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#5269 集団指導と個別指導のスキルの違い:英語音読トレーニングの愉しみ Aug. 5, 2024 [49.1 英語音読トレーニング]

 昨年10月中旬から始めた、NHKラジオ英会話を利用した音読トレーニングの回数は今日で16680回です。
 すっかり、生活習慣に組み込まれました。
 同調音読で、ぴったりラジオ音声に重ねて音読するのは、息がピタッと合う瞬間が気持ちが好い。
 
 まだ下手くそです。20,000回をクリアするころにはもう少しマシになっているかもしれません。毎日坦々とトレーニングします。
 3年間続けたら、英語のリズムが、いまよりしっかり身体に沁みこみます。初見で 150~170words/minでスラスラ音読できるようなれたらうれしい。3年間はかける必要がありそうです。
 7/29Lesson日放送分の"Lesson 81"は、ピアノの先生のストラビンスキー先生に生徒のセイイチロウがどうやったらベートーベンのピアノソナタが上手に弾けるようになるのか質問をしています。ストラビンスキ-先生は次のように答えます。
Ms. Stravinsky: In order to succeed, you need two things.
   (成功するためには2つのことが必要です)
  One is a plan.(一つは計画を立てることです)
Seiichiro: OK. So what's the other thing?
  (わかりました。それで、もう一つは何でしょう?)
Ms. Stravinsky: Time. Lots of time.
  (時間です。たくさん時間をかけることです)

 ソロバンも3~4段の腕前になるには6年ほどかかりました。だらだらやっていたら合格しません。数学は計算力が高い方が有利です。珠算の暗算トレーニングをしている人には、計算力ではしていない人はかないません。計算精度と速度が段違いになります。積分や数列の計算では四則演算の量が多くなるので、計算力のある生徒は有利です。計算に入ればほとんど脳を使わずに、計算できます。どのような手順で解いたらいいのか、解法戦略の検討に脳を集中できます。ある方向で解法を組み立ててダメなときには、その視点を脳から消すのがコツがいります。消さないと、その視点に囚われて、別の解法が見つからないことがあります。

 友人にTOSSの授業の上手な先生がいます。お一人は5段といったかな、とっても授業が上手で、名人の域です。全国に20人いますでしょうか?10年ではあんな境地には到達できないのはよくわかります。30年の研鑽がその背後に垣間見えます。トップレベルのお二人は、水野さんと青坂さんです。素晴らしい伎倆の持ち主です。
 学校の先生ですから集団授業の技です。学習指導要領に忠実に、そして教科書を徹底的に使い倒します。それはそれは見事なものです。

 わたしは個別指導で23年間生徒を観察して、別の技を磨きました。学力の低い生徒と高い生徒でスキルを使い分けています。お二人の集団指導の名人の技術(学級運営を含めたスキル)を比較してみることで、個別指導の技の特徴がよく理解できるようになりました。感謝しています。

 学力の低い生徒は、どこで躓いているのか「診断」が必要です。診断がついたら、治療方針が決まります。そして実際に直していきます。医者の仕事と一緒です。数学は何年もさかのぼって、躓いたところを見つけ出してそこから教えます。たとえば、中学生で計算ミスの多い生徒は、九九もチェックします。逆九九が言えなかったり、九九のどこかの段の特定の場所に言い間違いがあることがあります。そこを見つけて治さないと、いつまでたっても計算ミスが頻出します。分数や少数の乗除算がパーフェクトにできない中1の生徒は20~30%います。数題やらせてチェックすればいいだけ。特別なことはありません。基本的な計算ルールを数題やらせてみてチェックするだけ。
 ところが、学力の高い生徒への対応はまったく違います。数学の場合は教科書を使う必要のない生徒もいます。難易度の高い問題集のコンパクトな解説を独力で読み、難易度の高い問題を予習方式でやらせながら、様子を観察します。そして質問を受けるだけです。質問する問題がどれかやどのような内容の質問かはあらかじめ知りようがありません。だから授業計画を立てるということができません。
 ある生徒がこんなことを言ったことがありました。
「先生、教科書には僕の知りたいことが書いてありません。『シリウス』には僕の知りたいことが書かれています。」
 この生徒の数学の教科書は中学の3年間と高校3年間、新品のままでした。国立大医学部受験でしたから、地もtの偏差値45の高校からのチャレンジですから、授業時間を無駄にはできませんでした。塾用の難易度の高い問題集『シリウス』を解いていました。おとなしくしていますが、無視されていると感じた先生にはさぞご迷惑だったでしょう。競争相手は同じ学校にはいません。全国の進学校で難易度の高い教科書で授業を受けています。それに匹敵する状況を自分で創り上げる必要がありました。先生たちとトラブルが何度も起きました。それを乗り越えて、現役で国立大医学部に現役合格したので、いい経験になったと思います。突出した生徒を理解できる先生はすくない。

 そういうわけで、質問を聞いて、どの程度の学力なのか判断できます。ときどき、数学的概念の拡張や、帰納法による一般化をやってみせることはあります。先の見通しをもつためや数学的な思考に慣れてもらうためです。中学校の確率のところで、高校のパーミュテーション記号やコンビネーション記号を使った計算法は生成上位層の生徒達には解説します。
 学力の高い生徒ほど、指導することが少なくなります。同じ生徒でも、学力が上がってくると質問が目に見えて減りますから、どの程度の学力の高さに到達しているかがよくわかります。
 数学の体系は演繹体系ですが、教えるのは帰納的にやった方が、生徒自身の発見が多いので好いのです。学力の高い生徒ほど質問が少なくなりますが、質問の内容を観察しながら、どこまで教えるか判断します。学習指導要領はまったく考慮しません。例えば、小学生でも単位系が絡む問題は、数値計算と単位計算にばらしてやって見せます。学力の高い生徒はその方が計算の理屈がよくわかります。だから、質問があれば生徒自身の能力に最適な教え方をその都度考えます、「反応する」といった方が適切ですね。あらかじめ何をどのように教えようという「構え」はありません。「反応する」だけです。数Ⅲで複素平面が出てきますが、理系進学者には必要な分野です。文系受験の生徒にも、数学の世界が広がるので学んでおいてほしいと思います。標準的な問題集のほかに1冊複素平面を扱った問題集をやっておけば、計算だけでなく、意味がつかめてきます。どこをどのように教えるという授業計画はありませんが、計算手順だけでなく、教える方は意味までしっかりつかんでおかなくてはなりません。いつ質問が出てもいいように、常に学んでおく必要はあります。それが「教える」ということだと思っています。そうした努力ができなくなったときには、塾をやめるつもりでいました。でも、ありませんでした。生徒を観察し、質問を受けながら、ずっと学び続けていました。
 授業はさまざまな学年が混じっていますし、同じ学年でもやっているところや、使っている問題集が違っていることもあります。教科書準拠問題集から質問する生徒もいます。とにかく、授業計画はいのです。生徒の質問に反応するだけ。
 学力の低い生徒は教科書を予習しておくと学校の授業がわかりやすいので、ほとんど全部を質問するなんて生徒もたまにはいます。付き合いますよ(笑)なるべく早い時間に来てもらいます。早い時間は生徒が少ないので説明時間が取れますから。自宅でやるようになってからは、机は7つ、座卓に3人これが2階の教室でした。16畳のスペースです。1階に机が3つ、自習用に用意してありました。定期試験が近づくと、生徒が来る頻度が増えるので、自習スペースが必要になります。

 英語は別ですよ、教科書を使います。教科書の音読が英語力アップに大きな効果があります。正しい発音で、120 words/minで読めたら、十分です。正しく発音できれば、英語は聞き取れます。速く・精確に読めれば読解力が高くなるのは日本語の場合と一緒です。江戸時代から言われているように、学力の基礎的なスキルは「読み・書き・ソロバン」なんです。これは優先順位も表しています、「読み」のスキルが一番重要です。だから、英語は音読中心でやりましょう。(笑)
 光村図書の中学英語教科書を見ました。素晴らしいの一言です。英語に関する学習指導要領が大きく改訂されていますので、その線に沿ったものになっているのでしょう。1年生の教科書では、聴きとりにくい子音の発音がセットで聴けます。pigとbig、capとgap、topとdog、sitとzip,fanとvan...という具合です。QRコードによる音声サポートは、各章の本文だけではありません。ゲーム感覚で楽しめるように多彩な音声がついています。内容・分量が極東の町で使っていた”Sun Shine”の1.5倍くらいありそうです。
 上位16%の生徒は、教科書中心で独学で学べます。スマホを使って音読トレーニングしたらいい。教科書がとっても進化しました。中学校の英語の授業は今までとは劇的に変わるでしょうね。発音の悪い先生に当たっても、QRコードでナレーターの音声を利用して、音読トレーニングすれば先生のあたり外れによる差がつきません。
小学生でも英検5級に合格(合格最低点は50点付近)できれば、光村図書の中学英語教科書を使って独学で英語の学習できますよ。中学3年間の英語教科書をやって、英検の問題集を1冊解いてみたら、小学生でも英検3級にチャレンジできます。同じ方式で、高校英語教科書を利用して学習すれば、中学卒業までに英検2級に合格できます。後は多読で語彙を増やせば、高校卒業前に英検準1級を手にできるでしょう。やってみてください。

 生徒と一緒で、教える側も日々精進で、英語と数学と日本語の指導スキルを磨くのに20年ほどかかりました。(笑) 成績上位16%の学力の生徒なら、小4からスタートすれば、半数くらいは国立大学医学部にチャレンジできるでしょう。高校1年生で数検準1級と英検準1級にチャレンジできます。大学入試2次試験に小論文テストがあれば、圧倒的に高得点できます。日本語音読授業はそれほどパワフルです。
 「読み・書き・そろばん」というぐらいですから、「読み」が一番大事なのです。深く読める生徒には、学校の授業がほとんど不要になります。難易度の高い問題集の解説を読むだけで、独力で学習できるようになります。「自主的」「自律的」な学習が文字通り実現できます。わたしは、時々生徒の鋭い質問に反応すればいいだけです。

 上位10%の学力の生徒は、数学なら、教科書は必要ありません。説明があまりにも冗長なのと、基本事項しか書かれていないからです。
 数学の教科書を使う必要がないということは、教科書を使った標準的な数学の授業は聞く必要がないということです。上位10%の生徒の学力に標準的な難易度の教科書はまったく合わないのです
 集団授業では、教科書を使って、丁寧に教えることが求められます。それは上位10%の学力の生徒たちをスポイルすることで成り立っています。15人くらいなら3グループに分けて、グループ指導が可能です。やり方はあくまで個別指導です。成績下位の生徒が10人なら、これは手間がかかって教えきれません。成績上位10%の生徒達なら、何人いても教えられます。質問の数が少ないですから。

 学力上位10%の生徒達なら、英語は、たとえば高校3年間の教科書を9か月で教えきれます。週に2時間で大丈夫です。これは実際に音読中心で授業してみた結果です。高校英語教科書を9か月で全部やり終えたら、英検2級の合格ラインはクリアできます。準1級は語彙拡張が課題となり、多読や文構造を解析した精読が必要になります。中3で高校3年分の教科書をクリアして、英検2級に合格して、語彙拡張に励み、高校1年生で英検準1級にチャレンジできたら、大学入試共通テストの問題レベルなら、受験時には180超の得点が可能です。

 日本語の音読指導がむずかしいでしょうね。良書を17冊選んで15年間やってみました。基本は斉藤孝先生の「三色ボールペン方式」です。素読方式、センテンス2つずつの輪読、段落ごとの輪読、著者の意見と対立する別の意見の可能性、そして自分の意見の対比など、自然に大学のゼミレベルの授業になります。音読で使ったリストは弊ブログ内を検索すればすぐに出てきます。
 内容の濃い本や語彙レベルの高い本を読まないと、読解力や作文の表現力が伸びません。だから、何を目的に、どのような本を読むかがとっても重要です。十代のうちに語彙の豊かな本や、内容レベルの高い本を数冊選んでしっかり読んでください。たくさん読む必要はありません。大学へ入ってから濫読したらいいでしょう。もちろん、小中高と濫読してもかまいませんが、難易度の高くない大学へ進学することになるでしょう。時間は有限で、誰にとっても一日は24時間です。だから、とくに高校生の時期は読むべき本を厳選すべきです。

 生徒の方の側から考えると、先生は集団指導の優れたスキルと個別指導のスキルを併せ持っているのが、おそらく理想でしょう。両方必要なのです。日本は人口減少時代に入ってしまっているので、生産年齢人口がいずれ半減します。そのときに、上位16%(偏差値60以上)の子どもたちをどのように育ててきたかが問われます。

*#5214 小中高生と本の語彙の六段階難易度別クラス分け April 19, 2024


<余談:教えてほしいと頼まれたら”否”はナシ>
 学年トップの子には、同級生に教えてほしいと頼まれたら、全部受けてしまえ。深くわかってないとやさしく教えることはできないし、困っている同級生を助けるのは学年トップの生徒の当然の義務だ。”ノブリス・オブリージュ”という言葉がある、と伝えていました。
 同級生どころか他校の生徒で中学から札幌の進学校に行った生徒にまで、「明日の9時から30分」なんて時間を決めて、スマホとパソコン両方使って教えてあげてました。自分の勉強の時間を割いても、しっかり対応してました。
 自分は学年トップだから、学力の低い同級生とは別だと、「自他弁別能」を育ててはいけないのです。適切にサポートする人がいれば、同じところへ上ってこれる、我も人も同じという「平等性智」「無差別智」を育てるように仕向けました。
 なにより、コミュニケーション能力が育ちます。人にわかるように解説できるというのは、社会人になったときにとっても大事な能力なのです。
 人気者になっていました。

 わたしは、根室高校を卒業してから50年ぶりに同窓会で会った同級生の女子がいました。「あのとき親切に工業簿記を教えてもらった、うれしかったわ!」と隣に座って思い出すように言ってました。わたしは覚えていません。頼まれたら何人もに教えてましたので。(笑) おかげで余分にモテました。「情けは人の為ならず」という言葉が高校卒業して50年経って、よくわかりました。ほんとうの話です。

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〈日本語音読リスト〉…
*#3726 
日本語音読トレーニングのススメ:低下する学力に抗して Apr. 18,2018
https://nimuorojyuku.blog.so-net.ne.jp/2018-04-18-1

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<7. 国語力アップのための音読トレーニング >
 中2のトップクラスのある生徒の国語力を上げるために、いままで音読指導をしてきた。読んだ本のリストを書き出してみると、
○『声に出して読みたい日本語』 
○『声に出して読みたい日本語②』 
○『声に出して読みたい日本語③』 
○『坊ちゃん』夏目漱石 斉藤孝の音読破シリーズ
○『羅生門』芥川龍之介 音読破シリーズ
○『走れメロス』太宰治 音読破シリーズ
○『銀河鉄道の夜』宮沢賢治 音読破シリーズ
 『五重塔』幸田露伴 音読破シリーズ
 『山月記』中島敦 音読破シリーズ
●『読書力』斉藤孝 
●『国家の品格』藤原正彦 
●『すらすら読める風姿花伝・原文対訳』世阿弥著・林望現代語訳 
●『日本人は何を考えてきたのか』斉藤孝 

『語彙力こそが教養である』斉藤孝 
●『日本人の誇り』藤原正彦(数学者) 

◎『福翁自伝』福沢諭吉 
◎『近代日本150年 科学技術総力戦体制の破綻』山本義隆(物理学者) 

(○印は、ふつうの学力の小学生と中学生の一部の音読トレーニング教材として使用していた。●印の本はふつうの学力の中学生の音読トレーニング教材として授業で使用した実績がある。◎はトップクラスの高校生に使った本である。大学生でも語彙力上級者レベルにふさわしいテクストである。平均的な語彙力の大学生には手が届かないかもしれない。
 音読トレーニング授業はボランティアで実施、ずっと強制だったが、2年前から希望者のみに限定している。本気でやる気にならないと効果が小さいので、お互いに時間の無駄。)

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 根室市教委さん、令和5年度の全国学力調査の結果を見ました。根室の子どもたちの国語の読解力が落ちていますね。日本語音読指導をやればいいだけです。手間はかかりますが、飛躍的に読解力をアップできます。算数や数学の文章題も点数が著しく低い。これも問題文の読解力が低いという問題が横たわっています。

#130 成績不振の生徒から学ぶ 2,008年3月10日




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