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#3994 キムリア:一回3349万円の白血病治療薬 May 15, 2019 [8. 時事評論]

 ノバルティスファーマから画期的な白血病治療薬がでているが、このたびめでたく保険収載される。5月22日から適用だという。
*「1回3349万円の白血病治療薬、保険適用を決定 」日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44794650U9A510C1MM0000/?n_cid=DSPRM1489&fbclid=IwAR1StVtzaeSj6WYEs2HJiuxDK_U5_FvObVQj5O-VO65zaxt5gCfhoB2o9JA


 中央社会保険医療協議会が審議していたのだが、どういう計算で3349万円の公定価格が決められたのだろう。この協議会の委員の方たちは、医薬品の製造原価について知識はないだろう。製薬メーカの資料をそのままうのみにしていないか、チェックすべきは事務局をしている厚生省の職員だろうか、いや、荷が重すぎる。

 1990年ころのことだが、染色体検査の「公定価格」が原価割れしているので、原価計算資料を送付して価格アップを交渉したことがあった。その結果400点(4000円)ほど値上げできた。当時のSRLは染色体外注市場の8割程度のシェアーがあったのだが、そのSRLですら利益の出せない分野だった。物は試しにやってみようということでやってみたら、OKがでた。値上げすることで、黒字検査になったから、染色体検査分野へ他の会社の参入が容易になった。公定価格は適正な水準に維持されなければならない。
 薬価や臨床検査の審議をしているところはその有効性については強い関心があるが、製造原価について無知であり、関心が薄い。そういうシステムは社会保険財政を危うくしかねない。

 たとえば、キムリアの開発費が1000億円かかったとしよう。10年間で開発費を償却しようと思うと、年額100億円である。
 市場規模が年間100人と10000人では薬剤一回当たりの開発費の償却負担が1億円と100万円の違いが出る。製造コストも年間100人分と10000人分では30:1くらいの差があるだろう。
 
 キムリアはなぜ高いのか、ひとつは希少疾患で患者数が少ないことが理由だ。二つ目の理由は治療薬の製造工程にある。患者から採取した免疫細胞の遺伝子を改変して癌への攻撃力を高める「CAR-T細胞療法」は製造工程が複雑だからである。

 今日(5/15)北海道新聞夕刊に治療薬製造手順が載っているのでかいつまんで説明する。
 日本国内で患者の体内からT細胞を含む白血球を採取、凍結保存し、航空機で米国に輸送する。米国ニュージャージー州にあるノバルティス社の専門施設で、癌細胞を攻撃する遺伝子を導入して改変し、CAR-T細胞を増殖させ、厳しい品質検査を重ねる。いわばテーラーメイドだから高いというのである。

 この薬剤を使う患者が百倍になれば、製造方法は劇的に変わる。価格が下がればこの治療薬を使える患者数が増える。大尉症患者が増えれば高度な熟練技術をもたないものでもやれるように機械化もはかれる。ノバルティスは製薬メーカーの巨人であり、世界中から検体を集め、治療薬を製造できる。日本で社会保険に収載されるということは販売戦略上大きなメリットである。公定価格には交渉の余地があるということだ。

 臨床検査最大手のSRLでは、新規項目は特殊検査部で導入されることが多い。理由は検体が少ないことから、手作業になるので、ルーチン検査部門ではやれないからだ。特殊検査部は検査の種類ごとに3課に分かれていた。手作業だから1検体当たりのコストはべらぼうに高くなり、それに見合う価格はつけないのでこの検査部門は赤字である。百の赤字項目の中から、黒字になる項目がでてくればいいのだ。新規の赤字項目をたくさんやることで、その中から有望な新規項目がみつかる。赤字部門を抱える余裕のない会社はすばらしい新商品を探り当てることができない。
 10-100テスト/日のうちは、手作業での検査となるが、これが数百テストに増えてくるとルーチン検査部門へ移管される。既存のラインへ落とし込むか、数人のグループによる分業化と機械化がなされるので、製造コストは数十分の一になり、ものによっては採算がとれだす。受託数が1年以内に百倍になるような有力な検査項目なら、赤字での販売価格設定がなされる。一年後には市場が独占できるなら、価格破壊戦略をとっても構わない。儲けはあとから、量産体制が整い製造コストが目標通り下がってからでいいのである。

 新聞記事で製造工程を見た限りでは、キムリアはSRLでもライセンス生産できそうだ。3年あれば製造コストは1/10以下にできるだろう。わたしがSRL学術開発部門のスタッフなら、ノバルティスとライセンス生産の話をはじめたい。数年は赤字でいい、新規事業分野が開拓できる。CAR-T細胞治療薬はこれから種類が増えるだろうから、キムリアで橋頭保を築いておくのはSRLの経営戦略上学術開発担当取締役が考えて当たり前。面白そうだから、古巣に戻ってわたしがマネジメントしたいぐらいだ。(笑)

 さて、話を現実のキムリアに戻そう。このような高額治療薬は開発費と需要予測と公定価格決定に関する資料を整理して、毎回公開すべきだろう。それを嫌がる製薬メーカがあれば、保険収載を断ったらいい。

 保険収載すれば、需要は拡大するから、「公定価格」は製薬メーカとの交渉事であるはず。そういう機能を担う部署もないのでは?

 高額医療費は2016年度で年額2兆5579億円となっている。このままでは高額医療費で社会保険制度がつぶれかねない。 



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#3993 丸山穂高議員:「戦争で島を取り返す」発言 May 15, 2019 [21-1領土返還地元の異見]

 日本維新の会所属衆議院議員の丸山穂高氏が「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」とビザなし訪問で、団長の引揚者に繰り返し質問したと騒がれている。
 日本維新の会は火の粉を払うために離党届を受理せず除名処分。

*「維新、丸山穂高議員を除名処分 北方領土めぐる発言で」(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASM5G5HLFM5GUTFK018.html

 酔って暴言を吐いたということだが、ビデオを見る限りそんなに酔っているようには見えなかった。おそらくこの人の持論で本音だろう。反響の大きさに右往左往して離党届というのが実態に見えた。何が悪いとマスコミに向かって開き直る度胸もない、ようするに腹が座っておらず、まるで子ども。
 
 「丸山穂高」でググったら、酒を飲んで口論し相手を噛んだという記事がでてきた。
⁑「松下政経塾出身の元官僚 北方領土で問題発言の丸山穂高衆院議員とは」毎日新聞
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/松下政経塾出身の元官僚-北方領土で問題発言の丸山穂高衆院議員とは/ar-AABkYNH?li=BBfTvMA&ocid=spartanntp

 口論して喧嘩に及び、相手を噛むというのは女のようなふるまい、喧嘩のしかたも知らぬ幼児性が強い人のようだ。この人も松下政経塾出身者か、半数程度はこういうレベルの人材、世間を騒がせた松下政経塾出身の政治家は少なくないので辟易している。玉石混交はどこにでもあるにしても、石っころが多すぎると感じるのはわたしだけだろうか?
 「橋下徹にさからえない」と発言したときも、すぐに撤回した。
 本音を語ったのなら、そのまま突っ走ればいい。ようは、腹を決めて発言するか否かだ。

 では、丸山議員の発言はあってはならぬものか、そうではないだろう。
 今のまま、ビザなし訪問なぞ百年続けたって北方領土返還が不可能なことぐらい、元島民だってほとんどの人が承知のことだ。それで何とかなると思う元島民がいるなら純朴に過ぎる。純朴には世間知らずの阿呆という意味もある。多くの元島民とその2世・3世は、戦後74年間成果のだせない政府の北方領土交渉に大きなストレスを感じている。感じていながら、自分たちで北方領土返還戦略を描くこともできない、ヘタレなのである。

 わたしの母は択捉島蘂取村生まれだから、ebisuは元島民2世。北方領土返還運動が具体的で現実的なものとなり、領土返還と言う目標を達成するための戦略を描けるものであってほしいと願う

①はるか国後島の茶々岳を望む…牧の内の牧場付近のサイクリング道路から
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SSCN2705.JPG
 国後の島影を見るたびに、わたしは、小学生のころにビリヤードの相手をしてくれた歯科医のT塚先生を思い出す。根室唯一の文学博士で考古学者の北構保男氏はT塚先生と根室商業の同期である。北構先生によれば、T塚先生は国後島の大漁師の息子だそうだ。どちらも長身、豪快な人。

 事件はムネオハウスで起きたらしい、その鈴木宗男氏が「元島民の平均年齢は84歳。人生限られた中で、どんな思いで島に足を踏み入れているか。涙が出る思いだ」と語っている。
⁂「再三渡航の鈴木宗男氏「涙が出る思い」 丸山発言に憤り
https://www.asahi.com/articles/ASM5G641GM5GUTIL03W.html

 ふざけるなと言いたい。宗男氏の言ってることは、まるでロシア政府の走狗。返還運動に携わる人たちを分断する彼の2島返還論の方が元島民にとっては辛い。7%の歯舞群島だけでいい、93%の面積を占める国後島と択捉島は放棄するという主張は、歯舞群島出身者と国後・択捉両島出身者を分断するものである。苦しい表情で歯舞群島出身者が何を語ったか、弊ブログの記事を読んでいただけばわかる。
 どういうわけか宗男氏は20回以上も訪問を繰り返している。北方領土返還運動の在り方に疑問をもつ元島民も少なくないから、千島歯舞居住者連盟の会員とならない2世は、窓口がないので一度も墓参に参加してない者たちがいる。元島民でも墓参に行きたくても行けない者がいる。ビザなし訪問も、墓参もすでに一部の者たちの利権と化しているようにわたしには見えている。元島民でもない一政治家が、なぜ20回以上も国費で北方領土訪問が可能なのか、理由があるはず。
 領土問題を広く喧伝するためには、北方領土を一度も訪れたことのない国会議員を優先的に行かせたらいい。今回の丸山衆議院議員のようにさまざまな意見が出てくる、あるがままでいいのだ。

 領土返還運動は政府の予算で賄われており、具体的で現実的な北方領土返還論が返還運動諸団体から提起されてことは一度もない。ああ、もちろん、会員は会費を支払っているから、全額が政府補助とは言わぬ。しかし、一回ビザなし訪問に行っただけで、現在の会費を戦後70年間支払い続けたとしても元が取れるほどの補助金事業であることも事実。
 今回の騒動を契機に、具体的で現実的な北方四島返還戦略が議論されることを望む

 我田引水ではあるが、弊ブログの記事のURLを貼り付けるので、お読みいただきたい。

#195 すこし過激な北方領土返還論:MIRV開発・組み立て・配備・解体ショー

#1892 映画「マーガレット・サッチャー」と北方領土 Apr. 6, 2012

#2053 マーガレット・サッチャーと領土問題(2) : 北方領土・竹島・尖閣列島 Aug. 14, 2012

*#2054 マーガレット・サッチャーと領土問題(3) : Aug.16, 2012

*#3871 根室市長「いかなる結果でも全面的に支持する」
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-12-02-1


 #3882 羅臼町長の北方領土に対する明快な意見 Dec. 15, 2018 
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-12-15


 #3929 VENONA文書と北方領土:四島一括返還の戦略 Feb. 13, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-02-12-1




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