#3987 数Ⅱ「軌跡の問題」 May 8, 2019 [52. 数学]
毎週水曜日はニムオロ塾が休みだから、のんびり。2時ころロードバイクで15㎞ほど走ってきた。走り出したら小雨がぱらついてきたが、そのまま原野をサイクリング。羽音をけたたましくたてながら飛んで行った鳥は、なんだったのだろう。ちっちゃなジェット機が飛んだような音。たまに出くわす。気温13.2度。平均時速21.6km、だいぶ脚に筋力が戻ってきた感じがした。タイヤが細くて、空気圧が8barと高いので雨の路面は要注意だ。まあ、こいうときは走らぬが安全。
『シリウス数Ⅱ』「いろいろな軌跡」p.83に例題が載っている。予習をしていた生徒から質問があったので紹介する。ほとんどの生徒が疑問に思うだろう、いい質問だった。
--------------------------------------------------
<例題>
点(a, b)が円x^2+y^2=1上を動くとき、点(a+b, ab)の軌跡を求めよ。
<解答>
a+b=x、ab=yとおく。
点(a, b)は円x^2+y^2=1上の点であるから、
a^2+b^2=1
a^2+b^2=(a+b)^2-2ab=x^2-2yであるから、
x^2-2y=1
y=(1/2)x^2-1/2…①
a, b は t に関する2次方程式 t^2-xt+y=0 の実数解であるから、判別式をDとすると、
D=x^2-4y≧0
これに①を代入すると、
X^2-4((1/2)x^2-1/2) ≧0
これを解いて、
-√2≦x≦√2
よって、求める軌跡は、
放物線 y=(1/2)x^2-1/2 の -√2≦x≦√2 の部分である。
------------------------------------------------------
生徒から質問のあったのは青字の部分である、なぜ、唐突にこの式がでてくるのか由来がわからないということだった。
(この生徒は塾用数学問題集『シリウス』シリーズを中1から使用して、予習方式で勉強しているが、例題で質問がでたのは記憶にないからおそらくこれが初めて。例題を独力で読み、すんなり理解して難易度の高い問題にただちにチャレンジしてきた。このシリーズは問題の難易度が高いだけでなく、数が多い。問題集は283頁、解答集は557頁、B5版ノートよりも幅と高さがそれぞれ5㎜ほど長い。
高校受験数学で夙(つと)に有名な「青チャート」はほとんどのページが例題で埋め尽くされ、問題は一つの例題につき数題しかないが、問題数の数でいうとシリウス数Ⅱは青チャートの20倍は尤(ゆう)にあるだろう。そして難易度は赤チャートレベル。それを基礎問題集をやらずに、いきなりやり続けて来たのだから、数学の力は高校へ入学してから抜群に伸びた。生活時間の使い方が変わったことが大きい。土日に長時間・集中的に勉強するようになった。中学時代は土日はほとんど勉強していないようすだった。舐めていたのである。根室に居たらこれはもうしかたがない。どれだけ言ったって、高校2年になるまでわからない。(笑)
だれもがこんな学び方ができるわけではない。北海道の公立中学で採用している学力テストは東京都のそれに比べて難易度が低いが、そのテストで満点を取ったことのある生徒でも、こういうやり方をしたのは初めてである。生徒の学力、チャレンジ精神の有無、そして性格に応じて教材とやり方を選べる、個別指導の利点だろう。)
2次方程式の基本に帰れば気がついただろう。軌跡のところで突然にどこから出てきたのかわからない式が提示されたので戸惑ったのだ。2次方程式の実数解は判別式D≧0を満たすことが要件である。それとa,bが実数解だということの2条件を考えたら、解説文の意図するところが理解できる。
『シリウス数Ⅱ』「いろいろな軌跡」p.83に例題が載っている。予習をしていた生徒から質問があったので紹介する。ほとんどの生徒が疑問に思うだろう、いい質問だった。
--------------------------------------------------
<例題>
点(a, b)が円x^2+y^2=1上を動くとき、点(a+b, ab)の軌跡を求めよ。
<解答>
a+b=x、ab=yとおく。
点(a, b)は円x^2+y^2=1上の点であるから、
a^2+b^2=1
a^2+b^2=(a+b)^2-2ab=x^2-2yであるから、
x^2-2y=1
y=(1/2)x^2-1/2…①
a, b は t に関する2次方程式 t^2-xt+y=0 の実数解であるから、判別式をDとすると、
D=x^2-4y≧0
これに①を代入すると、
X^2-4((1/2)x^2-1/2) ≧0
これを解いて、
-√2≦x≦√2
よって、求める軌跡は、
放物線 y=(1/2)x^2-1/2 の -√2≦x≦√2 の部分である。
------------------------------------------------------
生徒から質問のあったのは青字の部分である、なぜ、唐突にこの式がでてくるのか由来がわからないということだった。
(この生徒は塾用数学問題集『シリウス』シリーズを中1から使用して、予習方式で勉強しているが、例題で質問がでたのは記憶にないからおそらくこれが初めて。例題を独力で読み、すんなり理解して難易度の高い問題にただちにチャレンジしてきた。このシリーズは問題の難易度が高いだけでなく、数が多い。問題集は283頁、解答集は557頁、B5版ノートよりも幅と高さがそれぞれ5㎜ほど長い。
高校受験数学で夙(つと)に有名な「青チャート」はほとんどのページが例題で埋め尽くされ、問題は一つの例題につき数題しかないが、問題数の数でいうとシリウス数Ⅱは青チャートの20倍は尤(ゆう)にあるだろう。そして難易度は赤チャートレベル。それを基礎問題集をやらずに、いきなりやり続けて来たのだから、数学の力は高校へ入学してから抜群に伸びた。生活時間の使い方が変わったことが大きい。土日に長時間・集中的に勉強するようになった。中学時代は土日はほとんど勉強していないようすだった。舐めていたのである。根室に居たらこれはもうしかたがない。どれだけ言ったって、高校2年になるまでわからない。(笑)
だれもがこんな学び方ができるわけではない。北海道の公立中学で採用している学力テストは東京都のそれに比べて難易度が低いが、そのテストで満点を取ったことのある生徒でも、こういうやり方をしたのは初めてである。生徒の学力、チャレンジ精神の有無、そして性格に応じて教材とやり方を選べる、個別指導の利点だろう。)
2次方程式の基本に帰れば気がついただろう。軌跡のところで突然にどこから出てきたのかわからない式が提示されたので戸惑ったのだ。2次方程式の実数解は判別式D≧0を満たすことが要件である。それとa,bが実数解だということの2条件を考えたら、解説文の意図するところが理解できる。
(t-a)(t-b)=0
これが、a,bを解とする2次方程式で、a,bが実数であるためには、この方程式の判別式D≧0であればよい。
そこで、これを展開してみる。
t^2 - (a+b)t + ab=0
さて、ここで、
x=a+b, y=ab であったことを思い出してもらいたい。置き換えると、
t^2 -xt +y=0
こういうことだったのである。例題には説明なしにいきなり最後の式がでてきたのだが、全部書くとこのように長くなるので、端折ったのだろう。
「迷ったときには基本に還る」
高校2年生で、いまの時期(5月)に、この例題を予習して、読み切れる生徒はほとんどいないだろう、いい質問だった。
この生徒は中1のときから予習方式で学習しているから、少ない例題を読みこなし、すぐに難易度の高い問題を解くのにすっかり慣れてしまった。高校数学の範囲ならもう独力でぜんぶやれるだろう。数学は塾で教える必要がほとんどなくなっている、それでいい。(笑) 塾の指導目標はそこに置いている。独力でかなりの難易度の問題集を解いたり、独力で参考書を読む力をつけることに目標を置き、そのターゲットを達成するために具体的な指導のやり方を生徒の学力に応じて考えて教えている。音読トレーニングもこの生徒に合わせて選んだ15冊をやり切った、著者の主張の要点析出や批判もしてきた。最後に一緒に読んだのは福沢諭吉『福翁自伝』の前半百ページくらいまでだった。残りは独力で読ませた。いつまでも指導していてよいわけがない。濃密な指導をしすぎて依頼心を生んではいけない。そのあとは独力で物理学者山本義隆著『近代日本150年』岩波新書の読破にチャレンジした。この本はじつに難易度の高い本である。著者は知の職人というにふさわしい。厳密な学術論文を書くスタイルで書き通している。東大大学院で身につけた技術だろう。彼はかつて東大全共闘議長であったことがある。1960年代後半に、湯川博士をして「日本人でノーベル物理学賞に一番近い学生」と言わしめた。その後、山本は東大を去る。東大院生のときに全共闘議長として担がれなければ、東大物理学の名教授として君臨しただろう。人の運命は計り知れぬ。そのお陰で、いい本を何冊も書いている。
塾の音読トレーニングは山本義隆の本で卒業である。あとは興味のわいた本を自分で選んで読めばいい。すでに論理的な文章読解力は並の高校生の比ではない。
ふつうは、教科書レベルからやって、基本問題集を1冊消化してから、シリウスのような難易度の高い問題集にチャレンジするのがあたりまえだ。だが、この生徒はいきなりシリウスで大丈夫である。各章の章末には「入試問題研究(応用編)」が載っているが、そこには難関大学の過去問が並んでいる。最近は「入試問題研究(センター試験)」レベルの問題が簡単に感じるというようになった。だから、進研模試の偏差値は80を超えてしまっている。最近は駿台模試、河合塾模試、ゼット会模試の問題に焦点を当てて学習するようになった。とっくに塾で勉強しているだけではない。自分で判断してどういう勉強の仕方が自分に合っているのか、考えながら試行錯誤している。
ひとつ解説し忘れたことを思い出したので補足しておきたい。t についての2次方程式にしているのは、xとyがすでに使ってしまっている文字だから混乱を起こさないための配慮で、他の文字ならなんでもよい。助変数のtとは関係がない。何かの式が背後にあるのではと探しても、説明したような理由で採用した文字だからなにも見つからぬ。そういうことを考えるとsで表したほうがよかったのかもしれない。
さて、この式 t^2-xt+y=0 が思いつかなければ、この問題が解けないかというとそうではない。別の解き方がある。グラフの概形を描けば、簡単にx=(a+b)の定義域がわかる。
Grapsで描いたグラフを見てもらいたい。
(Grapsはフリーソフトだから、ダウンロードして誰でも使えます)
ディスプレイをそのまま写真に撮ったので見づらいだろうが、細かいところはどうでもいいので、半径1の円のグラフと②の放物線に注目していただきたい。
(a+b,ab)の軌跡を求まるのだが、a+bの最小値と最大値は半径1の円を見ただけですぐにわかる。tan45°のところが、a=√2/2であり、b=√2/2であることは簡単に読みとれる。a+b=√2で最大値。
最小値は、tan225°のところ、a=-√2/2、b=-√2/2、a+b=-√2。abの最小値と最大値はもう説明するまでもないだろう。
あとは余談である、EXCELで、0.01刻みで、次のような表を作って、変化をみた。ブログの容量の関係で、途中の行を端折ったが、xは-1.00から+1.00まで0.01刻みで列の数値が計算されている。5ラインしかコピペしていないが、実際には200ラインある。xが-1.00から+1.00まで200段階で他の変数や式が自動計算されて並ぶので、変化の様子が手に取るようにわかる。その大きな表とGRAPSのグラフを突合しながら見れば、理解が深くなる。表からグラフイメージを自分の脳に描いてみよう。そしてGRAPSのグラフと比べてみたらいい。表からグラフをイメージするのに慣れたら、高校数学に抜群に強くなれる。
最上段は変数や計算式である。式が違うが、4番目と5番目の数値が一致するのはどちらも ab を表しているからだ。これはこれで面白い、グラフとは別のところでなるほどと思うところがある。
GRAPSやEXCELを使って遊んでみたらいい。やりかたがわからなかったら、簡単だから教えてあげる。
高校数学まではグラフイメージをあたまに浮かべるとか、グラフ概形を描いてみたら、問題の意図しているところが精確に読み取れる問題が多い。高校数学を卒業して複素関数を学ぶときにはそういう方法が使えなくなる。数学はその辺りから抽象度を一気に上げてしまう。高校数学の覇者たちが、数学科へ進学してつぶれるものが多いのは、複素関数や数理論理学がまったく別のゾーンにあるからだ。
大学生になったら、文系理系を問わず、ユークリッド『原論』に目を通してもらいたい。学の体系構成の要点が理解できる。とくに経済学を学ぶ学生はかならず目を通したほうがいい。理由は「#3938 新しい経済社会のデザインについて」をお読みください。
*https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-02-26
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-06
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-03-31
にほんブログ村
(Grapsはフリーソフトだから、ダウンロードして誰でも使えます)
ディスプレイをそのまま写真に撮ったので見づらいだろうが、細かいところはどうでもいいので、半径1の円のグラフと②の放物線に注目していただきたい。
(a+b,ab)の軌跡を求まるのだが、a+bの最小値と最大値は半径1の円を見ただけですぐにわかる。tan45°のところが、a=√2/2であり、b=√2/2であることは簡単に読みとれる。a+b=√2で最大値。
最小値は、tan225°のところ、a=-√2/2、b=-√2/2、a+b=-√2。abの最小値と最大値はもう説明するまでもないだろう。
あとは余談である、EXCELで、0.01刻みで、次のような表を作って、変化をみた。ブログの容量の関係で、途中の行を端折ったが、xは-1.00から+1.00まで0.01刻みで列の数値が計算されている。5ラインしかコピペしていないが、実際には200ラインある。xが-1.00から+1.00まで200段階で他の変数や式が自動計算されて並ぶので、変化の様子が手に取るようにわかる。その大きな表とGRAPSのグラフを突合しながら見れば、理解が深くなる。表からグラフイメージを自分の脳に描いてみよう。そしてGRAPSのグラフと比べてみたらいい。表からグラフをイメージするのに慣れたら、高校数学に抜群に強くなれる。
最上段は変数や計算式である。式が違うが、4番目と5番目の数値が一致するのはどちらも ab を表しているからだ。これはこれで面白い、グラフとは別のところでなるほどと思うところがある。
x | y=(1-x^2)^0.5 | x+y | xy | y=0.5(x+y)^2-0.5 | ||
-1.00 | 0.0000 | -1.0000 | 0.0000 | 0.0000 | ||
-0.99 | 0.1411 | -0.8489 | -0.1397 | -0.1397 | ||
-0.98 | 0.1990 | -0.7810 | -0.1950 | -0.1950 |
√2/2 | -0.71 | 0.7071 | 0.0000 | -0.5000 | -0.5000 |
√2/2 | 0.71 | 0.7071 | 1.4142 | 0.5000 | 0.5000 |
GRAPSやEXCELを使って遊んでみたらいい。やりかたがわからなかったら、簡単だから教えてあげる。
高校数学まではグラフイメージをあたまに浮かべるとか、グラフ概形を描いてみたら、問題の意図しているところが精確に読み取れる問題が多い。高校数学を卒業して複素関数を学ぶときにはそういう方法が使えなくなる。数学はその辺りから抽象度を一気に上げてしまう。高校数学の覇者たちが、数学科へ進学してつぶれるものが多いのは、複素関数や数理論理学がまったく別のゾーンにあるからだ。
大学生になったら、文系理系を問わず、ユークリッド『原論』に目を通してもらいたい。学の体系構成の要点が理解できる。とくに経済学を学ぶ学生はかならず目を通したほうがいい。理由は「#3938 新しい経済社会のデザインについて」をお読みください。
*https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-02-26
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-09-06
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-03-31
にほんブログ村