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#4389 ヘビースモーカだった同期のIさんが逝った Oct. 20, 2020 [A8. つれづれなるままに…]

 正月2日に、近くに住む同級生Nさんが新年会を毎年開いてくれる。奥さんのご厚意に甘えて、毎年楽しく過ごさせてもらっている。九人会(高校同級生、メンバーは11人)のほかに数名が「常連」である。タバコを吸うのが2名いた。Iさんと西浜のコウジだ、Iさんはヘビースモーカで2箱/日だと云っていた。

 十数年前に(わたしは)スキルス胃癌と巨大胃癌を併発し、岡田病院で内視鏡検査で胃癌の診断を受け、釧路医師会病院へ入院、手術を受けたが、同じ病室に肺癌疑いのMさんがいた。ヘビースモーカのMさんは当時70歳前後、検査と経過観察中だった。そのMさんは状態がよくならず、少しイライラしていた。「十年前に主治医に言われたときにタバコをやめときゃよかった、毎日二箱吸っていたらいずれ肺癌になると言われた」、そう云っていた。容体が悪化して結局、片肺切除となった。釧路市立病院へ転院・手術が決まった日に、次のように云った。
「あの時にやめていればこんなことにはならなかった、やめられなかった。毎年阿寒川にフキを採りに行っている、片肺になったら水の中に入ってフキを採ることはもうかなわない。みずみずしくていいフキがとれるんだ。あれが一番の楽しみだった。」
 そう云って、涙を流した。
 「ebisuさん、退院したら電話をください」と電話番号のメモが残っている。わたしは手遅れだったので術後、しばらくの間はどうなるかわからない、数年間は体調もすぐれず、電話できないままになった。
 そんな話を、Iさんにもしたが、かれも、煙草はなかなかやめられなかった。

 Iさんの住まいは海の方だ。そこから以前勤務していた光洋町の水産会社までよく散歩していた。その途中にわが家がある。家の前を掃いたり、自転車の整備をしていたりすると、ニコニコ顔で10分ほど世間話をする。
 昨年は、電動自転車を手に入れて、「楽だ、全然軽い」と乗り心地のよさを話していた。ヘビースモーカだから、肺機能が弱っているので、普通の自転車だと緩い上り坂が続くのでしんどかったんだろう。電動自転車に乗ってとっても楽しそうだった。しばらく見ないな、関西の娘さんのところへでも遊びに行っているのかなと思っていたら、今朝の葬儀の折り込み広告があり、ほんとうに驚いた。

 近所の同級生Nのところへ行って聞いてみた。
 岡田医院で診察を受け、肺癌の疑いアリの所見で、釧路市立病院に7月に検査入院。その時は太っていて元気だった。地元で療養したいと9月には市立根室へ転院。入院生活が長引いたので、骨が弱くなり、歩行困難、車椅子に。
 寝たきりになると骨のカルシウムが血液中に溶け出して、骨がスカスカになる。宇宙飛行士が無重力状態で数十日生活するとそう言うことが起きる。地球に帰還すると、自分では立てずに両脇を抱えられて運ばれる。自分で立つと骨折するからだ。身体の縦方向に重力がかかることで、骨密度が維持できるように人間の身体は出来ている。寝たきりになると、縦方向の重力が働かなくなり、骨のカルシウムが血液中に溶け出す。わたしも40日の入院期間中、ほとんど点滴のみだったので、ストレッチは毎日したけど、身長が174.5cmから173.0cmに。測定の仕方が悪いのかと病院の身長測定器で何度測ってみても同じだった。壊れているのかと思ったが、そうではなかった。慥(たし)かに身長が縮んだのである。

 市立根室病院への転院はターミナルケアだったのだろう。家族が住んでいる根室の病院なら家族はいつでも見舞うことができる。歳をとると釧路は遠くなるのである。市立根室病院のターミナルケア機能がますます重くなる。

 高樹のぶ子『小説伊勢物語 業平』を昨日読み終わった。最後のページに業平辞世の歌が載っている。

  つひに行く道とはかねて聞きしかど
    昨日今日とは思はざりしを

 千百年前もいまも、人の命の儚さは変わらぬ。笑顔で話しかけてくれたIの冥福を祈る。


<余談:南伝(パーリー語聖典)の仏教より「取著」>
 漢訳の経典群は、小頭のよい中国のお坊さんたちがサンスクリット原典から漢訳したものだから、やたらと小難しい。南伝の仏教(パーリー語聖典群はサンスクリット聖典よりも成立が古い)はお釈迦様が譬喩を巧みに使って衆生にやさしく語り掛けてくれている。そこにお釈迦様がいらっしゃって、語り掛けてくれているように、存在が感じられる経典群である。
 「取著」というのはこちらから求めているわけではないのに、いつの間にかしっかり心の奥に根を張るもの。友人の死にまみえて、日々心の洗濯が必要だなあと感じた次第。

#3458 取著(しゅちゃく)  Nov. 17, 2016 



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