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#4010 言葉の官民格差:事件と事案 May 29, 2019 [8. 時事評論]

 覚せい剤と大麻所持で文科省のキャリア官僚が逮捕された。「逮捕されたのは文部科学省初等中等教育局の参事官補佐 福澤光祐容疑者(44)」、それをうけて柴山正彦文科大臣がテレビで記者会見をした。
*「文科省職員 覚醒剤や大麻 所持の疑いで逮捕
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190528/k10011932731000.html

 文科大臣は記者会見で「事件」ではなく「事案」と言った。いつものことだが、この用語の使い方はおかしい。民間人が覚せい剤所持で逮捕されたら、「覚せい剤所持事件」。「覚せい剤所持事案」だなんて言葉自体が矛盾している、覚せい剤所持は犯罪なのだ。どうして公務員が法律違反を犯した時に当該官庁の大臣は「事件」ではなくて「事案」という用語を使うのか。記者クラブの記者はなぜとがめないのかわからない。

 念のために大辞林で引いてみると次のようになっている。
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事案:問題になっていることがら
事件:①争い・犯罪・騒ぎ・事故など、人々の関心を引く出来事 ②「訴訟事件」の略
---------------------------------------

 事案という言葉には犯罪のニュアンスはない。同じことでも公務員の場合は犯罪ではないと言いたいようだ。(笑)

 言葉の官民格差は願い下げである。NHKさんは「事案」も「事件」も使わず、「逮捕された」と書いている。どの新聞も「事案」という用語は使っていない。
 逮捕したのは厚生労働省麻薬取締部。

 人間の管理は完全にはできないから、こんどは省内宛てに通達を出す必要がある。自覚と自己抑制に期待するしかない。
 健康診断時に検査を義務付けても1か月も休めば検査に引っかからない、いや毛髪検査なら数か月前の使用でもひっかかる。大臣以下全職員に覚せい剤検査を義務付けたらいかが?
 米国では民間企業の中には採用に際して薬物検査を条件としているところがあると、SRL八王子ラボへ見学に来た米国人から1980年代後半に聞いたような気がする。20年もしたらそういうことが必要な日本にならないでほしい。なにやら50年遅れで米国を追いかけているような感じがしてならぬ。

 この通達、いまとなってはいくぶん皮肉に聞こえます。文科省は不祥事続きでショックでしょうね。頭のよい官僚が揃っているですから、なにか有効な対策を考え実施するでしょう。
青少年の覚せい剤等の薬物乱用防止について:文部科学省



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#4009 川崎・登戸児童ら殺傷事件 May 29, 2019 [8. 時事評論]

 ぞっとするような事件がまた起きた。川崎・登戸で児童ら18人が殺傷された。犯人(51歳)は犯行直後に自殺している。
*「川崎・登戸殺傷 児童ら18人襲われ小6女児と男性死亡 確保の男も死亡
https://mainichi.jp/articles/20190528/k00/00m/040/023000c

 登戸駅は大学のある向ケ丘遊園駅の一つ手前の駅であるから、なじみはあるが、一度しか下りたことがない。女房殿が5年ほど通ったプロ用のケーキ教室が登戸にある。いまでも東京へ戻ると顔を出すことがあるようだ。教室は事件現場が見下ろせるビルの3階にある。登戸までは自宅から直線で10㎞ほどしかないから、子どもがカリタスへ通学していたことのある知人もいるようだ。こういう事件はいつどこで起きても不思議でないから、孫がいれば心配になる。もっと安定した穏やかな経済社会であってほしい。

 ブログ「オータムリーフの部屋」さんが「拡大自殺」というタイトルでこの事件の分析をしているのでお読みいただけたら幸いである。
https://blog.goo.ne.jp/autumnleaf100?fm=rss

 犯人の岩崎某氏は幼少期のころに両親の離婚で伯父さんの家に引き取られている。そこには実子が二人いたから複雑な事情があったのだろう。たいていは環境にめげずに真っすぐに生きるのだろうが、なかにはめげてしまう人間もいる。中高時代はちょっとしたことで切れやすい人間だったとは同級生の弁、情緒不安定なかかわりをもちたくない人間だったようで、テレビ報道によれば高校卒業後どこで何をしていたのか知っている同級生がいない。十代後半で伯父の家を出て、最近もどったらしい。こうした周辺の証言からは孤立した生活を送っていたことが窺い知れる。こころの暗部に妬(ねた)み嫉(そね)みを抱えて生きているうちに、それが次第に大きくなってどこかで制御不能になり押しつぶされたのだろう。
 中高生のときに生涯を通じて付き合える友達をつくっておくことは、その後の人生の岐路に、決定的な役割を果たすことがある。孤立してもまっすぐに生きぬける人はよほど強い人で稀(まれ)。ふつうの人は多少なりとも心にエゴという闇を抱えながら、なんとか折り合いをつけて生きている。

 昭和から平成となり、平成の30年間で経済格差が拡大し固定化した。大企業の取締役の報酬は3倍以上にもなったのに、従業員の人件費は増えていない。一人当たり実質賃金でもわずかしか伸びていない。最近数年間は実質賃金が減少している。格差が小さかった日本の経済社会だったが、平成の30年間でゆっくりそして大きく変化してしまった。
*「近年の経済成長率と賃金上昇率の動向 」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000173082_1.pdf


 オータムリーフさんは一人住まいになった老人がしだいに追い詰められていく様子を年人受給額や生活保護基準を提示しながら丁寧に説明している。そういう老人が増えていけば中には拡大自殺するケースが増えることが懸念される。超高齢化社会を迎え、こういう事件が減らないことを示唆しているように読めた。
 令和の時代は老人の孤立化や生活困難化に有効な対策を見つけて実施できないと、都市部のあちこちに地雷が埋まっていていつだれが踏んづけるかわからないような地雷原の中で暮らすようなことになりそうである。
 日本の経済社会は幸福という点からは進歩しているのか、それとも退化しつつあるのか?
 わたしたちはどのような経済社会を理想として国家戦略を描くのか、あるいはどういう生き方を選ぶのかを考える岐路に立っている。

*拡大自殺…ウィキペディア
https://ja.wikipedia.org/wiki/拡大自殺

*「上場企業の平均年間給与、606万円で過去最高 18年決算 東京商工リサーチまとめ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45352250Y9A520C1EAF000/?n_cid=DSREA001&fbclid=IwAR3uAmn-OblF1e7tSoE_ma28BdbkjVTVuETCsuXCl6NrhRBANUm_JOcciXk


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