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#4452 日銀保有の国債と政府の借金を相殺すればいいというのは荒唐無稽の論 Jan. 10,2021 [95.増え続ける国債残高]

 日銀保有の国債500兆円と政府の借金を相殺すればいいから、いくらでも国債発行をしてかまわないという論をいう経済評論家がいるようだ。いや、経済学者の中にすらいる。
 説明は簡単だから、初等簿記の知識で十分です。

 日銀がそういう相殺処理をしたと仮定しよう、次のような仕訳がなされる。
 (借方)特別損失 500兆円 (貸方)保有国債 500兆円
 日銀保有国債はこれでゼロになる、資産の減少と損失の発生という簿記取引になる。

 政府の方の仕訳は、
 (借方)借入金 500兆円  (貸方)特別利益 500兆円
 企業会計基準では借入金(債務)の減少と特別利益の発生という簿記取引になる。しかし、資金の収支を記帳するだけの公的会計基準ではこうはならないだろう。公的会計基準は複式簿記ではないからだ。世界中の企業が複式簿記で運営されているが、日本の公的なセクターだけは、その埒外である。いい加減に資金の収支計算書はやめて複式簿記で企業会計基準に則った会計処理をすべきだ。こんなダブルスタンダードだから、夕張市のように財政破綻しないと経営の実態がつかめないということになる。たとえば、広報ねむろ6月号の5ページに病院事業会計への一般会計繰出し金が17億1793万円記載されている。赤字補填のための期末一時借り入れがない限り、この金額が市立病院経営で生じた1年間の赤字額である。同じページをみると病院事業の陶器純損失は3265万円である。市民は病院経営赤字は3265万円だと誤解するだろう。だから公的会計基準は廃止すべきなのだ。実態がまるで分らないものになるからだ。青色申告は複式簿記での記帳を要求しているから公的会計基準での決算を国税庁は受け付けない。国税庁すら認めないのが公的会計基準での処理である。上場企業も財務諸表規則違反・証券取引法違反になるので公的会計基準での決算は認められない。日本では江戸時代から複式簿記(大福帳)での記帳がなされてきたのに、なぜか公的セクターだけは単式簿記でやり続けている。時代錯誤と言ってよい。
 わたしには結果しかわからぬ、政府の財産目録の負債の項目から500兆円が消えることになる。
 そして、日銀には自己資本が4.2兆円しかないから、その100倍を超える債務超過に陥る。
 中央銀行が自己資本の100倍を超える債務超過になったら何が起きるのかは誰にもわからぬ。
 いまだかって、そういう事態に陥った中央銀行の前例がない。

 中央銀行が資産を膨らますことは大きなリスクになるので、さまざまな制限が付けられていたが、ことごとくそういう制限が外された。国債は今年度末に約500兆円になるし、国内株式も45兆円も保有している。株式市場は日銀保有の株式を売却すれば15000円以下に暴落して巨額の債務超過になるから、売却できない。長期金利を上げれば、数年のうちに金利負担で政府財政が破綻するから、長期金利を上げる選択肢もなくなっている。破綻に向かってアクセルを踏み続けるしかない。アクセルとは、国内株式を買い続けることと長期金利を実質ゼロのまま据え置くことだ。そのうちに国内大手銀行が経営破綻に追い込まれる。にっちもさっちもいかないというのが実態である。
 政府からの日銀の独立性はとっくにない。財務省のしもべに成り下がってしまった。財務省は具体的な財政破綻のシナリオを描いている。そのことについては#4451に書いた。

<余談:仮説例>
 上場企業のebisu社が銀行から100億円借りたとしよう。銀行とebisu社の債権債務を相殺するなんてことができるわけがない。やってくれたら借金を返済しないで済むからebisu社に取っては願ったりかなったりだ。そんなことをすれば銀行には100億円の損失が発生する。
 しかし現実にはこういうことはよく行われていた。ある企業が業績不振に陥ると、銀行はお金を貸すだけでなく、役員を送り込む。社長の場合もあるし、副社長や専務取締役や常務取締役、平取締役の場合など、それらのミックスの場合などがある。経営がさらに悪化すると、銀行は自分の持っている債権を切って損失処理をする。当該企業は100%減資を行うと同時に増資を行う。ゼネコンのフジタに対する2000億円の貸付金の債権切りがあったと記憶している。こういうことをして銀行は上場企業に役員を多数送り込んでいた。

 相殺処理というのは、初等簿記からいうと債権をもっている側が貸倒損失処理をするということでそれなりの手続きが定められている。
 親会社と子会社なら連結ベースの決算では相殺されて表示されるではないか、同じように処理すればいいということを言っていたと思うが、これもばかげている。日銀と政府は親子関係にはない。独立の組織である。中途半端な知識でいい加減なことをいう輩が世の中にはうじゃうじゃいるから、ご用心。

 政府と日銀との間で相殺処理について合意ができたとして、日銀側は保有国債について債権放棄になるので、巨額損失が発生することは、簿記3級の知識があれば、十分に理解できる。債権債務の相殺で問題がなくなるなんて主張する経済評論家は初等簿記すら理解できぬバカ丸出し。経済学者にもいるからあきれる。全世界の企業が複式簿記で運営されている、財政破綻を論ずるには複式簿記の知識は必要条件である。

<余談-2:マイナス金利は実質増税>
 個人と企業の預金額を合わせて1500兆円と仮定しよう。金利が2%なら毎年30兆円の利息が収入となる。ところが、「異次元の金融緩和」によって、長期金利はゼロだ。毎年30兆円の増税と同じことになっている。そこまでして、日銀は政府を助けているのである。新規赤字国債発行と借換債という巨大な資金ニーズが恒常的にあるにもかかわらず、金利が上がることはない、金融市場はその機能を完全に停止してしまっている。


#4451 新型コロナ対策それいけドンドン:財政破綻・財産税課税への道 Jan. 6, 2021



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