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#4046 Sapiens:page 4 July 27, 2019 [44-2 Sapiens]

<最終更新情報>
7/28 朝11時15分

 Sapiens 原書講読は、高校英語の教科書3年分を終了し、進研模試で全国偏差値が75を超えている高2の生徒の個別指導授業である。7/26日の授業で解説した文(4頁)のみをとりあげる。


(1) Animals much like modern humans first appeared about 2.5 million years ago.

  主語の訳にてこずっていたようだ。 2.5 million years ago を2万5千年前と誤読したために、文意が分からなくなった様子。年の単位は million だよというと、「あっ!」と声をあげた。論理的に読んでいるからこその躓きだった。前のページにあった文章が記憶にあるので、どういうことかと疑問がわいたのだろう。読者には何を言っているのかわけがわからないだろうから、関連部分を以下に引用する。

 Three important revolutions shaped the course of history: the Cognitive Revolution kick-started history about 70,000 years ago. The Agriculural Revolution spend it up about 12,000 years ago.  The Scientific Revolution, which got under way only 500years ago, may well end history and start something completely different.  This book tells the story of how these three revolutions have affected humans and thier fellow organism.


歴史の道筋は、三つの重要な革命が決めた。約7万年前に歴史を始動させた認知革命、約1.2万年前に歴史の流れを加速させた農業革命、そしてわずか500年間に始まった科学革命だ。三つ目の科学革命は、歴史に終止符を打ち、何かまったく異なる展開を引き起こす可能性が十分にある。本書ではこれら三つの革命が、人類をはじめ、この地球上の生きとし生けるものにどのような影響を与えてきたのかという物語を綴っていく。)柴田裕之訳


 現人類が現れたのは20万年前、そして認知革命が起きたのは7万年前で、農業革命が1.2万年前、この情報と現人類によく似た動物が2.5万年前に現れたという新しい情報はつじつまが合わない、何かおかしい、どこか理解がまちがっていると、それで考え込んでいたようだ。数字の単位の読み間違いは、思い込んでしまっているので何度見ても気がつかぬ。こういう時は思い込みを消して、虚心に文をながめることができればいいが、いったん意識が集中してしまうと、周辺部が見えなくなる。
 文脈読みして、論理的な整合性、ものごとの生起の順序をチェックしながら読んでいるのだから、こういうミスはステップアップへつながる。既読の文章を要約して脳内に次々にため込みながら、その情報といま読んでいる文章の論理的な整合性をチェックしつつ読む技を磨いている、そういう中で起きたミスだ。
 次のステップは「集中解除」のしかたをトレーニングするのだが、こちらはなかなか難しい。ヨガや座禅の呼吸のコントロールになれたら、やりやすくはなる。そんなことを教えるのは面倒だ。本人がどうしてもやりたいと言えば、教えないこともない。多分そういうことに興味がないから、この生徒には無駄。(笑)


 主語が長いことで、戸惑う読者がいるかもしれないので、補足説明しておく。likeはもちろん前置詞で、「~に似ている」である。muchが修飾しているから、「とてもよく似た」とやればいい。英語が苦手な生徒はlikeが動詞だと勘違いして、そこであえなく沈没する。余分な肉(修飾語)を削ぎ落して、骨格だけ抜き出すと、簡単な文になる。
 Animals  appeared about 2.5 million years ago.
 慣れてくると、こういう風に骨の部分がすぐに見えるようになる。animalsと読んで、それがどういうアニマルなのかと思いながらmuch like modern humansを読み、そして動詞句を読み取る。「何がどうした」と単語の並んでいる順番通りに読んでいくわけだ。
 
英語が苦手で英文を読まなければ、いつまでたっても骨の部分が見えてこない。

 さて、ハラリはここでは「ape 猿人」という用語を使わずに、「人類にとてもよく似た動物がおよそ250万年前にはじめてあらわれた」とだけ書いている。どのような系統があって現人類に至るのかはすぐに後で述べるつもりだからだろう。250万年前の東アフリカに現れたアウストラロピテクス、ヨーロッパとアジア西部に現れたホモ・ネアンデルターレンシス、アジアのもっと東に住んでいたホモ・エレクトス、インドネシアのジャワ島で暮らしていたホモ・ソロエンシスなど、後ほど次々にさまざまな種が紹介される。
 ホモ・エレクトスは200万年間も地球上で暮らしていた、お利口にならなかった
からだろう。20万年前に現れたホモ・サピエンスはお利口になりすぎて、これから先1000年後に絶滅せずに生き延びるのは至難の業に思える。人類が生き延びれば、わずかの期間に地球上のさまざまな生命の絶滅が急速に進み、生態系の単純化がある選を超えたら、人類自身が生き延びられなくなりそうだ。人類が絶滅すればまた地球は豊かな生態系を回復していくだろう。そしてまた現人類のような生物が現れ、繁殖しすぎて絶滅へと向かう。生徒はどのような読み方をするのだろう?


(2)  On a hike in East Africa 2 million years ago, you might well have encountered a familiar cast of human characters: anxious mothers cuddling their babies and cluches of carefree children playing in the mud; temperamental youthes chafing against the dictates of society and weary elders who just wanted to be left in peace; chest-thumping machos trying to impress the local beauty and wise old matriarchis who had already seen it all.

 ここは仮定法過去完了の文だと迷わず見抜いたのでちょっと驚いた。生徒がどこで判断したのかというと「might well have encountered」をみてそうではないかと思ったという。if節がないのに、仮定法だとわかったのは、条件節のない仮定法の文を何度も見ていたからだ。
 on以下の副詞句を「歩き回れば」と条件文として的確に訳していた、好いセンスしている、ほめた。

 これは仮定法の条件節が副詞句になっているめずらしいタイプの仮定法で、高校教科書の範囲を超えている。受験参考書の江川泰一郎『改訂三版英文法解説』には263頁に「(5)その他 次のような副詞句でもif-節に「相当する仮定を表せる」と、簡単な例文を挙げているのみ。
 I think that picture would look better on the wall(=if you hung it on the other wall)
  (その絵はもう一方の壁にかけたほうがもっと引き立つと思います)
 安井稔著『改訂版英文法総覧』には載っていない。if節で始めるのはいかにもいかにもで、表現がダサいということが、この文を見るとわかる。ハラリはイスラエル人であり、イスラエルではヘブライ語とアラビア語が公用語だから、外国語である英語で書いていることになる。

 castの訳に苦労していた、辞書から適当な日本語が見つけられない。こういうときは紙の辞書がいい、スクロールしないでも全部が視野におさまるからだ。生徒はシャープの電子辞書を使っている。電子辞書は薄くて軽い、そして音声が出るので、発音の確認に便利だ。英英辞書も載っている、唯一の欠点は当該項目の意味の一覧はスクロールしないと見れないということ。
 こういう時は本文のcastの前後を見る、「 a familiar cast of human characters」、名詞句になっているので、castは動詞ではなくて、名詞の項を参照して、「人間の特徴を有する見覚えのあるcast」に都合のいい日本語を探す。ジーニアス4版には「⑥様子、格好、気質;種類、タイプ」とある。「人類の特徴を有する見覚えのある光景に出くわすことになる」くらいの訳はできるだろう。
 電子辞書だとこういうケースが調べにくい。①から初めて、順に②③④⑤、そして⑥までスクロールしなければならないからだ。
 of は全体の一部分を切り取って示したようなイメージでとらえたらいい。「人間の特徴」全体からその「見覚えのある様子」の一部分を取り出して見せている。コロンのあとで具体例を六つ挙げているから、そちらを読んでからこなれた日本語の文章を再考したらいい。

 cluchesを動詞ととってしまって、そこであえなく撃沈。文章を理解するときに品詞のミスは致命的なことがある。「わからないときはそのままにして次を読め」と繰り返し言っているが、そこで停止して、アイスパンが先まで届いていない。いったん思い込んだものを消すのも慣れてきたら、意識的にできるようになる。この技は数学でも重宝する。
 自分で気がつくのがよいので並べて見せた。

a)anxious mothers cuddling their babies
b) cluches of carefree children playing in the mud
c) temperamental youths chafing against the dictates of society
d) weary elders who just wanted to be left in peace
e) chest-thumping machos trying to impress the local beauty
f) wise old matriarchs who had already seen it all


  青で示した単語が骨格部分である。これらは前の文の補足説明として、具体例を挙げただけ。それがわかればcluchesは名詞だと気がついたはずで、意味も問題なくつかまえることができただろう。ようするに 'three slices of bread' と同じ。three slices = clutches, bread=children というわけだ。生徒はclutchを辞書で引き、動詞の項目をみて珍訳をこねくり回し、数分間首をひねっていた。これも、clutchが動詞だという思い込みが外せない限り、正解には行きつかぬ。だから、「そこがわからなければ、ほうっておいて次を読め!」と繰り返し言っている。意識の集中が外れる。


 アンダーライン部は全部名詞句だ、その補足説明として~ing句や関係節がくっついているだけ。そうすると、上から順に、「不安げな母親たち、屈託のない子供たち、短気な若者たち、元気のない年寄りたち、酸いも甘いも噛み分けたたち」、ということになる。「matriarchs」とは「家母長、女家長、女族長」である。交雑する母系社会や強いオスが支配権を握ってたくさんのメスを囲い込む社会、両方があったのだろう。この部分では、ハラリは交雑する母系社会を想定して書いているようだ。
 それでclutchをもう一度引かせてみると、clutch(2)という項があり、a cluch of kids (同じ腹から生まれた子どもたち、子どもの小集団)が見つかった。

 わからない箇所を飛ばして、読むべし。そしてもう一度もどって考えると、なーんだということがよくある。こういうところは、一緒に読んで具体的な文章でスキルを伝えるのがよい。

 『サピエンス全史』の訳者、柴田裕之氏の訳を貼り付けておく。
もしあなたが200万年前に東アフリカを歩き回ったとしたら、きっとお馴染みの群像に出くわしたことだろう。心配そうに赤ん坊を抱いてあやす母親、泥まみれで遊ぶ屈託のない子どもたち、社会の掟にいら立つ気難しい若者たち、そっとしておいてもらいたがる老人たち、たくましさを誇示し、あたりに住む愛らしい娘の気を惹こうとする男たち、酸いも甘いも噛み分けた賢い女性の長老たち。

<生徒の感触>
 高3の教科書に比べるとずいぶん難易度がアップしている。ハラリは英語が母国語ではないのに、これほどの文章が書けることに生徒が驚いていた。
 テクストの難易度が上がったことが快い刺激になって、愉しいようだ。すらすら読めるところと、読めないところがモザイク状になっている。
 もう、高3教科書レベルのテクストではつまらない。教科書は語彙を制限してリライトしたものであり、いわばお子様ランチ。まともな大人の読み物にチャレンジしたら、歯ごたえが違う。離乳食のような高校英語教科書はつまらない読み物になってしまった。

 「知之者不如好之者、好之者不如楽之者」『論語』(岩波文庫)「雍也第六20」117頁
 「
これを知るものこれを好むものに如かず、これを好むものこれを楽しむものに如かず」

 
<余談>
 英語が苦手な高2の生徒5人と高1の生徒2人対象に、2.5時間×10回(水曜日)の授業を始めた。高3の英語の教科書を使っている。苦手な生徒は塾に来ても数学ばかり勉強して、なかなか英語をやりたがらないので、業を煮やしてしゃにむにやらせようというわけ。いまやらなければ受験にはとても間に合わない。何をどのようにやっているかは、次の弊ブログ記事で紹介してある。

#4036 英語短期特訓開始:2時間×10回 July 17, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17

#4044 英語短期特訓授業(2nd) July 25, 2019

https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-07-25


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