SSブログ

根室支庁統廃合案に思う [21. 北方領土]

  2,008年5月31日   ebisu-blog#192 
  総閲覧数: 15,182/187 days (5月31日23時58分) 

 21時半の気温は4.5度Cだった。根室はまだ寒い。遅咲きの紫つつじが冷たい風に揺れている。

 このところ根室支庁存続問題がかまびすしいが、振興局に格下げする案が道議会で可決されそうである。
なぜ、このような変更がなされるのかは、はっきりしている。北海道庁の赤字財政から派生している問題を何とかしたいがための経費削減、つまり支庁統廃合である。当たり前といえば当たり前の政策選択だ。
 新聞に載った反対論の論拠は二つある。
 ①根室支庁よりも面積が小さい宗谷支庁が存続することになっているので、順序が違うということ。
 ②北方領土問題があるので、それが解決するまでは根室支庁を廃止すべきではない。

 ①はもっともな意見である。しかし弱い。宗谷支庁の振興局への格下げはすべきだと言ってよいだろうが、根室支庁を残す論拠にはならない。
 ②はどうだろうか。戦後63年間、根室支庁は北方領土返還に何か寄与するところがあったのだろうか?関係団体の運動の仕方に問題はなかったのだろうか。

 わたしの眼には北方領土問題と根室支庁の統廃合には何の関係もないように映っている。根室市にも北方領土対策組織や担当者はいるだろうし、建物が隣同士で同じ機能を重複してもつ必要はないだろうとさえ思う。

 根室支庁の振興局への格下げは北海道の財政問題から派生している。経済・財政問題である。
 いろいろな機能を削減し、市町村へ権限や仕事の委譲をすることはあたりまえのことに思える。赤字を削減しないと北海道は財政赤字団体に転落しかねない状況である。そうなってからでは遅い。支庁の統廃合どころではなくなるし、学校を考えても道立高校が半減する可能性すらある。夕張市は7校ある小学校が1校に統合されるという。道職員の30%の人員整理の可能性もある。そうしないための窮余の策が支庁統廃合である。

 もし北方領土関係で根室に重要な機能を残したいなら、今までのようなものではなく、もっと効果のある機能を具体的に定義して、その機能の存続を議論すべきである。
 根室支庁存続論には具体論がないようにみえる。北方領土対策のどのような機能を根室に置くべきかの具体論が抜け落ちているのではないだろうか。
 単なる集団ヒステリーでは、財政問題で窮地にある北海道庁、そして高橋知事を説得できないだろう。他の市町村の共感も呼ばない。
 
 少し退いてみれば、良い悪いは別として、鈴木宗男氏が力を失ったことも根室支庁存続派には不利だろう。自民党で力を誇っていた頃なら、派閥の道議を動かして根室支庁の統廃合案を潰すくらいのことは朝飯前だったろう。ベテラン道議の小池元道義が選挙に負けて引退してしまったことも、道議会の中での根室の発言権が低下する要因になっただろう。残念ながら、現在の根室にはしっかりした仕事の経験のある道議も国会議員もいない。
 北方領土問題に関しては、関係団体も含めて今までのやり方を反省し、まったく新しい動きが生まれないと無理だろう。エネルギーが感じられない。たんなる行事の消化機関に成り果ててはいないだろうか。

 根室支庁管内を見渡すと、人口減少していないのは中標津町だけである。根室市も羅臼町も標津町も別海町も急激な人口減少に困っている。ピーク時に比べて70%となり、今後20年間でさらに70%に減少しそうだ。つまりピーク時の半分の人口になるのである。札幌は40年前には150万人であった。現在、189万人もいる。40年間を俯瞰してみると、道内の各市町村から札幌へ大きすぎる人口移動があった。各支庁はそのままであった。人口の移動に応じて、その機能も変わるべきだろう。
 残したい機能を具体的に明らかにして、道と協議することが現実的だろう。それなら道も応じられる。

 根室支庁の振興局への格下げがあるなしに関わらず、根室市の人口減少は加速しつつある。年間500人も人口が減っている。そこへ支庁統廃合があれば、根室市の財政のみならず、町の経済へも少なからざる影響があるだろう。事前に打てる手を尽くすことが大切だ。

 根室出身の道庁幹部職員がいないことも長期的には致命的な問題である。そういう点では、北大出身の道庁幹部を輩出することも、長期的な戦略としては重要である。
 ここ数年、根室高校から北大への合格者がない。昨年度は偏差値50(代ゼミ偏差値)(進研ゼミ偏差値は5~12を加算すること)を超える道外私大への進学実績は法政、立教、国学院、東京薬科、昭和薬科が各1名のみ。偏差値60~65の北大への道程ははるか遠い。
 過去にこれほどひどい進学状況があったろうか?5年後にはもっと悪くなる。中学生の学力が著しく低下しつつあるからだ。

 このところ根室地域の学力低下が著しい。高校ばかりでなく、中学校の学力低下、とくに柏陵中学校の学力低下が激しい。その一方で、根室市教育委員会は全国学力テストの結果すら公表しない。これでは良くなるわけがない。
 根室支庁の振興局への格下げに反対する人たちは教育の現状にも目を開いて、情報公開しろと発言すべきだ。教育問題を軽視し、目の前の問題にのみかかずらっていたら、30年後の根室に希望はない。