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#3969 ロードバイクの季節:風が冷たい Apr. 22, 2019 [85.サイクリング]

 12日からロードバイクに乗り始めた。風はまだ冷たいのだが、もう鶯が啼いている。午前中に航空自衛隊分屯地首魁コースを走ってきた。風がちょっとあるがペダルが軽くなった。

 気温8.7度 南南東の風5.9m/s 湿度74%

 走行距離4.3㎞ 12日からの走行距離27km、累計走行距離4805km
 平均速度20.4km/h、最大瞬間速度39.4km/h

<余談:脳貧血にご用心>
 昨日も同じコースを2周走ったのだが、途中でハンドルをもつ手の力が抜ける。肘から力が抜けてガクッと折れる、路面を見ているのだが脳の反応が鈍い。路面に穴があいていてもよけきれない。何度も腕から力が抜けるので危険を感じて降りて押した。低血糖症状か血圧の低下による一時的な脳貧血症状だろう。参考までに書いておくと通常の血圧が50-90である。運動すると血管が拡張して血圧が下がり、脳貧血症状を起こすのかもしれぬ。
 視神経はわずかなエネルギーしか必要としないので、視界に入るものは認知されているのだが、身体の反応はずっと大きな脳内エネルギーを必要とするようで、身体が思うように動かせない。脳貧血が最小エネルギーモードへの切り替えを伴うとすると、ものは見えているが身体が反応できない状態が現れる。脳を稼働させるバッテリー切れの状態なのだから、筋肉を動かす信号を送っても筋肉組織の反応が緩慢になってしまうようだ。脳からの信号伝達系とそれに対する体の筋肉の反応系がスムーズに連動しなくなるように感じる。自転車から降りて、最小エネルギーモードで歩いているときは、脚を意識的に動かしていない。自然に前に出るままになり、力を入れて歩けない。腕にも力がはいっていないから、ハンドルを握って自転車を押していてもがくんとなることはない。どうやら筋肉へ大きな負荷をかけ続ける状態が維持できないらしい。自分の身体をつぶさに観察しているとこうしていろんなことが見えてくる。胃癌で全摘した人は、低血糖や血圧の変動による一時的な脳貧血が年に数回でることがあるだろうから、これから手術する人は術後の生活の参考にしてもらいたい

 5年ほど前に、仕事から帰ってきて車を降りて雪をどけようとしたら、膝がかくんと折れて転倒したことがあった。立ち上がろうとしたが3度同じ状態になった。5分くらい倒れたままになっていたがだれも歩いて通らない。助けを呼ぶにも人がいない。なんとか中腰になれてふわふわと空中遊泳のような感覚で玄関へたどり着き、慌ててオレンジをむさぼるように食べたら、10分くらいで落ち着いた。玄関の明かりが見えているが身体をそちらへもって行くのがむずかしかった、ふらふらして安定しないのだ。このままアウトかなと3度転倒したときに思った。真冬だったからそのまま1時間もしたら低体温で眠くなり死ぬなんてことを考えた。
 車に座った状態から降りて急に立ち上がる動作が危険なのだろう。立ち上がるときに一時的に血流が脳から下へ向かうから、軽い脳貧血を起こすのだと理解した。転倒しない程度なら車から降りた直後に何度かそういうことはあった。力が抜けて膝から凍りついたアスファルトに激しくぶつかるから、ズボンが2か所破れてダメになった。あのときは女房殿が東京へ行って不在だった。心配するのでしばらく内緒にした。
 翌朝、通学・通勤途中の人が発見する、「あれ、人が倒れてる!」、自宅車庫前で凍死していたなんで洒落にもならぬ。(笑)

 ブドウ糖は携帯している。札幌の北大病院構内で友人がお土産に買ってきてくれたもの。気温が上がるとチョコレートはべとべとに溶けてしまうので、固形のブドウ糖は便利である。調剤薬局にいったときにF枝さんにブドウ糖があるか訊いてみたい。あれば主治医に処方をお願いすればいい。

 今日は腕にちゃんと力がはいって大丈夫だった。昨日と同じ症状がでたら、しばらく自転車の乗るのはやめようと思っていた。周回コースはあまり車が通らない。サイドミラーをつけているので、3-5秒ごとに後ろを確認して走っている。


 
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#3968 根高2年日商簿記検定2級合格者へ:メッセージ Apr. 22, 2019 [63. チャレンジ(教育)]

 2年生で2月の日商簿記2級に合格した生徒がいる。その努力は見上げたもの、称賛に値する。

 1年生での合格記録がある。2008年11月に普通科1年生のN村君が、2009年2月に事務情報科のK村君日商簿記2級に合格している。残念ながら、最速記録はかれら二人である。簿記を習い始めてN村君は12か月、K村君は11か月で合格した。N村君はスタートが中3の11月、高校入試五科目合計点が学年2位だった。よくできた生徒だ。K村君は同じ啓雲中学校出身、高校入試当日の夜から簿記の勉強スタート。
 N村君は国立大医学部受験を考えていたので、本人はチャレンジしたいと望んだが、日商簿記1級受験をとめた。最短でも2級合格から800時間の勉強が必要である。医学部受験との両立は不可能との判断。将来、大病院の経営管理ができる医師を育てていた。

 日商簿記1級は会計と原価計算の2科目で記述式問題が出題されるので、計算技能だけで合格できた2級とは違う能力が必要になる。たとえていうと、2級までは数学、1級は「数学+国語作文問題」。
 現在のペースでは間に合わぬ、高速の受験勉強のしかたがあるので、教えてあげる。数回ニムオロ塾まで来たらいい。わたしも根高商業科卒だからたまには後輩の面倒を見たいと思う。遊びだから授業料はいらない、気楽においで。


 根室高校生に日商1級の合格記録はないから、だれかが記録をつくればいい。後に続く者がでるかもしれない。わたしは最初の一人の背中を押してみたい。(笑)


 小さな塾だからニムオロ塾の場所がわからなかったら、同期の普通科の生徒に訊いたらいい。同じ中学校出身の生徒か、進研模試学年ナンバーワンの生徒に訊ねたらいい。

<余談>
 全国一の岐阜商業では毎年十数人が日商簿記一級に合格していた。いまどういう実績を上げいるのかはとんと知らない。簿記クラブもあるようだ。東京都立の商業高校が何校あるのか知らないが、どの高校も毎年日商簿記1級合格者がいるようだ。都立五商では日商簿記1級受験者の放課後指導に近くの私立大学から先生が派遣されていた。教えられる先生がいないと聞いた。根室にはそうした環境がないから、お手伝いしてみたい。気力と体力はほとんど賞味期限切れ。(笑)


*#3965 根室高校2年生日商簿記2級合格 Apr. 17, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-04-17-2



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#3967 リスク評価がない:夕張石炭博物館火災と原発事故 Apr. 21, 2019 [8. 時事評論]

 夕張市の石炭博物館の炭鉱坑内で火災が発生した。まだ、鎮火の宣言が出ていない。
*北海道新聞ニュース 4/19
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/297891
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「言葉失う」市民ぼうぜん 改修後に来館者増加 夕張石炭博物館火災
【夕張】模擬坑道からは19日午前も煙が上がり続けた。火災が続く夕張市石炭博物館は、財政再生団体の夕張市が地域再生を象徴する施設として総額7億5千万円を投じ大規模改修を昨年に終えたばかり。2018年度の来館者数は予想を大きく超えた。マチの一筋の光明となっていた施設の火災に、市民らは衝撃と落胆に包まれた。…

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  昨年7.5億円もかけて改修したとあるが、夕張市は財政再建団体に指定されているので、自主財源はゼロ、だから100%補助金ということ。鈴木前市長が書類を決裁したのだろう、道知事の関連書類決裁もいるし、何より政府が関与している。官邸の了解でもあったのだろうか、とにかくびっくりだ。普通は財政再建団体に石炭博物館改修の許可しないでしょ。維持できなければ消滅でいいのです。取り壊し費用を政府がもてばいいことでした。観光客が来なくていいのです。第3セクターを作り箱物とイベントにうつつを抜かして観光客を集め、財政破綻したのではなかったか。でも、言いにくいものです、「懲りたでしょ、取り壊すなら補助金降ろします」、そうではないですか。言いにくいことを言うべき人が言う。この場合なら、夕張市長、そして北海道知事、そして主管の官庁です。夕張市議会議員も道議会議員も協力したのでしょう。だれも異を唱えられなかった。戦時中、大日本報国会を組織して戦争協力した文化人たちとよく似ています。(⇒「余談」に追記しました)

 夕張市は箱物政策やイベント政策をやり放題の末に財政破綻したのにまた同じことをやっていた、それが今回の火災事故で明らかになった。

 こういう事業をやるときに、都合のよい仮定ばかり並べて、書類上では利益が出るようになっているからゴーサインがだされる。インチキですよ。改修した坑道に火災リスクがあるなんて石炭博物館の改修案には記述がなかったのだろう。あれだけ箱物行政で失敗したのに、前町長はまったく同じことをやっていたのか、性懲りもなく…。
 人口8000人の夕張市から人口5,500,000人の北海道知事にめでたくご栄転されたようだが、行政能力が町長時代と同じでは一生懸命に仕事してさらに大きな災いを引き起こします。仕事のできない者が一生懸命に仕事をしたときほど悲惨な結果はない、いくら善意でも結果はご覧の通りとなります。一部上場企業に勤務していた16年間に自分の眼で見たことがあります。マネジメント能力の低い管理職や取締役に、分に過ぎた大きな仕事を任せると100%失敗をします、あたりまえですね。失敗の責任をとって降格させざるを得なくなります。行政の失敗は首長を選出した地域の選挙民がとることになります。それを承知したうえで自民党と公明党は鈴木弘道という神輿を担いだのでしょうか?4年後の選挙ではもっと慎重に人選びをしてもらいたい。

 純真無垢という言葉の意味を考えてみます。英語でも純真無垢(inocent)というのは「世間知らずのお馬鹿さん」という意味がありますから、日本語と同じです。北海道の選挙民は「純真無垢のお馬鹿さん」だからこんな手合いにころっと騙されました。石炭博物館改修のリスク評価ができなかった新知事に、もっと大きな差し迫ったリスク、泊原子力発電所のリスク評価ができるはずがないのです。
 鈴木新知事は原発に利害をもつ者たちに囲まれて、石炭博物館のときと同じリスク無視の判断をします。選挙の時も泊原発については、はっきりしたこと言わなかったでしょう。選挙の結果に責任をもつのは道民です、推薦をした自民党でも公明党でもありません、党の方針が決まったとたんに鈴木候補になびいた道議会議員でもありませんよ、何か起きたときに被害を受けるのは道民なんです。選挙の時に鈴木道知事候補に投票した人にも、他の候補に投票した人にも、投票所に行かなかった40%を超える人にも、災害はひとしく訪れます。自然災害は、人間の思惑には関係がない、無慈悲なものです。

 いま四百年に一度の巨大地震と高さ20mの津波が根室沖でいつ起きるかわからない状態です。北海道太平洋沿岸では地質学調査でも過去5500年間に13回の巨大津波の痕跡が確認されています。東北で起きた11年前の巨大地震は、あいにくとだれも予測していませんでした。自然にはわからないことがたくさんありますが注意深くみると、海岸近くの地層には巨大地震が引き起こした津波の痕跡が砂の地層となって刻まれています。
 人間の智慧の及ぶ範囲はわずかなものですから、予想外のことが常に起きます。胆振中東部地震はCCS実験によるもので一部の学者が予測した通りでした。人為的に引き起こされる地震は予測のつくものがあります。しかり、自然が起こす地震は予測のできないものが多いのです。そして、予測街の巨大地震が起きたときには後の祭り、福島第一原発のように原子力発電所の大規模な事故へと繋がったらふるさとは元に戻らない。

 石炭博物館事業と同じことが北海道電力泊原子力発電所にも言えます。福島第一原発並みの事故が起きたときのリスク評価も具体的な避難計画もない。使用済み核燃料の廃棄方法すら確立されていないのに、そうしたリスクが評価されていません。十万年単位の使用済み核燃料保管コストを耐用年数40年の運転期間へ適正に配分したら、民間事業として採算の成り立つはずがありません。現在公表されているコストの百倍では済まないでしょうね。
 使用済み核燃料については電気事業会計規則で貯蔵品勘定で処理されているようで、廃棄に関する超長期の保管費用の引当計上の規定が同規則には規定がありません。とんでもないダブルスタンダードです。上場企業に適用されている企業会計基準や財務諸表規則にこういう抜け穴はないから、同様の処理をすれば適正な費用の引当形状がなされていないので粉飾決算になります。会計学者はこういうインチキ会計基準制定に協力してはいけません。会計学会として意見表明すべきです。参考までに電気事業会計規則のURLを書いておきますので、ご覧ください。
*http://roppou.mark-point.jp/条文/電気事業会計規則.html

 事故が起きたときの避難計画もないから、その面でもリスクは評価されていません。札幌190万市民はどこへどうやって避難するのか?子どもたちは放射能感受性が大きいから一両日中に避難を完了する必要がある。放射生物質で子どもたちの遺伝子に瑕がつけば、ありとあらゆる病気になりえます。避難が遅れたら取り返しがつかないのです。ロシアですら、バスを2000台用意して3日間で被災地域住民の避難を完了させました。いったいどこへどういう手段と経路で運ぶのでしょう?狭い国土の日本で200万人が避難できる場所なんてありません。多くの札幌市民がそのまま住み続けるしかないでしょう。妊婦も子どもも毎日内部被爆し続けます。肺から吸い込んだら放射生物質は取り除けません。肺胞にくっついて、放射線を出し続け、遺伝子を壊します。生殖細胞の遺伝子に瑕がつけば、不妊が増えます。
 自分の子や孫が内部被爆することをありありと想像してください。鼻血や下痢、慢性的な疲労感、そして数年たつと放射性ヨウ素の被爆でまず小児甲状腺癌が多発します。遺伝子が障害されたことで、さまざまなホルモン異常や精神疾患が思春期に置き、そして成人してから癌におびえなければならない。どういう癌になるかは全く予測がつきません。癌になって臓器を摘出すれば、そのあとの生活はたいへんです。同じ仕事を継続することもそして低下した体力に見合った仕事に就くこともできない。平均寿命のはるか前で寿命が尽きる人が続出します。なってからでは、後の祭りです。

 森林、畑、住宅地、川、海洋などの放射能汚染リスクも評価されていません。石狩平野はいうに及ばず、日高山脈を越えて十勝平野や根釧原野に大量の放射能が降り注ぎ、稲作も畑作も酪農も壊滅的な打撃を受けます。陸地へ降り注いだ放射性物質は川へ流れ、海を汚染していきますから、沿岸漁業もまた無事ではいられません。
 今月行われた道知事選挙で道内の農業団体と漁業協同組合がこぞって泊原発即時廃炉宣言をださなかったのがわたしには不思議です。かれらは深刻な原発事故が起きたときには甘んじてそれを受け入れるのでしょう。福島の農民も漁民も泣いてます。原発を誘致したこと自体が間違いだったと故郷を失った人たちが後悔しています。できることなら、時間を原発誘致前に戻して誘致に反対したいでしょう。

 北海道の食料自給率は200%と言われていますが、そこが壊滅的な打撃を受けたら、日本人の食糧確保はどうなるのでしょう? 米やジャガイモ、玉葱、生乳の価格は暴騰します。道内産生乳のシュアは50%を超えています。品不足から牛乳500円/Lなんてことになりかねません。
 そして200~300万人の道産子がふるさとを失うリスクがあります。わたしはいやですね。

 事故があってからの廃炉はほとんど不可能ですから、事故が起きる前に廃炉しなければいけません、福島第一原発は事故後8年たっても原子炉内の燃料デブリの処理も目途もついていないし、スケジュールすら立てられません。取り出す具体的な方法すら見つかっていません。

 道産子は、鈴木新知事を選んだことで、どういうリスクを背負いこんだのか、理解できていない。
 夕張の石炭博物館火災は道民への警鐘です、道産子のみなさん、目の前にある巨大なリスクに「ぼーっとしてんじゃないよ!」ってチコちゃんに叱られます。

<余談-1:戦時中の文化人の戦争協力と戦後の沈黙>
 櫻本富雄が戦時中の文化人の戦争賛美の文筆活動を告発しています。かれは数人にインタビューを試みていますが、共通しているのはあの時代には仕方がなかった、心にもないことを書いた。書かなければ生活が成り立たなかったというようなものです。戦争反対の発言ができなかったと当時を悔いた法学者の家永三郎を除いてどなたも反省を口にされることはなかった。「少国民」であった櫻本自身がそういう本を読み耽って航空兵(神風特攻隊)に志願しようとしました。著名な文化人の手になる文を熱心に読んで心の底から航空隊に志願しようとした自分はなんと純真で愚かだったのだろうとこのビデオの最後のところで涙をぬぐっています。有名な文化人たちが口をそろえたように政府の要請にこたえて戦争賛美の文筆活動をした、何を書いたか覚えていないと、戦後はみなさん申し合せたように口をつぐんでいます。何を書いたかまるで覚えていないという人までいました。家永三郎を例外として、みなさん口をつぐんだまま死んでいきました。家永三郎は何もできなかったことを反省して、戦後は教科書検定裁判に挑みます。
 戦時中にドイツの戦時宣伝を見習って日本では大日本報国会が組織され、文学者が戦争宣伝に協力します。菊池寛、武者小路実篤、驚いたことに与謝野晶子の名前もあります。櫻本さんは収集した戦時中の出版物を開いて紹介しています。佐々木信綱、高村光太郎、小説宮本武蔵で有名な吉川英治、児童文学者の与田準一、国民的漫画「フクちゃん」の横山隆一、女性運動家の市川房江、『橋のない川』の住井すゑも戦時中は児童文学者として戦争賛美の文筆活動をしていました。ビデオのURLを書いておくので見てください。
 哲学者市倉先生もその著『特攻の記録 縁路面に座って』の冒頭で「
海に出て木枯らし帰るところなし」という誓子の俳句を引用して特攻兵の心情を汲んだものではないと批判しています。市倉先生自身も特攻兵であり、同期の戦友たちが次々と飛び立っていったのを見送っています。市倉先生は山口誓子が少年を特攻隊志願へと煽る句を読み戦時宣伝に協力していたことを知らなかったのではないかと思います。それでも、うさん臭さをかぎ分けています。
 大政翼賛会文化部出版の『軍神に続け』という本に誓子は次のように書いています。

「山川に 泳ぎてのちの 軍神(いくさがみ)
 軍神と伊勢の青嶺いや継ぎて 神々の若木の梅のごとく散らむ」

<余談-2:靖国神社と軍神>
 軍神とはお国のために戦って死に、靖国神社に祭られることです。
 落下傘部隊員だったebisuの父は訓練地だった宮崎県の港から戦友たちが船に乗ってどこかへ行くのを、左手で敬礼して見送っています。右手は複雑骨折してあげられなかったのです。落下傘部隊は秘密部隊でした。「空の神兵」とか神話になぞらえて「高千穂降下部隊」と言われてました。だから、どこの前線へ行くのかすら同じ部隊の戦友でも伝えることは許されません。戦後、オヤジは自衛隊に勤務する義理の弟から本を贈られて、自分の部隊、戦友たちがどこで戦死したのか知ることになります。田中健一著『沖縄の空に欠ける墓標 帰らぬ空挺部隊』(原書房 1976年刊)、戦後26年も過ぎるまで知る由もありませんでした。
 見送ったのは加藤隼戦闘隊という戦時宣伝映画での降下訓練中の事故で右手複雑骨折して療養中の時期でした。だれも戻ってきませんでした。別れの挨拶は「靖国で会おう」だったそうです。
 オヤジは大腸癌の手術をした翌年に、はじめて靖国神社におふくろと一緒に参拝しています。お袋は兄が侵攻してきたソ連軍と戦って満州の荒野で亡くなっています。桜の咲くころでした、わたしは二人からどこか厳かな感じが漂ってくるような気がして靖国神社についていきませんでした。
 翌年、癌が再発して全身転移、9月に亡くなっています。癌の告知はしてませんでしたが、死期を悟って「ずいぶん待たせたな、もうすぐいく」と報告したのでしょう。
 「戦友は誰も帰ってこなかった、結婚もせずに、子どもも残さず逝った、だからあいつらの分もしあわせになり、靖国で会う。俺は女房ももらったし子どもも3人いる、幸せだ」そんなことを長男のわたしだけに何度か言い残しました。「命の要らないもの集まれ!」と落下傘部隊の募集要項に書いてあったそうです。「どうせ散るならぱっと散りましょ」と応募したそうです。合格してから部隊員には長男がひとりもいないことに気がついたそうです。軍上層部には家を継ぐ長男は落下傘部隊員に採用しないという方針があったのでしょう。
 「靖国で会おう」という一言に、命懸けの訓練を、そして寝食を共にした戦友のきずなが伝わってきました。オヤジが戦後どういう思いで暮らしてきたのかよくわかりました。

*櫻本富雄 
https://ja.wikipedia.org/wiki/桜本富雄
*櫻本富雄が戦時中に戦争賛美した文化人へのインタビュードキュメント
https://www.youtube.com/watch?v=8-dC55hmhbc&feature=youtu.be&fbclid=IwAR3uwGCyhj1oGnxYCiICzw_QmiifPZgkrY22RVwTH_nwQSRfmeaTEVPekq4

*住井すゑ『橋のない川』
https://ja.wikipedia.org/wiki/橋のない川
*与田準一
https://ja.wikipedia.org/wiki/与田凖一

**弊ブログに全文掲載 市倉宏祐著『特攻の記録 縁路面に座って』

https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/archive/c2306180343-1

*#3903 市倉宏佑著『特攻の記録 縁路面に座って』(2) : Jan. 23, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-01-23-1

*#3904 市倉宏佑著『特攻の記録 縁路面に座って』(3):「2.誓子と特攻隊」 Jan. 23, 2019

https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-01-23-2

*#3905 市倉宏佑著『特攻の記録 縁路面に座って』p.10~12 Jan. 24, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-01-24



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帰らぬ空挺部隊―沖縄の空にかける墓標 (1976年)

帰らぬ空挺部隊―沖縄の空にかける墓標 (1976年)

  • 作者: 田中 賢一
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 1976
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#3966 学力別クラス分け編成:根室高校2年生 Apr. 19, 2019 [65.a 成績上位層にかかわる問題]

 根室高校2年生は数学と英語を学力別にクラス分けしている。数学の成績上位クラスはガンマ1とガンマⅡにわかれた。それとベータとアルファクラスの4クラス編成のようだ。数Bが選択科目になっている。1年生の時はアルファⅠ、アルファⅡ、ベータⅠ、ベータⅡ、ガンマの5クラス編成だった。

 四月から塾へ来ている生徒が「先生、数B教えてください」というので、理由を訊いた。看護学校志望の生徒だから数Bは選択していない。7月の進研模試の結果でクラス編成を見直すと言われ、焦っていた。
 2年A組が特進コースだから、このクラスに在籍するのと他のクラスでは学習環境に違いがでる。他のクラスは授業中騒がしいし、ときどき先生の説明が聞こえない。やる気がなくて寝ている生徒はまだましかもしれぬ。柏陵中学校で10年ほど前に、数人が授業中に私語するようになり、学級崩壊状態が発生した。2年になってクラス替えすると、それがほかの2クラスへ広がってしまった。3年になったときには、前年まで五科目平均点が140-165点だったのに、100-110点台へ急降下してしまった。授業中の私語が増えると、説明が時々聞こえなくなり、真ん中よりも上の生徒すら、聞こえなかった部分を推測できずに、まるごと授業が理解できない事態が起きた。こうして成績上位層が以前の1/4となり、成績下位層の肥大化が進んでしまった。それがいま根室高校で起き始めている。
 根室高校では高校の統廃合で普通科の7割はすでに根室西高校生の学力である。10年前の根室高校普通科の学力の生徒は、A組、特設コースの35人のみと考えてよい。このクラスでも下のほう5人程度は10年前の根室高校普通科に合格できない学力レベルだ。

 習っていない(選択していない)数Bが7月の進研模試に出題されるので、看護学校志望の生徒が困っていた。数Bを選択しなかったばかりに特設コースに居られなくなる。そうした影響があるなら、学校、とくに進路指導室は看護学校志望の生徒たちに事前に説明しておくべきだった。四月になってからの通告では生徒がパニックになるのも無理ない。

「教えてもいいけど、簡単な話ではないよ、数Bだけで週に2回来ないと進研模試の問題を解けるようにはならない、難易度が学校の授業よりもずっと高いからね、数B2回、それとレギュラーの2回、合計4回塾へ来れる?」

 そう伝えた。個別指導だから、週に4回くればなんとかできる。勉強に熱心な生徒は授業料はそのままで来る回数を増やしてあげているから、彼女にもそういう扱いをすることはできる。あとは本人次第である。
 習っていない分野も出題される全国模試でクラス分けするなら、Aクラスには看護学校志望の生徒は要らないというに等しいから、それはあまりに酷だし、そんなことをしたら特設コースのクラスから成績上位層の生徒が数名抜けてしまうので、根室高校にとってもよくない。いまや成績のよい生徒は希少価値がある、ほどんど絶滅危惧種と化してます。

 「担任の先生に事情を話してよく確認してみたほうがいいよ、学校の方だって試行錯誤して困っているはずだから、考え直してくれるかもしれない」

 学年主任と各クラスの先生たち、一度話し合ってくれませんか?52年前の根室高校卒業生の一人からのお願いです。1/350です、同期は350人いました。あのころは男子校だった根室商業の伝統が残っていたので、商業科の入試倍率は2倍を超えてました。いまからは想像できません。根室商業高校が男子校時代は釧路湖陵高校よりも格上だったことがあります。

 高校統廃合が、中学生の学力分布を無視してなされたので、弊ブログで予告した通りの惨憺たる結果になっている。ふだんの学力テストデータを持ち寄って、統廃合検討作業部会のメンバーが分析したら、統合のしかたは違っていただろう。ふだんの学力テストデータをモニターしていない根室市教委も悪いよ、こういう大事な時にデータの提供すらできていない。仕事の能力のないバカばかり集め閉鎖的な委員会方式で検討したってたってろくな仕事にならぬ。高校統廃合検討委員会の大きなミスの尻拭いを、いま根室高校の先生たちがしている。そして一番の被害者は根室高校普通科に通っている生徒たちである。

 英語の学力別クラス編成の話をしよう。特設コースのクラスの英語も学力別に2クラスに分けられたようだ。上位クラスは10名だから、下位クラスが25名ということだろう。塾生で英語が上位クラスは1名だけだ。みなさん数学の勉強はするが、英語は嫌いでなかなかやらぬ、極端な偏食、食わず嫌いが多い。数学も英語も突き詰めると勉強法は共通した部分が多いのだが、やらないから気がつかぬ。そこで次のように宣言した。

 「これから1か月が勝負だ。短期間集中的に勉強しないと、君たちの英語嫌いはかなり重症だからその状態から抜けられない。5月下旬の前期中間テストが終われば学校祭の準備期間に入り、7時過ぎまで学校祭準備に縛られるから英語の勉強なんてできやしないよ、昨年でわかっているだろう?いまだよ、いましかやるときはないんだ。もう高校2年生、いま集中的にやらなきゃ時間切れ、アウトだ。いう通りに勉強すれば全国偏差値60までアップ可能だ、さあ、やるのかやらないのかはっきりしろ、やる気のある者は英語だけ別に週に2回増やしていい」

 そうけしかけた。
 ずっと英語嫌いのままで放置してきた生徒たちだから、それを変えるというのは大きなエネルギーがいる。最初の一転がしがたいへんだが、ゆっくりでも回り始めたら、あとは少しの力で転がっていく。
 
高校生は大人扱いしている。大人は自分の意志で決断し、行動するものだ。さて、全員が期待に応えてほしいが、何人クリアできるのかは塾生自身のやる気と行動力次第である。
 

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#3965 根室高校2年生日商簿記2級合格 Apr. 17, 2019 [63. チャレンジ(教育)]

<最終更新情報>
4/19 朝9:00

 根室高校商業科2年生が日商簿記2級に合格したと北海道新聞に載っていた。次は日商簿記1級へのチャレンジである、ぜひ合格してもらいたい。日商簿記1級は2級に比べてはるかに高い山で、2級合格者の10人に一人程度しか合格できない。どう攻略するか戦略がだいじだ、あとで触れておくので、参考にしてもらいたい。久々に現れた優秀な生徒だから、先生たち、日商簿記1級合格へ向けてだいじに育ててください。
 ところで根室高校側への取材では過去10年間では2年の合格者はいないと記事にあったが、その通りだ。

 ただし、1年生で2名の合格記録があるが二人とも商業科ではない。ちょうど10年前と11年前の2度である。
 2008年11月に普通科1年生のN村君が日商簿記2級に合格している。中3の11月くらいから簿記の勉強をはじめて1年間で合格した。そして2009年2月に事務情報科1年生のK君も日商簿記2級に合格した。K村君は入試当日の夜から簿記の勉強を始めたから11か月で合格している。1年生の日商簿記2級合格記録は根室高校の歴史でこの二人だけである。潜在能力の高い生徒は毎年数名いるから、ようは育て方次第である。
 高校側で取材対応した先生は10年前のことだから知らなかったのかもしれない。古い先生なら知っていただろう。

 事務情報科のK村君は6科目1級ホルダーとなって卒業し、推薦で道内の大学へ進学した。普通科のN君は日商簿記1級にチャレンジしたいと言ったがとめた。かれが北大医学部受験をするつもりだったからだ。進研模試の国語は小樽商大へ進学したS田さんと交替で学内トップ争いをしていたから、国語の能力は十分だった。日商簿記1級の記述式問題もクリアできただろう。だが北大受験と日商簿記1級受験の両立は無理と判断して簿記のほうをやめさせたから、それ以降は簿記を教えなかった。かれは結局、北海道教育大札幌校へ進学した。N村とK村はふたりともとっくに社会人だ。どうしているかな?勉強を続けていてもらいたい。

 日商簿記2級の次は、日商簿記1級である。簿記と工業簿記は計算問題であるが、会計学と原価計算に論説問題が出題されるので、2級とは違った能力、作文(論説文作成)能力が求められる。計算能力だけで日商簿記2級までは合格できるが、まったく異なる種類のハードルがまっているということ。国語能力の高さが求められる。
 日商簿記2級に合格してから、商業簿記と工業簿記にそれぞれ150時間、会計と原価計算にそれぞれ250時間、合計800時間の受験勉強時間確保が合格ライン突破の目安だ。国語能力の低い生徒は2倍の時間を投入しても、合格ラインに達しないだろう。
 同級生のH勢が根室高校商業科を卒業した年の11月に日商簿記1級に合格し、短大を卒業した年に税理士試験に合格、以来東京有楽町で税理士事務所をやっている。学生時代に高田馬場駅前のアパートに住んでいたN野先輩のところへ行ったついでにそこから歩いて10分ほどのH勢のアパートへも遊びに行ったら、壁にA3判の紙に書きつけたサブノートが所狭しと貼ってあった、暗記のためにそうしていたのだろう。それを見て気合と成長を感じた、そして自分が別の道を歩み始めていることに気づいた。
 そのころわたしは経済学と哲学にのめりこみ始めて、公認会計士二次試験受験への興味を急速に失いつつあった。高校時代はあんなに夢中になって公認会計士2次試験参考書を読み漁って勉強したのに、いやそうだったからこそ、その向こう側に本当の学問、勉強の領域のあることがわかってしまった。突き抜けてしまった感覚があった、もう元には戻れぬ。18歳の時に人生の選択肢、公認会計士になるという中学生以来の夢を捨てたのである。マルクス『資本論』を超えよう、頭の中にはそれしかなかった。商学部会計学科の会計学関係の授業はレベルが低くつまらなかったので学部を超えたゼミ、哲学者市倉宏佑先生の一般教養ゼミの門をたたいた。東京の大学には一流の先生がいらっしゃる。経済学史で日本では当時ナンバーワンの内田義彦先生の授業もとった。大学院では一ツ橋大学元学長の増田四郎先生に院生3人で特別講義をお願いした。増田四郎先生は西洋経済史の大家だった。後に一ツ橋大学・学長になった阿部謹也先生は一番弟子である。増田先生がかれの話をするときはとっても嬉しそうだった。学風を受け継いでくれた、そして優秀だったからだろう。増田四郎先生の学風に触れたおかげで、階級闘争史観から脱却できた。緻密な実証研究積み上げの尊さを学んだのである。気がついたら、自分の研究テーマに必要な先生たち三人にもれなく巡り合うようになっていた、天の配慮としか思えぬ。

 答案練習には小寺さんの四項目箇条書法が参考になるだろう。例題を百題ぐらいそれぞれポイントを四項目の箇条書にまとめ、それをもとに作文するようなトレーニングが有効だ。小寺さんの書いた本が日商簿記1級攻略の武器になる。5冊あったのですが、高校生にあげちゃいました。ひょっとして1冊あるかもしれません。…探したらありました。1冊しかないのでプレゼントはできませんが、貸すことはできます。

 日商簿記2級合格までの勉強のやり方、スケジュールを二人の生徒について弊ブログに記録を残してあるので、受験するつもりのある人は参考にしてもらいたい。

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根室まで来てくれた小寺さんの著書ですが、すでに絶版です。
*#3277 進路選択と就活のために: 『夢こそ生きる力』 Apr. 29, 2016
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2016-04-29

『総合力アップのためのガイドブック 夢こそ生きる力』
 原作小寺次夫、編集鈴木朗、イラスト鈴木萌花(高校1年生)、2016年4月15日発行、
 出版社「星奈のお店」、本体1200円+消費税
   ISBN978-4-9908905-0-6
*http://www.seina-shop.com/
 
http://www.seina-shop.com/service/book.html

#3872 文章作成の要諦:リンボウ先生 Dec. 5, 2018
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-12-05

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*#235 日商簿記2級 1年生チャレンジャー  July 27, 2008
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-07-26-1

 
#239 日商簿記2級 1年生チャレンジャー(2) July 31, 2008
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-07-31

 #273 
1年生 日商簿記2級トライアル(進捗状況)
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-08-26

 #400 
日商簿記検定試験(11月16日)
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-11-16

 #403 
高校1年生2級合格者はでるのか?日商簿記検定試験結果(速報)
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-11-17

 #423 簿記2級1人合格(商工会議所簿記検定試験結果:確報)
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-11-29

 #448 早い!高1で中村君日商簿記2級合格(北海道新聞より)
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-12-18

 
#449 根高1年日商簿記2級に合格(根室新聞)
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2008-12-18-1

 
#1305 根室高 資格取得で成果:5科目1級取得者はK君
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2010-12-17-1

 
#1404 全国商業高校協会検定1級3科目以上」倍増24人(1) Mar. 4, 2011
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2011-03-03

 
#1442  うれしい知らせ :北海道教育大札幌校合格の電話あり Mar. 24, 2011 
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#2579 いろいろある進路選択肢:普通科+日商簿記検定試験2級⇒明大商学部 Jan. 31, 2014
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#2994 大学時代に何をしておくべきか(1) Mar. 8,2015
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#3964 四月の最高気温20.9度:根室 Apr. 17, 2019 [85.サイクリング]

 別海と中標津町は最高気温26.4度、根室も暖かかった。
 今日は仕事がお休みの水曜日だ、お昼頃は暖かいというより暑く感じたので、原野にサイクリングへいくのをやめて、航空自衛隊分屯地周辺を回ってきた。分屯地の周りの道路は雨水溝にたまった土を路肩にあげて、小型ブルのキャタピラーで押し固めていた。基地内は草刈りをしていた。
 空には大鷲が飛んでいる、そろそろ樺太へ渡っていくのだろう。キタキツネはいまの時期は尻尾の毛がぼわっとしていて太く長く優雅だ。鹿も真っ白い毛でおおわれたお尻を見せて跳ねていく。都会の子どもたちが見たら大喜びしそうだ。分屯地から10分ほどの距離である桂木の浜に行くと大鷲が見られる。
 四月2回目のサイクリングだが、前回は重たく感じたペダルが元の軽さに戻った。そろそろ信号のない原野を走りたい。

 15時の気温19.4度、湿度34%、南風3.1m/s
 走行距離6.9km、平均時速20.1㎞ ロードバイク累計走行距離4789km


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#3963 生徒がもってきた英文和訳問題(2):解説 Apr. 17, 2019 [62-1 個別指導の実際]

<最終更新情報>
4月18日朝9時50分

 前回の弊ブログでZ会で最近宿題に出された英文和訳問題文を紹介した。生徒がネットで解答が見られるというので、作ってあった和訳と比較対照してみた。
 問題文を再掲してからがいいですね。青字の部分が英訳に指定された文です。

 If you counted the times you say "please" in a day in relation to the number of requests you make of your employees, telephone operaters, store clerks, whomever, I would bet you could increase your usage of the word tenfold.

  And if you do, pay special attention to the results, for it is my observation that a person's willingness to comply --- even the promptness with which he complies --- improve dramatically when your reguest or instrution either starts or ends with with a simple "please".

 「And if you do,」のdoは代動詞ですが省略もあります。一文前のところを見るとわかります。深層構造に書き換えてみます。
 And if you increase (your usage of the word tenfold), 
  直前の文を見れば do の正体が判明します。the word は定冠詞がついているので、"please" を指しています。だから意味は「プリーズと十倍言えば」ということ、単なる条件節です。do が increase になり、( )で示した省略句を補えば意味は精確につかまえられます。

 
問題はその次の部分にありました。
 「And if you do, pay special attention to the results, 」この文の pay 以下を命令文ととっていると解答を見た生徒が主張してました。形の上からはなるほどそうですが、深層構造(Deep Structure)は命令文ではないようです。第一、意味が通じないでしょう。この生徒は高1と高2の教科書の精読を終わり、高3の教科書をすでに半分消化していますから、文脈判断があるていどできます。平易な日本語で訳文を書くトレーニングを積んできましたから模範解答の不自然さに気がついたかな。
 同じようにDSに書き換えてみます。
 And if you increase (your usage of the word tenfold), (you) pay special attention to the result, ...
 条件節と帰結節の主語が同じだから、あとのほうが省略されただけですから命令文ではありません。従属節と主節の主語が同じなら、どちらが先に並ぶかという順序の問題がありますが、あとのほうが省略されるというのが、英語の基本的な修辞ルールです。
 「条件節と帰結節」は数学記号で書くと「P ⇒ Q」です。「プリーズと十倍言えば ⇒ 特段の配慮をしろ」ではそのあとの理由の節と意味の整合性がとれないことは普通の学力がある高校生なら理解できます。省略された主語の you を補って、すなおに、次のように読みましょう。
  「プリーズと10倍言えば、その結果がよくなるように特段の配慮をしています」

 対比のため「富士山の頂上なら水は95度で沸騰する」という例文を挙げます。
    If the water on the top of the Mt Fuji becomes 95 degrees, it boils.

  この例文では条件節の the water は主節では代名詞 it で置き換えられます。ところが問題文は条件節の主語が代名詞の you なのですから、主節の主語は同じ you の繰り返しになります。だから、同じ主語なら後置される主節のほうの主語が省略になっているのです。もう一つ挙げましょう。
 I become sleepy if tired. (疲れたら眠くなる)
 このケースでは、if (I am) tired の括弧内が省略されます。if節が前に来れば次のようになります。
 If I am tired, become sleepy.
  どちらの文が自然かというとわたしは最初にあげた if 節が後置されるほうをとります。ではなぜ逆順になったかという問題が残りますが、直前の文を if you do の do が受けているので、そちらを前置して、前の文とのつながりを明示したかったからでしょう。 


 その次の接続詞 for 以下の節を読めばなお一層はっきりします。
 for は前置詞ではなく理由を表す接続詞です。「P ⇒ Q(PならばQ)」と言った後で、その理由を補足しています。それがこの節の論理的な役割です。なぜ接続詞であるのかは、forのあとに節構造が配置されているからです。そしてここで多くの高校生が迷ったのではないかと思います。「for it」と塊で理解してしまうと前置詞に見えます。そうすると is 以下の節が訳の分からぬものになってしまいます。
 この節の it は主語で that 以下なのです。主語が節構造をとっていてとっても長く、いわば「頭の重い」文になってしまう。そういうときは、仮の主語 it で代用し、真の主語は that 節で後置するのが英文を書く際の基本的なルールです。it~that 構文とか it~to 不定詞構文は同じなのです。後置される主語が to 不定詞句か that 節かの違いだけで、どちらも長すぎるということ。英語の修辞上の基本ルールは主語が長ければ it で置き換え、そして主語はこれだよと指示しているthat以下をみよということです。主語を「 」で括って青字にして、動詞と主格補語を黒字にして、本来の位置に文を書き直してみましょう。

 「 a person's willingness to comply --- even the promptness with which he complies --- improve dramatically when your reguest or instrution either starts or ends with with a simple "please"」 is my observation .

 長い主語でしょう、不格好です、如何にも主語の位置が気持ち悪いのがよく伝わってきます。だから、itで代用しておいて、あとからthat節で説明するよということなのです。to 不定詞句を利用して句構造になるなら節構造ではなく主語は句構造になるだけのことです。
 簡単に書くと
 it is my observation.
  たったこれだけの文なんです、とってもシンプルでしょ。

 「even the promptness with which he complies」、挿入句であるこの文も日本語にしづらい、とくに promptness が厄介ですね。ジーニアス4版には載っていません。抽象名詞語尾の ness を外した prompt はなじみのある単語ですが、prompt を知っていてもこの場合は類推はちょっと無理。この単語を見たとたんにわたしは初期のころのパソコンで「プロンプト」を思い出しました。画面が入力待ちになります、それがプロンプトでした。「うながす、促進する」くらいの意味でしょう。「機敏な」という形容詞の方を知りませんでした。ネット辞書 Weblio で検索したら、「即発、機敏さ」とありました。シンプルセンテンスに書き換えておきます。

    he comlies with the promptness
 he=a person ですから、逐語訳すると「人が機敏さをもって対応する⇒機敏に対応する⇒緊急対応⇒急な対応⇒急ぎのお願い」という意味ですが、事情がわかりませんね。
 欧米では職種がはっきり決まっており、たとえば、お店がどれほど客で混雑していても掃除で雇われた人が、品物の包装を手伝ったり、お客さんの相手をするなんてことはしません。経理担当の人がたとえ上手に包装できたとしても、商品の包装の手伝いをすることはないわけです。日本では、「〇〇さん、ちょっとお客さんの相談に乗ってあげて」とか「お客さん待たせているから、経理の〇〇さん包装手伝って」ぐらいは言えますし、それですぐにそうしてもらえます。ところが欧米ではそうではない。他の職種の人の仕事を奪うことになるからご法度です。そのあたりのことを理解していれば、even 以下の挿入句の意味がよくわかります。「緊急対応ですら」という意味になります。こういうことをするには、マネジャーがその人にお客が混雑してきたら、客あしらいもお願いしますとあらかじめ雇用契約に含めることになります。手続きが面倒なのです。お客が込んできたからと言って、急に「職種変更」できません。そのあたりの不都合を「プリーズ」を発話の前か後につけることで何とかしようというわけです。具体的な状況が頭の中に再現できたら、あとはそれを平易な日本語に置き換えるだけ。
 文化に対する周辺情報を知っているかどうかが訳文に反映してしまいます。だから、異文化理解とか、話題になっているものやことがらに関する周辺情報を知っておくことは必要なのです。教養は広くて深い方がいいとはこういうことがあるからです。

 あとは日本語の作文能力がためされます、これだけ長いとたいへんです。
 参考訳を書いておきます。和訳の日本文のストライクゾーンは広い、のびのびやりましょう。

「だれかれかまわず人にプリーズと十倍言えば、(要求や指示の)結果がよくなるように特段の配慮をしていることになります。というのは、要求や指示をプリーズという言葉で始めるか終わらせるかすれば状況が劇的に変わり、人は自ら喜んで応じてくれるというのがわたしの観察するところだからです。(その人の本来の職務ではないことを)いきなり頼んだ場合ですら、(プリーズと言えば)人は四の五のいわずに喜んでやってくれるものです。」

 こんな訳文を書いたら、Z会の採点では6割ももらえるかな?Z会にはZ会の採点基準があるようですから、それにチューニングした訳文を書く必要があります。でも、点数なんか気にせずどんどんやっちゃった方が、学力は伸びます。

 和訳するときの冠詞類の扱いについてコメントしておきます。
 the results には定冠詞がついているので、わかりやすくするために( )で補った語を付加してかまわないのです。冠詞類は日本語にはない機能ですから、それらをどのように日本語にするかは訳文を作る人の個性が出るところでしょう。a と an と the と無冠詞はそれぞれ特別な意味を名詞句に付与しています。冠詞類をないがしろにしてはいけません。これも慣れです。いつも冠詞類を意識して英文を観察していればセンスは自然に磨かれます。

 数学の勉強でもたとえば三角関数の加法公式だけ覚えていれば、差の公式も倍角の公式も半角の公式も30秒で導き出せます。sinとcosだけ覚えておけば、tanはsin/cosですから、これも1分あれば計算できます。逆関数も同じことです。つまり、基本的なことだけ覚えておけば、あとは芋づる方式ででてきます。成績の悪い人は、個別に全部暗記して、脳がパンクしてあきらめてしまいます。成績のよい生徒は暗記するものを選別して量を数分の一にしています。だから、脳の負荷が小さく、応用が利く。英語も同じなんです。基本ルールが何かを常に考える、そしてそこから派生的なものを区別し、基本ルールを徹底的に利用・応用してみる。
 
 問題文と前段の文を引用しましたが、前段の文は仮定法過去、現実に反する仮定ですが、問題文のほうは単なる条件節の文です。これは対比という修辞上の配慮でしょう。文が効果的に配置されています。整理整頓されたこれら2文の配置をレトリックといいますが、美しさを感じませんか?わたしは感じます。

 形、受験英語では「構文」というようですが、それは表層構造であって、「構文」に騙されることもあるのです。深層構造と英語の作文上(修辞上)の基本ルールを知っているだけで十分ですよ。あとは多読してたくさんの事例を消化すればいい。

 質問をした生徒は夏休みが終わるころにはハラリの500頁ある著書Sapiensを読み始めます。高校教科書を卒業してフィールドでの精読トレーニングへ突入です。英語を読む力が飛躍的に伸び、問題文の難易度が高くなるほど学力差がでます、偏差値は結果でしかありません。
 全国の若いお医者さん、よろしければどうぞ市立根室病院へ赴任してきてください。根室高校の先生たちも学力の高い生徒の育成に特段の配慮をしてくれています。今年の四月から阿吽の呼吸で協力体制ができつつあります。医学部進学のこどもの教育の面倒は根室市では地域協力が整いつつあるのでいましばらくはみられます(笑)

#3962 生徒がもってきた英文和訳問題(1):Z会 Apr. 16, 2019
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#3962 生徒がもってきた英文和訳問題(1):Z会 Apr. 16, 2019 [62-1 個別指導の実際]

 高2の生徒がZ会の英語問題をもってきて質問をした。英文和訳の問題なのだがさっぱりわからないという。日本語にするだけでなく、なぜそういう英文が生成されたのかについても解説する必要がある。
 宿題か試験問題のようだから、答は書かないし、解説もやめておく。高校の教科書にはこんなに複雑な文は出現しない。でも英文を読みなれている大人にはむずかしくないだろう。(笑)

 If you counted the times you say "please" in a day in relation to the number of requests you make of your employees, telephone operaters, store clerks, whomever, I would bet you could increase your usage of the word tenfold.

  And if you do, pay special attention to the results, for it is my observation that a person's willingness to comply --- even the promptness with which he complies --- improve dramatically when your reguest or instrution either starts or ends with with a simple "please".

  英文和訳の問題は青字の2番目の文である。いまこうしてみると二つとも文が長い。

 この2文で、tenfoldなど3-4の単語にはアスタリスクがついていたから、脚注に和訳が載っていたのだろう。
 前の文がないと do の意味が分からないのと、レトリックがわからなくなるので、転載しておいた。全体の一部分、関連のある途中の文を2つだけ転載した。

 in relation to は「比較すると」くらいの訳がいいだろう。doが何を指しているのか、そして2か所の省略に気がつけば意味が分かる。forの品詞が接続詞なのか前置詞なのか、代名詞itが何を指しているのかも重要なポイントだ。

 意味はsimple sentence (= Deep Structure 深層構造以下DSと略記)にあるから、生成文法を利用してDSに分解して生徒に解説している。DSから表層構造(Surface Structure)へは何段階かの文法工程があるが、それを復元することは英作文のトレーニングにもなる。
 構造言語学者であるチョムスキーの生成文法を知らない先生が多いと思うが、こういう英文を生徒にどうやって解説するのだろう?たぶん、受験英文法の範囲内での説明になるのだろうが、それも可能だが、あまり感心しない。そういう解説は、生徒のほうからは「曲芸」に見えてしまわないか?

 こういう英文を10分以内で適切な日本語にできる高校生がいたとすると進研模試なら偏差値は90あたりではないか。偏差値90は3/100000だから、おおよそ3万人に一人の割合だ。進研模試の受験者が45万人とすると全国の公立高校2年生に15人くらいそういうレベルの高校生がいそうだ(3年生なら数千人はいる)。高2で1月の進研模試英語偏差値75の生徒にはこの問題は無理だろう。そうして考えるとZ会の難問ってレベル高い。
 高3の問題なら、それほどの難易度ではない。

 個別指導授業でハラリのSapiensを半分くらい読めば、英文に慣れるのでこういうレベルの英文ならすらすら訳せるようになる。到達目標は来年の夏ころになりそうだ。
 毎日、コツコツやっていたら、1年後にはスキルはずいぶん向上している。それが高校3年間続いたら、はるか高いところへ登ってしまう。若い人がする日々の努力は飛躍的な成長の糧である。

<余談:生成変形文法>
 生成変形文法に出遭ったのは、大学院入試の準備で直前に一月ほど東京都板橋区立図書館で勉強していた時のことだから1975年だった。大野照男著『生成文法と英文解釈』を書棚で見つけたのである。経済思想史の本を原書で読んでいたのだが、腑に落ちない箇所が何か所も出てきてもやもやしていたので一気に読んだ。エリック・ロールの『経済学説史』(有斐閣、昭和26年初版)の原著だったはずだが、翻訳者の隅谷三喜男先生の訳は名訳ではあるが、原著を読んで意味がはっきりしないところを隅谷先生の翻訳書を参照すると、やはり文脈から行っておかしいと感じざるを得ないところが、ときどきあった。『変形文法と英文解釈』を読むことで疑問が氷解したと同時に、隅谷先生がどういう部分で誤訳をしたのか、そしてその理由もはっきりした。生成文法を知らないから、深層構造に分解できなかったから当然のことで、前後関係から「気合」で翻訳したように見えた。そういう箇所は外れてしまうのである。変形文法的にいうと文法工程指数の大きい文章に誤訳がでてしまう。経済学書に関しては生成変形文法を知ってから翻訳が楽になった。ごまかす必要がない。もちろん、文脈を精確に読み取れるなら、生成変形文法がなくても大丈夫な場合があるが、文脈では推測できない文もある。
 生成変形英文法を利用するときはほどほどにしておくことだ。あまりやりすぎると自己目的になり、手続きが面倒になるだけ。目的の範囲で必要最小限でいい。頻繁に繰り返すうちにスキルが上がり、見ただけで深層構造がわかる範囲が広がる。
 構造言語学は理系の分野、自然言語理解の分野なので、自動翻訳関係の仕事に携わるエンジニアは20年前までなら一度は目を通しているだろう。チョムスキーのこの分野の翻訳書は理系と文系の両方にまたがるのでほとんどなかったが、いま調べてみるとたくさん翻訳されている。一昔前には生成変形文法をベースに英文法参考書を書いている先生が一人だけいた。安井稔著『英文法総覧』は元々は高校教員向けに書かれた参考書である。昭和62年の第1版10刷りで読んだが、その後2015年の改訂版を買って増補された部分に目を通した。高校生が読むなら『英文法総覧』を薦めたい。
 なお、安井先生にはチョムスキーの著作の翻訳が一つあったはずだが、本棚に見当たらぬ、棄てたのかもしれない。ああ、思い出した、『文法理論の諸相』というタイトルである。なお、この本はいまは新訳が岩波文庫から『統語理論の諸相』というタイトルででている。
 
 その後、構造言語学に興味が湧いて、チョムスキーの原著と解説書も読んだ。読んだ本をamazonから拾って紹介しておく。

 大野照男著『変形文法と英文解釈』株式会社千城、昭和47年刊 は絶版

 この本は1988年版のもので読んだ。

Chomsky's Universal Grammar: An Introduction

Chomsky's Universal Grammar: An Introduction

  • 作者: Vivian J. Cook
  • 出版社/メーカー: Wiley-VCH
  • 発売日: 2007/05/07
  • メディア: ペーパーバック
Knowledge of Language: Its Nature, Origin, and Use (Convergence)

Knowledge of Language: Its Nature, Origin, and Use (Convergence)

  • 作者: Noam Chomsky
  • 出版社/メーカー: Praeger
  • 発売日: 1986/01/14
  • メディア: Perfect
Transformational Syntax (Cambridge Textbooks in Linguistics)

Transformational Syntax (Cambridge Textbooks in Linguistics)

  • 作者: Andrew Radford
  • 出版社/メーカー: Cambridge University Press
  • 発売日: 1981/11/12
  • メディア: ペーパーバック
英文法総覧

英文法総覧

  • 作者: 安井 稔
  • 出版社/メーカー: 開拓社
  • 発売日: 1996/11/01
  • メディア: 単行本
文法理論の諸相 (1970年)

文法理論の諸相 (1970年)

  • 作者: ノーム・チョムスキー
  • 出版社/メーカー: 研究社出版
  • 発売日: 1970
  • メディア: -
統辞理論の諸相――方法論序説 (岩波文庫)

統辞理論の諸相――方法論序説 (岩波文庫)

  • 作者: チョムスキー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/02/17
  • メディア: 文庫
#3963 生徒がもってきた英文和訳問題(2):Z会 Apr. 17, 2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-04-17




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#3961 恒例の九人会どんちゃん騒ぎ:川湯温泉 Apr.15, 2019 [A9. ゆらゆらゆ~らり]

 今日は久しぶりに雨が降っている。屋根を伝って落ちてくる雨水を受けるバケツが二つともあふれている。午前9時の気温は5.1度だから、暖かい、春だなあ。

 高校の「三年G組同級生+アルファ」がメンバーの九人会というのがあり、毎年、川湯温泉でお酒を飲み地元の魚貝類に舌鼓を打って大騒ぎをする。今年も土曜日(4/13)に行ってきた。
 プラスアルファと書いたが、一人は高校の同級生ではないが光洋中学3年10組の同級生で親友のYである。担任の冨岡先生があるときⅢ-Gクラス会にいたYをみつけ「だれ?」と訊いてメンバーとして認めた。九人会メンバーがⅢ-Gのクラス会に連れて行ったのだろう、中学生の時の同級生の女子も数人いるからすっかり溶け込んでいたらしい。人柄がいい不思議なやつだ。
 担任の冨岡先生は定年前、50歳のころに東京大田区に住んでいた両親の面倒を見るために高校をおやめになった。それから東京で開く同窓会に必ず出席してくれた。あるとき「ebisu、見知らぬ男がいるので誰だと聞くと、ebisuの友だちだとYが胸を張って返事したのでⅢ-Gのメンバーとして俺が特別に認めた」と笑いながら話してくれた。みんなが認めているので正式に追認してくれたのだろう、空気の読めるいい先生だった。
 高校2年生と3年生の2年間お世話になった冨岡先生との思い出話を書き始めたら新書1冊の分量くらいの話題がある。癌が転移して何度か手術をされたが、数年前についに逝ってしまわれた。最初の手術をしてから二十数年たっていた。オヤジと同じくらいの年齢だったはずだから、長生きされた。鰈(かれい)釣りの穴場(東梅≒道の駅スワン44の手前3㎞あたり)を懐かしそうに繰り返し話していた。その時のうれしそうな表情がいまもありありと脳裏に浮かぶ。


 川湯に土曜日午後2時半ころ着いた。羅臼や釧路、浜中から集まるものもいて、10人全員が揃ったのが3時少し前だった。温泉へ浸かってのんびりしてから、調達してきた魚貝類を並べて「プレ宴会」がはじまった。アルコールは缶ビールといただいた北の勝「搾りたて」である。平成16年ものを地下蔵で貯蔵しておいた。夏でも地下室の温度は20度以上にはならないので酒の保存にいい。

 北大病院でオプジーボの投与を受けているメンバーが直前になって治療スケジュールが変わり、参加できなかったのが残念である。かれは北の勝の酒造、碓氷商店の番頭さん。背がでかくていかついが、じつは繊細な人。かれも実直で、まっすぐな性格。ずるいことは決してしない人だ。オプジーボが効いてくれることを祈っている。PD-1遺伝子がコーディングするPD-1タンパクと癌細胞にあるPDL-1タンパクが結合すると、癌細胞が増殖するので、その結合をブロックするのが分子標的薬であるオプジーボである。正常な人にはPDL-1タンパクがないから、副作用はゼロだ。だが、癌抑制遺伝子であるPD-1由来でない癌には効かない。25-30%に人に有効だという。万能の免疫賦活剤ではないのである。

 メンバーは全部で11人、11人なのになぜ九人会なのかは理由がある。わたしが古里根室へ戻ったときに10人となり、会の名称が議論になったという。10人に増えるのだから「十人会」という意見が出たが、もともと9人で始まったのだから、その成立のいきさつを大事にして名称はそのままにしようじゃないかということに収まった。その後、浜中町在住のNが「メンバー申請」をして受け入れられて2年前から参加している。だれでもOKなのかと思ったら、「厳格な審査がある」という、初耳だった。申請を受け付けるのは誰でもいいが、他のメンバーに話して色よい返事があればOK、そうでなければそのままになるという。阿吽の呼吸できまるようだ。
 わたしがすんなりメンバーとして受け入れられたのは理由がある。高校卒業してまもなく、お袋がやっていた居酒屋酒悦に数人が毎月集まって飲み会を始めた、「酒悦会」という名前がその内についた。その後酒悦は名前はそのままで焼き肉が主体の店となった。オヤジもお袋も息子が東京へ行ってしまったので、同級生が店に来てくれるのはうれしかったのである。「酒悦会」が宴たけなわになると、「オヤジさん、電話していいかい?」「いいよ」と店の黒電話でよく東京へ電話をかけてくれた。30分ほどもメンバーが交替で話をしてくれた。酔っ払いばっかりだから、話にとりとめがない、にぎやかだったな。そのたびに古里が懐かしくなった。
 メンバーたちは結婚して子どもができると、子どもも参加して野外でバーべキューしたり、Nのところに集まって新年会をするようになった。光洋町に自宅を建ててからお袋は店をやめた。会の名前も九人会となっていた。そうした長い52年の歴史がある。だから新メンバーを加えるときにはみんなの同意がいる。ぎくしゃくしたくないからだろう。過去には色よい返事が返ってこなかった数名の同級生がいたらしい、きっと面白くなかっただろう。すまない。
 N田のときは、小学校の同級生でもあったわたしに彼から相談があったので、伝えるとみなさん快く承諾してくれた。N田は浜中町にある漁業組合で仕事をしていたが、そろそろ引退ということで、高校時代の仲間が懐かしくなったようだった。そうした思いが伝わったのだと思う。
 ホテルには6部屋確保してあった。二人ずつ5部屋と、プレ宴会用の一部屋である。わたしはN田と同室になった。部屋割りは羅臼のDがやってくれた。ちなみに根室組合に勤めていたE藤とも花咲小学校の同級生である。

 湾中でとれたホタテを昨夜殻から外して一晩冷蔵庫で寝かして熟成させたものを、出発直前に切って保冷剤をいれて車に積んできたから、うまいのなんの、言うことなし。手間がたっぷりかかっている、YさんとYさんの奥さんありがとう。
 Mサイズのエビも2パックあったが、Sサイズのものが混じっていた、味も悪いと水産関係に勤務していた者の意見だった。浜中町のNが、浜中やや厚岸では品質管理が厳しいので、MサイズのパックにこんなにSが混じることはない、根室は品質管理基準が甘いと断じていた。こういう販売のしかたをしていたら、ブランドに瑕がつき、信用されなくなると心配していた。ふるさと納税の返戻品でもそういうことが問題になっている。

 水産関係に勤務していたメンバーが半数以上なので、いろいろ教えてくれる。関係者に迷惑がかかるといけないのでこれ以上書かない。不都合な情報ほど、改善すれば地域ブランドの信用を堅固なものにできる宝の山なのだが、根室人はそういう話題を避けたがる。だれかが、いまでは根室組合よりも歯舞組合のほうが取扱高が多いと発言していた。根室組合が60億円、歯舞組合は100億円と聞いたきがする、驚きである。根室漁業協同組合の取扱高は平成20年には120億円を超えていた。酔っていたので数字は不確かだが、理由については具体例を挙げてはっきり言っていた。要するに人と組織の問題があるということ。弊ブログでも何度かとりあげた。
 中標津と根室の人口問題も根っこのところは同じだろう。50年前のデータと比べたいのだが、検索したら1970年と2018年の住民基本台帳データがあったので、48年間の変わりようをご覧いただく。
 中標津町 17090人 ⇒ 23485人
 根室市  47589人 ⇒ 25953人
 根室市の最近数年間の人口減少は年間600人だから、あと5年もしたら中標津町の人口が根室市を超えるだろう。歯舞組合と根室組合の取扱高に起きた変化と同じだ。
 歴代トップの能力が低いとか、それを支える政策集団のスキルが低かれば、長期にわたって衰退を招くということだ。歴代トップと組織と人事の問題が市役所と根室漁業協同組合に共通して横たわっている。根室はいつまでたっても是正できない。できなければ悪くなるだけ。両方の分野で改革意欲の大きい若い人が名乗りを上げてもらいたい。

 九人会メンバー全員が4月13日の時点で満70歳だから、それぞれ身体がポンコツ化しつつある。すこしボケが混じってきてたまに自分がどこにいるのかわからなくなり始め不安にかられている人、最近慢性骨髄性白血病を宣告された人、メラノーマが肺転移しオプジーボで治療中の人、長年の喫煙が祟って、呼吸音がひゅうひゅうなるようになり、肺機能が落ちてついに煙草をやめたK、糖尿病で薬を飲んでいる人も数人いた。病院に通わず、薬の世話にもならずにすんでいるのは看護師さんが嫁さんのH谷のみ。
 70歳になったら記憶がたまに飛ぶのは当たり前、身体のどこかにポンコツ症状が現れるのも当たりまえ、ケセラセラ。釧路から来たH谷が一番元気がよさそうだった。朝食をおいしそうにバクバク食べて、乗ってきたベンツを運転して帰っていった。神経も図太くなったようだからあいつは百歳まで生きそうだ。(笑)
 ついでだから、慢性骨髄性白血病の分子標的薬について書いておく。こちらは20年ほど前にノバルティスファーマが商品名グリベック(Gleevec)という分子標的薬を開発して売り出した。90%の慢性骨髄性白血病に有効である。発病してから投与すればいい。この病気は9割以上の患者に9番と22番の染色体の転座が認められる。9番の染色体にABL、22番の染色体にBCRという遺伝子があり、それが入れ替わってしまい、それらが近いところにあることでBCR-ABL(BCRエーブル)蛋白(チロシンキナーゼ)ができてしまう。これが慢性骨髄性白血病を起こすのである。BCR-ABLは正常な人にはないタンパク質だから、それを標的にする薬剤は正常な人には何の作用もない。グリベックはBCR-ABLタンパクだけを阻害する薬剤である。本人は発病するまでに何年かあるし、治療の方法もあると担当医から言われている、それよりも脳出血のほうが怖いと笑っていた。
 子どもを三人とも国立大学へ進学させた、根室では珍しい典型的な教育パパ。小学生の勉強の躾には経験に基づいた有効な方法論をもっている。A野が小学1年生の親を集めて、家庭学習の躾のしかたに関する講習会を毎年開催してくれたら、根室の子どもたちの学力は飛躍的にアップする。根室市教委さん、A野を講師に招いて講演会をやらんかね。先生たちには受けるかもしれません。かれは共産党員ですから。少し前まで選対本部で選挙を仕切っていました。九人会にはいろんなやつがいるから面白い。

*グリベック
https://www.anticancer-drug.net/molecular/imatinib.htm
**慢性骨髄性白血病(CML)の原因と診断
https://ganclass.jp/kind/cml/cause/cause.php


 根室のある町内会も同じホテルに団体で来ていた。その中の一人をYが「あれは光洋中学の同級生のM沢さんだ」と教えてくれてから声をかけた。「(ラウンジ)に入って来た時から、いると知っていたよ」とM沢さんがいう。中学校を卒業した年に1度だけクラス会をやったことがあるから、お目にかかるのはそれ以来だ。髪型は中学生の時と一緒だった。Yが中学同級生のebisuだと紹介してくれたが、「だれ?知らない」という顔をしていた。印象が薄かったようだ。(苦笑)

 8時半に宴会が終わってからコンパニオンを派遣してくれた川湯温泉のカラオケスナックに出かけた。11時過ぎまで歌って騒いた。若いころに地元羅臼で劇団を組織したDが、「人情松の廊下」と7分間の長い曲「浪曲俵星玄番」をうたってお開きとした。
 アマチュア劇団の元エースは、浪曲のせりふ回しがすばらしい。77歳のママさん、死んだ兄が歌っているようだと喜んでいた。
 根室についてから2時間ほどぐっすり眠った。四度温泉に浸かって疲れていたのだろう。

<余談>
 メンバーには水産業界関係者が多いと書いたが、わたしが東京から戻ってきた2003年(54歳)のころは、みなさん現職だったから、朝水産市場で買い付けた鮮度の思いっきりいい魚やマツブやエビを大きな発泡スチロール二つに詰めてホテルへもってきた。料理長に頼んですぐに調理してもらいプレ宴会の酒の肴にしたのである。料理はプレ宴会のほうがずっとすばらしかった。広尾産のマツブはとっても美味しかった。魚は高級品の大きなものをその都度市場で選んで買い付けてくれた。歯舞組合と広尾組合、水産物に関してはかなりの目利きだから品選びはたしかだ。
 一度だけ、買い付けて運んだ高級魚を料理長が間違えて他の客の宴会に運んでしまった。申し訳ないと代わりにでてきた魚は比較になるはずのないものだった。買い付けた本人ばかりでなくみんながっかり。長い間にはそういう手違いもあった。食べた客は大喜びだっただろう(笑)
 プレ宴会用の食材と酒の仕入れに、幹事さんが40000円ほど別に予算をとっている。今年の幹事はYさんだった。毎年そうだったかな、さだかでない。

<余談―2:福島第一原発と遺伝子の傷害>
 福島第一原発ではいまだに放射能が出続けている。汚染土も処理の使用がなくてプラスチックの袋で包んで野積みされている。高濃度のトリチウムを含んだ汚染水タンクは福島第一原発の敷地全域に広がり、いずれ満杯になる。これも費用が高すぎて処理できない。海へ放出すれば太平洋がトリチウムで汚染されてしまう。
 放射能は遺伝子を傷害する。遺伝子が傷害されれば、それがコーディングしている蛋白も変異を受ける、変異した蛋白質が癌を起こすことはすでに肺癌と慢性骨髄性白血病の分子標的薬のところで見たとおりである。
 老人でも炎症は起こす。胃炎だって炎症の一つで、傷んだ細胞を修復するために細胞分裂が盛んになる。その時にDNAの複製がなされるが、放射能はそのときこにミスを起こすのである。
 だから、福島県に住んで危険なのは細胞分裂が盛んな胎児や子どもたちだけではない、なんらかの炎症を身体に抱えている老人も細胞分裂が盛んになるので、癌リスクが高くなる。遺伝子異常で起きるのは癌だけではない。遺伝子がコーディングする蛋白質や酵素(酵素は蛋白質である)、ホルモンのなかでもアミノ酸でできているペプチドホルモン(ペプチドホルモンのpeptideはアミノ酸重合体という意味だからやはりDNAがコーディングしている)が影響を受けるから、ありとあらゆる身体や精神の異常がありうるのである。
 福島第一原発事故で撒き散らされた放射能による小児癌の増大はないという医学者がいるが、癌が起きる基本的な仕組みを知っていれば、そうしたバカげた主張がインチキであることはすぐにわかる。細胞分裂の活発な子どもたちに小児甲状腺癌が多発しているのは事故によってばらまかれた、そして今も放出がある放射能に関係があるが、その因果関係は科学的には証明不可能なのである。
 福島第一原発からいまも出ている放射能は福島県に住む子どもたちの遺伝子を傷害し続けており、それが将来あらゆる種類の癌を発生させ、ホルモン異常に起因する精神病を引き起こす可能性が大きい。かように原子力発電所の大規模な事故は取り返しがつかぬ。北海道電力泊原子力発電所で同様の事故が起きたら、190万人の札幌市は廃墟になるだろうし、放射能は日高山脈を越えて十勝平野と根釧原野に降り注ぎ、農業と漁業が壊滅的な影響を受ける。
 生乳は道内産が50%を超えているから、供給不足で価格が暴騰するだろう。玉葱などの農産物の価格もどうなるかしれたことではない。食料品を中心に大幅な物価上昇と供給不足は避けようがない。
 その反面、石狩平野も十勝平野も根釧原野も放射能汚染の被害を知らぬ野生動物が自由にはねまわる楽園となるだろう。放射能の害を知っている人間たちだけが逃げ出す。
 

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#3960 英語の教科書を読むトレーニング Apr. 12, 2019 [62-1 個別指導の実際]

<最終更新情報>
4/14 午後5時25分

 昨日、高3の教科書をつかって読解トレーニング中の高2の生徒から質問があったので、どういう読み方をしているのか分析してみた。当該箇所の段落まるごと引用する。


 Having performed all over the world, Togi sees no deference between the reaction of Japanese and non-Japanese audeiences.  Both Japanese and non-Japanese people feel the same way. People say Togi's music sounds familiar and makes them feel nostalgic.
  VividⅢ p.82


  日本人が書いた英文は、受験英語の影響でこういう分詞構文の使い方が多い。前後関係からhaving~以下の句のほうが時間的順序が先だから、これでいいのだが、ジャパンタイムズを読んでいるとあまりこうした事例にはお目にかからぬ。順序が逆のケースがほとんどだ。主節が先に来て分詞構文が後に来る例が圧倒的に多い。時間的順序を考慮すると使用法としては正しいので、あるいはネイティブの手になる文かもしれない。
 この章は雅楽の東儀さんが話題になっている。この段落の no deference の部分を「東儀は日本人にも日本人ではない人たちにもリアクションは共通していると思っている」と生徒が訳したのだが、意訳のし過ぎと注意した。逐語訳は感心しないが、意訳のし過ぎはときに書き手の意図を無視しかねない。段落全体が視野に入ればこの訳が適切でないことがわかる。no deferencethe same way が呼応しているのである。その点を考慮した適切な訳を別途考えるべき。

「世界中を講演して回っているので、日本人も日本人ではない聴衆もその反応に違いはなく、日本人も日本人ではない人もどちらも同じように感じていると東儀は承知している」

 これはレトリック(rhetoric)である。
 生徒は文章の尖端から齧って逐語的に消化して読んでいるようだ。コンピュータ言語ならBASICのようなもので逐次処理方式である。なれてくると段落全体にさっと目がいき、レトリックに気がつく。塊で読むようになるのだが、その域までまだいっていないということ。たくさん読めば、段落全体にさっと目がいき、適切な訳ができるようになる。
 the same way は文脈から「同じような」という自然な日本語が浮かぶ、そのあとで辞書を引き確認すればいい。辞書にはそういう意味が載っている。学校で英単語暗記に利用している『ユメタン』の知識でwayを「方法」や「道」と覚えていると、それにこだわって適切な日本語語彙がでてこない。
 中学校の英語授業では英語の辞書を使わない、そして高校生になると1年生の時から『ユメタン』が英単語暗記トレーニング教材として使われ、毎週テストが実施されている。そうした指導法の弱点が如実に現れていると思う。英文精読トレーニングはそうした「悪い癖」を矯正することにも効果が大きい。平易な日常語への書き換えや、「大和言葉落とし」がトレーニングの重要項目として設定されている。

 もう一つ、この生徒の苦手な部分がでてきた。それは一つ段落をおいた次のような文だ。

 Togi stresses gagaku's perfection. He says, "The classical gagaku numberes may all sound the same, but they appeal to the cells in our body. Each note correspond with a particular color, season, and direction, and is structured to express something far beyond human emotions.  Gagaku tries to caputure the soul of the universe."

 文学的な表現が入り混じるとやっかいだと感じるようだ。この生徒は文学作品や恋愛物語、推理小説には興味がない。多少興味のある私も、文学作品を英語で読むのはとっても厄介だ、使用語彙数が多くてうっとうしいばかりでなく、日本語の美しい文に置き換えることができるほどの情緒豊かな作文ができないからである。ラフカディオハーンの翻訳で夙(つと)に有名な平井呈一は永井荷風の異能の弟子であるが、彼の訳文を読むとそのすごさが伝わってくる。翻訳とは思えない、そしてその場の情景が脳裏に異様な迫力をもって再現されるような迫真の文が現れる、まさに名人芸と呼ぶにふさわしい。友人の遠藤が著書『明治廿十五年九月のほととぎす』(未知谷、2010年刊)「第二章 ラフカディオ・ハーンの見た日本」で平井の翻訳を引用している。引用された訳文に出遭った瞬間にその力量のほどが了解できた、そして平井の手になる翻訳を数冊買い求めて読んだ。
 平井の師匠の永井荷風の文体は「切れる日本語」と表現するとわたしにはよくわかるのだが、件の生徒にそう言っても、「日本語でなにかが切れるわけはない」ということにでもなろうか。日本文学は深くて豊かな対話を成り立たせるための不可欠な教養なのだ、いつかきっとわかるときがくる。

 閑話休題、件(くだん)の生徒はこの段落の二つ目の単語、stressesのところで躓いた。ストレスという日本語を知っていることが仇となる。目的語になっている perfection という単語もなじみがないので余計に混乱したのだろう、慣れてくれば、つまり量をたくさん読むと動詞と目的語はセットで日本語訳を考える習慣がつく。この生徒は「強調する」という意味を知らなかった。このあたりは電子辞書しか使わぬ生徒と、紙の辞書を使う生徒では大きな差がでてくるのではないだろうか。紙の辞書には冒頭にその単語の意味の概要リストを並べているものがあるので、その全体が視野に入る、つまり記憶の片隅に残るということだ。電子辞書ではスクロールしないとでてこない。
 記憶している単語の意味では文意が通らない、あるいは文脈上適切ではないと思えた時は、紙でも電子辞書でも引けということ。辞書を引く前に文脈からどういう日本語が自然なのか推定しろ、それもトレーニングである。文脈をつねに考慮しながら意味を精確に読むトレーニングをふだんからしていないと、「おかしい!」という勘が磨けない。そういうアンテナの精度をアップするようなトレーニングをした生徒とそうでない生徒は訳文を見たらその学力の違いは一目瞭然である。「ぼーっと読んでいるんじゃねえよ!」と、チコちゃんに叱られます。

「東儀は雅楽の完全性を強調している」
 この文だけでは意味がはっきりしない。英語は抽象的なことを述べたら、次の文でそれを敷衍するような論理運びになっているから、意味を具体的につかむために次を読め。次を読むことで「雅楽の完全性」がどういう具体的な内容をもっているかがわかる。
 noteも引っかかった。知っている単語ほど危ういものだ。音符や楽譜がnoteと知らない生徒が多い。日本語化されて使用頻度の高い単語ほど危うい場合がある。たくさん読めばそういう事例に引っかかるから、勘が働くようになる。Blue Note Recordsという有名なジャズのレーベルがあるのを年配の方ならたいがい知っている。ここでは「音」と訳した。
*blue noteの意味は下記のURLを参照してください、面白いですよ。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1018719540

 「それぞれの音が特定の色や季節や方向性に対応しており、人間の情緒をはるかに超えたものを表現するようにつくられている」「雅楽は宇宙の魂をとらえようとしている」

 このことが東儀さんが言う雅楽の完全性の意味である。完全なものは普遍的であり、人間の情緒の範囲すら超えて遍く(あまねく)存在しているものということ。
 こういう具体的な解説はトップクラスの学力の生徒には好奇心のわく愉しいものとなるだろう。愉しい解説をもう少し続ける。
 深く読むと論理的だが、表面をなぞるだけの読みしかできなければ、非論理的かつ文学的な表現に見えてしまう。文学的な比喩表現はまだこの生徒には馬の耳に念仏である、そういう分野に興味がないからだろうと思う。「宇宙に魂があるなら証明してもらいたい」なんて理屈がでてきそうだ。数学者の岡潔先生がどこかで森羅万象には普遍的な魂があるということを言っていたような気がする。根源的にあるものは魂のほうではないのか、森羅万象はその表れという考え方もできる。森羅万象の存在を素粒子レベルまでさかのぼっていくと、ある確率で現れたり消えたりする不安定なものであることが物理学で明らかになっている。どこから現れどこに消えていくのかあるいはなぜ現れたり消えたりするのかと疑問を呈している。確固たる基礎をもつようにあらわれている森羅万象の存在そのものがその根本をみると不確かなのである。森羅万象はたしかなものではない、無常(常ならぬ)もの、そういうことを繰り返し説くのは哲学である仏教のみ。だからこういうことを話題にするときには大数学者である岡潔先生は表現手段として仏教専門用語に頼らざるをえない。わたしには難解すぎる道元『正法眼蔵』が頻繁に引用される。
 この生徒は文学作品も恋愛小説にも興味がないから、先ほど段落ごと転載したような文章表現に慣れていないので、なんとなく苦手になっているのだろう。少しは文学作品も読めよと言いながら、いやいや解説した。(笑)
 ハラリの『Sapiens』を読んでもそのあたりの弱点は解消できない、でもいいのだ。完璧を目指す必要なし。この生徒はロジックをしっかりとらえ、平易な日本語に訳せたらいいのである。
 高校の英語教科書3年分を使い、教科書の英文をノートの左側に視写させて、右側に日本語訳を書かせ、圧縮された句は生成英文法でシンプルセンテンスへ還元して意味をつかむというような精読トレーニング中である。熟語や重要部分にはノート左ページの英文にアンダーラインや単語を円で囲み付番させている。もちろん対応する番号でコメントをつけるためである、システム開発技術の応用だ。英文はあとからの書き込みのために1行ごとに空けて書かせている。ときどき「大和言葉落とし」という技のトレーニングもしている。「is structured to express something far beyond human emotions」のアンダーライン部分がそうである。「構成されている」という漢熟語でもいいが、すこし硬い。madeでは格調の高さがでないので、ハラリは文章語であるstructuredを選んだのだろうか。
 高1、高2の教科書をすでに終了し、ようやく高3の教科書の82頁、全部で150頁ある、夏休みが終わるころには、きっとハラリを読み始めている。いまはじっくりでいい。読む速度を上げるのは半年先になるだろう。生徒の様子を見ながら、成長段階ごとに設定目標は変わる。

<余談:苦手の英語を克服しよう>
 高校2年生は最近2人入塾したので7人になった。1月の進研模試で学年5番以内が4人いる。7人中6人は10番以内だから、数学はよくできる。ところが英語ができるのは英語の偏差値も学年トップの一人だけ。食わず嫌いで10点以下の生徒もいるので、偏差値を60にアップする英語学習を開始したい。
 全国平均が33点、標準偏差は18点ほどだったはずだから、52点を超えたら偏差値60だ。それほど大きなギャップではない。英語が苦手で塾に来てもさっぱり英語の勉強をしなかった生徒たち数人が、どのように変わるのか、そして何人が偏差値60を超えられるか楽しみだ。
 数学と英語の偏差値の両方が60を超えたら、進学先は結構選べる。意欲のある生徒たちにを別の世界に誘(いざな)いたい。

<桜の木の上で降りられずに凍えそうになっていた猫の顛末>
 100mほど離れたところに住む人が猫を十数匹飼っているが、猫を連れて散歩しながらその家の前までいくと、空いているリビングのガラス戸から中に入っていった。似た柄の猫たちとくつろいでいたので、間違いないだろうと判断した。
 今日わかったことがある。猫は数日行方不明になっており、どこかで死んだと思っていたらしい。猫が帰ってきたので飼い主がたいへんに喜んでいたとのこと。

#3957 猫騒動 Apr. 10,2019
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10



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 遠藤さんは国際学院大学を卒業してから、早稲田大学大学院哲学科で哲学を専攻した。そのあとテレビ番組のディレクターをしていたことがあるようだ。国学院大学で教えているがそろそろ定年だろう。この本は正岡子規について書いた本である。哲学者が書いた本だから中身が濃いし視点がユニークだが、彼の文体はリズミカルで読んでいて気持ちがいい。
 もう2冊紹介しておきます。福沢諭吉について書いた本。これも名著ですよ。

漫言翁 福沢諭吉―時事新報コラムに見る明治

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