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#5267 日本企業の変化を読む:日経平均2216円下落 Aug. 4, 2024 [8. 時事評論]

 経済同友会代表幹事の新浪 剛史氏(サントリー代表取締役)がブラックマンデー(1987年10月29日)に次ぐ8/2の日経平均の下落に、次のようにコメントしています。

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株価の急落について経済同友会の新浪代表幹事は2日の会見で、「株価上昇の大きな要因として円安があったのは事実で、円安で株価が上がった分がはげて今後のことを考えたら、リスクを回避しようという投資家がいるのは当然のことだと思う。また、私はアメリカの消費経済はそれほど強くないと思っていたが、それがデータに出てきて、サプライズになったのではないか。アメリカの景気は底堅いけれど、厳しいなということになり、景気の先行きが怖くなってきたのではないか」と述べました。

そのうえで「本質的に日本の経済の状況、とりわけ企業は足腰がしっかりしているので、一喜一憂せずに株式市場は調整局面だと見ていくべきだと思う。円安に支えられた株価ではなく、実体経済と合った株価に変わっていくのではないか」と述べました。
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 新浪代表幹事、自画自賛ですね、立場が言わせる意見のように聞こえます。
 経済や企業経営の見方にはさまざまな視点があります。
 別の視点、たとえば、この30年間の日本企業の経営スタイルの変化と日本経済の変わりようを俯瞰してみましょう。まったく別の姿が浮かび上がります。

①非正規雇用が増えて、約40%も占めている
②上場企業経営者の報酬が大幅にアップした
③実質賃金はほとんどアップしていない

 雇用形態と上場企業経営者の報酬に大きな変化が読み取れます。経営者と株主だけが利益を享受すればいい、そこで働く人たちの平均給与は、非正規雇用の拡大で30年間ほとんど伸びないということになりました。強欲が日本の企業経営者たちに蔓延したのです。感染力の大きな「強欲ウィルス感染症」が流行ったかのように見え、企業経営者は右へ倣いしてます。人件費を削ることで簡単に利益が出せるからです。企業を支える人たちの雇用を不安定にし、平均賃金を抑えることで、利益を増やし、それを手柄として自分単たちの報酬は2~30倍にしました。


 日本企業には普遍的なビジネス倫理として受け継がれてきた、「売り手よし・買い手よし・世間よしの三方よし」という伝統的な価値観がありました。その灯が消えつつあるように見えます。動物本能に駆られた強欲な経営者が増えたということです。大数学者の岡潔先生は「自他弁別能」と言っています。経営者とそこで仕事をする人たちは同じではない、別のカテゴリーだということです。自他の区別はない、彼も我も同じというのが「平等性智」の働きです。人間の理性ですよ、その働きがとても弱い、人として問題のある経営者が増殖しました。
 悪名高い日産のカルロス・ゴーン元社長だけではありませんよ、豊田章男氏も10億円を超える報酬を手にしています。最近の検査の不祥事では「不正を撲滅するのは無理だ」と言ってましたね。でも、ユーザーの信頼にこたえてもらいたい。自動車業界ナンバーワン企業がこれでは困ります。トヨタ一社だけが巨額の利益を上げて、3万あると言われる下請け企業の大半は、青息吐息の経営です。これも動物本能の働き「自他弁別能」のなせる業ではないでしょうか?
 ところで、30年前には、上場企業の取締役で報酬が1億円を超えている人は一人もいなかったのではないかと思います。2023年度のデータでは2億円以上が267人いるそうです。ご覧ください。
*「年収1億円超」の上場企業役員ランキングTOP500

 株価(日経平均)がアップしているのは、GPIFや日銀が大量に株を購入したからです。
④日銀がETFで東証上場企業株を時価で70兆円保有している
⑤年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)の国内株式保有額は61兆円
⑥上場企業は自社株を購入・消却して株数を少なくして株価を吊り上げている

 両方で上場企業株の15%も購入したのだから、現在の株式相場は、政策的に作られたものといってよいでしょう。日本銀行は総資産が膨らみ過ぎているので、早晩売却処分すべきであるし、GPIFも年金支払いに充てるために、売却せざるを得ません。だから新たな買い手が欲しいのです。政府が新NISAのような投資信託を勧めていますが、理由のあることなのです。

 上場企業の多くは、内部留保を長期的な投資・新規事業分野の開拓に使わず、自社株買いをして株価のつり上げを行っています。経営能力がないと宣言しているようなものです。
 本来は、新規事業に投資すべきですが、それができないので、溜まり続ける内部留保の一部を自社株買いで株価つり上げに利用しています。

 日本企業は、社員を少なくして非正規雇用を増やすことで、人件費を削る一方で、利益を増やし、内部留保を積み上げてきました。その内部留保は、これから起きる首都直下型地震や東南海連動型地震が起きたとき、富士山噴火が起きたときなどの大災害復興資金に充てられるべきものです。日本列島に拠点を置く日本企業はそういう特殊なリスクを抱えています。意識している意識していないに関わらず、日本企業の内部留保が高いことにはこのような理由があります。1年間、勤務せずとも給料を支払い地方へ避難してもらえば、首都の復興はずっと楽にできます。いまのままでは、それが可能な企業がすくない。ぜひ意識して、マネジメントに当たっていただきたい。

 日本企業の経営者は強欲になりすぎました。最近、"greed capitalism"という言葉をときどき見かけます。「強欲資本主義」ということです。
 30年というスパンで見ると、日本企業のファンダメンタルズ(土台)は腐り始めていると言えませんか?

 「売り手よし、買い手よし、従業員よし、世間よしの四方よし」
 こういう経営哲学でマネジメントをしてもらいたい。従業員の給料を上げてから、社長の給料を上げるべきでしょう。それが人として当たり前のことではないでしょうか。

<余談:相対的なものの見方あるいは三つの視点から観察すること>
 見る角度が違えば、モノやコトは違った様相を呈してくれます。円柱を正面から見れば長方形に見えます。真上から見ると円形に見えます。斜め上から見ると円柱に見えます。経済同友会代表幹事の新浪 剛史さんが、どの角度からモノを見ているのか、チェックする必要があります。そして、別の角度から事象を眺めましょう。
 できれば、モノゴトは三つの視点から眺めるようにふだんからトレーニングしたほうがいいのです。角度を変えてみるなんていうのは易いですが、行うのは難いのです。もちろん、周辺の専門分野の知識が必要なことは言うまでもありません。日経平均大暴落に関係するのは、経済学、マネジメント、外国為替などの金融、簿記、会計学、労働法規、など多岐にわたります。
 できれば自分の経験智を通してモノゴトを理解しましょう。その人の視点に個性の色がつき、ユニークさが加わります。

 わたしがそういうものの見方に気づいたのは小学4年生のときでした。北海道新聞のコラム「卓上四季」を読み始めたときからでした。当時の新聞にはルビが振ってあったので、知らない語は国語辞典を引けば意味が解りました。小学生でも3か月も引けば新聞記事のほとんどの専門用語に慣れます。「社説」「政治経済欄」と好奇心から新聞記事に目が釘付けになりました。いまでもそうした傾向が残っていますが、北海道新聞は社会党の政治思想に染まっているものが多かった。NHKニュースや映画のニュースとは趣が、そしてモノゴトを見る視点が違っていました。だから、違う二つの見方が、新聞を読むことを通して身に着いたのです。
 高校に入ってから、公認会計士2次試験の受験勉強を始めると、当時の7科目の中には「経済学」があり、近代経済学でした。マルクス『資本論』は知っていましたから、受験勉強には関係がありませんが好奇心から高校図書室にあった『資本論』を読み始めました。会計学説も黒川清先生と沼田嘉穂が対立する学説で両方を比較しながら読み始めました。
 そうしたものの見方が面白かったからです。

 小学生の時から高校卒業までビリヤード店の店番をしてました。ほとんど、大人相手に遊んでもらっていたようなものですが、さまざまな職種のお客さんとコミュニケーションして、学んだことがたくさんあります。職種特有の考え方、性格の違いによる考え方の相違やゲームの仕方の違いなど。短歌を詠む歯科医の田塚源太郎先生と、時代小説や現代小説を地元新聞に連載していた歯科医の福井先生にはずいぶんかわいがってもらいました。好いインテリがそばにいました。信金前のお菓子屋さんの鷲尾さん、大工の羽田さん(お父さんは元々宮大工)、焼き肉店を開くことになるケンジ、信金本店の数人のお客さん、ヤクザの親分のTさんと幹部数人、ビリヤード店の常連客のみなさんが育ててくれました。
 ヤクザ屋さんはとっても紳士的でした、それが怖いところです。ビリヤード店への出入りは幹部数人しか許しませんでした。遣い走りが用事があってきたことがありましたが、「お前たちはこの店へきてはならぬ」と言っているのを聞いたことがあります。終戦後の闇市で落下傘部隊の生き残りのオヤジと元気のいい同士、当時は若頭だったそうです。一度トラブルがあってから、どういうわけか兄貴分扱いでした。オフクロのことを「姉さん」と呼んでました。いえ、オヤジはヤクザではありません、まっとうな商人&職人でした。
 自然にそういう人たちにどう接したらいいのか学んでいました。コミュニケーションの幅が広がりました。Tさんとは一度もビリヤードゲームの相手をしたことがありません。けじめのはっきりした人でした。私は少し元気のいい方でしたし、根室高校は根室商業時代からの封を受け継いでいて坊主頭の校則と総番制度のあるバンカラな学校でした。丸刈り校則は生徒会会計に1年生の3学期に指名されて、副会長に相談したら、「言い出しっぺのお前がやれ」と指示があり、先輩の言うことは絶対ですから、2年の4月からスタート、3か月かけて改正規則通り前好手会で廃止を決定して、長髪で2年生のときに週学位旅行へ行きました。総番制度も総番長のヒロシと同じクラスになり、A野と3人で相談して廃止しました。じっさいにはヒロシが決断、一人でやった仕事です。大事な友人の一人であるあいつも、一昨年亡くなりました。
 母親が亡くなる数年前に、「お前が高校生の頃、Tが息子に何かあったら、知らせてくれ」と言っていたことを知りました。「Tがそんなこと言ったの」と笑ってました。アブナイ奴だと見抜いてましたね。あの世界の人たちは人を見る目は確かです。あるとき、お祭りの露天商の縄張りで、ルール違反があったようで、子分3人を引き連れて叩き壊しているところを目撃しました。ふだんの紳士的な様子は微塵もありません。あれが本性です、ふだんはしっかり隠しています。見事なものです。こういう経験も役に立つことがありました。

 モノの見方は複数の視座を確保して、ふだんからよく見たり考えたりしておくこと。自分の経験智を通して自分の文脈の中でものごとをとらえることの大切さが言いたくて書き記しました



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