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#4388 3次関数の問題:I君の質問、青チャート数Ⅱより Oct. 18, 2020  [52-2 生徒の質問]

 金曜日に生徒から質問のあった問題を取り上げる。

〈問題214〉 f(x)=x^3-3x^2-9x とする。区間 t≦x≦t+2 におけるf(x)の最小値m(t)を求めよ。

 f'(x)=3x^2-6x-9=3(x+1)(x-3)
   f'(x)=0 とすると、

  x=-1、3
 増減表は省略

 よって、y=f(x)のグラフの左半分をズームすると次の図のようになる。

<図a1> …グラフ作成ソフトGRAPESを使っている
214-1image.jpg

 
  I君からの質問は、解答集の途中で、なぜ突然に記号α(アフファ)が出てくるのかということ
 「先生、αの意味が分かりません、解説してください!」
 αが降ってわいたように出てきた、ターミネータがスッポンポンで突然ショーウィンドウの前に出現したような、と譬(たと)えたらいいのかな。αよ、おまえは誰だ、なぜここにいる。
 悪いが、このレベルの簡単ではない問題を簡単に解説する技の持ち合わせはないから、便利な道具であるグラフソフトGRAPESを使いながら解説したい。

 グラフの左側のx切片が-2の右側にあり、x軸の-2の点とグラフの曲線との間に隙間があるところに注目してもらいたい。2次関数と違って、3次関数は頂点を通りy軸に平行な直線で左右線対称にはならないところが要注意である。だから、区間の幅が2となる点をαとして、f(α)=f(α+2)を満たすαの値を計算する必要がある。2次関数なら左右対称だからこんな問題は出てこない。

 ここでα<-1<α+2 すなわち -3<α<-1 であるαに対し、
 f(α)=f(α+2) を満たすαの値は
  α^3-3α―9α=(α+2)^3-3(α+2)^2-9(α+2)
              3α=11
                α=±√33/3

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 I君は私大文科系学部を受験するから、青チャートはそもそもオーバースペック、そして質問のあった問題はマークが5つ並んだ、青チャートでは最高難易度の問題なのだ。どういう問題集を使うかは、それぞれの塾生が自分で選んでいるから、一人一人違っている。個別指導しているから、それぞれの生徒から、家でやってみたがわからない箇所があれば授業が始まるとすぐに質問が飛んでくる。
 せっかくだからI君も紹介しておこう。エントロピーの高いタイプ。棒状の液晶に例えれば、エントロピーが低ければ棒状の液晶は整列して窮屈そうに並んでいる。熱を加えると縦方向にずれが生じて不揃いになり、エントロピーが増大する。さらに熱を加えると横方向にもずれが生じ、棒状の液晶は拘束(校則?)を解かれたようにバラバラに自由気ままにふるまい始める。生徒たちを観察していると、たまにエントロピーの大きな人間がいることに気がつく。
 難易度の高い問題集を選んだI君は根っからのチャレンジャー精神のもち主。もちろん選んだ問題集だけで言うのではない。明治公園内の池に下りるU字路の急坂をチャリンコで飛ばして、曲がり切れずに立ち木にぶつかり、血だらけのケガしたことがあった。わたしも池へ下るあの曲がりくねった小道をMTBで走ったことがあるが、速度はちゃんとコントロールして転倒するほど無茶はしない。そんな坂でも速度を落とさず突っ込み狭い小道を外れて立ち木へ激突、あちこちすりむき血を流しながら這い上がって自転車を押して戻ってきたらしい。小学生じゃあるまいし、高校生になってもそんな無鉄砲なところがある。学校へ行くのはあと3か月、怪我無く卒業してくれ。(笑)
 夏目漱石はそういうエントロピーの高い人間を主人公に小説を書いた。
「親譲りの無鉄砲で子どものときから損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かしたことがある。なぜそんなむやみをしたと聞く人があるかもしれぬ。別段深い理由でもない…
お馴染み『坊ちゃん』の冒頭部分を引用した。
「親類のものから西洋製のナイフをもらって綺麗な刃を日に翳して、友達に見せて居たら、一人が光る事は光るが切れそうもないと云った。切れぬことがあるか、なんでも切って見せると受け合った。そんなら君の指を切ってみろと注文したから、なんだ指位此の通りだと右手の親指の甲をはすに切り込んだ。幸いナイフが小さいのと、親指の骨が堅かったので、いまだに親指は手に付いている。しかし傷跡は死ぬまで消えぬ。」
I君はそんな主人公に似た無鉄砲な性格のもち主だから、学校の先生にはたぶん向かない、性格を生かした別の方面での活躍を期待している。あの性格を考えると、命懸けの修羅場を何度かかいくぐることになりそうだ。30歳まで生き延びれたら天運と言うしかなく、ヨーロッパやロシアを駆け巡って40代で何事かを成し遂げる男になるだろう。(笑)
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 青チャート数Ⅱの解答編に載っている図は、場合分けをしたものを1枚の図で表現して込み入っている。こういう時は、場合分けごとに図を描けば、シンプルになる。それが<図a1>である。比較のために解答編の込み入った<図b1>も貼り付けておきます。こうすると解答編の図のαとα+2が、2と0のところを指しているように見えて、アウトだということがよくわかるでしょ。これでは数学が得意なはずのI君でも、10分間図を眺めても理解できるはずがありません。肝心なところ、-2とαの間にある隙間がこの図にはありませんから、彼の疑問は当然のものでした。わからぬことをわからないと質問できるのは、性格が素直で、センスのいい証拠です。解答編の図を見て「なんだかヘン ???」、好い感覚してるでしょ?

<図b1>
DSCN4212s.jpg


 この<図b1>ではグラフの横幅が2の地点のx座標はそれぞれ-2と0に見えてしまい、生徒が混乱を起こすのは当然です。数研出版社は解答編のこの図を差し替えてもらいたい。<図a1>と見比べてください。


 区間はt≦x≦t+2であるから、幅が2、そしてf(t)=f(t+2)となる点、つまり「区間の幅が2でかつy座標が同じになる点をtの特定の値、つまりx座標をαとする」。青字の式にαを代入してやればαの3次方程式ができあがるので、そこからαを求めるのである。αは幅2で最小値が左右同じになる点である。
 極大点のx座標が-1でも、t=-2、t+2=0にはならないことに注意。x=-1を線対象の軸として左右が重ならないことは全体図<図a2>でy=-25のあたりを見れば一目瞭然、グラフはx=-1に対して線対称ではないということに注意。2次関数の放物線は頂点をと通りy軸に平行な直線を対称軸として線対称な図形になるが、3次関数は頂点を通りy軸に平行な直線を対象塾とする線対称グラフにはならない。2次関数と3次関数のグラフの図形的な特性を区別してしっかり理解していないと、こういうところで落とし穴が待ち受けています。

 f(t)=f(t+2)の方程式にαを代入してx座標を計算しなければならない。

<図a2>
image Ito BC214全体s.jpg


 y軸に平行な直線をイメージしてx=-1からx=3までゆっくり移動させてください。どの地点でも線対称にはなっていませんね。こういう無駄なイメージトレーニングが数学の学力差を拡大するのです。解答集見て覚えるだけのトレーニングをしてきた生徒と差がはっきり出ます
 計算結果はすでに書いたから、あとは場合分けだが、ここまで来れば、数Ⅰの2次関数の変域がa≦x≦a+2で指定されている問題と変わらない。極大値と極小値という点だけが違うのみ。場合分けしてみる。


①t<-√33/3-のときは、区間の左端のf(t)が最小値となるから、m(t)=f(t)=t^3-3t^2-9t

 この式のtに-√33/3を代入して科学技術用計算機のHP-35sで計算すると-0.787である。生徒たちはスマホを使っているから、関数電卓用のアプリを使えばいい。

 緑の線を引いた左端の座標が(-√33/3-, -0.787)、右端の座標が(2-√33/3, -0.787)となる

②-√33/3≦<1のときは、区間の右端f(t+2)が最小値となるから、m(t)=f(t+2)=t^3+3t^2-9t-22 

 f'(x)=0のもう一つの点、x=3をはさんで、t≦3≦t+2 すなわち 

③1≦t≦3のとき、m(t)=f(3)=-27
④3<tのとき、m(t)=f(t)=t^3-3t^2-9t

 4つに場合分けすればいいということだが、①と②の場合分けの難易度が高い、要注意だ。
 ここまでできたら、最大値M(t)の場合分けもやってみようそうすることで視点が広がり全体が見えてきます。こういう勉強の仕方を普段していれば、類似問題が出てきても、基礎基本が理解できているので、柔軟に対応できる。


<解答全体の写真>

DSCN4213s.jpg

 解説終了。


<余談:生徒が使っている問題集>
 塾用問題集『シリウス』シリーズ、教科書準拠問題集、『数1A&2B』、『青チャート』シリーズ、『1対1対応』『看護学校受験用数学問題集』など。高校生は、使う問題集は自分で選ぶのが原則。
 医学部受験の生徒は「やさしい理系数学」を使いだした。ちっともやさしくない。(笑) 『マスターオブ整数』と『マスターオブ場合の数』は生徒がこれから手を出すかもしれないので、あらかじめ購入した。地元の本屋さんリライアブルに注文して昨日来たばかり、ホカホカの3冊。
「先生、そこまではやらないよ、『マスターオブ…』は東大医学部受験生しかやらない」
 そう言っていた。手に取ってエレガントな解法を眺めてみたい。

DSCN4211s.jpg

 数学と英語の両方が得意科目になれば「鬼に金棒」ですよ。このURLをクリックして英語で遊んでみたください。

#3164 clothes 考:受ける代名詞はthem or it ?  Oct. 27, 2015





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