかったか。大学院の入り口に腰を下ろして、4歳くらいの男のお孫さんを遊ばせていることがあった。好々爺を絵に描いたような姿でした。リスト『経済学の国民的体系』を読んだのだが、緊張感のある授業だった。大学院に入学するとすぐに渋谷駅前の進学教室で専任講師をしていたので、周辺の本を10冊ほども読んで中身の濃い議論がしたかったが、できなかった。院生はバイトをしてはいけない、研究に専念すべきである、これはわたしの反省。
 大学院の授業のレベルは院生が決める。どれほど勉強してきて、教授と議論するのかで、授業の質が決まる。渾身の力を出し切るべきだったのに、巨匠の増田先生には申し訳ないことをした。
 日本でトップレベルの3人の先生の謦咳に接することができたのは、東京の大学だからこそのこといま振り返ると、奇跡のようなめぐりあわせである。わたしは「先生運」が特別に良いのだろう。結果から見ると、東大と一橋大学で勉強したようなもの。
 残念だが、北海道には文科系でこういうレベルの先生がおられない、北大ですら例外ではない。
 だから、根室高校の生徒たち、そして道産子に言いたい。進学するなら、道内ではなく、東京の大学を目指せと。
 それぞれの分野で一流の先生に師事するというのは大事なことだ、「触発される」ということもあるし、学風に触れて感化を受けるということもある。人柄が一番だろうな。
 市倉先生は学徒出陣のゼロ戦乗り、そして特攻兵の生き残り、ずっとそれを引きずっておられた。晩年に『特攻の記録 縁路面に座って』を書かれ、ebisuと同期の、伊吹克己教授(専修大学哲学)へ遺稿の出版を託した。弊ブログのカテゴリーを検索してもらえば、同名のものがあるので、クリックしたら、全文を読むことができる。非売品だが、貴重な記録である、哲学者が書いた特攻の記録はこれしかない、是非お読みいただきたい。
 内田義彦先生は学究肌、密度の濃い文章を書くとっても品のよい方だった。増田四郎先生は親分肌の人、だまっていても周りに増田先生を慕う子分が増えていく。予断をもたずに丹念に実証研究を積み重ねて結論を出す、あの学風にはすっかりまいってしまった。わたしのブログにはそういう匂いがあればうれしい。

<高校生が増えた>
 ところで、ニムオロ塾はいま高校生が6割である、そして来年は8割、いつのまにか高校生対象の塾に変わりつつあるが、それでいい。高校生を受け入れている塾は根室に三つあったが、そのうちの一つが2年前にやめて、現在二つしかないから、そうなってしまった。高校生の大学進学者が激減しているが、それでも高校生対象の塾のキャパが足りない。
 「先生、3年前に塾を自宅へ移したときに、縮小していくって言ってたけど、生徒増えてない?」
 たしかに、週4日に減らしたが、高校生が増えているから、中学生が減っても全体の数はさっぱり減らない、なかなか予定通りには行かぬものだと大笑い。夏休み明けに2人増えるので、そろそろ満杯。空いている水曜日と土曜日をどうするか、四月までに結論を出さねばならぬ。今年の中3はだれも地方へ進学しないから、卒塾するのは高3の一人だけ。月火木金の週4日間ではまもなく新規の生徒受け入れができなくなる。


 70歳になって、高校卒業まで根室で18年、故郷に戻ってきてから17年だから、根室生活通算35年、18歳で東京の学校へ進学してから東京生活が35年、ちょうど真ん中の分岐点に立っている。オヤジが大腸癌の転移で平成5年に亡くなって、お袋も平成23年に逝った。息子としては一人になったおふくろの介護義務は果たしたから、もう根室にいなくていいし、そろそろ東京へ戻らなくっちゃと思ってはいた。ところが、「早く戻ってきてほしい、一体いつになったら戻ってきてくれるの」とお冠だった娘が、「お父さん、根室が愉しそうだね、いいよ根室に居ても」、この頃そう言うようになった。スキルス胃癌と巨大胃癌の併発で胃の全摘をしているわたしは、東京の暑さでは、水分補給が追い付かず、衰弱死する可能性が大である。水分を補うために余分に水を飲むと、下痢をして、脱水症状が起きる。娘はわたしが東京へ戻るのは無理だとわかっているのだ。年に1・2度娘と孫の顔を見に行くだけで十分、根室でこうしているほうが愉しい。

 いま、週4日授業をしている。体力が落ちたから、月火木金の四日間だけ。問題は来年だ。なるようになるさ。

<英語特別講義10回>
 7月から休日である水曜日を10回だけ、英語高3教科書を使った特訓に充てている。対象は2年生が5人、1年生が2人である。
 対象の2年生は数学の進研模試の成績が全員学年10番以内、ところが中学英語で落ちこぼれてしまって、すっかり英語学習アレルギーになっている。埒が明かないので、「2時間×10回の特訓」で、なんとかしようと思う
 英語ができる生徒は学年トップの一人だけ。この生徒にはハラリの”Sapiens”を原書で読む授業をしているから、特別講義の対象外。
 せっかくやるのだから目標設定をしよう。3人の生徒が進研模試の英語偏差値が60を超えてくれたらやったかいがあろうというもの。特別講義の授業料はタダ。(笑)
 2年生の1月の進研模試英語の2年生の平均点は19点だったかな、全国平均は33点前後だったと思う。標準偏差を18点とすると、全国偏差値60(上位16%)は得点51点以上である。根室高校2年生で英語の偏差値が60を超えているのは5人くらいなもの。
 ずいぶんと中身が濃くて楽しい授業になっている、わたしが高校生になって受講したいくらいだ。授業を作っているのは7人の塾生、高校の授業とはまるで違ったテイスト(味)。どんな授業か知っている塾生がいたら訊いてみたらいい。やってるわたしが一番楽しいのかも。(笑)
 英語の勉強の仕方がわからないという生徒たちばかりだが、10回の授業が終わったら、それぞれが独力で英語の勉強できるようになっているはず。授業の目的はそこにある。
 大人は結果でものをいう、さてどうなるか、お楽しみ
 授業内容は最初の2回分のみアップ済み。英語の勉強の仕方を教えているのだろうな。

*#4036 英語短期特訓開始:2時間×10回 July 17, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17


 #4044 英語短期特訓授業(2nd) July 25, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-07-25




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