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#4693 偏差値の誤解:進研模試とみんなの大学の偏差値比較 Jan.13, 2022 [65.a 成績上位層にかかわる問題]

<更新情報>1/13朝10:17<データが語ること>追記

 「みんなの大学情報」で偏差値を見ると、北大医学部と旭川医大医学部、京大理学部は偏差値65で並んでいます。このレベルの学力の生徒は根室の市街化地域の中学校では入学してから卒業するまで学力テストは学年トップです。1年よりも2年、2年よりも3年と、学年2位との差が拡大していきます。もちろん、根室高校は入学してから卒業まで全国模試で学内トップ、そういうレベルの学力なのです。その出現確率は10年に一人以下といっていいでしょう。定期テストは眼中にありません。テスト範囲を暗記していたら高得点可能ですから、問題の難易度が低すぎて成績上位の生徒の学力の判定にはまったくといっていいぐらい役に立たないのです。ケアレスミスをいかに少なくするかの競争です。ばかばかしい。

 根室の生徒たちは根室高校へ進学して7月に初めて全国模試を受験して自分の学力を知ることになります。中学校で学年5番くらいなら、全国偏差値は50くらい、つまり100人中50番程度、大学受験生としては凡庸な学力ということです。

 7月の進研模試(ベネッセ)で全国偏差値が65だったと仮定します。「自分は北大医学部や旭川医大医学部、京大理学部のようなレベルの学校に合格できるんだ」と思う生徒がでてきます。理由は簡単、「みんなの大学情報」にそう載っているからです。河合塾の偏差値でも似たようなものです。進研模試だけが偏差値が高く出ます。

 共通テストで「みんなの大学情報」偏差値65をクリアする生徒は、1年次7月の進研模試では偏差値80前後でなければ共通テストで「みんなの大学情報」偏差値が65には届かないのです。偏差値80は受験者千人に一人、つまり上位0.1%です。45万人の受験者では成績上位450人ということです。偏差値65だと千人中97番目です。
*「#4070偏差値と千人中の順位対応表」
 
 なぜか?
 1年次7月の進研模試には全国の公立高校の普通科の生徒の大半が受験します。母数は45万人ほどいます。その中には公立進学校の一部が含まれていません。北海道なら、進学校の札幌南や北高が参加していません。中高一貫校公立進学校も参加しないし、私立の中高一貫の有名進学校もカリキュラムが合わないので参加していないのです。だから、成績上位の数万人が抜けているので、平均点が低く、偏差値が高く出てしまうのです。実際に共通テストを受験する生徒(昨年は53万人)の内、成績上位に属する一部の生徒たちが1年次の進研模試には参加していないだけでなく、共通テストを受験しない生徒が数万人含まれています。
 2年次になると、進研模試は大学進学希望者のみの受験になるので、受験者数が激減します。根室高校では1年次の受験者数120人弱に対して、2年次で受験するのは特設コースの40人のうちの35人くらいです(昨年3月の大学進学者数を根室高校ホームページで見ると48人、2021年4月の3年生の進研模試受験者数は36人)。就職や専門学校進学の生徒が抜けますから、平均点がアップするので、偏差値は1年次のときよりも低くなります。
 根室高校の昨年の進路実績をみると、偏差値60を超える大学への進学者は48人中一人だけ、ほとんどが偏差値50以下です。
 データから言えることは、根室高校からは偏差値60を超える大学へは現役合格が無理だということです。偏差値65を超える難関大学へ合格するには、1年次の7月の進研模試で偏差値80付近にいないといけないということ。それは、長期の教育戦略に基づいて、小学校と中学校で特別な学習の仕方をしてきた生徒だけになしうることです。高校へ入学してからではもう遅い。旭川医大医学部へ昨年3月に現役合格した生徒がそういう勉強の仕方を7年間やりぬいています。そういうわけで勝負は根室高校へ入学する前についてしまっています

 根室高校の今年の三年生の1年次7月のテスト結果は、学年トップが進研模試で偏差値65くらいでした。偏差値60-65の間に5人くらいだったと思います(根室の中学校で学年トップでも数人が団栗の背比べで、トップが入れ替わるようなら、こんな程度の学力レベルなのです)。1年次の偏差値から判断すると「みんなの大学情報」で偏差値65相当の難関大学へは合格できる生徒はいないということになります。
(北大で「みんなの大学情報」偏差値が65なのは獣医学部と医学部だけです。この二つをのぞく理系学部は偏差値60-62.5ですから、偏差値65以上を難関大学と定義すると、獣医学部と医学部だけ。それ以外の学部はそんなに難しくありませんよ。)


<データが語ること>
 2019年6月29日の進研模試データを見ると、国数英の3教科で全国平均が120.2点、根室高校の平均点は87.7点です。32.5点の差があります。このデータから言えるのは根室高校の偏差値は42くらいということ。英語が一番差が大きくて14.8点差です。国語は11.2点差、数学は6.5点差でした。1年生は高校へ入学してまだ2か月のときの全国模試ですから、中学校の英語授業に大きな問題の存在が示唆されています。

 わたしが古里根室へ戻ってきて塾を開いたのは2002年11月でした。中学校の学力テストの平均点のチャンピオンデータは柏陵中学校の165点(300点満点)でした。55%の得点率です。啓雲中学校が光洋中学校に統合されて、いま光洋中は1学年100名近い人数がいます。これは根室市全体の中学生の6割弱です。
 昨年度の3年生の学力テスト(500点満点)の平均点を並べてみます。
 4/14 201.7点
 9/15 206.4点
 10/14 197.8点
 11/10 180.7点
  合計 786.6点 平均196.7(39.3%)
 この20年間で一番いい時と比べると、得点率に16%の差があります。根室釧路管内の市街化地域の中学校で最低レベルです。
 不思議なことに根室の教育行政に危機感はありません。生徒も先生も長閑(のどか)なものです。いまや18年前の根室高校普通科の学力のある生徒は特設コース・クラスの40人の内、30人しかいません。「広報ねむろ12月号」に特設コースの1-3年生の座談会が掲載されています。やはり危機感ナシです。自分たちがどの程度の学力かわかっていません。お父さんやお母さんたちの時代の根室高校普通科の学力レベルにすら足りないのですが、「特設コース」という看板で大きな勘違いをしています。ぜひ、データを見てものをいう習慣を身に着けてください。社会人となったときにデータや事実に基づかない議論は相手にされません。
 そうですね、進路指導室の先生たちに過去20年間の1年生7月の進研模試の科目別平均点と3科目合計平均点、それと学年3番までの全国偏差値データをEXCELでもらったらいかが?それを折れ線グラフにしたら、いつ、何が起こったのかはっきりわかります。HP社の高性能パソコンが生徒に配布されていますから、自分たちでデータ加工したらいかが?そのうえで、学校の先生たちとこれからの根室高校をどう改革するのか具体的に議論してみてください。高校生はもう大人です。大人の議論はそういう風にやるのです。


<余談:学習スタイルの重要性>
 たかが受験勉強です。正解のある問題ですから、正解手順を覚えれば高学力の生徒たちは高得点できます。しかし、効率の良い、正解手順を覚えてしまう勉強を中高の6年間繰り返すと、「そういう頭」になるんです。
 民間企業に勤務あるいは研究者になってみたら、正解手順はないのです。民間企業では文系も理系もありません。大きな問題やプロジェクトは両方の専門知識を要求します。試行錯誤、そういう勉強の仕方をしてこなかった人は、学校を卒業してから苦労します。ほとんどの人がそれまで培った「思考の鋳型」を壊すことができないのです。
 解答を見ずに、独力で考え、答えを出してみてから、解答を見て、自分の思考過程と解答を比べる、そういう勉強スタイルを貫き、難易度の高い良質の本を読んだ者が、社会に出てから大きく活躍することになります。はっきり言いますが、こんな学習スタイルを貫ける生徒は滅多にいません。
 どのような本を読んでおいたらいいのかは、好奇心や性格にもよるので、これが絶対というものはありませんが、旭川医大に根室高校から現役合格した生徒と7年間音読トレーニングに使った本はリストアップしてあるので、参考にしてください。

 中高生のみなさん、そして大学生のみなさん、しっかり勉強してください。
 社会人のみなさんも、今から始めたっていいのです。

<統合後の根室高校生の学力低下>
 4年前だったかな、根室西高が閉校になって根室高校へ統合されました。そして特設コース1クラスが開設されています。2004年だったかな、根室高校普通科がめずらしく定員オーバーして数名が不合格でした、Fランク150点(五科目300点満点)で3人不合格になっています。いま特設コース40人の内、10人程度は五科目合計点が50%以下だと思います。つまり18年前の根室高校普通科の生徒よりも、現在の特設コースの生徒たちの学力は下だということ。進路実績を見たら一目瞭然、首都圏の大学進学者は1/10になっています。偏差値60を超える大学への進学者は昨年は1人のみ。進研模試のデータを20年前から並べてもわかりますよ。
 18年間根室高校で先生している人はほとんどいないでしょうから、知らないのでしょうね。
 根室高校の後輩たちの学力低下が悲しい。
 いい人材が欲しい地元企業も採用に困っているでしょうね。



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日本語音読トレーニングで実際に採り上げた本の中から、七冊だけピックアップしました。最後にあげた二冊は難易度の高い本です。できの良い大学生用といってよいレベルの本です。
 これらの本を読んで、対話を重ね、さらに論説文を書くトレーニングもしてます。旭川医大の300点満点の小論文テストで295点でナンバーワンの得点だったのは、こういうことをしっかり積み上げたからでしょう。
 大学生は卒業までにこれくらいのレベルの本を十数冊読んでもらいたい。

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 十数年間生徒全員に音読授業への参加を強制していたので、①~③までは、生徒全員が読んでいます。④以降は希望者のみ。私塾でこんな授業をしているところは道内にはないでしょうね。いい本をしっかり読むことで、読解力が大幅にアップします。

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